魔法科高校の魔宝使い ~the kaleidoscope~   作:無淵玄白

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何となく未だに書籍化されていない『美少女と野獣』の走りというのは、オーフェン無謀編最終巻たる『これで終わりと思うなよ!』に似ていると思えた。

何が言いたいかと言うと、ここまで長引きながらも九校戦編を何とかかんとか終えられたということは、まずまず良かったことである。


第101話『九校戦――祭りの終わり(後)』

 戦い終わって日が暮れて―――というわけではないが、豪華なバイキング形式の夕食会は若干の鳴りを潜めて、今日の後夜祭はしずやかなムードである。

 

 ……特にキャンプファイヤーでもあるわけではないが、まぁともあれ『ラストチークはあの人とダンシング♪』そんな意識があるのだろう。

 お偉方。100年足らずの血筋でしかない名士を相手に、口を開く刹那は上手い事受け流していた。

 

(言っちゃなんだが、バルトメロイ、トランベリオ、メルアステア……三大派閥の『妖怪ども』に比べれば、有象無象でしかないわな)

 

 心の中でのみ言っておき、FLTの支社長……達也の事は知らないのかどうなのかは分からないが、彼の言を聞きながら、丁重な挨拶で躱しておくのだった。

 そんな中、リーナもまた多くの人に囲まれていた。九島烈の係累ということとアレだけの魔法力……色々とあるのだろう。見合い話とか。

 

 恋人と分断された状況。ホールの中でそんな風にしていた中―――違う名士がやってきた。金色の髪にセレブのマダムといった風情の格好をしている。

 しかし決して下品にならず己の美を飾っているヒトは、一度だけ見たことがある。

 

 マダムは刹那の近くにやってきた。

 

「ドウモー。二日ぶりですかねセツナくん。あの時は正式に挨拶出来なくてゴメンナサイですよ」

 

「お気になさらず。マダム・イッシキ。お嬢さんの友人がどんな人間か知りたくなるのは当然でしょうし」

 

「色々な方が見えられていましたが、お話―――構いませんカ?」

 

「どうぞ」

 

 優しい母親だなと思える。先程まで10人、20人では済まない相手。アダルトな名士たちが話しかけていたのを見られていたらしい。

 

 その上でタイミングを見計らった登場。中々に侮れない相手である。

 

 

「アイリちゃんが飛行魔法を体得するためにも尽力してくれたみたいで、本当にカンシャです。ミス・ヨツバも『息子になってほしい』とか言ってくるほどに、セツナくんは凄い魔法師(ウィザード)なのですね」

 

「恐縮です。そしてお嬢さんが飛行魔法を体得したのは彼女の地力であり、勝ちきれなかったのは私の指導不足です」

 

 手を軽くたたきながら笑みを見せるマダムに、そんな風に言っておく。この後の流れは『何となく』読めていたからだ。

 

 

「そんなイッシキケ(一色家)にとって大恩あるセツナくんを、本家―――ワタシのだんな様もお呼びしたいと思っているのですよ」

 

「家に、ですか?」

 

「つまりはムコ入りですね♪」

 

 一気にざわつくホール。朗らかな笑顔と共に放たれたマダムの言葉は強烈な一撃であった。様々な視線が刹那に突き刺さる。

 

「お嬢さんの努力次第だったのでは?」

 

「縁戚になるならないというのは、時にはそういうのを若干、無視してしまうものですから」

 

 つまりは本家からの指示ということだ。それに抗すれるほど、この人も権限が無いのではないかと思う。

 

 異国の魔法師。しかもセレブリティの家に嫁入り―――『マッサン』かよ。と思いつつ、少しの苦笑をしてから答える。

 

 

「ドウナンデスカ? セツナくん。アイリちゃんと結婚する気はありますか?」

 

「……マダムの立場を考えれば、ここで『ウィ』と言った方がいいんでしょうが、申し訳ありませんが『ノン』です」

 

「―――理由を聞かせてもらっても?」

 

「一つには私がどこぞの馬の骨であるということです。それなりに多くの方々から評価はいただいていますが、私など二十八家は疎か来歴すらもそこまで明白な人間ではありませんよ。

 ……『海の物とも山の物ともつかない』馬の骨が魔法の名家である『一色家』に入るのはどうかと思いますよ」

 

 上手い言い回しで躱しているが、与えられている評価は高いものであることを認識してほしいモノだが、無理だろうなと少し離れた所にいる達也を筆頭に想う。

 

「何より……私もマダムと同じく愛に生きたいのです」

 

「え?」

 

「マダムが、ご当主と結婚なされたのは何も『打算』ではなかったのでしょう? 愛が無ければ、そこまで名家の人間―――抵抗あったはずですが、諦めなかったのでしょう」

 

「その通りです。参りましたね。そこを突かれては―――親としてアイリちゃんの支援は出来ません」

 

「申し訳ありません。私…俺は、遠坂刹那は―――アンジェリーナ・クドウ・シールズへの愛を貫きたいんです」

 

 その言葉を受けて両手で口を押えるリーナ。感極まっている様子を少し遠くからも感じた。

 

 まさか、ここまで言わなければいけなくなるとは思っていなかった。一色には悪いが、やはり自分は『時臣じぃじ』のようなことは出来そうにない。

 ましてやどこぞの世界線にいるオヤジのようなことも出来ない。よってこの返答は間違っていない。

 

「仕方ありません。ここは一旦引き下がりましょう。ですが、人の心は移ろうモノ。どうなるかは分かりませんからねー」

「マダムはご息女にはブラダマンテの伝説を読み聞かせしているのに、そこは譲らないんですね……」

「当然です。そして、アナタにとってのブラダマンテになれるようにアイリちゃんを嗾けるだけですから♪」

 

 大変な話だが、どうやら二十八家……十師族入りを目指す他の十八家にとってよっぽどの宝物に見えているようである。

 

 迷惑……とまではいかずとも、この態度はどうなんだろうと思う。結局、時計塔と違うのは―――曲がりなりにも探究者としてのスタンスは崩していなかった魔術師と、世俗の権力一番を狙う魔法師の違いなのだろう。

 

 どうでもいいことだが―――と思いつつも、結論としては『諦めてくれ』『諦めない』。平行線で終わってしまうのだった……。

 

 そうしてマダム・イッシキの投げた爆弾が最後の投下だったらしく、マダムが去ると同時に多くの来賓の方々も去っていった。

 

 後は学生同士のダンスコンパ(会長談)に移行する流れになっているらしく、前から声掛けしていたり、今から誘いを掛けたり……元々の彼女・彼氏持ちは相手に声を掛けたり……そうであっても踊りたいと思って彼氏・彼女構わず誘いを掛けたりである。

 

 まぁつまりは―――……。有象無象の目線での誘いに一瞥もくれずに刹那の元にやってくる三高一年女子であった。

 

「セルナ。お母様が言っていた通り、ワタクシ―――絶対にあきらめません」

「諦めてくれないかしら。ワタシとセツナの愛と信頼の絆は登山ロープより固くて強いんだから」

 

 そのセリフは色々とマズイ。リーナに何か不幸があれば、刹那の心の内に宿る赤眼の魔王の一欠けらが目覚めそうな関係である。言ったのは男女逆だけどな。

 

 ともあれラストチークは、あの人とダンシング、決めてみせる!!(何をだ)と言わんばかりの誘いの掛け方にどうしたものかと思う。

 

 断るのも後々に遺恨を残してしまう。だが、ここで多くの女性の腰に手を回してダンスに興じれば、それはそれで顰蹙を買う。

 

(旅の恥は掻き捨て―――横浜論文コンペで会うこともあるかもしれないが―――)

 

 

「分かった。俺と一曲踊ることで君が満足するならば付き合うよ」

 

「ちょっ、セツナ……」

 

 不満げな顔でブー垂れるリーナに手を立てて謝罪しながら口を開く。

 

「仕方ないさ。結局、ミラージで姉貴(?)に追い縋れなかったのは俺の所為でもあるしな。同率二位の褒賞と謝罪と言うことで―――エクレール・エトワール。一曲、私と踊っていただけますか?」

 

「!!  ええ。喜んで―――殿方の誘いを断るほど無粋ではありませんもの……嬉しいですセルナ」

 

 

 手を差し出して愛梨に誘いをかけると、一度だけ噴火したように、物凄く赤くなってからその顔のままに、こちらの手を取ってくれた。

 

 ざわつきが広がり、その刹那の言葉を皮切りに―――他でも動きが出てくる。

 

「司波さん。俺と是非! 一曲踊っていただけませんか?」

「こちらこそ、よろしくお願いいたします。一条君」

 

 がっつき過ぎな一条将輝が、深雪を誘うべく勇気を出して続き―――。

 

「西城! ワシと踊ってたもれ!!」

 

「おう、いいぜトウコ!」

 

 とても男女の誘いとは思えぬ言葉の応酬ながらも、どうやらどちらかといえばマッスルなレオに興味があったらしい沓子が踊りに向かう。

 

 何だか低学年向け少年漫画のようなやり取りであったが、ともあれそういった流れに乗って着いたり離れたりという様相でダンシングは始まっていくのだった。

 

 光井もまた達也に誘われて幸せが有頂天。

 美月と幹比古もまたぎこちないながらも、誘いに乗りあって踊っていくが、何というか幹比古は美月の豊満な胸を意識してか密着状態を作り出せないでいる。

 

 耐えろ幹比古! いや、むしろ男を上げろ幹比古!! と誰もが声援を送りたくなる。

 そんな中、レオに捨てられた形の(え)エリカは他校の男子―――特に運動部系や尚武の気風がある三高の上級生から誘われていたりする。

 

 恐らく千葉道場の関係者もいるのだろうが……そんな中、演奏曲が変わり―――今までの厳かなテーマ曲からアップテンポな―――言わばJ-popで、少しばかり趣味が際どい。

 

 言うなればアニソン……その中でも、何か『レオ』だけが輝けそうな曲に変わるのだった。

 今宵のワルツを彩るには相応しい『プリンセスプリンプ』(Princess primp)に変わりながらも、それを不快に思わず全員がダンスホールでシャイニエストパートナー(誰よりも輝ける相手)と踊っていく。

 

 

 結果としてではあるが、刹那が愛梨を皮切りにして、次に雫、栞、スズ先輩、あずさ先輩……『九高の零宮』と立て続けに誘われてしまったことで恋人とタイミングが合わなかった。

 いよいよ五十嵐、吉祥寺、沢木を疲労困憊にしたマイハニー・リーナというラスボスに立ち向かおうとした時に―――。

 

「セツナ―――! お姉ちゃんが遊びに来たわよー!! ということでお借りするわ!! あっ、リーナちゃんも付いて来ていいわよ」

 

 魅了の魔眼を『弱』で使ったことで、全員の文句を封殺したイリヤ・リズに、やりすぎじゃないかと思ってしまうも、とりあえず自分も聞きたい事があったので、その導きにリーナと共に着いていく。

 

 先程までは十文字克人と踊っていた様子を見ていたが、そんな十文字会頭も五人以上の相手を務めた達也を誘って人気のない所に誘い出した様子を見る。

 内密の話なんだろうなと思いながら、こちらも内密の話だろうと思って従容と、姉とされている人物の導きに従うことにしたのだった。

 

 

「セツナ……」

 

「うん。大丈夫だ。行こうか」

 

 即戦闘ということにはならないと分かっていても、それでも緊張してしまうのを隠せない。握られた手のままに虎穴に入ることにするのだった……。

 

 

 † † †

 

 

「司波、お前は十師族だな?」

「単刀直入ですね。十文字先輩―――その言葉にはイエスでありノーであるとしか言えません」

「つまり?」

「ある意味、一色愛梨なんかが予測している通り、俺たち兄妹は十師族の『落胤』なんですよ」

 

 誤魔化すことも考えたが、連れ出された場所が場所だけにこれ以上の盗み聞きはあるまいということで話すことにするのだった。

 

 ウソをつくときのコツと言うのは、20パーセント程度の真実を混ぜることで本当っぽく見せることだ。

 詐欺の論理と言ってもいいが。

 

 そうして言っていく。詳らかにする20%に対して80%のウソを混ぜて―――。とりあえず一通りを聞いた十文字会頭は、重々しく口を開く。

 

「四葉の分家制度か。噂程度には聞いていたが、そういうことか」

「十大研究所の数字に呼応して付けられた家同士が、仲がいいわけではないですから。そして四葉だけを第四研究所は作りましたから」

 

 その言葉―――星空を見ながら言う司波達也の言葉に身近な例として『七草』と『七宝』の一種の悪縁もあるとすれば、それも場合によりけりだなと思える。

 もっとも七草の場合、本来は『三枝』だから、七宝からすれば余所者に『母屋』を乗っ取られたような気分もあったのだろう。

 

 その後のご当主のなりふり構わぬ権謀術数が、更に関係を悪化させたわけだが……。

 

「俺と深雪こそが、四葉からすれば『芝』(ウィード)なんですよ。特に継承権を巡っての御家騒動などやるつもりはありませんが、母は本家から追い出されたことの恨みで、深雪に多大な魔法能力訓練を強いましたから」

 

「……争いになると言うのか?」

 

「母はもう死にましたし、種馬扱いを受けていた親父は、悠々自適に元・恋人と暮らしています……とはいえ、状況は流動的ですから」

 

 誰に担ぎ上げられるか分かったものではない。そんなウソを混ぜて十文字会頭に告げると考え込む様子。そして一休さんの如く『トンチ』が披露された。

 

「解決策は―――案外、簡単かもしれんな」

「と言いますと?」

「現当主たる真夜殿が、結婚して当主の座を退任する―――もしくは、『相手』が、真夜殿と結婚して隠居する……まぁそんな所だな」

「……仰っている意味が良くわかりませんが」

「そのセリフ―――遠坂みたいだぞ」

 

 確かにアイツならば、こういったことを言う。というか叔母が息子云々を語った時の躱しの言葉だったことを思い出して咳払いをする。

 からかうような十文字会頭の言葉だが―――言われたことは、達也からすれば本当に意味不明だった。

 

「まぁそれも流動的だ……とはいえ、そんなことを言うとは、意外だな」

「俺も後ろ盾なくアレコレ我を通せないことぐらい分かっていますよ。そして場合によっては深雪を守るためにも、『協力者』が必要なんですよ」

 

「俺を巻き込む算段か。策士だな―――だが、後輩二人の苦境に手助けできないのもアレだな……この話、他に知っているものは?」

「先程言った通り、俺たち兄妹の身の安全が確保されるならば―――そういう考えで刹那とリーナ。USNAに報告が挙がっているかどうかは分かりませんが、まぁそちらに対してもそれなりに説明しました」

 

 アメリカに亡命するという手を告げると、考え込む会頭。流石にそこまでされると面倒であろう。

 

 そして、十師族的な思考に立つと、出来ることならば優秀な魔法師の流出を避けたいという考えが浮かぶ。

 阻止するには出来る限り司波兄妹には便宜を図らなければいけない。

 

「込み入ったことを聞いてすまなかったな」

 

「いいえ。七草会長と『海』に行くんでしたよね。 後輩としては、心労の一つぐらいは除いてあげたかった」

 

 その言葉に赤い顔で咳払いする十文字会頭。そして『ざわつく木々』に苦笑する。そうして少しだけ焦った顔をする会頭を見ておく。

 

「一条殿が息子を立ち上がらせるために、スラム〇ンクな名言を出したからな。俺も次期頭首として、バスケ漫画の名言で七草を説き伏せたかった。それだけだ」

 

 それで黒バスではなくハーレム〇ートをチョイスする辺り玄人だなと思える。

 三高との戦いで若干足に不調を覚えたどころか若干不味い状態だったというのに、それで九高と試合をするのだからとんでもないと思える。

 

『男だぜ。退けない』そう前を向きながら会頭はいって、回復術とテーピングの複合をやっていた七草会長だが……。

『勝手にしてよ!』という会長に対する次なる言葉を誰もが聞いてしまったのである。

 

『……『真由美』、東京帰ったらば―――いっしょに『海』行かないか?』

 

 全員が砂糖を吐いて、それにぶっきら棒に、『か、勝ったらね!』とかいう七草会長のやり取りで更に砂糖を吐くのだった。

 思い出されたことで更に頭を掻く会頭。親分だなんだと言われても、自分と同じく若造なんだなと少しだけ認識を改める。

 

「卒業したらば、大学に行きつつ協会員というか十師族のメッセンジャーとして『アルバイト小僧』にもなるんだ。

 そのインターンという体で『小笠原諸島』に『用事』をこなしにいく。それだけなんだがな……」

 

 十師族の次期当主としての務めをこなしながらのバカンス……とんでもないな、この人は。と思う。

 小笠原諸島で、魔法師のトップメンバーが『所用』で赴き、バカンスを楽しむとなると『南盾島』かと勝手に達也は想っておく。

 

 ともあれ、そういった達也が刹那からラーニングした場の『引っ掻き回し』で話は終わった。

 

「祝賀パーティーにはお前も参加しろ。俺は先に戻っている」

 

「はい。つまらない話を聞いていただき、『お二人』には感謝しています」

 

 その言葉で観念したのか木々の上で隠れ身(ステルス)をしていた七草真由美が降りてきて、会頭の後ろに着いて歩く。

 

 まるで背後霊だな。とか刹那ならば言いそうな様子を感じながら―――庭先に代るようにやってきたのは自分の妹だった。

 

 ラストナンバーが始まろうとしていた……。

 

 † † †

 

 

 全てを聞いた。そして、刻印の『情報共有』(マトリクスペイン)で、目の前の女性の来歴を知った。

 

 知った途端に、姉貴から平手を食らう。その様にリーナは睨んだが、刹那はそれを手で制した。

 

 

「なんでアンタまでお父さんみたいになっているのよ……私と違って……もう少し穏やかに生きられる道だってあったのに!!」

 

「姉さんにそれを言われるとは思わなかった。けれど、確かにそういった道はあったかもな……けれど選んだことを後悔したくないんだ―――」

 

 例えどれだけを失ってきたとしても、その道は決して間違いではなかった。後戻りするには―――まだまだ進み切れていないのだから。

 

 リズリーリエ・イリヤ・フォン・アインツベルン―――彼女は刹那の予想した通り、メイガスマーダー衛宮切嗣と、アインツベルンの聖杯アイリスフィールとの間に生まれし第五次聖杯戦争のマスター『イリヤスフィール』の娘だった。

 

 母親がイリヤスフィールで、父親は……予想通り『衛宮士郎』。オヤジだった……。

 

「リズ姉の世界ではサクラさんが、ヒドイ目にあったんだな……けれど最後には、オヤジのために戦えた……」

 

 結果はあまり良くは無かったかもしれない。けれど、その世界でオヤジが選んだのは……金色の騎士王でも、赤き宝石の魔術師でも……自分の世界と比べたならば、『衝撃的』(ショッキング)ではあるが、『聖杯と化した紫の少女』でもなかった。

 冬の少女。歪なる生い立ちを持つ義理の姉だった……。

 

 自分にとって小母と言える人が、目の前の女性を生み出した後……様々な紆余曲折がありながらも最後には、自分と同じく頼れるものを亡くして、恐ろしい事というわけではないが、『サーヴァント』一体と共に、この世界に流れた。

 流したのは――――大師父であった。

 

 具体的な目的があったかどうかは不明だが……ともあれ、異能を持つものゆえの運命は義姉をも蝕んでしまったようだ。

 

 それ故の哀れみか、それとも何かの目的があるのか―――それは分からないが、ともあれ義姉との会話は続く。

 

「セツナ。アナタは多くの変革を行ってきた。私は隠れて十師族とは違う山を作るべく尽力してきた……その違いが、いずれは決別を生むかもしれないわよ」

「だろうね。姉さんと殺し合いするのは嫌だけど。そうなれば俺は―――誰の味方でもいられないだけだ」

「コウモリねぇ」

「そうだな。けれど、姉さんがエレメンツ研究の末裔に未来を見出したとしても、俺は全てを見捨てたくないんだよ……だから、『そちら側』に着けない」

 

 

 権力は足が早い。十師族の権勢もそこまで長くは持たないはずだ。しかし、それでも……全てを鞍替えさせるほどではないはずだ。

 

「私もキシュアから全てを聞いているわけではない。けれど、この世界には『来訪者』が多い。そして―――顕現する『脅威』も、魔法師の力では手に余る……時代の割には『いきすぎた』人理の発展が、今の事態の大本だと思っている」

 

 その言葉には若干、同意してしまう。1999年から少しして2000年代初頭には遺伝子工学が発展していたなど、明らかに『おかしい』。

 無論、並行世界の中には時間流が速いものもあるだろうが……しかし、だからといって全てを悪徳と断ずることは出来ない。

 

「―――、一点。堕ちた魔術師、人類悪などに対して私達は協調出来るわね?」

 

「ああ」

 

「ならば今はそれだけでいいわ。アナタにとって……ワタシは必要な存在じゃなさそうだしね」

 

 関わりや由来を気にすることはあれども……結局、そんなところだ。それにお互いに『違う家族』を求めてしまっていたのだから……。

 

 

「それじゃあね。リーナさん。……セツナのことお願いするわね」

 

「は、はい! こちらこそ世話になりっぱなしだから、いつかは!!」

 

 既にリーナには、色んなものを貰いっぱなしな気がする。俺が救われたのは――――。

 けれどリーナはそれを認めないだろうと思えた。

 

 義姉の背中を見つめる。その背中は……どことなく時折夢に見る『錬鉄の英雄』に似ていた……。

 

「平手のお詫びというわけじゃないけど、『トレース、オン』―――、一曲だけで申し訳ないけど踊れるわよ」

 

「うわぁ……セツナ!! 似合っている!?」

 

「ああ、ものすごく似合っている……まるでお姫様みたいだ」

 

「ありがとう―――すごく嬉しいわ……」

 

 達也たちがいるだろう庭先とも違う場所……錬金術で編み出された『銀細工』の花が庭に、光ながら咲き誇り、そして自分とリーナの衣装は違うものに変わっていた。

 

 一高制服のドレスコードを軽く無視した衣装の変遷。白いドレスに白いタキシードを着た男女。どうやら『正しい意味』での投影魔術の仕立である。

 

 完全にいなくなった義姉の粋な行いに感謝しつつ、投影魔術で作られた白いドレスを着込んだリーナの前に手を差し出す。

 ラストチークを決めるのは、自分からだ。

 ここで男を見せなくては、何のための言葉だったのか分からない……。

 

「我が愛よ。長い時を、お待たせしましたが、最後の曲は私と踊っていただけますか?」

「―――ええ。その言葉、幾星霜も待っていました。エスコートお願いします。私の愛」

 

 差し出した手を握り、そのまま刹那の胸に飛び込むリーナ……聞こえてくるラストナンバーは、やはり『Princess primp』であった。その顔を至近から見つめ合う。

 

 自分が見てきた蒼星。輝けるシリウス。されど魔法師という仮面がない『ネイキッドスター』(そのままのリーナ)の輝きを自分は知っていた。

 

 月と星に彩られた夜空の下、演奏に合わせて口ずさみながらも回るように踊るリーナを止めない。

 彼女のステップと歌声こそが、この世界で最高の『魔法』(きせき)だと、刹那は、知っているのだから――――。

 

 

 無論……そんな演出過剰な場面の2人は魔法の杖の『多角的な撮影』を受けて、シルヴィアの手に渡った。

 それ以前に二人がいないことに気付いた魔法科高校の生徒たち全員の眼に入るのであったが、それもまた青春の1ページとして心のアルバムに収められてしまうのだった……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 Interlude―――Next order―――prelude……

 

 

 少女は呼んでいた。星辰の彼方にあるものを、自分達を解放してくれる星の輝きを―――プラズマリーナ、プリズマキッド……地上にある星と共に生きたくて、収められたポッドから呼び続けていた少女は―――。

 

 遂に邂逅した……『ミーティアライト・フォール』……隕石爆弾と称される戦略級魔法を制御する巫女たち―――その中でも制御力に長けた『九亜』は、『それ』と意識を繋げることに成功してしまった……。

 

 それは、人の身にはあまる奇跡。人の手に御しきれないもの―――。幼子を使っての非人道的処置の天罰(テスタメント)か。

 

 偶然と必然。魔術的に言えば、偶然などという言葉は無い。必然は運命的な言葉だが……それでも九亜(ここあ)は呼びかけた……。

 

 見つけ出した意志ある存在に、意志を持つ星の彼方にある知性に……。

 

『あなたは、だれ?』

 

『■■■■■■■』

 

 明朗な言葉では無い。まるで叫びだ。それでも聞こえてきた言葉。自動的に翻訳された聴覚でも九亜に分かった単語は一つだった……。

 

 

『あんち、せる、せ、ふぁーる』

 

 

 どこからが単語の区切りかすら分からぬその単語を聞きながら、九亜は実験の失敗で姉妹ともども追い返されるのだった……。

 

 

 ……Next order―――prelude―――end.

 

 




終わった……何もかも……バンタム級世界一を決めるタイトルマッチに挑んだジョーのように、真っ白に燃え尽きた気分である。


ここまで長引いた原因は本戦を流せなかったことだなぁ。やっぱり劣等生SSとしては後発すぎるだけに違った事をやり過ぎたんだろうな。

と思いながらも、次回は夏休み編と言う名の本来ならば春休みにあるべき事件、劇場版のアレになりますが、今度こそ20話程度で収めたい! 

カットできるところはカットして―――と思いながらも、出来ることならば今後もよろしくお願いします。
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