魔法科高校の魔宝使い ~the kaleidoscope~   作:無淵玄白

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前話投稿日は凛の誕生日……なんてこったぁああ!!! なんか在りし日の刹那と凛の生活とか書けばよかった……うっかりである。

まぁかなり前。PC版ホロウが出た後は、かなり広がりがあって先人たちの遺産とかあるからな。

例を挙げれば遠坂真弓とかは、結構いい感じの息子だなと思えた。凛と士郎の息子の場合、『どっち』に寄るかなんですよね。


第94話『九校戦――冬の妖精』

「見た事のない魔法陣。しかし再現したとしても『通りませんね』……」

 

「やはりか。彼の扱う魔術と我々の使う『魔法』とで、何が違うのか……」

 

 セイエイ・T・ムーン=遠坂刹那の正体が知りたくてUSNAと共同作戦を採った独立魔装の面々。隊長である風間は、その厳めしくも優しい顔をくしゃくしゃにしながら……結論を出す。

 

 

『何も分からないことが分かった』。実に哲学的な答えであった。

 

 コシチェイの12体目。アリーナ席に座っていたものを魔法陣の投射だけで殺したことを受けて、証拠回収の為に工事業者を装って、『犯行』を行った椅子だけを取り換えてきた。

 

 念入りに消したらしく魔力の残滓も何もなかったが、いわゆる『指紋』の動きだけは隠せず、更に言えば会場中に設置してあるカメラと個人所有の端末を利用する。

 

 『電子の魔女』と呼ばれる藤林響子の仕掛け、あの席の周辺にいた全ての携帯端末持ちたちのカメラを『勝手に起動させて撮影』させてもらっていたのだ。

 当然の如くハッキングのクラッキングであり、端末の乗っ取り及び電子情報の改ざんは、この日本でも特別の犯罪である。

 

 そうして見つけた魔法陣。見たことが無いものだった。古式に通じている専門家連中や、響子の『実家が得た知識』でも分からぬほどに精緻なものだった。

 

 無論、魔法陣の知識を知るものがあれば、それの一つ一つの要素を吟味していけば、どこが重要でどこが間違っているのか分かるが、いざ魔力を通していった時に重要な部分が枝葉末節であり、間違っている部分が太い幹であると分かる。

 そして、現在に至ると言うことである。

 

 独立魔装のスタッフ全員。無論、大黒特尉を除いての密談の結果は、先程と同じ『何も分からないことが分かった』。

 

 

コシチェイ(改造兵士)の遺体の検死結果ですが、五臓六腑の全てが焼けただれて、更に言えば脳髄すらも内部から『焼かれた』ようです。一条の若君(プリンス)の魔法とも違いますが、何とも不可解なものですよ」

 

「直接的な死因はそれか?」

 

「それだけならば、まだ生体としての機能を活かす働きはあったはずですけどね……いやはや医者としての知識を動員しても分からぬものがあるとは、正しく『魔法』(まじない)ですね」

 

 軍医として、風間に報告をあげた山中幸典少佐だが、電子カルテを片手にタッチペンで額を叩く様子が悔しげに映る。

 そうしてから大隊の副官役たる真田が口を開く。

 

「有体な考えですが、彼の魔術系統は―――、どうにも宝石を用いたものの多くが『自然現象』というか『陽性』の気質を持っているのに対して、それ以外となるとどこか陰性のものを持っていますよね」

 

「つまり?」

 

 真田の知見が説明されると同時に、会議室の大モニターに映し出される遠坂刹那の魔術行使の様子。

 新しいものでは昨日のモノリス・コード時点。古いものでは森崎家の息子を植物の使い魔で拘束しているものまである。

 これらは日本の諜報部門と深いつながりがある『黒子乃』家の息子の手で取られてきたものだ。

 

 更に言えば、響子にとって親戚であり『妹分』であるアンジェリーナ・クドウ・シールズとのモノリスコード後のキスシーンの写真まであったりする。

 それもまた『魔術』の発動であるが、それを大アップで見た独立魔装大隊の面子は、何とも言えない表情をしている。

 

 あの鉄面皮な柳ですら、こめかみの辺りをかいて空気を誤魔化しているのだ。

 

「あっついなー。御親類はいつもこんな感じで?」

 

「それはシルヴィア少尉に聞いた方が早いでしょうね」

 

 真田の茶化すような言葉で一端途切れたものの、真田は、己で言っておきながら咳払いしてから話す。

 

「ルーン魔術などの『刻印』を用いての『魔法』というのは、総じて『呪い』の類です。現に文献―――真実あやふやな北欧神話における主神オーディンは、ルーンを用いての『呪殺』を行えている」

 

「……『死のルーン』ということか。確かに、そう考えれば、遠坂刹那の使ったこれは『陰性』の魔術だな……」

 

「そして特尉のレポートによれば、遠坂刹那のルーンスペルの大半は、書き順と意味合いを知っていても通ることが殆どないとのことです」

 

「彼にだけ理解出来て彼にだけ発動可能な『魔法』か……」

 

 この場に刹那がいれば、それは当然のことであると言って退けて、懇切丁寧な説明をしていただろう。

 

 刹那の知るルーン魔術は、この世界のように『上っ面』だけを取り繕ったルーンなどではなく、原初十八のルーンと呼ばれるユミルと言う巨人から得たもの。

 時代が進んでクー・フーリンなどエリンの戦士達の時代に極まったものを、現代にまで伝えてきた末裔から教えられたものである。

 

 ……何故、そんな重要なものを師匠であるバゼットは教えてくれるのか、そもそも『オレンジ』が復刻させたルーン以上にそれは秘術中の秘術なのだから……。

 

 シチューをかきまわしながら聞いたことに対して―――執行者としての師匠であり、養母は―――。

 

『―――教えるのは面白いものです。エルメロイⅡ世が聞けば苦い顔をするかもしれませんが、『自分の分身』をこの世に残すようなものですから』

 

 薄く笑いながら、そんなことを言う養母に『子供は作らないのか』と聞いた。

 その時、相手がいるなどと答えてくれたならば、自分は養母の元から離れたのだが……それは無かった。

 

『つまらないことを考えない。美味しそうなシチューですが、食べ終わって一休みしたらば、いつもの訓練ですよ! 今日は一本取るように!!』

 

 そんな刹那の浅い考えを否定してくれたバゼットは容赦なく刹那を鍛えていくのだった……。

 独立魔装の内緒話を盗聴していたシルヴィアは、養母(バゼット)とどことなく似ている。と言ってくれた弟分のことを思い出して、そんな『記憶』を見たことも同じく思い出して苦笑に留めておくのだった。

 

「さてさて今のセツナ君は、なにをやっているんでしょうかね……」

 

 リーナとにゃんついているかなーと思っていたシルヴィアであったが、状況はちょっとばかり違っていた。

 

 

 † † †

 

 

「成程、三高も飛行術式―――マクシミリアンの『レオナルド・アーキマン』の術式を何とかフィッティングしようとしていたか」

 

「そのブレイクスルーとなったのがシャルルマーニュの十二勇士のひとり…だっけ? とにかく、その女騎士『ブラダマンテ』の愛馬ヒポグリフのイメージを想起させて、一色さんの飛行術式を安定させたのね……」

 

「これならば、パーソナルレッスンを許可するべきじゃなかったかな……いや、けれども、それでも、ううむ。悩ましいな……」

 

「結局のところ達也が同じく深雪相手にトーラス・シルバーを合わせようとしていたのと同じく他校も切り札として合せてきたわけですよ。どちらにせよサンプルの提出を求められたんだろ?」

 

 言葉の前半は正面にいる三巨頭に向けて、後半は達也に向けて―――その言葉に首肯して、恐らく決勝戦などでは使ってくるはずだと伝える達也。

 しかし、技術者根性の達也は、聞きたい事が多いようだ。

 

「飛行魔法は、トーラス・シルバーが発表するまで現代魔法で再現不可能な難題であり、古式魔法では幾らかの人間が出来ていたことだ―――その特異性の一人だったか刹那は」

 

「なんじゃねぇの? とはいえ……俺はお袋から伝えられたものを守っていただけだよ。『魔女』は箒を使って空を飛ぶものだからな」

 

「なんて単純な結論……それを『通せるのか』? 男であるお前が?」

 

「そうだよ。ただ一色愛梨に教えたのは少し違う―――」

 

 

 その言葉で、桜小路が証拠映像として撮っておいてくれたパーソナルレッスンの様子。

 最初に難なく『魔女の杖』を『箒』に見立てて飛んだ刹那に誰もが驚く様子。画面の中の人間だけでなく、画面を見ている人間達もである。

 

「飛行―――(ソラ)とは、古代エジプトの時代に現世と冥界との境と信じられ、そこに生きる鳥は『死後の魂を運ぶもの』と信じられていた。

 冥界の使者。いまや廃れてしまったが鳥葬という葬儀作法もあったほどだ。これはひとえに、渡りを行う鳥が不死の存在であるかのように、北半球から南半球への移動をしていた事への信仰でもある。

 特に白鳥は、不死性の象徴として冥界から舞い戻ってきている神々の化身―――神々の遣い。そう信じられてきた……とんでもない渡りをする鳥だからな」

 

 同様に、そういった神秘性を利用して『魔女は空を飛ぶもの』という世界全体に共通認識を植え付けたものは多い。

 

 スラブ地方の伝承『碾き臼の魔女バーバ・ヤガ―』が有名だろう。そうして魔女は、使い魔を箒に乗せて飛ぶ存在へとなっていった……。

 もっと言ってしまえば『有名アニメ映画』も信仰の元となっただろう。

 

「一色愛梨が飛ぶためには彼女が持っていた『信仰』を取り戻させる必要があった。シャルルマーニュ伝説における『あり得ざる幻想種』。ヒポグリフの『騎手』の『基盤』をな」

 

 滔々と『授業』を行う刹那は眼鏡を掛けながら画面の中の刹那を見ている。

 

 達也が画面の中の刹那を見ていると、ライダーのクラスカードを持って一色愛梨に近づく様子。

 

 そうして回想シーンが始まる……ホワンホワンホワントオサカ~……なんだか変な電波を受信したが、ともあれそういうことである。

 

 

 † † †

 

 

「私は……魔女よりも、そう……お母様が、良く読み聞かせしてくれたシャルルマーニュ十二勇士伝説の『ブラダマンテ』を想起します」

 

 

 月明かりと星明りの元、アイリス(菖蒲)の少女が語ってくれたものは、日本においてはメジャーでは無い。

 

 フランスと言えば『ジャンヌ・ダルク』『ナポレオン・ボナパルト』『マリーアントワネット』が有名だが、察するに一色の母親はフランス―――オルレアンとかブルゴーニュなどではない所の生まれなのだろう。

 ストラスブールの大聖堂は、いつぞやお袋と見た思い出の場所だ。

 

「ブラダマンテか、そう言えばクラウドの後の夕食会でも言っていたか……ということは、ロジェロの養父であるアトラントが持っていた半鷹半馬の幻獣『ヒポグリフ』だな」

 

「!! 慧眼ですね……私とお話しする殿方は、そういった話を振っても何だか興味なさげですもの、すごく嬉しかったです」

 

「そういう『家系』なんだ。特別なことじゃない」

 

 現代魔法の使い手である人間達からすれば、ヒストリエやマイソロジーに出てくる英雄というのは、ひどく眉唾なものだろう。

 比べようがない事であるが、ドラゴンスレイヤーの伝説、ギガントバスター(巨人殺し)の英雄などというのは現代の魔法師でも再現可能な『技術』と思いがち―――。

 

 だが、古代の英雄達は、そういった『範疇』に収まらないのだ。

 

 ともあれ喜色満面になる愛梨に苦笑しながら伝えてから、あの『ピンク髪』が借りパクしたままの状態で座からインストールされたら、どうしようと真剣に悩む。

 おのれフランス! 日〇の資産に集る毛虫め!! ……などと『自分の時代』とは違うことに今さらながら苦笑して、この2090年代の産業構造の転換の中、それでも人と人の結びつきの中で彼女にこの力の一端を授けるか。

 

 

「トーラス・シルバーの術式ならば、重力制御の改変で何とでもなる―――本当にいいんだな?」

 

「フィッティングは私では無理。もしかしたらば司波達也君ならばと思う―――けれど吉祥寺君の不興も買いたくないから」

 

 そもそもあのシスコンブラザーの事である。そんな深雪が不利になる様なことはすまい。

 

 栞の言葉で緊張した光井を見ながらも、もはや決めたのだ。何より……。

 

『さぁウイザードよ! アイリにクロウカードならぬクラスカードを渡すがよい!! 最近の『光の巨人』の如く、歴代の光の巨人の力でフュージョンライズやフュージョンアップするがごとくアイリを飛翔させてみせよう!!』

 

 などとガーネットが五月蠅すぎる。ギャラリーの殆どが、『しゃべる杖』が、どこの製品なのかを知りたがっているのだから、早めに切り上げるのもやむなしだ。

 

 望みのサーヴァントステータスを顕現させるべく、一応ブラダマンテ由来の『宝具』を周りに配置した上で、カレイドガーネットにライダーのクラスカードをインクルードさせる。

 

 その時―――アイリの中にある演算領域が活性化を果たして茫とした表情をして、虚ろな目を刹那に向ける。

 

 足元に展開される魔法陣。そして―――。

 

『余の『中』(うちがわ)に見えるぞ!! シャルルマーニュの勇士二人。桃色と金色とが馬を奪い合う様子が!! おのれ桃色め! 元々は金色の者のものなのだし、アイリのようながんばる少女には金色がよいのだ!! 退くのだ!!』

 

「――――ガーネット、一部基盤転写。ヒポグリフのデータだけをだ!!」

 

『まかせろ!! 『ヒポー……』とか呆れながらこっちに来たぞ!! 確保だ―!! 汝のあるべき姿に戻れ、クラスカード・ライダー! プリズマアイリVerフライングフォーム!!』

 

 第二魔法の真似事で、ガーネットに干渉。

 きゃんきゃんやかましく言いながらもあちらこちらで魔力のスパークが発生している様子。足元の魔法陣が正常に起動している様子だ。

 

 そして愛梨の中に『飛行』における『基盤』を定着させる。それは強固なものだった。よっぽど少女騎士ブラダマンテへの憧れが強かったんだなと感じるほどに、それは確かに刻まれた。

 

 魔術回路を愛梨の領域に接続しての作業が終わると周囲を跳ね回る様な電光の迸りは無くなり―――夜の静寂と人々の沈黙のみが降り立つ。

 

「ど、どうなの!?」

 

 沈黙を破る十七夜栞の心配した声。自分の時の魔眼の安定とも違う術理を前にして、驚いた様子であるが―――。結果は篤と御覧じろである。

 

 瞬間、眼を開いて微笑みを浮かべた一色愛梨は、助走も無く、ただ一蹴り―――大地を蹴りあげた。それだけで跳躍して、そこまでは普段通り。

 

 しかし、そこからが違っていた。宙を舞うエクレール・アイリの姿から宙を自在に移動する姿が誰もの眼に刻まれた。

 

「と、飛んでいる!! しかもみyu――――」

 

 既知であった光井の台詞を途中で遮る雫の手。誰も注目していないが、それでもナイスフォローである。

 

 優美な飛翔であり空中遊泳。その背中に灰色の猛禽類のような一対の翼が見える愛梨は違う意味での天女であった。夜空に舞い時間を呼吸するものの如く……。

 

 

「成功かの?」

 

「まぁな。後は現代魔法を使っても大丈夫だろう。彼女の中で『飛行』ということの『認識』は一段階あがったよ」

 

「結局、何をどうしたのじゃ?」

 

 純粋な疑問を出してくる沓子に何と言ったらいいか。いや、一つだけあるか。分かりやすい表現が……。

 

「誰もが一度は夢見る。空を自由に飛びたい想い。それを具現化しただけさ」

 

「タケコ〇ターか!?」

 

「まぁドラ〇もんはウチのスーパーエンジニアだから、どっちかといえば『エスパー〇美』かな?」

 

 言っておきながら違うと思えたので途中で変更したが、ともあれ―――、そうして飛んでいると最初の飛行では魔力調整が上手くいかなかったのか、降りてこようとしている様子で―――。

 

「セルナァアアアアアア!!! 一緒に夜空をランデブーしましょう!!」

 

 笑顔のままにただの夜空の散歩の御誘いだった……そんな誘いを無下にするように金色の翼を生やして途中で進行を止めるのは、終わりのないオフェンスに定評のあるリーナであった。

 

「オトトイきやがれ!! この泥棒猫!!」

 

「ドラえ〇んだって22世紀に嫁がいるのに、ミーちゃんと野比家の屋根の上でよろしくやっているんですから見逃しなさい!!!」

 

 マクシミリアンのヴィーナス・フェザーとこの世ならざる幻馬の翼とがぶつかり合って、かめは〇波でも撃つかのような二人の姿を最後に―――そこで映像は止まった。

 

 

 

 ……回想も終わる形であったが、誰もが何も言えない。というか何を言っていいのか分からない。

 

 利敵行為を責める? 美少女二人からの誘いを茶化す? ヒポグリフってどんな動物?……その答えには壬生紗耶香の持つ生きている剣である千鳥が『ピィイイ♪』などと鳴いて喜ぶ様子に納得する。

 

 古式の中の古式(オールド・オブ・オールド)幻想の中の幻想(ファンタズム・ザ・ファンタズム)……かつての魔法使いたちの御業を現代によみがえらせるとは、しかも達也の『開発』したものよりも、何となくであるが『魔法』っぽい。

 

 理屈ではなく『想い』を……憧れを世界に投射するのが刹那の魔法なのだろう……。

 

「で、俺は懲罰ですか?」

 

「許可したのは俺たち三人だ。責めるべきはまず俺たちだろう。しかし、司波のフィッティング以前からこんな隠し手を―――よく考えれば八王子クライシスでもお前達、遠坂とクドウは飛んでいたな……」

 

「超エキサイティンしすぎていて、忘れていたわね……」

 

 今さらな事実に三巨頭は、思い出してため息一つ。ともあれ、いま現在必要なのは過去へのことではなくて未来に対することだ。

 

 果たして、このまま行って深雪の飛行魔法で他の連中に戦えるのか……既に他の高校にもリークされただろう。それ自体は達也も織り込み済み。

 何より付け焼刃の飛行魔法でどうこう出来るほど、深雪の習熟は浅くない。しかし、それらの技をカード一枚で逆転した男が目の前にいるのだから対策が欲しいのだが……。

 

「その前に―――第六試合を見た方がいいですね。深雪も愛梨も―――『この人』の前では何もかも霞みますよ……」

 

 その言葉でモニターを付ける市原鈴音。映像が出る。そこには天女、天使に続く……『本物の妖精』がいた。

 ディープパープルの『光の羽翼』を背中に生やして滑空し、自在な魔力ベクトルで動き回り続ける妖精。

 

 それが明滅してホログラムと同じく不定形に変わる姿は在りし日の妖精族を思わせる。ミラージ・バットのフィールド全てに『魔力の鱗粉』とでも言うべきものを散らしていく……幻想の世界の再現。

 

 魔神殺しのダーナ神族…トゥアハ・デ・ダナーンが人の世(人理)に溶け込むために己を違う姿……妖精族(ダーナ・オシー)にしたように彼女は、ただのステッキをクラウ・ソラス(妖精光剣)を持つように圧倒していた。

 

 

 リズリーリエ・イリヤ・フォン・アインツベルン―――……錬金術の大家たる家の作り出したフェアリー・ウイングは、先の二人を前座にするぐらいには、とんでもなく『魔法』に近い『奇跡』だった……。

 

 

 元の場所。円柱の一つに着地したリズリーリエは、淑女のようにスカートの裾を上げて挨拶するようにしてから一礼した。

 その姿に……オヤジの記憶が重なり、紫色のコートを着込んだホムンクルスと人間のハーフの姿が映った。

 

 そしてこちらを見る姉貴……その表情は、まさしく『魔術師的』な表情であり―――それを直視した全員が肝を冷やす程度には、空寒いものを感じる。

 

 夏だと言うのに冬を感じさせる冷気を表情一つで作り上げたリズリーリエに対して……。

 

「リズ……」

 

「なんで十文字君惚けてるのよ!? どう考えたって反応が間違ってるわよ!!! この色ボケ巌!!! もうアナタは私が知っている十文字克人じゃないのね―――!!!」

 

 会頭の制服の襟を掴んで『浮気許さない』的に七草会長がぐわんぐわん振っても揺るがずにリズを赤い顔で見続ける会頭は、やはりちょっとだけ色ボケているのかな? とそう思わざるを得ないのだった……。

 

 風雲急を告げつつも、もはや決勝まで時間が無いことを知り―――それでも、深雪・愛梨にとって辛い戦いは幕を開けようとしているのだった……。

 

 

 そして……そんな風に緊張感を持っていたというのに……。

 

 

「セルナ―♪ 私の投げキッス受け取ってくれましたか? だとしたらば嬉しいですよ♪ お母様からの連絡で……、一度、屋敷に来てお父様やお兄様に会ってほしいです……♪」

 

『あいあむあどり~~~ま~~~♪ ひそむぱわ~~~~♪』

「みつけたいなぁあああ! かなえたいなぁああ!!!」

 

「アイリママからの評価値が爆上がり。何をしたの刹那くん?」

 

「四高の伊里谷先輩はとんでもない実力だ!! 司波さん、一色、五十嵐先輩のワンツースリーフィニッシュの為にも三高と共同研究しようじゃないか!!」

 

「なんて将輝は言っているけど追い出したければ追い出していいよ。何かお騒がせして申し訳ないです」

 

 などと気軽に一高テントに入ってきた三高ルーキーズの姿に誰もがあんぐりしてしまう。一番問題なのは、完全に愛梨を二位に就けようという意図の一条将輝の宣言である。

 

 まぁ五十嵐先輩も三位で終わりたくないと言わんばかりに拳を握っているので、どうなるかは分からないのだが――――。

 

 二番目に問題なのは、調子外れな歌を合唱するガーネットとトウコ……そんな2人(?)の歌はサビに入ったようだ……。なんだかリーナも歌いたそうな顔をしている辺り、歌は技術ではなく魂だなと思える。

 

 ともあれ―――そんな三高の姿に……。誰もがやんわりと拒絶するぐらいは考えていたのに、予想外な賛意が飛んできた。

 

「分かった。俺としても知恵を借りたかったからな。俺は賛成する」

「達也!?」

 

 一番最初に賛意を示したのが達也であったことに、刹那は心底驚いて思わず呼び掛けた。

 他の人間はそんな刹那に驚いた様子だが、達也は構わず無言で訴えかけてくる。

 

 しかし、録画されていた伊里谷理珠が最強の敵である―――そう端末画面で見せてくる達也は、この判断に賛成しろと言わんばかりだ。

 

 

 本当の意味で風雲急を告げてくれやがったのは、一高が誇り、世界に轟く魔法師界の魔工師……古臭い言い方で言えば『付与魔術師』(エンチャンター)たるトーラス・シルバーであった……。

 

 そして―――蠢く者達は最後の決断をして、『解き放ってはならないもの』を夜中に解き放つことを選ぶのだった……。 

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