魔法科高校の魔宝使い ~the kaleidoscope~ 作:無淵玄白
パラサイト、そして憑依されたピクシー……これらを読んだ私の中で『アレ』が思い浮かんだ。
コンボムービーMADに流れるジャンヌのヴァンパイアを聞きながら、キーボードを叩いた日常。
そして手元には、眼鏡神の同人誌とちょうとんでもバカ企画『少年フェイト』―――そんな日々はプライスレス。
戯言はともかく、新話お送りします。
いつもならば、多くの門下生が剣を打ち合う場において、二人の男女が剣を交わしあっていた。
男の方は大剣のなりをした刀。俗に太郎太刀と呼ばれるものを振るい、女の方は西洋の刀剣を振るう。
お互いに真剣勝負の気合だが、互いにあるものはお互いの力量を高めようという気持ちだけだ。
既に20分以上も得物をぶつけ合う男女の、姿を見ている面子もそれぞれであった。
ここ千葉道場の娘たる千葉エリカ、西洋の刀剣を振るう女の妹たる一色愛梨、そして太郎太刀を振るう男の恋人たる渡辺摩利。
そんな三人の関係者として西城レオンハルト、柴田美月、吉田幹比古が道場に集まっており、その鬼気迫る剣劇の全てを見届けてから何気なく集まる。
その際に一色はともかく、摩利とエリカが修次にタオルを渡さんと押し合う様子があったが。
「どうぞっす」
「ありがとう西城君。強化で代謝を抑える訓練をしていても、戦闘になれば、汗だけは掻くからね」
「俺もやりましたが、山登りなんかの時には結構重宝するんですよね。刹那は「いずれ
トンビに油揚げをさらわれる状態となったエリカと摩利が、少しばかり涙目になりながらレオに恨みがましい眼を向ける。
そもそも、なんでこの面子が集まったかといえば……ちょっとした話がしたかったからだ。
「今頃は師族会議の頃か、呼び出されている刹那君と他数名が、何を話しているのか気になるところだね」
「一色さんでも傍聴は出来なかったの?」
「流石に二十八家の一つでも、師族会議の家でも無い限り、事後通達ですから。そういう意味では千葉家の方々と同じですよ」
秘密主義の会議。そこでの会話は、十師族に選出された家のみが共有して、話さなくてもいい内容は、余程の『癒着』がなければ明かされない。
そして一色家にしろ千葉家にしろ、ある種の『小間使い』『使いっぱしり』な立場に位置されている。そのことに傲然と憤りを顕にするのが、七宝家だったりするのだが。
「後で真由美や十文字が教えてくれるならば、と思うが……会議になるたび、真由美のヤツ不機嫌になるんだよな……」
「そりゃ大人たちの会議なんかに、女学生が出て楽しいことなんてないんじゃないですか?」
「どちらかといえば、私とシュウが一緒にいる時に見せるお前の表情に似ている」
スポーツドリンクを修次に渡した摩利の言葉に、エリカ含めて全員が疑問は浮かぶも、話の主題はそちらではない。
しかし、会議でも話題に出てるだろう刹那の『とっておき』こそが話題に上る。
「私とお姉様は近場で見ていましたし、セルナが手にした『宝剣』も仔細に見ました……彼の黄金の剣を手にしてセルナが唱えた『呪文』は―――」
「エクスカリバー……ブリテン島の伝説、アーサー王物語に出てくるアーサー・ペンドラゴンが、湖の乙女に認められることで手にした聖剣」
フランスの血が半分入る一色姉妹は、ドーバー海峡を挟んだ
寧ろ、現代魔法の隆盛を誇る時代でも、こうしたヒストリエ、マイソロジー、レジェンディアは、人々の間にある。
現代魔法は、古代や中世の魔法的な事象を全て再現出来る、再現してきたと豪語するも、それが烏滸がましい傲慢であることは、最近になって思い知らされてきた。
変身魔法は、幻術の類ではなく場合によっては『身体形質』すらも変えることを可能とし、英雄の力を降ろすことも可能に。
そして魔法剣術の殆どは、身体強化された肉体で再現が可能となってしまう。
「インストール、ポゼッション……
「そうですね。機能性と華美を両立させた武者鎧を纏って、西洋の刀剣を振るう刹那くんは、とてもカッコよかったですからね」
「全面的に同意しますが、柴田さん……」
綻んだ笑顔で語る美月の言動に対して、これ以上無く幹比古の不機嫌が増す。
美月は気づいていないのか、それとも興奮して分かっていないのか……美月と幹比古以外が苦笑いをしてしまう事態。
「ま、まぁそれはともかくとして、あの瞬間―――セルナは、インストールをしている様子はありませんでしたね。
ガーネット、アナタ方、カレイドステッキに英霊憑依は付属の機能なのですか?」
『珍しいこともあるものだ。アイリ、そなたが余に問いかけるとはな。
はっきり言えば、カレイドステッキが『絶対』に必要というわけではない。どっかのカードをキャプチャーする魔法少女の声を持ちながら、苦しい限りだがな』
妙な電波を言いながらもガーネットの語る所。クラスカードを製作した魔術師の一族『エインズワース家』は、ステッキを介さずとも、その身に英霊を宿し、英霊の武器を振るうことを可能とした。
『フラッシュ・エア―――『置換魔術』を使うことに長けた一族は、ある種の
セツナの技は、恐らくそれとは別だ。余はあれと同じものを見たことがある。
無銘の英雄、『抑止力』という霊長及び星の緊急機構に召し上げられた『近代』の英霊―――あえて名前を規定するならば、『英霊エミヤ』
錬鉄の技と鋼の心を持つものだ」
英霊―――『エミヤ』……その字名を自分たちは知っている。
『遠坂』刹那が語ることを嫌がる自分の父親。その名字を自分たちは知っていた。
とはいえ、まさか『英霊』になった父親を持っていたとは、正直驚きすぎた。
『余が言えるのは、『ここまで』だ。忌々しいことにオニキスが、ギアスを掛けてきたのでな。
主人想いのカレイドステッキなんぞ、『魔法使いの杖』の風上どころか風下にも置けんな』
どういう意味だろうと思いながらも、刹那の秘密の一端を知ったことで───。
「正直、俺はどうでもいいな。そりゃアイツが秘密主義というか、全てを晒していないのは分かるけどよ。
そんなもん俺らだって同じだろ。人の秘密をあれこれ探り入れるってのは、正直気分わりいよ」
そこに水を差したのは、壁に身体を預けて腕組みをしている男子であった。
「西城君は、そう思いますか?」
「まぁな。俺だってそうだし、多分、達也と深雪さんだってまだ『何か』あると思っている。けど秘密にしときたいっていう心は、疾しいからだけじゃないだろ。
知られたらば嫌だ……今の関係を崩したくない。壊したくない。
家の関係者のせいで、石を投げつけられたくない―――そういう心って誰にだってあるだろ。
今まであえて問わなかったけどさ……エリカだって、仲のいい兄、仲の良くない兄姉とかって『区別』あるだろ?
見えてきたことをあえて問わない。見て見ぬ振りをするってのも一種の処世術だろ」
「───」
レオのどこか陰りのある言動に『裏側』を察して、その上でそれでも秘密にされていることに、寂しさはあると反論する。
例え他人の魔法を探らないという不文律があれども、それとは別の秘密が、少しだけ寂しいのだ。
「ああ、分かってるよ。
けれど───。『待とうぜ』。達也でも刹那でも『今の俺達』では、あいつらの秘密は『受け止めきれない』。
けれど知り合って一年も経っていない。なのに、こんなにもどかしい気持ちになれる友人ってのも、そうそういないぜ。
いずれ───あいつらが俺たちに話したくなった時に聞けばいいんだ」
何とも気風のよすぎる言動である。別に二日前に大金星を上げたからの余裕ではなく、多分……レオの飾らぬ言葉なのだろう。
心がそう叫んでいた。そうとしか言えないレオの言動だったのだが。
それに真っ先に反応したのは、……。
「……ったくレオのくせにカッコつけすぎ! アタシだって下衆の勘繰りだってのは分かっていたもの。けれど、あんな綺麗な剣を見たらば、欲しくなっちゃう!!」
「それがお前の本音かよ……」
「というかエリカ、結構ひどいね。レオのくせにとか」
幹比古の言動の後には、誰もがエリカの言葉の裏を読んで刹那からラーニング(?)した『あくまな笑み』を見せつけてくる。
ここであえて強烈な否定をするのは「肯定」するのと同義であると分かっていたのか、腕組みをして必死に堪えている様子のエリカに、やれやれとレオは嘆息する。
後に―――こうやっている関係に若干のヒビが入る時。即ち明確にレオを狙ってくる女の子……三高の
芸能関係に強いラ・フォンティーヌ女学院の『うさぎっ娘な女子』とのあれやこれやがあるのだが―――それはまだ先の話であった。
そしてレオの演説に心動かされつつも、いま……この瞬間にでも全てを知りたい想いがあるのは一色愛梨だった。刹那とリーナの会話。
あの時、遠坂刹那が最初に頼りにしたのは、自分でも姉でもなく金色のブルースター。
リーナだけは知っている、刹那の
そして……その手に携えるは黄金の宝剣。宝剣の元の持ち主を示すかのように、夕焼けの中でも見えた蒼き少女騎士の影が……重なる。
「嫉妬なんて醜い感情だと分かっていても……どうしても、それを覚えてしまいますね」
「愛梨ちゃん……」
それはどうしても胸に疼くもの。愛しき男性の全てを知らずに、焦がれることの痛みが苛むのだった。
知らないでいることに、知らされていないことに……どうしても―――心が納得出来ない。
「けれど、セルナに無理やり聞き出そうとして、今の関係が崩れるのも嫌なんですよね………」
結局のところ……勇気が足りない自分が嫌になる一色愛梨であったが、事態は彼女が知らない所で動くのだった……。
† † † † †
「それじゃ、英霊マルタの霊基は既に消え去っているのか?」
「ええ、しばらくの間は『自分の影響』は残ると言っていましたし、若干……強力な術も使えるでしょうが、まぁそれだけですね」
『ふむ。君の自己申告を疑うわけではないが、波長が合いすぎていたからね。何かにつけて彼女は出てくるぞ。間違いなく!!』
「こ、怖いこと言わないでください!! というか一応聖人なんですから、そういうオバケみたいに言うのはどうなんですか、ダ・ヴィンチちゃん!?」
器用にも羽を下げて『うらめしや〜』するようなオニキスのからかいに、深雪は若干涙目である。
本当にこいつは……。
「明日まで休みだが、そもそも休校日の後は祝日だからな」
「休みがあるのはいいことだよ。色々と落ち着く時間は必要だからな」
期せずして三連休となった一高だが、ほとんどの人間が休日として有意義な時間を取れていたわけではない。
特に刹那は、状況が状況ゆえにあの後―――親父のように、『黒くなった肌』『白い髪』……明らかによろしくない影響を受けたことで、『誰だ―――!?』などと同級・先輩一同から質問攻めにもあったのだから。
「
「いいや、詳しく話すと長くなるんだが、親父の刻印の影響を受けて、感染呪術も同然になるんだわ。正直、『この人』の魔術は人間業じゃない。まぁ俺の場合は、『余程のこと』をしなければ、あんな風にもならんのだが、今回は代償が大きすぎた」
『この人』という言葉で『右腕』を叩いた刹那は苦笑していた。魔術は等価交換によって成し遂げられる『人工奇跡』
ならば、その代償はどこかしらに出てくるものだ。
とはいえ、肌が浅黒くなり髪が白くなるという呪いは一日で『解呪』されているようで、いつも通りの『黒髪』に『黄色人種』の『遠坂 刹那』の姿が、ここにあったのだ。
魔法協会から出て共同のキャビネットに乗りながら、司波兄妹と連れ立って帰路に着いているのだが、達也は何かを切り出そうとしても切り出せないでいる。
その様子を察してリーナは『何かあるの?』と問いかけると、観念したように二人は口を開く。
「刹那、お前はいつか言ったな。『俺の秘密を話してやる』と―――今がその時なんじゃないか?」
「……そこまで知りたいのか?」
「ああ……エクスカリバーを放った後のお前の姿は……本当に信じがたいことだが、お前の言った通り、『穂波』さんを杖にした赤い外套の魔法使いと同じ―――。
沖縄で見たあの人は、お前の親父さんだった……。
内心ではお前の言うことの大半は、俺をはぐらかそうとして、虚言で撒いているものだと思っていた。
虚言ではなくても『真実』ではない―――」
言葉を区切る達也。その内心に何が渦巻いているかは分からない―――わけではなかった。恐らく、友人の内面を捌いて暴こうとしている自分に羞恥心を覚えているのだろう。
随分と感情豊かになったもんだと思う。その変化を快く思わない連中もいるだろうが、刹那はそんなことは思わない。
だからこそ……。
「いいさ。心の贅肉を溜め込むのも、たまには悪くない。
なんやかんや言いながらも、日本に来て一番関わりを持ったのは、達也、お前だ……。
話してやるよ。俺の秘密を、俺の……どうしようもなく失い続けた───それでも『止まる』ことをしなかった愚かなこれまでをな」
乾いた笑みを浮かべながら言う刹那の言葉を以て―――『セカイ』は変質を果たすことを約束していく……。
そして───遠く異郷の地にて……。
「ふぅむ。これはもしや『可能性』を引き当ててしまいましたかね。
ワタシが知らない『私』に関わる事象が、顕現するとは―――カレイドライナーたちと『魔法師』が関わると、こうも
この流れをカットしたいのにカットしきれない―――おおっ!!何とも如何ともし難いこの未来―――ですが、ワタシが動かなければならないようですね。
何せ場合によってはワタシも求めた『解答』。人はいつしも儚い可能性を求め、それに縋り生きていますからね―――」
遠く熱砂の大地において、遠く極東の地にて
半世紀以上も前のギークのごとき勢いで、それらを計算しつくした少女は、勢いよく立ち上がって決意する……。
そうだ、日本にいこう―――。
新たな邂逅は徐々に近づいていくのだった……。