戦場黙示録 カイジ 〜 ザ・グレート・ウォー 〜   作:リースリット・ノエル

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第5話 地獄の釜Ⅴ

進撃してくる強力な敵突撃部隊を完膚無きまで叩き潰すには、どのような手段を講ずるべきか。

 

自らは連隊規模で、敵が率いる二個旅団相当の戦力と殴り合って勝利を収めなければならない。

 

大体、戦争において防御側というのは戦力的な数では劣勢というパターンは常に付き纏いがちだ。

 

そして敵は攻撃3倍の法則に基づき、戦闘において有効な打撃を与えるべく相手戦力に対し3倍の戦力を準備するものである。

 

人類が長きに渡る戦争の歴史で育んだ戦場の法則の1つである。

 

今回の戦力比率も大体1:3である。

新手がくれば、またこの比率もさらに広がるだろう…嫌な話だ。

 

もちろん限られた戦力の中でも切れるカードや方法は幾つかある。

 

今回の陣地防御戦における場合から見れば、3つの対処法が浮かび上がる。

 

 

1つ目は後方に控える砲兵部隊の支援射撃。野砲、榴弾砲による突撃破砕射撃は障害物が限られている平原地帯では非常に有効的。

 

特に高精度、高威力を執拗に追求した帝国の野戦砲は防御戦において包括的な定点射撃も実現可能だ。

 

こういった塹壕陣地戦ではセオリーな手段である。

 

特に自分達の部隊の両翼に展開する師団砲兵も限定的に扱えれば敵部隊に対する阻止火力として大いに役立つだろう。

 

 

2つ目は、航空支援による制圧防御。

これが一次支援だけでも出来ればグッと楽になる。

 

航空機による地上攻撃力が強力かつ効果的なのもそうたが、味方の航空機が飛来し自分の部隊を援護してくれている現実が兵士にとって強い励みになる。

 

空からの守りの手は激しい戦線で戦う将兵にとって大きな精神的支柱となる。

何かあれば崩れやすい兵士達の不均衡な戦意を保ち、時に高めてくれる役目を果たす。

 

部隊指揮官からすれば戦力的余力・戦闘における継戦持続力の確認になる。

 

だが航空優勢がどちらにあるかは微妙で不透明な点があるのが気掛かりだ。

 

 

3つ目は、戦車中隊・突撃歩兵部隊を主軸とした機動防御戦の展開。

これは、敵攻勢部隊に対し、現在行っている遅滞防御戦から転換し、機動防御戦で以て敵部隊に意図的な消耗を与えつつ、部分的な突出部を形成するという事だ。

 

防戦一方の我が部隊に一時的な優勢状態を構築する事を旨とするが、これはリスクが高い。

 

わかっているだろうが、自分の受け持ち区域の防御陣地やら戦線を守りながら、攻勢に打って出よと言うんだから戦術上難しい手段だ。

しかも倍近い敵に対してだ。

 

攻撃こそ最大の防御と誰かが言っていたが、それは口で言うほど簡単ではないし、難易度も遅滞防御戦に比べ爆上げである。

 

やり方はざっくばらんに言えば、敵攻勢部隊の前進速度を持てる限りの防御火力で、鈍化若しくは阻止して攻勢を短時間の間頓挫させる。

 

そして敵部隊の側面ないしは、敵各部隊間の隙間など脆い部分に対し機動力を持った戦車部隊、突撃歩兵部隊で持って集中的な攻撃をかけ敵部隊を消耗させ、最終的には反包囲戦の如く殲滅して戦線に楔を打ち込もうというものだ。

 

これを超越攻撃、逆襲攻勢とも言うのだが、あまりに危険、諸刃の剣である。

 

ただでさえ、台数が限られている虎の子の戦車部隊を防御戦から抽出しなければならないし、機動防御戦に追従できる練度を持った突撃歩兵部隊も僅かにしかいない。

 

部隊の半分近く予備役中隊と陸軍教育部隊で形成されてる連隊だ。練度なんてお察しだ。

 

寄せ集めの集団であり不安事項を幾つも抱えている連隊が機動防御戦を展開したらどうなるか、結果は新兵でもわかるだろう。

 

よくて部隊の半壊、全滅を引き換えに敵にそれなりの損害を与えるのみ、悪くて何ら有効な打撃を与えないまま、返り討ちにあって終わるかだ。

 

今の部隊ではあまり使いたくない戦術だが、状況によってはやらざるを得ない選択肢として残される…

 

それ以前に俺らのお上たる帝国軍参謀本部から遅滞防御から機動防御戦に切り換えるとのお達しが来ているから、避けれない現実を受け止めざるを得ない。

 

ああ…いやなものだな…だが条件を整えれば、いけないこともない。

勿論、かなりリスキーである事は否定はしないが…

 

ただ、それが使えるのかどうか。

効果を発揮できる状態かはまた別問題である。

 

まずは順序を追って確認しよう。

 

「敵攻撃部隊との彼我の距離、4500を切りました!」

戦闘指揮所内の通信手から敵部隊との接敵カウントダウンが伝えられる中、カイジは戦闘態勢移行前に通達していた支援要請の可否を確認する。

 

「連隊両翼に展開する味方師団に打診した支援射撃要請は受理されたか?」

 

「連隊本部から両師団本部に確認したところ…」

確認をした通信士官の言い淀んだ姿勢からあらかた内容に予想はついた。

 

「段階的な遅滞防御を実施中であり、弾力的な火力運用の余地があれば適切な時期に実施をする…との事です。」

 

これは要約すれば「こっちはそんな支援する余裕はない。」という断り文句だ。

軍隊というのはいちいち言い方がややこしく捉え方が難しい。特に陸軍ときたら肩苦しい事この上ない…

 

なんなら、スパッとはっきり「そんなもんは無理だ!今度にしてくれ!」と言ってくれた方が楽なんだがな…

 

少々イラつきながらもカイジは次に南部方面航空機動支援艦隊に要請した航空支援は受けられるか確認したが…これも

 

「支援優先目標から順次、適切な対応をしている為、しばし待たれたい。現情勢下では各現場指揮官、部隊の努力で防御戦線で維持せよ。」とお断りの通達を頂いた。

 

「やっぱりなぁ…」

 

心中落胆しながら、陸軍に比べたらまだ空軍の方がわかりやすいな…文言が…と思いながらカイジは呟く。

 

「どこも予約がいっぱいのようですな。まぁ、わかりきっていた事ですがね。」

 

「そりゃ、そうだ…簡単に支援を約束してくれるほど俺らの軍は優しくないさ…」

それもそうでしたなとヴォルフは答え、カイジは小さなため息をつく。

 

飽和状態の戦線でたやすく味方の支援を受けれないとわかっていたが、わかっていても支援を受けれない現実はいささか身に堪える。

 

カイジは頭をもたげながら、結局は現場の部隊で何とかせざるを得ない状況を受け入れる。

 

わかっていたさ…だから限られた環境で手筈は整えたんだ。

 

カイジが頭をもたげながら、やるしかなかろうと決心を固める。

 

ヴォルフがカイジの肩を叩きながら語りかける。

「それで、どうします。大隊長?」

 

「決まってるさ。プランBで行く。」

 

「了解。ではメーベルトの兄ちゃんに手筈通りにと伝えます。」

 

「ああ…よろしく頼むよ。」

 

さて、まずは第一幕だ。

願わくば、第一幕で閉幕とならないように…

 

「敵攻勢部隊、距離3500を切りました!目標前衛部は、まもなく突撃破砕線に突入します!」

 

やれることをやり、繋げてやるさ。

 

「第1砲兵大隊、射撃準備完了!各歩兵中隊の火力投射準備よし!いつでもいけます!」

 

通信士、伝令達の報告が戦闘指揮所に矢継ぎ早に入り、開幕準備は整う。

 

「カルペン少佐より。各戦車部隊は配置転換完了、各大隊すべての準備完了。大隊長に次の指示を乞うとの事。」

 

「距離3000を切ったら砲撃開始だ。火力調整会議で通達したとおり、代用品の効果範囲を最大化するために弾幕射撃ではなく精密射撃で行うようにと伝えろ。」

 

俺は未来を…明日を繋げる!




大分、間隔が空いてしまいました。
言い訳なんですが、仕事の事で中々余裕がない状況が続き手をつけれてませんでした。
他の投稿者みたいにペースを一定に上げたいのですが…現実はうまくいかないですね。

文章も稚拙な面が目立ち、わかりづらく悪筆ですが御容赦下さい。
でも、嬉しい事に評価バーに色がついていて嬉しかったですね。
やっぱり、見てる人がいるとゆうのは気持ちが高ぶります。

投稿は遅いですが、気長に見てくださる嬉しいです。
質問やこの用語の意味は何?的な事があれば、いつでも受け付けています。宜しくお願いします。

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