魔法科高校の魔宝使い ~the kaleidoscope~ 作:無淵玄白
とんだネタバレだよ。城之内死す!並だ(笑)投稿する前についに我がPCの無線マウスがおしゃかになって、色々と悩んだ結果、ちょっぱやで家電量販店にゴー。
いいものを買いました。スクロールがここまで速いとは―――若干なれるのに時間がかかりそうですが―――ともあれ新話お送りします。
サーヴァント……人類史に刻まれし『英霊』の具現化―――
それは、現代魔法のように
ある程度のものであれば、魔術や魔法でも対抗しようと思えば出来るのだが……例えば、アイルランドの大英雄『クー・フーリン』の持つ『ゲイ・ボルク』―――。
この槍は、因果を捻じ曲げることで『心臓を貫いたという結果』を先に『対象』や『世界』に強要することで、『絶対必殺』の理を叩きつける恐るべきものである。
無論、中には『心臓』を貫かれても生き残れる人間がいるかもしれないが、ゲイ・ボルク自体がそういった『絶対死』の概念であり『ロジック』を持っている以上、その結果を覆すほどの『奇跡』でもない限り、心臓は『再生』されない。
何度か刹那に聞いてみた結果、夢想の瞑想―――自分が、あの八王子クライシスの時に刹那が使役した存在と戦って―――勝てるイメージが出来なかった。
彼曰く『セイバー、ランサー、アーチャーなんかは純粋な戦闘系サーヴァントが多いが、ライダー、アサシン、キャスターなんかは搦め手を使う英霊も多いんだ』
あるいは、『なんでその伝承が採用される?』と首を傾げるような存在もいるなどと言われた……。
アルキメデスと言えば、外征侵略のためにやってきたローマ軍に対する様々な工作兵器が有名だ。シラクサ沿岸にいたローマ艦隊全てをクレーンでひっくり返したり、巨大なレンズで艦隊を焼き払ったり、金細工の体積を測ったり―――。
そういった逸話を調べた結果、最初に戦った際のアルキメデスの戦いは分からなくも無かったが……鉤爪がギロチンも同然に呼び出されたり、歯車が飛び道具になったりと、伝承が誇張されていることは間違いなかった。
となれば―――やはり、話に聞く彼の偉業―――先に述べた『ローマ艦隊を焼き払った光学兵器』も装備されていると見た方がいい。否、刹那の話をまるっと信じるならば、そういうことだ。
それは恐らく戦略級魔法のレベルだろう―――発動させてはならない。そう達也が断じると、状況が動く。
「行け!! ピクト人!! かつて円卓の騎士達との戦いに明け暮れて、やがては歴史の中に消え去りし
『『『『Piiiiiiii――――!!!』』』』
ピクト人は口頭言語、音声言語こそ持っていたが、文字言語というものを持たない種族だったが……この調子では意思疎通も無理だったのではないかと思う……。
『おのれピクト人め。神聖円卓領域では、マシュや藤丸君と共にさんざっぱら世話になったが、どうにも格落ちがすぎるな?
言語中枢がいかれていると考えれば、あれは死体を利用したものと考えた方がいい』
「そういえば原子力潜水艦が沈没した情報があった……。大亜の船員が『素材』か」
「それならば遠慮なくやれるってものよ!! ゴーストバスターズ!!!」
隣にやって来たリーナが威勢よく言うのを聞きながら、ランサーのカードをインクルードして、赤と黄の双槍を取り出す。
少し離れたところからやってきたピクト人などの防衛機構に挑みかかる。ブリオネイクを変化させて雷槍と化したリーナが前に出る。
「Piii亜阿亞!!!」
ハルバードを振りかざしてやってきた大柄な男の突進に合せる形で
リーチの差で貫かれたことでピクトのガワが崩れ去り、白骨した死体が基地の舗装された床に倒れ込んだ。
あまり見せていてもいいものではないが、それでもここでの事を白日の下に晒すことで、『救われるもの』もいるはずなのだ。
『油断するな! 来るぞ!!』
思案した瞬間、三体のピクトが包囲するように距離を詰めてくる。手際がいい。そして何より、追い詰める手段が抜け目ない。
円卓の騎士といい勝負をしたというのも分かる―――。今は忌まわしい限りだが……彼らが振り下ろす簡素な剣やハルバードに、遊星の紋章が移って行く……。
来る―――と判断した瞬間―――。
「ファランクス!!!」
壁がピクトの進撃を阻んだ。無論、ピクト人たちも剣やハルバードで砕こうとするも、次から次へとやってくる壁に圧されて動けない。
そこに、二人の切り込み役がやってくる。
「ルーンセット!! エイワズ!! ―――ヤールングレイプル!!!」
言葉と同時に白銀の籠手をいっそう輝かせたプリズマパンツァーが、壁の外側でもがくピクト人を、横合いから次から次へと殴り飛ばした。
本当に文字通り、無双アクションも同然に殴り『飛ばした』のだ。如何に魔法とはいえ、あまりにあまりな現象に誰もが呆然とする。
嗾けたアルキメデスですら、眼を若干見開いている―――。そんな学士よりも戦闘に特化したピクト人たちは次陣を繰り出してくる。
しかし―――そこにプリズマサニーが刀を持ち、とてつもないジェット噴射も同然の勢いで滑りながら、ピクト人の足元を斬り捨てていく。
下段方向だけの辻斬り万歳に対して捕まえようとするも、魔力放出の応用で縦横無尽に飛んでいくサニーは捕まらない。
それどころか切り裂かれたことで動きが遅滞をして、そこに―――。
氷結の冷気が叩き込まれる。流れ出た血から伝ってのエイドス干渉―――ピクト人たちの体内を流れる血液全てが凍結された……。
体内活動を止められたことでピクト人のガワが剥がれ落ちて、半ば白骨した死体が立ったまま残る…。それが必然だったかのように―――。
「見事なもんだな―――」
『現代魔法の神秘濃度は明らかに低い。しかし、相対する相手の『肉体のスペック』が現代人のそれであれば、ある『一穴』から干渉を仕掛けられる。
特に傀儡程度の相手ならば、尚更にね。『地力』が同じならば、後はどうやって魔法を通すかの作業さ』
「その通りだ」
防衛機構。レーザーを放ってくるキューブの集合体の基部を貫き、沈黙させながら同意しておく。
あちこちで乱戦が起こりながらも、目指すべき標的は見えている。
その最中―――。空気の変化を感じる。
『反対に―――存在自体が神秘の塊であるもの―――例えば『上級死徒』や『真正悪魔』などのような存在には、どうあっても無理だろうな』
「こいつみたいに?」
『ああ、そいつみたいにだ』
言うや否や、歯車を振り回して挑みかかってくる
「シュラクーシア・メトドス!!!」
二つの歯車ではなく、何かの機構―――恐らくスクリュー構造の器物を出現させて、
風車のように赤槍を回転させて水流を弾きながら、器物―――ちょっとした大甕にも似たものを砕き動こうとした時には、アルキメデスはおらず、防衛機構がレーザーを吐き出してくる。
逃げたわけではない―――と分かっていても躱されたことを悟り、苛立ち紛れにキューブのレーザーを赤槍で弾いてそのままに接近。
打ち砕く―――同時に周囲に
(不味い―――)
見つけたアルキメデスは魔力の塊を練っている―――。
「好機だ!!!」
撃ち出された魔力は、レンズを伝って不規則な動きで乱反射をして、目標を悟らせない。
反射レーザーとでもいうべきものをどうにかするべく、『斬り捨てよう』と刹那は、破魔の紅薔薇を使ってディフレクトする。
「まだまだぁ!!!」
周囲に滞空しているレンズの数は多すぎる。そしてアルキメデスの攻撃も苛烈を極める。こいつは純粋なキャスターとは言い切れない。
『レンズじゃない! アルキメデスを狙えキッド!!!』
反射レーザーの網に囚われた刹那に対する助言―――。分かっちゃいるが、それも難儀―――だがやるしかない。
「はははっ!!! さぁさぁ!! 来るがいい!!」
「いかせてもらうさ!!!」
『―――』
瞬間、赤槍と黄槍を投げ捨てて、ステゴロでの戦いを挑む刹那―――。
「舐められたものだ!!!! 純粋なキャスタークラスと一緒くたにされては困るなぁ!!!」
だったらば――――。
(俺も純粋な魔術師だと思うなよ―――)
加護のルーンを四肢に装填してからの『ゴッズ・エンチャント』の付与。レーザー網の中を突っ切る刹那。
「―――ぬっ?」
彼我の距離14m―――その距離が果てしなく遠いわけではない。そして師匠であるバゼットならば―――この距離を踏破して、外法の魔術師相手に拳を突きたてる。
「死ぬ気かぁ!! お前の肉体から刻印を引き剥がすなど、死んでからでも構わんのだよ!!」
んなことは知っている。そして基地外の路面。さんざっぱらレーザーを撃ち出されたことで脆くなっていたものに『手』を掛けて、持ち上げる。
巨大な混凝土の壁の出現。手で路面をひっくり返した刹那の行動に誰もが驚く。
「――――」
周囲と同じく―――まさかこんなことをするとは思っていなかったのか、驚愕するアルキメデス。
前面を圧する『壁』の登場。一瞬の思考の停滞。それこそが―――こちらの勝機。拳を握り込む。最高度の魔力を溜め込み―――。
息を吸い身体を膨張させたままに、壁の向こうから撃ち出した。
突進しながらの拳の叩き込み。レーザーの照準を合わせようとしたアルキメデスが失態を演じた。と思った時には……。
コンクリートの砕片が周囲に飛びながらも、
「――――!!!」
サーヴァントの肉体は霊的な構成体で編まれている。とはいえ、肉体感覚が無ければものを持つ感覚は無く、視覚、聴覚、触覚、味覚、嗅覚を無い状態で再生したとしても十全では無い。
痛覚がない『無痛症』の人間が、己の肉体の異常を悟れないのと同じく、サーヴァントもまた特殊な状況でなければ五感を伴い現界する。
即ち、武器を持つ感覚。魔力を扱う感覚。遠くを見る感覚―――全てが無ければ『英雄』は英雄たりえない。同時に、それはサーヴァントの陥穽ともなりえる。
「如何にお前が霊的上位存在であっても――――その身体はどうやっても、現代に通じるものでマテリアライズされる!
故に強化された拳ならばお前を殴れる。侮ったなキャスター」
「ごふっ! パ、パンクラチオンだと!?―――セツナ・トオサカは魔術師でなかったのか!? ぶごおおおっ!!!」
「生憎、今どきの魔術師は護身術も必須科目なんだよ!!!」
絶対に『護身術』とか言うレベルではないキッド=刹那の動きは全方位を動き回り、血を吐くキャスター=アルキメデスの身体に『鉄拳』を叩きこんでいく。
こんな怪盗らしからぬ戦いぶりで――――、『キッド様―――!!!』『その動きは光速の異名を持ち』『重力を自在に操る高貴なる魔法怪盗』『濡れるわ!!』
……良かったようである。少し離れた所で防衛機構を分解していた達也は、そんな風に想いながらも豪風乱打の限りを見て、脇腹が痛くなる想いである。
幻痛だと分かっていても、あの時、服部副会長をダウンさせた後の戦いのことを思い出す。
「達也……じゃない……ガンド―は驚いていないんだな……」
「ああ、一度だけああいう戦い方を見たことがあるからな。というかやり合った」
少しだけの小康状態。乱戦は落ち着きつつ、小規模の集団同士が鬨の声を上げながら、ピクト人や防衛機構に挑みかかる。
「
『はい!!』
カレイドライナーとしての力と魔法師としての力を合わせた『合成術』。現代魔法ではあり得ないものが、展開される。
最初に氷の弾丸―――『雪』を作り上げた
古式魔法『木花之佐久夜毘売』……九校戦においても勝負の決め手となった、幹比古の術式が展開される。
現代魔法では、このような力や物質に対して生物的な形=明確な形を持たせることは無駄だとされている。
そういった擬態させるプロセスを力と時間の無駄遣いとしているが、古式魔法では形を与えることにより、力の方向性を強める効果を重んじている。
華の花弁の嵐に混ざり込む氷弾の全てが、魔術師の出したガーディアンを打ち据えていく。その威力は基地内の路面を70㎝は陥没させる結果を出しながら、ガーディアンを駆逐した。
魔法名『雪月花』―――そんな風なものを真由美及び一高上位陣などは『開発』してきた。
あの八王子クライシスの際の無力感……現代魔法では何も出来なかった悔しすぎる現実を前に―――覆すために、こうしてきたのだ。
何より他の思惑もあったのだ……あんなUSNAのバカップルが勝利の決め手であったなど、最悪以外の何物でもない。
確かに力は不足していたかもしれないが、それでも最後に手を下すのは、汚れ仕事をこなすべきは
「わっ……すごい」
「私達もやるわよ。キッドのお手伝いしなきゃ」
「うん。そして、みんなを助けなきゃ」
年少組……四亜と九亜扮する『プリズマツインズ』が、その戦いぶりに触発されて、魔法を投射する準備をする。
かつん、かつん―――ワルツでも踊るようにステップで動く四亜と九亜。その度に、魔力が放射されて同調されていく。
わたつみシリーズの目的『ミーティアライト・フォール』は『移動系魔法』と『知覚系魔法』に関連が深い……それゆえ彼女たちは、それらの魔法を使うことに最適化されていた。
中でも四亜は、『暴れ者』と称されるぐらいに移動系魔法に演算領域が最適化されており、物をぶつけてぶち壊すという意味合いにおいては最良であった。
ここにはいないが『三亜』は、知覚系魔法に最適されており、この二人は特別強かった……では九亜はなにをするかといえば―――確かにこの二人よりは若干劣るモノの、九亜にはある種の『同調術』があり、可能であるならばこの『三人』だけでも魔法式は投射可能だった。
四亜の移動魔法を強化して、三亜の知覚を先に延ばす―――姉妹の仲介役たる九亜のワルツが、終わり―――手を四亜の背中に着けることで力を倍加した。
「―――曲がれ」
四亜の移動魔法。手を向けた先にあるキューブの連続体―――20体全てが、その形状を保てずに、
ある程度の自在性を持ったその構造体が完全に形を維持できないほどに、20体が光を無くして機能不全をする。
その圧倒的な様に、ちょっぴりだけ二科生組は、劣等感を覚えるのだったが―――とはいえ、二人はまだまだ自分達とおなじくひよっこ。
がんばろうと思うのだった。
そんな達也を筆頭とした人間達の視線に頓着していなかった九亜は、姉妹のSOSを受け取って表情を暗くする。
「―――シア、まずいかも、みんなが大型しーえーでぃーに入れられそうになっているって―――」
「キッドォオオ!!!」
その会話を拾っていた刹那は、盾のつもりだろう歯車ごと砕きながらボディーブローを放ち、アルキメデスを南方諸島工廠付近まで吹っ飛ばした。
「がああああっ! ぐが―――よ、よくもこの私の計算を崩してくれたもの―――だが残念だったなぁ!! この工房の封印式は、遊星の力を用いたものだ!!
完全防御用のシールドを『多層展開』―――多次元展開などしようものならば、貴様は『キシュア・ゼルレッチ』を使ってきただろうからなぁ!! 私の分析は完璧だ!!」
「お前を始末すればいいだけの話だ」
「出来るかな? お前にとってこれは―――賭けだ! 私が工房たる研究所に逃げ込めば、それで終わり。しかし、いなくなる前に私ごと工房の封印を解いてしまえば―――詰みだ」
言われた通り、刹那にとっても、これは確かに賭けだった……シアの叫びに応じた形の吹っ飛ばしに見えただろうが、工房の封印式はかなりのものだ。
工房を壊す。押しつぶす―――ということならば間違いなく可能だ。だが、それではわたつみ達が死んでしまう可能性もあった……。
だからこそ―――この封印の施術者たるアルキメデスを接近させた上で、ヤツの血でも何でも媒介にした上で、工房の封印式を解き放つ必要があったのである。
やれるか―――と思っていた所にリーナが刹那の隣にやってくる。
「よくもまぁ、そんな『閉じ込め』してくれたものね。けれど―――壁を壊すという意味では、ワタシが一番なんだから!! 侮るんじゃないわよ!!」
「ふん。衰退した神秘の術者如きが囀るな!! 貴様如き手合いに、この多層結界を破れるものか!!! 放ってみるがいい!! 貴様の奥の手であろうと最適防御で防ぎきる!!!」
「―――『この世で一番硬かった壁』をぶっ壊したワタシが、キャスター・アルキメデス―――アンタの自信ごと、ココアの姉妹を閉じ込めている壁を砕いてやるわよ!!!」
そしてランサーのクラスカードをインストールするリーナ。アルキメデスは完全に挑発されたことで、工房に逃げ込むことも忘れている。
刹那も機あれば打ち取る覚悟であったが、やはり――――挑発が最適すぎた―――。
しかし、ブリュンヒルデ及びワルキューレタイプでは、最速のランサーであっても逃げ込まれる可能性があった。
魔法陣が展開して―――己の姿を変化させるリーナ。
刹那もクラスカードをインストールしようとしたのだが、その前に……リーナの姿がいつもとは違っていた。
その姿―――頭部には角が2本。もうドラゴンホーンと言っても構わないだろうものが存在、尻からは二又に分かれる竜尾が長々と出て、リーナの意思があるのかないのか、頻繁に上下左右に動いている。
衣装は――――かなりフリフリのゴスロリ、ピンクを基調として様々な装飾とフリルが何層も伸びる―――ポップ&スイートな衣装と言っても構わないものが着せられている。
そんな衣装とはミスマッチすぎるものが一つ。その手に持つ『槍』はリーナの身の丈以上という事実よりもごつ過ぎるものだった。
穂先が2つに分かれていながらも、非対称すぎる穂先でも武器としての性能は柄の太さ、長さから―――もうお察しである。
つまりは……何の英霊だか分からない。本当に分からなさ過ぎた―――刹那も将星召喚の『術式』を持っているが、こんな外連味たっぷりな英霊は知らないでいた。
だから―――。この場において理解しているのは―――。
「さぁ盛り上げていくわよ豚ども―――♪ アタシの歌を聴け――♪♪』
インストールした
『ほほぅ、彼女か。城攻めには『城』で対抗しなければね』
という感心しきりのオニキスと――――。
「は……はは……はははは――――はぁあああああああ!!!!????―――なぜ、なぜ!!!あり得ないだろうが!! あの少女に登録されているランサークラスからかけ離れている!!
この土壇場で何故あんな最低級のサーヴァントを引くのだ!? ありえん! ありえん!!! 抑止力だとしても、もっとマシなのを呼んでも良かろうがアアア!!! 召喚を拒否していることに対する嫌がらせか!? ガイア!アラヤ!」
―――明らかに錯乱して混乱を来しているアルキメデスだけであった。
「なんだか分からないけれど、今のワタシならば出来そうな気がするわ!!! 最高のライブ!! キッドに捧げるとびっきりの『ラブライブ』が!!!」
『『『『『ダウト』』』』』
全員一致の結論ながらもリーナは昂揚しきりである。よっぽど『相性』がいいサーヴァントなのだろうか。
『歌うたい』のランサーなんていただろうか―――と思っていると、頭を抱えていたアルキメデスに対して照準を向けるリーナ。
「さぁ! あげていくわよ!!! 覚悟しなさいキャスター・アルキメデス!!!」
「ま、待て! プリズマリーナ―――いや違う! そもそも例えヤツの宝具であっても、我が多層結界を崩すなどあり得んのだ!! 放たれたとしても、別段問題など無いはず―――」
槍を地面に突きたてると巨大な魔法陣が展開される―――。そしてそこから出てくるものは――――城であった。
ものの見事に城なのだった。鮮血のような魔力の泉から出てきた西洋式の城―――その姿に刹那は思い当たり、『まさか』と思う。
明らかに現代魔法の領域から外れすぎて、『転移』とかそういった現実を覆されて頭を回しそうな『現代魔法師』たちに構わず城―――『チェイテ城』が、南盾島に召喚されるのだった。
「―――――――――」
城の出現の影響か、味方ともいえる人間全員がリーナの後ろ側に配置される形となったのは、一種の固有結界だからか、と思う。
真相は分からないが、ともあれチェイテ城の出現により、敵であるガーディアンの全てがアルキメデスがいる研究所方向に『押し退けられていた』。
「今夜のヒットナンバーを歌わせてもらうわ! 震えながら聞きなさい!! バートリ☆ヘビィメタル♡エルジェーベト!!!」
城の尖塔―――その更に上の天辺に立ったリーナは、ドラゴンウイングを開き、大きく息を吸い込むと同時に魔力……何故か☆や♡のエフェクト付きで吸い込む様子が見て取れた。
ドラゴンブレス―――そういうことである。
放たれた吼え声は、アンプスピーカーの役割を果たしていたチェイテ城を通して、倍増されて叩き付けられる。
『ひゅごぎっ!!』『どごっ!!!』『ぐわおおおん!!!』頭の悪い擬音でしか表現できない音波の暴力―――。
叩き付けられる音によって、アルキメデスは封印式に背中ごと叩き付けられている結果である。
音の暴力は凄まじく、ガーディアンたちを細片以下の粉微塵に砕いていく様子が見える―――☆や♡のエフェクトが付いているのは理解に苦しむが。
「こ、この! どこに出しても恥ずかしい最高最低の無能サーヴァントが―――ッ! なぜこんな世界に来てまで邪魔をす―――――――」
その言葉の途中で―――アルキメデスの言葉は聞こえなくなり……宝具の展開及びリーナの吼え声が終わる。
同時に、研究所に張られていた多層封印式は崩れ去ったのである。
第一段階はクリアー。
若干、納得いかない面々の視線を受けながらも、結果良ければすべてよし―――そういうことだ。うん、そういうことにしとけ。
そうして九亜たちの姉妹の元への道は切り拓かれたのだった……。