戦場黙示録 カイジ 〜 ザ・グレート・ウォー 〜   作:リースリット・ノエル

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第45話 異邦人のファースト・コンタクト

アルサスの戦線はそれはもう酷かった。

 

我が部隊の前進は止まった。

最初に突入した突撃梯団は壊滅したらしいと部隊長は言った。

 

戦線をよくわからない煙が覆い、あたりには異様な臭いが鼻腔を刺激する。

 

昔から鼻が犬のようによく効いたから、すぐに異臭は感じた。それが何なのかは、その時には理解できなかったけれど。

 

あの煙の先には何が起きているのか、分からず不気味だった。だけど、僕達は攻撃をやめるわけにもいかず、攻勢を継続した。

 

前線の知らせでは、敵の塹壕地帯は、堅牢な掩蔽壕とあらゆる火器で武装した防御陣地が繋がっていて、突破できない障害をなしているようだと。

 

味方の砲兵隊による波状攻撃も重層的な帝国の防御陣地を破壊するには、力不足だったらしい、との事だった。

 

戦車と装甲車の群れが敵の強力な防火を突っ切るように進む。その後ろを歩兵の僕達は、必死についていく。進むにつれて味方の死体を沢山見る。一番、目についたのは焼けた爛れた死体だった。それは身の毛がよだつ恐ろしいもので、鮮明な写真の様に脳裏に焼き付いた。

 

暫く不安を抱きながら進むと敵の防御線に侵入する。すると途端に一斉に攻撃を受ける。

 

鉄の雨が僕達を襲う。人生で初の戦争。最初の恐怖、焦燥感をこれでもかと味わう。

最初の砲火で、僕達の部隊で初めての損害を経験する。

 

僕達は緊張して、味方が次々と凶弾で倒れる中、リレー方式に攻撃を続けるが一向に敵の塹壕地帯を制圧できない。

 

陣地に取り付くことさえ、歩兵一個中隊を犠牲にしても困難だった。

 

敵の砲撃の最中、障害となる鉄条網を撤去しようと懸命な作業をする工兵隊と援護する歩兵達の努力で開通した直後は、一瞬の希望が見える。

 

しかし目をつけられた敵の機関銃と迫撃砲の集中砲撃で、瞬く間に排除され、吹き飛ばされる。

 

突破口を切り開くべく、早駆けして歩兵隊と戦車が突撃を何度もかけるが壁のように迫る十字砲火で屍の山を作る。

 

車両が次々と立ち往生するか擱座する。

猛烈な砲撃、銃撃で前進するにも、とてつもない勇気がいる。部隊は、敵の攻撃で散りじりになり、命令通りの行動が取れなくなる。

部隊長の行方が分からなくなり、頼れる上官も次々と死んでいく。もはや、誰が部隊を指揮しているのか分からなかった。

 

色々と指示が飛んでくるが、誰が誰に言っているのかわからない。しかもよく聞こえない。酷い混乱だ。

 

とにかく敵に攻撃するしかないと一人一人が判断して突撃する。

 

こういう場合は、強力な大型戦車と航空支援が必要だった。でなければ、突破は無理だと思った。

 

僕は、見知らぬ誰か達の部隊と混ざって必死に匍匐したり、銃撃の合間を縫って走って前進をする。走る抜けるたびに、銃弾が背中を掠める。僕の先頭にいた歩兵の頭が弾ける。

恐怖で心臓が破裂しそうになる。

 

何秒間もない前進が数分に感じる錯覚を覚える。

 

敵の鉄兜がくっきり視認できる距離まで接近すると味方の死体を盾に利用して小銃で射撃する。狙いをつけずに射撃を加える。

前に、敵がいる方に射撃すればいいとその時は思ったからだ。

 

暫くすると敵の陣地が砲火に包まれる。

沢山の仲間を奪った機関銃陣地が砲撃で爆砕する。味方の戦車がやったのかと思えば、味方の砲兵隊らしいと隣にいた軍曹がいう。

 

今更遅いと、やるなら最初からやれと怒りにかられ砲兵隊の人間を張り倒したくなる。

 

味方の砲撃で戦線が少し変わり始める。

激しい銃砲撃に緩みが生じ始めていたからだ。しばらくすると後続の機械化部隊が突入してきた。

 

僕達、歩兵隊の横にホチキス戦車が滑り込む様に進出する。味方の死体を轢いて履帯を血肉に染めていたが、構わず前進していった。

 

その行為に怒りを覚えず、ただ戦車がようやく来たか、というちょっとした安堵感を覚えた。周りをみれば、何両もの戦車が攻撃を加えながら敵の塹壕に突撃し、生き残りの歩兵部隊が後に続いている様が目に広がる。

 

隣にいた軍曹がチャンスだと言って、突撃を指示する。

 

僕も突撃しようと小銃を構え直して、姿勢を取ると左腕に痛みが走る。

 

見ると左腕に銃弾を掠めて、裂傷を受けている。赤い血が滴り落ちる。びっくりして仰向けになるが、訓練を思い出し止血処置を行う。

 

既に歩兵隊は突撃して、僕は置いてけぼりなっている。

 

早く処置をしないといけないとせわしなく圧迫止血を行い、包帯を巻いていると、目に焼きつく閃光で一瞬視界を奪われる。

 

目が霞みながらも、視線を宙に向ける。

するとそこには金色に輝く光条を目撃する。

上空から放たれた光の線は、神々しさを覚えたが、それは僕達に向けられた死滅の光だった。敵の魔導師の攻撃だったのだ。

 

それで一瞬にして味方の砲兵隊が全滅したらしいと、聞いたのは地獄から生還した後の事だった。そして僕が所属していた歩兵部隊は数百人いたが、生還したのは僕を含め40人もいなかった。

 

周りの人からは、運がよかったなと言うけど、その後の事を考えると本当に運が良かったのか。

 

こんなことを言うのは、あれだ。

神に対して不謹慎かもしれないが、死んだ方が楽だったと思ってしまう。

 

それだけに、あの戦線には酷いことが多すぎた。自らの死を願うぐらいにね。一言ではいえない。

 

戦後の生まれのあなた方には、わからないでしょうが

 

デュラン・イザイ フランソワ人

1903年2月15日 リヨン生まれ

 

最終階級は軍曹。戦争を生き延び、戦後 教職を得る。傷痍軍人として給付金を受け取る立場にあったが、全額 廃兵院に寄付した。

 

フランソワ・テレヴィジョンのインタビューに対する証言より

 

 

カイジは空に閃光を見た。

それを目撃したのは、連隊の防御戦闘において戦線を下げるべきか、それとも否かを決心する時であった。

 

例の魔導師が砲兵隊に突入した直後に、第2大隊の主力陣地が敵に部隊に取りつかれ始める。

 

そして第1大隊も同様の状況が生起する。

連隊防御線の第一線にいよいよ綻びが生じ、敵が塹壕地帯を侵食し始める。

後続の敵機械化部隊が到来し、戦線の綻びは大きなっていく。

 

連隊の被害は拡大していく、奮戦する味方部隊を犠牲にして第一線塹壕地帯を死守すべきか

 

それとも第一線を放棄し、第2線陣地に展開する第三大隊の援護を受けながら、第1大隊と第2大隊を後退させるべきか。

 

最前衛の防衛に投じた2個大隊を戦闘させながら後退させるのは、至難の技だ。

大隊の後退させるタイミングを見極めるのも難しく、判断を誤ると戦線が総崩れになる。

 

後退する部隊を敵が確認すれば、勢いが増しより攻撃を強めるからだ。

敵に背を向けるとやたらと、敵の発砲率が急激にあがる現象も加わって、被害も増えると予測できた。

 

数分で来援する魔導師の戦術支援部隊が戦線に到達し、対地支援を行えば防御陣地帯に侵入するだろう敵部隊の前進を幾らか鈍らせる。

 

最悪、奥の手を使い、敵の突撃を防ぐべきだと考える。あれは最終手段であり、簡単に使うべきではないが、状況によってはやらざるをえない。

 

そう判断し、即実行に移すとし命令を指揮所から出そうとした時に、急報が入る。

 

まさか……とカイジは、恐れる最悪の事態が

起きたのかと、脳裏をよぎる。

 

「なんだ、やれたのか!?」

 

「いえ、違います……」と通信兵が言い答える。

 

「このシグナルは……」

 

【戦域空間照射警報】【周辺ノ味方ハ退避セヨ】

 

「これは……魔導師が出す……奴か。」

 

カイジは警報を見て理解する。

魔導師が広範囲の術式攻撃を繰り出す際に味方部隊を巻き込まないように発されるシグナルだと。おかしい点がある。

 

「照射……戦域レベルでの光学術式だと……」

 

爆裂術式での戦域空間爆撃警報が発せられるならば、わからなくはない。例は少ないが。

 

しかし、戦域レベルの大規模な光学術式攻撃が行われるのは滅多にない。そこまでのレベルに至るのは、伝説級の魔導師でしか成し得ない。例外はあるが

 

「奴が……その例外だと言うのか……」

 

「規定を超える高出力の魔導反応を感知。更に増大します。」

 

「そんな馬鹿な……宝珠が持たんぞ!?」

 

カイジは驚きを隠せない。帝国魔導師の宝珠は頑丈さと安定した魔力供給を実現する優れた魔道具であるが、その代わり規定以上の出力を出さないよう設計され、リミッターを二重にかけている。継戦能力を高め、長時間に渡り魔力供給を実現するためにだ。

 

しかし、奴から発せられる魔導反応は、専門ではない自分が見ても異常だ。

 

従来型の宝珠ならば、臨界点に達して宝珠が溶解するか、莫大な魔力を制御できずに大爆発を起こすかのどちらかである。

 

「信じられん……これでは……!」

カイジが何かを言いかけた時に、突如として視界一杯に光が包み込まれる。

 

眩い光の次は、彗星のような閃光が空に走る。

 

金色の光線が地表に照射され、そこにいたであろう敵砲兵部隊、周辺部隊を巻き込み蒸発させる。

 

ほんの数秒の出来事だったが、明らかに言えることは……敵砲兵隊の砲撃が事切れたように途絶えたこと。

 

「共和国の砲兵隊を……一撃で殲滅したのか……?」

 

「戦術支援部隊が連隊上空に到達、部隊より直接支援開始の伝達あり」

通信兵から、魔導師部隊の支援開始したとの報を聞き、カイジは手を軽く挙げて了解したとサインを送る。

 

カイジは、唖然としていた。指揮所にいた他の人間も例外ではない。一筋の熱戦により殲滅。いや、消滅と言った方が正確であろう。

 

「まるでバスターライフルだ……」

 

彼が想起するのは、前世界の学生時代に何となく見ていたロボットアニメで主人公の機体が持つ武装。

 

使用すれば、たった1発で敵を殲滅する尋常ならざる破壊力を持つ最高火力の武器。

 

既に十年以上前になり、薄れきった記憶だったが、先ほどの光景で突如 蘇る。

 

まるで、アニメの世界であると言わんがばかりに。それだけ目の前で起きた光景は、信じられないものだった。

 

「こちらホークアイ03。敵砲兵隊の排除終了。これより敵地上部隊を掃討する。宜しいか?」

 

しかし、これは現実に起きたことである。

起きた事を直視し、認めなければならない。

そして、これ幸いと見て喜ぶべきか。

カイジが通信に応じる。

 

「こちらカイジだ。よくやった少尉……戦術支援部隊の指揮に戻り、敵突撃部隊を排除せよ。まずは崩れかけた第2大隊を重点的に支援し、敵の侵入を防げ。」

 

「了解、直ちに掛かります。」

 

「ああ、頼む……」

 

カイジは、通信を終えると機甲部隊に指示を出す。

 

「今が勝機を掴むチャンスだ。戦車大隊は、直ちに左翼から攻撃をかけよ。陣形は自由。間違っても味方の射線に突入するなよ。後の判断は大隊長に任せる。」

 

事態がどうであれ、形勢は大きく変わった。

こちらの劣勢から、優勢に転じたのは間違いなく。この戦場で生まれたチャンスを逃すようなカイジではない。

 

「砲兵隊は、全火力を前面に再集中せよ。後続の機械化部隊、歩兵部隊を生きて返すな。」

 

今こそ、徹底的に殲滅する絶好の機会だ。

 

勝ち負けの世界は、シンプルで非情だ。

武人の心など知らぬし、情で酌み交わす作法は知らぬ。勝てる時には、完全なものとして結果を出す。

 

そこに全力を傾けるのが、彼の本分だ。

 

「連隊はこれより殲滅戦に移行する。防御線射程内に存在する全ての敵を可能な限り殺すんだ。」

 

「逆襲のために歩兵突撃はするなよ。各部隊指揮官は、それを徹底させよ。無駄に死ぬ事はない。」

 

これ以後、共和国 第3師団の攻勢は完全に頓挫する結果となる。

 

砲兵隊が消滅してもなお、戦い続けた第3師団の突撃部隊であったのだが、帝国魔導師部隊の来援、機甲部隊の側面強襲と防御火力の集中攻撃により敢え無く砕け散る運命にあった。

 

****

 

やぁ、諸君。長かった1日がようやく終わろとしている。夏場であるから、まだ明るいが時間的には夕方を迎える。

 

まるで何日も過ごしたような感覚があるが、悲しいかな、たったの1日にすぎない。

 

一つ大仕事を終えて、一山乗り越えたのであるが、実のところスタートしたばっかにすぎないのだ。それを想うと更に悲しみが深くなる。

 

最初は高高度を飛べるわけでもないのに単独で偵察を命じられ、気づいたら何処かの歩兵師団で作戦を練り、そして戦線を維持する為に一個中隊ぐらいの魔導師を自ら率いて、敵一個師団と乱戦を繰り広げる……

 

一体、私は今日で何役務めただろうか……

1日で魔導師の全般的な業務を一通りを、しかも濃密な形でやったように思える。

 

参戦初日でこれとは、骨が折れるどころか粉砕しそうになる。色んなことがありすぎて、既にゴールしたくなる。

 

とはいえ、忙殺された1日ではあったが、結果は良好だ。

 

偵察任務は無事に完了、コルマールの歩兵師団には考案した戦術が選択され、緊急支援任務の対象だった臨時編成の連隊を見事守り切ることに成功した。

 

最大出力で撃ち込んだ光学術式は、敵を一掃する制圧力を示した。

あれは体力を消耗したが爽快感は抜群であった。

これが神の遺産でなければ、どれだけ良かったことか。死すべし、存在X。

 

しかしながらだ。帝国の戦線はどうか別とし、自分的には今日の流れは、完全勝利。

目標を成し遂げた自分を存分に褒めてやりたい。ちょっとの贅沢は許されていいだろう。

手持ちは、武器以外に何もないが。

 

連隊の支援とかは、もうタイミング的に何しても間に合わない緊急クエストみたいなものであったが、現実には何が起こるか分からない。

 

というかラッキーだったのかもしれない。

本来、連隊の支援は「部隊が陣地を維持し、戦力もある」という形でなければ、成立しなかったも同然なのだ。

 

そして寄せ集めの部隊では、優越した戦力を持つ敵の猛攻に耐えれないと八割ぐらいの確率で諦めていた。

 

烏合の衆でも、時に「虫の命にも五分の魂」という言葉を引き出すように部隊が一眼となって奮戦し、敵に損害を与える事例も戦史で確認されている。

 

しかし、その結末は殆ど全滅である。国威発揚の「綺麗な物語」として英雄的に引用

される流れなのであるが……

 

実際には、連隊の戦力を温存した状態で受け持ち区画の防御線を維持。相当な兵力を持つ師団の攻勢を受けていながらである。

 

確かに損害も出ており、無傷ではないが、自分が連隊上空に到達した時は、連隊の傷は軽傷にすぎなかった。

 

それを可能にしたのは周到な準備と指揮官の采配によるものである。

 

 

それでも酷な環境にいたのであるが、連隊は耐え抜いた。最後は、航空支援を受けて難を逃れた形であったとしてもだ。

いつ来るか不明の航空支援が来るまでの時間、部隊を持たせたのは事実である。

 

そして、実在していたカイジという存在。

なんだかよくわからない戦歴と外人だが最短コースで出世した人間で、常勝の前線指揮官。

 

特に戦闘における指揮能力は高いと見て取れた。

 

航空魔導師を活用したのもあるが、戦況の変化に瞬時に対応し、防御から反撃に柔軟に移行した。反撃の際は機甲部隊を運用しての側面攻撃、砲兵隊の火力集中、魔導師を敵突撃梯団の後方に展開させ背撃の効果。

それらが相乗してみるみるうちに敵は消耗していった。タコ殴りである。

最終的には殲滅線だ。

まるでガタルカナルで全滅した一木支隊の末路を再現するかのようだった。

 

とはいえ、相手は数百人ではなく、合計すれば一万を超える集団に対して、それを行ったわけである。敵に航空支援がなかったからとはいえ、やたらと戦いがすんなり上手くいっていた。

 

そして、深追いしなかったのも評価できる点だ。勢いに乗り、逆襲して追撃すると後方に控えていた部隊によって返り討ちにあうことが多いからだ。

 

迂闊なことをせず、慎重な面を感じさせる。

まだ実像がつかめていないこともあって個人的には、気になる人間ではある。

 

そして、今は連隊長代理の立場にあるらしい彼の者に呼ばれて、仮設の連隊本部に向かっている。

 

本格的な戦闘が終了し、残敵掃討したのちに、周囲を監視する警戒班を編成し指示を出していた時に連絡が入る。

 

内容は、連隊会議を行うから来いって話だ。

本当ならば、階級は少尉であっても役職がなく一兵士にすぎなかった私であるが、昨今の事情で一部隊の指揮官に昇格してしまう。

しかも立場は、中隊指揮官になるから、いきなりの出世である。もう少し心のゆとりがある時にきてほしい事だった。

 

というわけで、戦術支援部隊の指揮官であり、一個魔導中隊ぐらいの強力な戦力を率いているわけだから、連隊の重要な決定や調整を行う会議に呼ばれるのも頷ける。

私が指揮する部隊は、南方航空司令部から、新たな命令が下るまで間は、連隊の指揮下に支援せよと来ている。

 

必然的に当分の間は、こちらでお世話になる。いや、お世話をするほうかな。

そんなわけで、疲れた体に鞭を打って会議に参加である。立ったまま、寝ないように注意を傾けるべきであろうな。

 

そして気になる相手とも対面できるわけである。

 

気づけば、仮設された連隊本部の天幕を前にしている。もっとあった本部は掩蔽壕だったが運悪く吹き飛ばされてしまったらしい。

 

さて、入る前に少し服装を確認する。多少、汚れていても身なりは、出来る限りキチンとしておきたいからだ。

 

「入ります。」と一言置いてから、入り口の幕を広げて入室する。中に入ると、女性の士官が支持を出し、何人かの作業員とともに書類や椅子などの準備をしていた。会議のための準備だろう。

 

私の存在に気づいた女性士官がこちらに向き直って近い付いて来る。見た目は長髪で若そうだ。スラッしていて女性にしては長身。

 

「はじめまして、少尉。」

私の目の前まで近づくと女性士官が敬礼し、すかさず答礼する。

 

「私は第144臨編歩兵連隊 連隊本部 観測班所属の魔導師アデルナ・ジングフォーゲル中尉です。」

 

気骨溢れてる軍人とは違い、上流階級の貴族のような声質と話し方をする中尉。

上品さとか、気品を持つとはこのような人間を指すのだろう。大企業の受付嬢か、若しくは秘書かのような雰囲気を持っている。

 

「はっ!私はターニャ・デグレチャフ少尉です。現在は、戦術支援部隊の部隊長を拝命しています。」

 

「ええ、聞いています。少尉のお陰で、連隊は救われました。この場を借りて、感謝致します。」

 

「恐縮です、中尉殿……ですが私は、ただ我が務めを果たしたのみにすぎません。」

 

帝国軍人として当然の義務だと私は主張したが、中尉はそうではないと言うように答える。

 

「そうでしょうか。誰でも出来るような事では、ないのですよ。謙遜なさらないで。」

 

こちらの身を立てる言葉を残した後に、「連隊長を呼んで来るので、暫しお待ちを」と天幕の裏に消えて行った。

 

私より階級が上なのに、丁寧な言葉で礼節を持つ態度に少しばかり感銘を受けていると、「連隊長が入ります、気をつけ」と機械的な号令が入り、脊髄反射で背筋をピンと伸ばして気をつけの姿勢をする。

いよいよ、来たかと身を構える。例のカイジ中佐と対面といったところだ。

 

「よろしい、直れ。貴官がデグレチャフ少尉かね。」

 

連隊長が天幕に入ってきて、私の方へ向かう。見た目は、想像していたと違っていた。

見た目は、中肉中背の中年男性といったところ。

 

連隊長の風貌はほっそりとした目で背が低い。小さい口髭でその風貌は軍人と言うよりも学校の教師のように見えた。

また身なりを気にしていないのか、擦り切れそうな古い服装が目に余った。

 

これが噂の人かと疑問に思いつつも、私は連隊長に敬礼して申告する。

 

「はっ‼︎ 戦術支援部隊 部隊長 ターニャ・デグレチャフ少尉です。連隊長の令により、出頭いたしました。」

 

連隊長は頷きながら、答える。

 

「そうか、貴官が銀翼を持つ魔導師だね。私は、連隊長を務めるゴットハルト・ハインリィツィ大佐だ。任務、ご苦労だった少尉。」

 

連隊長が感謝の念を伝えて、握手を求める。私はそれに応えるが、違和感を覚える。

 

あれ……この名前どこかで、聞いたぞ。

帝国は、前世のドイツ帝国を基礎にしたような国家であるため、前世で似たような名前を耳にする事はよくあるが……

 

頭を捻って思い出そうとするが中々出てこない。しかしそれ以前の問題があるではないかと頭の中で訴える。

 

あれあれ、おかしいぞと。現在の連隊長は、例の中佐ではないのかと。では、元の連隊長か。しかし、それこそおかしいではないか。

 

確か連隊本部は吹き飛ばされて連隊長と連隊幕僚諸共、生死不明ではないか。一体どういう事だろうか。真偽を確かめるべく、連隊長に問うてみよう。

 

「連隊長、小官に質問があるのですが……よろしいでしょうか。」

 

「ああ、構わないよ。」

 

「最初に連隊と接触した際に、連隊の指揮官はカイジ中佐という方が指揮をしていたと……確認していたのですが、これはどういう状況なのでしょうか。失礼ながらその点の説明を受けたく存じます。」

 

先の防御戦においては、あらゆる部隊の指揮を担っていたのは、間違いなくカイジ中佐だった。それは通信のログからも、戦闘詳報からも裏付けができる。私も彼の命令で動いていたのだから、疑いようがない。

 

後任の連隊長が着たのであれば、話はわかるが、それにしても後任が来るのが早すぎて腑に落ちない。未だ新たな味方の増援が到着したとの話は聞いていない。

 

連隊の増援として助力しているのは、私が指揮する魔導師部隊のみである。

 

「そうだね。その点は少し説明しよう。」

 

連隊長は、私の質問に対して快諾して答えてくれた。

 

どうやら、ハインリィツィ大佐は戦闘中に連隊本部から離れて戦線の確認をしていたらしい。掩蔽壕の中では、広い視界で戦況を確認するのが難しいからだ。

それで戦況を見て、詳細な指示を各部隊に改めて出そうと連隊本部に戻る手前で、敵砲兵隊の砲撃を受けてしまったと。

幸いな点は砲撃の直撃をモロに食らったわけではない事。確かに爆発の衝撃は食らい、身を飛ばされたが気絶しただけで、負傷はしなかった。

そして、意識を取り戻すと連隊本部付の衛生兵に介抱されていたと。

 

加えて大佐の前を歩いていた幕僚が盾となったのも生還の要因でもあった。なんと運の良い話であろうか。

似た話は、前世の史実で幾らかあるとは言えども、やはり幸運というべきだろう。

 

「残念ながら、その幕僚は死亡してしまったが、結果として助かったわけだ。彼には感謝しているよ。いずれ彼にはヴァルハラに行った時に礼の一つや二つはしなければならないな。」

 

「そうでしたか……深いった話をしてすいません。」

 

「いや、構わんよ。しかし、少尉の部隊のお陰で助かったよ。この手の支援が来ることは滅多にないのだがね。」

 

「私がここにきたのは、偶然の産物と言ったものでしょうが……」

 

私は連隊長に、たまたまコルマールの歩兵師団にいた時に南方方面航空艦隊から緊急支援要請を受理し、緊急展開した事を説明する。

すると連隊長は、首を傾げる。

 

「ふむ、方面艦隊から直々にか……妙な事もあるのだな……」

 

本来であれば、南方方面航空艦隊から一介の臨時編成部隊の支援を前線部隊に下達する事は、異例だと言えた。

 

「それだけに、連隊の位置は防衛上の観点から見て重要な要衝だと上層部が判断されたかと。」

 

そうならば、しっかり戦力を投入して補強しておけと言いたいところではあるのだが

 

「気にすることでもないか……内容がどうであれ、方面の緊急支援要請のお陰で連隊が壊滅することは免れた。」

 

連隊長は安堵するような表情を浮かべる。

 

「少尉の奮戦も凄まじいものだったと周りから聞いたぞ。なんでも強力な熱線で敵を焼き払ったとか。」

 

敵を千切っては投げたようなエピソードを聞くが、私はそれら否定する様に答える。

 

「話が大きくなっていますね。そこまで大したことは小官はしておりません。」

 

実際には、従来型宝珠の出力を遥かに超えて、通常の何倍以上の火力を持って光学術式を発動したが、ここは謙虚な姿勢を貫くこととする。

下手な実力のアピールは不敬を買うし、今更遅いかもしれないが更に過酷な最前線に投入される可能性が大であるからだ。

何より神に呪われた宝珠を認めるわけにはいかない個人的事情もある。

 

「最終的には、一定数による適切な航空支援と連隊の巧みな防御戦闘の賜物だと思います。また指揮官以下の将兵達の働きがそうさせたと小官は愚行致します。」

 

私は、自身の話から逸らす様に連隊の勇戦の賜物であると評する。

 

「お世辞が上手いな少尉は。」

 

「いえ端的に事実を申したまでです。」

 

少なくとも、その通りだと判断できる。

結果として魔導師による航空支援が功を奏したと言えども、その時まで連隊が壊滅せずに、防御陣地を守り抜いたからだ。

 

それを認める様に魔導師アデルナ・ジングフォーゲル中尉が話に加わる。

 

「連隊長は、歩兵出身で防御戦の名手ですからアルサス紛争でも活躍しましたからね。」

 

「中尉もおだてるなよ。何も出ないぞ。」

ジングフォーゲル中尉が微笑みを浮かべながら連隊長と談笑するのを他所にし、私はまた頭の中で引っかかり覚える。

 

ゴットハルト・ハインリィツィ大佐……

歩兵出身……防御戦の名手……

 

複数のパズルが合わさり、そして閃くように思い出す。

 

そうか、思い出したぞ。

彼は、前世の第二次世界大戦において防御戦の名手として、良識ある軍人として、その名を刻む一人の将軍。

 

ドイツ陸軍上級大将ゴットハルト・ハインリーチだ。

 

ゴットハルト・ハインリツィ 概説

 

ドイツの軍人であり、最終階級は上級大将。史書では姓をハインリーキ、ハインリーチなどと表記することが多い。

 

彼は1886年12月25日、東プロイセンのグンビンネンに住むルター派の牧師の息子として誕生した。

 

ハインリツィ家は元々12世紀以来の伝統ある軍人の家系であり、彼自身はその伝統に従って軍人となる。

 

その一方で彼自身は父親の薫陶を受け、礼拝を欠かさない敬虔な信仰心を常に抱いており、これが彼自身の高い倫理を併せ持つに至る。

 

この幼少期に育まれた精神が「ドイツ軍の良心」ともいうべき人間に育つきっかけになる。

 

第一次世界大戦が勃発すると、歩兵部隊の指揮官や参謀として活躍、その後も順調に戦歴を重ね、1941年6月の独ソ戦開始時には第43軍団長として激戦を戦い抜くことになる。

 

ちなみに信仰心厚い彼はナチスの非人道的な政策にはなじめず、また同党からの入党勧誘も頑なに断り続けていた。

また独ソ戦での、祖国の苛烈な占領政策は大いに彼を憤慨させている。解放という大義名分からは、程遠い殺戮と収奪は彼の倫理観から見れば、悪であるからだ

 

彼の風貌は正直に言えばパッとしない。軍人より先生といったような印象がある。

 

また常に身なりにはほとんど気にせず、古いコートや服装のままでいたので、副官はしきりに忠言を行ったが、「何のために?」といって気にも留めなかったとか。

 

その風貌とは裏腹に勇猛な指揮官ぶりから彼の部下たちは誇らしげに、彼を良く思わない者達は悪意を込めて

 

「ウンザー・ギフトツヴェルク」(意地悪な小男)」と呼ばれている

 

彼の戦歴を見れば分かる通り、彼自身は前半戦においては主流である戦車を抱える装甲部隊の指揮官ではなく、歩兵部隊の指揮官として非常に地味であったと言えるが、そこに彼の真骨頂がある。

 

防御戦の才を示す場面は、敵であるソ連軍の大反攻から始まることになる。

 

真冬の中の大反攻でドイツ軍は千銭崩壊の危機に直面しており、そのさなかに第4軍司令官となったハインリーチは自軍の10~12倍もの大軍と対峙することになった。それに対して、ハインリーチがとった戦法はこうである。

 

まず自軍の陣地を二重三重にし、ソ連軍が砲撃を開始する直前に前線部隊を後方に陣地に下げて、砲撃が止むとすぐに前線陣地に戻して無傷のまま迎え撃つ

 

言うのは簡単であるが、実行するのは極めて困難である。

 

指揮官は前線からの様々な情報を勘案し、そしてタイミングを見極める高度な判断力が要求されるが、ハインリーチはこの面においては比類なき将才の持ち主であった。

 

かくして彼は見事ソ連軍の攻勢をはね返すことに成功した。

 

しかし、彼自身は栄光と称賛を浴びることは無かった。

前述のことから彼はヒトラーから疎まれていたのである。

 

それでも彼は黙々と自らの任務と責務を全うさせた。

1943年、いよいよソ連軍の反攻が本格化し、ドイツは全線戦からの退却を余儀なくされる。この時、ハインリーチはロシアの古都スモレンスクの破壊が命じられた。

 

しかし、彼は命令に唯々諾々と従うことなくガン無視した。

 

彼曰く「スモレンスクに火をかければ、私は私の部隊をこの町を通って撤退させることができなかったろう」と十分な軍事的合理性をもって主張。

 

流石にこれを処罰することはヒトラーをもってしても不可能であったが、「懲罰」は目に見えて行われた。

 

彼は「病気療養」を名目に半ば強制的に軍司令官の任務から遠ざけられたのである。しかし、それでも戦局は彼の才能を必要としていた。

 

ソ連軍は遂に大反攻作戦「バグラチオン作戦」を開始、彼が指揮していた第4軍を含めて、ドイツ軍は壊滅的打撃を受けて敗走する。

 

最早戦況はドイツに絶望的な状況で本土防衛戦へと移行する。

 

彼を今まで『冷や飯喰らい』を喰らわせたのを忘れたようにヒトラーは再び彼を起用し、最後の決戦に挑む。

 

全盛期からみれば、既に小国以下の戦力しか持たないドイツ軍は、風前の灯だった。

 

ハインリツィは「我々はせいぜい数日間、戦線を支え得る兵力しか保持していない。そしてすぐに終わりを迎えることになる」とハインリツィは、ヒトラーに対して諫言するが、ヒトラーは必勝の信念で何とかしろと非合理的な精神論を打ちまくり、強行する。天を仰ぎながら、彼は最後の戦いに身を投じる

 

1945年4月16日 遂にベルリン前面のゼーロウ高地においてソ連軍は最後の大攻勢を開始した。

 

ハインリツィは既に前線からの数々の兆候から恐るべきことに正確にタイミングを把握しており、ここでも彼がこれまでに駆使した戦法を活用して、またも10倍以上ものソ連軍戦力を2日間食い止めることに成功した。

 

たった2日間だった。それはまさにドイツ軍の現状をハインリーチが正確に洞察した通りの限界でもあり、このゼーロウ高地の戦いはドイツ軍最後の煌きとなった。

 

彼は最早戦局は決したとはっきり判断しており、ヒトラーからの死守命令を無視して、部下の将兵をこれ以上無意味に犠牲にすることなく、西へ脱出させる計画であった。

 

もしここでベルリンに留まって戦い続ければ、将兵にも市民にもより犠牲を出すだけで僅かな時間と引き換えにもたらされる損害はより甚大なものになることになる。

 

報復に燃えるソ連軍ではなく、「戦争のルールを知る」西側連合軍に降伏させて、部下たちの将兵を生き延びさせることが彼にとっての一番の責務であったのだ。

 

前線からの報告で最早総崩れとなったことを悟ったハインリツィは遂に西方への撤退を独断で命令した。参謀は命令違反となることを理由に懸念を表明したが、彼はこうきっぱりと断言した。

 

「私はこれ以上、自殺的で無意味な死守命令を下すことはできん。そのような命令を拒絶することは、部下に対する私の責任であり、ドイツ国民に対する責任でもある。そして神に対しても」

 

ハインリツィのこの命令を知ったカイテル元帥は激怒して、彼に対する処罰を持ち出して命令に従うよう強要したが、彼の信念は揺るがない。4月28日、遂に彼は軍集団司令官の任を罷免されることでその軍歴を終わらせることになった。

 

それでも彼にとって幸運であったのはロンメルの副官から忠告を受け、そしてヒトラーが間もなく死に、祖国が降伏となったことで理不尽な形で命を奪われることなく生き延びたことであった。

 

そして第3装甲軍も第9軍の残存兵力は前線指揮官たちの奮闘もあって、西側連合軍へと降伏して多くの将兵が無事戦後を迎えることに成功したのである。

 

ハインリツィは常に高い倫理を持って、個人としての善悪の価値判断基準を強固に兼ね備えた当時としては希有なドイツ軍人であった。

 

日本では、戦車指揮官より地味な歩兵部隊指揮官であるため、日陰に隠れるが理想的な軍事指揮官として評価されるべきだろう。

 

もし世界線は違えど、もし御本人であるならば、今までの疑問に辻褄はあう。

 

階級は違えどハインリツィの才覚を持ってするならば、可能と思えた。

 

過酷な状況、限られた兵力であっても軍事的合理性で持って対処できる名将であるからだ。

 

「小官はジングフォーゲル中尉の言に同意します。連隊防御陣地の築城……防御戦闘における適切な判断と戦闘手順は、大いに評価できるものです。」

 

「特に各部隊の相互連携を可能にした縦深陣地を考案し採用したのは、類稀なものだと小官は認識しております。」

 

私自身は、上空から連隊陣地を俯瞰して見ていたが、あれは大戦を経てないこの世界からすれば、画期的すぎるものだった。

 

しかしハインリツィ大佐が過去のアルサス紛争から経験し、研究したものを形にしたものであるなら合点が行く。

 

アルサス紛争では、帝国側は多くの陣地を活用した防御戦闘を行なっているため、本格的な大戦を経験していなくとも土台となる基礎は十二分にあると判断できた。

少なくとも似たようなものはできるはずだ。

あの伝説的なまでに強固な陣地と類似する形で。

 

白リン弾の使用も彼の判断によるものだと考えられなくはない。

 

しかし私の考えに反して、ハインリツィ大佐は意外な言葉を漏らす。

 

「もっともな評価で喜びたいが、あの防御陣地を考案したのは、私ではないのだよ少尉。」

 

「えっ……そうなんですか。」

 

「そうだ。確かに防御陣地のコンセプトを提示し指導したのは、連隊長の私であるが……明確に形にし、戦術上の全般指導を行なったのは別にいる。」

 

「それは誰の事を指すのでしょうか、連隊長。」

 

「うむ……彼は連隊きっての優秀な参謀なんだがね。そろそろ本部に来るはずだが……」

 

そう微妙な濁しをハインリツィ大佐が言うのと前後して、「入ります。」との声が天幕の外から聞こえる。

 

この声は、私には耳覚えがあるものだった。

 

「入りたまえ……中佐。」

 

私は、視線を天幕の出入り口の幕に向ける。

幕を潜り、入ってきた人物は想像に及ばない者だった

 

なん……だと……

 

私はそれを見て、絶句する。普通に考えてありえなかったからだ。

特に欧州における軍事国家 帝国においては。

 

そんな……馬鹿な……

 

私の中で、明らかに動揺しているのが、よくわかる。戦闘中以上では平静を保っていたのにだ。

信じられないほど狼狽する自分が、そこにいる。

 

それだけに目の前の光景は、ショッキングなものだった。

 

「少尉、紹介しよう。」

 

ハインリツィ大佐が紹介する素振りを見せる。私はそれどころではなかったのだが。

心中に巻き起こる混沌を抑えるのに必死だったからだ。

 

ありえない、何故ここに、常識的に考えてみろ、しかし目の前の人間は、明らかにそうだろ、直感だけで信じるのか、根拠はどこだ……

 

様々な考が浮かぶが結論が出ない。

心境に整理がつかない。呼吸が浅くなる。

心臓の鼓動が早くなる。

 

そんな私の心境など知るよしもない大佐は、彼を紹介する。

 

「彼は、イトウ・カイジ中佐。元は参謀本部の作戦課にいた事もある極めて優秀な参謀だ。今は第1大隊長と連隊野戦参謀を兼務して連隊を支えてくれている。連隊の防御戦術を考案したのは、彼だよ少尉。」

 

私は、心中で叫ぶ。

 

明らかに、日本人ではないか‼︎

 

しかも佐官で、しかも参謀本部で勤務したと‼︎ しかも作戦課だと‼︎

 

そして、連隊の防御戦術……あの「パックフロント」紛いを作ったのも、彼であるのか‼︎

 

一体全体、どうなっていいるのだ ‼︎

誰か、説明してくれ ‼︎

 

彼女の心中で巻き起こる混沌と新たな疑義の波紋は別として、異邦人である両者が初めて対面した瞬間であった。

 

この対面が、この世界でどのような変化をもたらすのか、この時点では誰も知らない。

 

それは当人達にとっても同様だった。

 

 

 




ようやく、両者が出会いました。それだけなんだけど。
あと、ハインリツィ という軍人がいた事を覚えてくれたら、作者は嬉しいです。

あと、色々なんか語ろかと思ってましたが、やめときます。
更新は頑張って行きたいですね。以上、解散。
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