タイトルの読みは、”ジャック”と”クイーン”です。

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 思い付き、短めです。
 短編どうぞ。


”邪鬼” と ”姫”

「.....................」

「.....................」

 

 緊張した雰囲気。さながら張りつめた糸の如く。

 

「.....................」

「.....................」

 

 にらみ合いを続ける両者。互いに一歩も譲る気配はなく、その瞬間に全てをかける覚悟をその目に宿して――――――

 

勝負ッ! セットスペル!!

『幸符「ハートの9」』!!!」

「スペードの(キング)()()()だ」

「ぐああああああああああ!!!」

 

 

 勝者 森近霖之助

 

 

「ほぼ負けが確定してたくせに、五十秒も使うんじゃないわよ。」

「はあ、いい加減弱いカードを最後まで残す癖をどうにかしなさいよ。頭が弱いわ」

「もっぺん()()()からやり直せー!」

「言われなくても私が最下位なことくらいわかるさ! 香霖よこせ! 私が切る!」

「...商売道具を乱雑に傷つけたりはしないでおくれよ」

 

 魔理沙が香霖から(奪い)取ったトランプの束を、とても慣れた手つきで切っていく。

 空中でのリフルシャッフルをサッとカッコよく終わらせる姿が、()()()と重なった。

 

「にしても、針妙丸は意外と強いのね。大富豪」

「ん、まあね♪」

 

 もちろんです、プロですから――――――流石にこの楽しい場では話しづらい()()だから、それに繋がる言葉を飲み込んだ。

 どうせこの後には宴会があるだろうから、そこでお酒でも呑みながらぶちまけるとしよう。

 

「っしゃ! 配るぞ~!」

「強いのを頼むわよ魔理沙」

「あ、ジョーカー一つ頂戴。」

「ご注文は香霖に頼むぜ」

「はいはい。どうせ貧民だからね、僕が貰っても富豪の霊夢に渡さないといけないからね」

 

 私、針妙丸が大富豪。

 霊夢が富豪。

 アリスが平民。

 霖之助さん(霊夢に名前を聞いた)が貧民。

 んで、魔理沙が大貧民。

 

「ふはははは! 魔理沙! (クイーン)だ! (クイーン)をよこせ!!」

「私は最初の引きだけは悪くないからな...最初だけは...」

「アリスは相変わらず頭を使うカードが多そうね」

「そういう霊夢には高いだけの数字が集まってそうね」

「...勘弁してほしいわ。高いだけの数字に役割はないもの。高いものが集まるなら現金にして欲しいわね。」

「...あまり面白味もなく、低いカードばかり掴まされる僕の身にもなっておくれ」

 

 結局、この日の私は二回だけ都落ちして大貧民になったが、それ以外は全て富豪か大富豪であった。

 ふふふ、我こそが小人族の末裔、少名針妙丸である。控えおろう善きに計らえ。

 

 

 

 

 

   ×   ×   ×   ×

 

 

 

 

 

「...よし、今日はここで稼ぐか」

「おうさ」

 

 今回来た街は、そこそこ大きな規模の賭け場があった。私たちが求める場所もあることだろう。

 

「よし...」

 

 

 ガチャ カランカランッ

 

 

「失礼、やってますか?」

「嬢さん、ここはただの飲み屋じゃ...」

「わかっています。トランプは何処です?」

「...あちらに」

 

 いつものやり取りを経て、私たち――――――正邪が前を行き、私こと針妙丸がその後ろについて歩き、

 おもむろに一つのテーブルにつき、その場にいた男たちに話をする。

 

「大富豪、よろしくて?」

「おう嬢ちゃんたち、賭けか?」

「よろしくて?」

「...いいだろう」

「やめとけ嬢ちゃん、泣いて帰ることになっても知らんぞ?」

「...望むところですわ」

「言ったな? ()()まで帰さんぞ」

 

 飛ぶ、とはお金が底をつきて続行不可能に陥ることらしい。

 最近こういうことについてくるようになった自分ですら、以前に見たことのあるやり取りだ。

 隣の正邪は勿論のこと、この程度のことでビビりなぞするわけがないよ。

 

「お願いします」

 

 こうして、いつも通りに賭け大富豪が始まり――――――

 

 

「”ジャックダウン”。次、出せませんよね?」

「”クイーンボンバー”。8」

「「ぐぬぬ...!」」

 

「革命だ! 都落ちしろ!」

「残念、革命返しです」

「あなたは上がらせません。5スキップ」

「「ぬぬ...!」」

 

「上がり」

「上がりです」

「また大貧民...」

「くそ、貧民の俺が何とかしないと...!」

 

「上がり」「上がりです」「上がり」「上がり」

「”ジャックダウン”」「”クイーンボンバー”」

「...飛びだ、クソッタレ...」

「........................」

 

 

――――――いつも通り、正邪が相手の一人を飛ばして終了する。

 今日は三時間十五分か、ちょっと早いかな。

 

「ありがとうございました」

「ありがとうございました。それでは失礼します」

 

 お金は一ゲーム終わる毎に支払われていたので、未支払いを強行されることもない。その程度を、こちらの正邪が対策していないわけがない。

 正当に勝つことで手にいれたお金を手に、私と正邪は立ちあがり、その場を後に――――――

 

 

「待ちな」

「このままただで帰ろうってのは、()()が良すぎるぜ、嬢ちゃんたちよぉ」

 

 

――――――したかったなあ...はぁ。

 

「...大男たちが寄ってたかって、何か用です?」

 

 さっきまで貧民だった男ら二人に、気がつけば他の席の奴らまで集まって、私と正邪を取り囲んでいた。

 ...どこもかしこも、変わんないなあ...

 

「イヤー勘違いするな。悪いのは嬢ちゃん達じゃなく、俺らの運なんだ。そしてそれは、本来なら神に向かって因縁つけるべきことだってことくらい、ヨーくわかっとる」

 

 恐らく、この場でのドンであろうとびきりの大男が、正邪に向かって語りかける。口にネバネバした涎が見え隠れし、そこら中からヤニ臭さがする。

 不快だ。

 

「でもナー、この場に神はいないだろう?俺らの嘆きを受け止めてくれる存在は、どこにもいないだろう?

なら、誰がその役割を担うかなんて...一目瞭然だよナア?」

 

 大男の声に呼応するように、周囲の奴らも詰めてくる。

 既に距離的な警戒域は越えられていた。

 

「イケー!!」

「フゥー!!」

 

 ...本当に――――――

 

 

 ガシッ!

 

 

「ファッ!?」

「心の貧民、つかまえたー」

 

 大男の手が届く前に、正邪が大男の胸ぐらを先に掴み込む。

 

「軽い男を、あーらよっと」

「うわああああ!!」

 

 

 ト゛ト゛ト゛ト゛ト゛

 

 

「がっ!」

「ぎっ!」

「ぐっ!」

「げっ!」

「ごっ!」

 

 そしてその大男を持ち上げて、軽々と振り回して、近づいていた男どものちょうどアゴのあたりにぶつけ、一蹴。

 

「さ、行くよ」

「はーい」

 

 そしてその隙に、正邪の手に掴まって、一緒に出口に向かって走る。

 

「待て! こっから先は通さねえぞッ!!」

 

 たまに賢い奴が門番をしているときがある。

 そんなときは、

 

「...『後ろが、前(リバース)』」

「あ...あ? こっちが中で、あっちが外で...」

「はいお疲れさん」ポイッ

 

 

 ゴツンッ

 

 

「ぐはっ!」「イデッ!」

 

 正邪がよくわかんない能力で門番を混乱させている隙に、持ってた男を投げてぶつけ、ぶっ飛ばした横をすり抜ける。

 

べー、だ! 女が弱者で男が強者だと思ってるからそうなるんだよ。そんなの簡単に()()()()()()のにさー!

 じゃあな! バイビー♪」

「お元気で~」

 

 そしてそのまま、とんずらこいて街を後にする。

 

 

――――――本当に、変わらない。

 

 

「どうやら、姫サマもこの仕事に慣れていただいたようですねぇ」

「...そうかな?」

「ふふふ。今貴女、何処に行っても変わらないって、思っているでしょう?」

「...そうだね。うん、思ってる」

「慣れですよ、慣れ。このようなこと、飽きるくらいにはなんてことないんですよ」

 

 ...正邪はこんなことと言っているが、もし仮にいつか正邪に、

 

”そろそろ貴女だけでやってみますか?”

 

と問われたら、

 

”無理だ”

 

と即答するつもりだ。

 この大きな存在が、私の前にいてくれるからできる。怖さにも何にでも勝てるんだ。

 

「ふう...ここまでくれば大丈夫でしょう。いつも通り」

「うん、遅くないくらいで歩くんだよね」

「ふふふ...やはり貴女は聡明だ。飲み込みが早い」

「どうもー♪」

 

――――――退屈だなーと、木陰で一人天下状態だったとき、突然現れて、手を引いてくれた。

『大きなことをする、助けが必要だ、協力して欲しい』

 その言葉に従い、()()()から来たという大きな彼女、正邪についていくことにした。

 そして、自分達のお金を稼ぐため、そして正邪曰く、

『弱者を虐げてきた強者のアゴに一発ぶちこむため』

 東に向かいつつ、この賭け場巡りをしている。

 

「にしても、姫サマは本当に(クイーン)を引いてくれますね。ありがたいです」

「正邪が勝つためになら、お安いご用だよ。正邪こそなんで毎回のようにスペードの3とスペードの(ジャック)が手元に来るの?」

「へへへ、あの二枚は私の反逆の象徴のようなものですよ? 謂わば眷属(けんぞく)。主の召喚には何度でも応じる奴らなのですよ」

 

 そう、これこそが、私たちが勝ち続けられる理由。

 正邪の手札には、彼女自身の一番得意とする強弱反転の”ジャックダウン”のスペードの(ジャック)と、絶対的強者を潰す”ジョーカー殺し”のスペードの3が必ず来る。

 私の手札には、任意の数字のカードを捨てさせる”クイーンボンバー”のQが必ず来る。

 これらを上手く使うことで、私たちは何処の賭け場でも、大富豪があれば勝ち続けられている。

 

「ではでは、次に向かう場所を決めましょう」

「はい!」

「地図に従うと、このまま真っ直ぐ東に行くと山道に当たりますね。北から迂回しますか?」

「こっちは大きな街が多いけど、大丈夫?」

「...人目につくのは避けたいですね。南には逃げてきたあの街がありますし...ではこの湖沿いの道にしましょう。いるとすれば暇な老人と釣り人たちだけでしょうし」

「賛成!」

 

 本当に、(ジャック)は正邪にピッタリのカードだと思うよ。

 反転する、強者に弱者の思いをわからせるってのもそうだけど...

 

「頼みますよ、()()()()!」

「...騎士?」

「うん! 私が姫サマなら、貴女は私の前を歩く騎士サマ!」

 

 正邪は、私にとっての(ナイト)だから。

 

「へへへ、じゃあ精々後ろから離れないでくださいね、姫サマ?」

「うん! 離れないよ!!」

 

 私は、貴女にとっての(クイーン)で、姫でありたくて、いつかは貴女を後ろから支える本当の王女(クイーン)になりたいから。

 

 そのときは一緒に、空から地上を見下ろしてやろうね――――――

 

 

   ×   ×   ×   ×

 

 

「起きろ~!!」

 

 

 ガタガタガタガタガタガタッ!!

 

 

「!? う、うわぁ!?」

 

――――――という夢を見たのだ。

 

「お、起きたか。

ハロー針妙丸。気分はどう?」

 

 上から見下ろしてくる霊夢の顔を見て思い出した。宴会があって、そこで昔の話をして、話し終わったところで潰れたんだっけ。

 

「は、吐きそう...」

 

 揺れからくる酔いと二日酔いがそなわり最強の二重苦を背負った。体が重くて立ち上がれない。

 

「今何時...?」

「ちょうどお日さまが頭上に見えるわ。ハローって言ったでしょ、もう昼よ。」

「うえぇ...おトイレ連れてってくれる...?」

「...まあ汚されても困るしね。ほら、掴まりなさい。」

「感謝~...」

 

 霊夢の指に掴まり、小人状態のままでトイレに直行。小人だと小さくて不便だけど、こういう楽さもあるし、

 何より...

 

「霊夢の指、暖かい...」

「気持ち悪いこと言うなし。ほら、ついたわよ。」

「うぐー...針妙丸、行きまーす。...ぼh」

 

 

 ...この暖かさは、何ものにも変えがたい宝物だ。

 

 

「...あ゛~、気持ち悪いー」

「そういえば、結局昨日はあんたが大富豪強い理由を聞いて無かったのよね。」

「ん、そうだっけ?」

「うん、教えて。」

「う~ん、別に大した理由じゃないんだけど...」

 

 少し照れる、でも自信満々に言ってやる、

 私の()()の理由を。

 

 

「”(クイーン)”は私のもの。誰にも渡さないから、絶対に私の(もと)に来るの。

 そして、いざ私がピンチになったとき。追い詰められて、形勢を逆転させなきゃいけないとき...

 そのときは絶対に、来ないかもという期待を裏切ってでも、”スペードの3”と”スペードの(ジャック)”が私の(もと)に来てくれるから。

 だから私は、怖さにも何にでも勝てるんだ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 拝啓 大きくて嘘つきでへそ曲がりの天邪鬼さんへ

 

 貴女という(ジャック)がいなくても、(クイーン)である私は元気です。

 貴女がいてもいなくてもそこまで変わらないので、顔を出さないで下さい。お願いです。

 一緒にトランプをやるなんて、もってのほかですからね。

 今後もあなたの素敵な一人旅が恙無く(つつがなく)続いていくことを祈っています。

 

 小さくて真っ直ぐな姫 より

 

 

 




 せーしんりょくを高めるんだ...!
 カードが自ら自分のもとに来るっていうのは、ギャンブル物語の典型でありロマンであります。ご都合主義とか言われますけどね!!
 ということで、トランプや能力の解釈がオリジナル二次設定の、針妙丸と正邪の姫騎士物語でした。
 お疲れ様です。ありがとうございました。

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