GGOでそれなりに遊ぶ、ちょっと変わった装備を使うプレイヤーの物語。


友人Aと作者の妄想を形にしてみた好き勝手やる系小説、原作と絡みつつひたすら主人公sがめちゃくちゃするだけの物語です。
キリトくん? ......知らん。

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性懲りも無く新シリーズを始めました、作者です。

今回がGGO、時雨沢さんの新シリーズだからと飛びついて四年......ついにアニメ化というモノを見てしまった以上書かずにはいられないでしょう!
というわけで始まります、どぞ!


アバンタイトル

 

「早く着きすぎたな......」

 

手元の時計を確認しながら、バーカウンターの椅子に飛び乗るようにして座る。身長が低いから仕方ないとはいえ、子供扱いされているようで恥ずかしい。

 

「いらっしゃい」

 

まさに西部劇のバーのマスターですと言わんばかりの風体をしたマスターの声を聞き流しながら、左手を軽く振ってメニューを呼び出し、フレンド欄を見る。

 

「まだオフラインか」

 

あいつはまだログインすらしていないらしい。バイトあるって言ってたし、なんかあったんだろ。

 

 

......となると暇だな。

 

「30分もあるし、一狩り行っときますか」

 

30分もあればMOBの一つや二つは狩れる。

多少遅れてもいいだろう、あいつはいっつも遅刻してるんだし。

 

「おい聞いたか、また出たんだってよ」

「へー、アイツか?」

「ああ、『ピンクの悪魔』さ」

「砂漠に出るっていう凄腕PKだろ? そろそろ討伐隊でも出そうなもんだけどな」

 

こっから一番近いのは砂漠......

 

「土産話にゃあ丁度いいかもな」

 

 

 

 

 

 

ふんふふふーん、ふんふんふーん。

聴いている神崎エルザの歌声に合わせて、鼻歌を歌いなから獲物を待つプレイヤーが1人。

乱立する岩の陰に隠れて、持っている銃を手持ち無沙汰に眺めていた。

子供と同じくらい小柄な体躯に、持つ装備品すらもピンク色に染め上げた彼女の名前はレン。

本人は知らないが、最近砂漠地帯で出没するという《ピンクの悪魔》の異名を持つ中級プレイヤーである。

その彼女の扱うエモノは《Vz61 スコーピオン》旧チェコスロバキアで開発された、9ミリ弾を使用するサブマシンガン。マガジンに入る30発を2秒で全て吐き出す速射性能と、全長27センチという小ささが特徴だ。

 

レン自身のAGI(素早さ)にガン振りしたステータス。そして高い速射性を誇るスコーピオン。さらに砂漠の夕日に溶け込む燻んだピンク色に、子供と見紛うばかりの体格。

 

その結果生まれた戦い方が、奇襲。

物陰で獲物が至近距離まで近づくのを待ち、タイミングを見計らい、飛び出す。ワンマガジン30発の9ミリを2秒で浴びせかけ、逃げる。複数人いても同じだ、なにせ彼女はこの銃を2丁買ったのだ、1人につき1丁で殺す。2人以上ならグレネードを使うなり逃げるなり諦めるなり。

 

PKの味をしめた彼女は今日も今日とて相棒のスコーピオン2丁を握りしめ、狩場で獲物を待つ。

 

(来た)

 

肉を食らうどう猛なウサギの前に獲物が1人。

思わず舌なめずりするレン。

武装など関係ない。

この場所を通るのは基本的にモンスター.、MOBを狩りに来ているプレイヤーがほとんど。実弾銃対策をしていることはほぼない。時たまレンと同じようにPKを企むプレイヤーもいるが、重くかさばる防弾装備は嫌われている事が多く、つけるプレイヤーは少ない。

足音を頼りに位置を割り出し、死角から顔を出して獲物を観察するレン。

 

(武装は実弾ライフル、他に武器は腰に拳銃。

防弾装備は無し、にしても変なヘルメット。

......うわあ、綺麗な髪、同じ女子かな?)

 

レンと同じPKらしく武装は実弾銃で固めた、レンより少し大きいくらいの体躯のプレイヤー。目を引くのは頭の大きさに不釣り合いなヘルメットくらいで、特に危険そうな様子は無し。

ヘルメットから覗く長い銀髪から、むさ苦しいガンマニアかゲーマーしかいないこのVRゲーム『ガンゲイル・オンライン』略してGGO には珍しい女性プレイヤーだとは思うが、レンにとってはもはやどうでもいい。

 

(よし、殺せる!)

 

彼女の尺度は殺せるか否か。

踏みしめた編み上げブーツが砂をかみ、身体を物陰から飛び出すのを今か今かと待ちわびる。

 

通知がきたのか立ち止まる標的。

 

(今だっ!)

 

物陰から飛び出し、愛銃スコーピオンを構える。距離はおよそ10メートル、プロアスリートも真っ青の身体能力を持つレンなら約2秒とかからない。

 

「やあああああああ!」

 

奇襲に叫ぶのは悪手だが、気づく頃にはもうレンのキルゾーンの中だ。

 

そう、いつものように殺せる......筈だった。

 

 

銃声1発。

 

 

「な、にが......」

「FPSプレイヤー舐めんな」

 

腰のホルスターから拳銃を抜き、振り向きざまの1発。《H&K USP》から放たれた9ミリ弾がレンの小さな頭を正確に射抜き、貫通して赤いポリゴンを散らす。

 

もちろん頭を撃ち抜かれて無事なプレイヤーなどいない、ましてAGI寄りのレン。

HPを全損し身体が赤いポリゴンになって散った。後に残るのは、ランダムドロップで残ってしまったウサギの装飾のついたベレー帽。

 

興味無さげにレンを殺したプレイヤーはそれを摘まみ上げると、ストレージに押し込んだ。

 

 

 

 

「なんでわかったのさーーーー!! ムカつくぅ!」

 

それから暫くして、レンは首都《GBCグロッケン》で叫んでいた。ピンクの服装だと目立つのでちゃんと今は緑の野戦服に着替え済みなうえ、目深にフードまで被っているとはいえ、叫べば目立つ事この上ないのだが本人はそれを考えもしていなかった。

最近腕を上げていると自負していた彼女、PK人数はもうすぐ50人に差し掛かろうというところで、突然の死。

 

完全に死角から、そしてあと1秒もあれば相手を殺せていただけに余計に悔しい。

 

「ああもう、むしゃくしゃする!」

 

一つはトッププレイヤーの壁の高さに。

もう一つは自分が慢心していた事に。

次会ったらぶっ殺してやると息巻き、ふんすと両手を握りしめるレン。

 

「だったら、一杯いっとく?」

 

トントン、と不意に肩を叩かれる。

 

「ふえ?」

 

振り向くと、パックリと縦に割れた瞳孔が暗闇から覗き三日月が浮かび上がる。

 

「ぎゃああああああおばけえええええええええ!!!」

「いや違うから、待ってウェーイト! 」

 

余談だが、VRゲームを遊ぶために必要な筐体《アミュスフィア》にはSAO事件を踏まえてのセーフティーが設置されている。発動する条件は様々だが、短時間における心拍数の急激な増加も含まれている。

レンは未知との遭遇レベルの恐怖を味わった結果心拍数がうなぎ登り、あっさりとセーフティーゾーンを突破し強制的にこの世界からはじき出された。

 

「......き、嫌われた......」

 

そして、強制ログアウト通知が他のプレイヤーに行くことはない。

レンに声をかけた大柄な女性プレイヤーは肩においていた手をしばらく彷徨わせていたが、リアルでも言われたことのない物言いに崩れ落ちた。

 

それから数分後。

彼女は近くの酒場、待ち合わせ場所でクダを巻いていた。

 

「きいいいいいてよタフィ! 可愛い可愛いちんちくりんの女の子に嫌われちゃったああああああああああ!」

「いや嫌われるだろ」

「なんで!?」

「否だって......お前怖いじゃん」

「可愛いって言ってよ!」

 

ずずい、とタフィに顔を寄せる女性プレイヤー。しかし巨体が影になっているせいで猫目が浮かび上がりまるで化け物のようにも覚える。

一瞬、得体の知れない悪寒がタフィの背中を走る。いつもの事とはいえ慣れないと内心ため息をつき、目の前のこいつにどう伝えるかとしばし考え、

 

「まあ、......カワイイんじゃないか?」

「ほんと、やったあ! そうでしょそうでしょ!」

 

ガクガクと肩を掴んで揺さぶり出す、そのSTRにタフィの体が椅子ごとグワングワンと揺れる。

 

タフィの目の前にいる女性プレイヤー、《Rin-X》ことリンクスは世間一般で見ると可愛いとは言い難い。

身長は女子の平均のそれを凌駕する180オーバーにすらりと伸びる四肢、猛禽類のように鋭い目つきに、化け物じみた猫目。そして本人の癖なのか、笑う時は口角が人より釣り上がり、八重歯が隙間からきらめく。

 

一つ取ればチャームポイントになるのだが、なぜがそれを全部ごちゃ混ぜにしてしまったアバター自動生成システムを恨まずにはいられないだろう......本人を除いて。

別ゲームからのコンバートという事情もあるが、なぜか本人曰く『最高にカワイイ!』と宣い愛用。日々周りからの恐怖と物珍しさが混ざった視線と、主にタフィからの呆れ声を浴びつつゲームをプレイしているのだ。

 

「ところでなんの話してたんだっけ?」

「BoBだよBoB、バレット・オブ・バレッツだ!」

「ああ、公式大会のこと?」

「そうだよ......それの相談をしに来たんだろうが」

 

2人の話題に上がるBoBとは、予選を一対一による一騎打ち、決勝を30人のバトルロイヤルからなるGGO内公式大会のことだ。ゲーム内のトッププレイヤーが集まり頂点を競う、いわば世界大会のようなものだ。

GGO日本サーバーでは二回行われており、タフィ自体は参加したことはない。

 

「それで、相談ってなあに?」

「正直決勝は問題ないんだわ、バトルロイヤルなんていつもやってる事だし。問題は一騎打ちだ」

「へー」

「聞け!」

 

生返事をするリンクスに頭をグーで殴ったタフィ。だがグロッケン内は安全領域なのでHPはミリたりとも減少することはない。

 

「はぁ、それでALOやりこんでた私に?」

「一対一の決闘といえば中世ファンタジーと相場が決まってる、経験あるだろ」

「なんと酷い偏見......事実だけど」

「いいから教えろ」

「正直、あてになるとは思えないけど......相手の目を見ることかな?

目線をフェイクに使う狂人も居なくはないけど、ほぼゼロ。特に狙いを定めないといけない射撃ゲームなんだし、目線を見れば大抵避けられるよ」

「ありがと、参考になった」

「来週だっけ、頑張ってー」

「おう、予選二回戦位までは行ってやるよ」

「目標低すぎぃ!」

 

 

 



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