なんか八坂真尋に憑依したらしいけど、ツッコミとか上手くフォーク投げるとか出来ないし、何より面倒だからそこら辺は本人に任せて俺はボケに回ることにした   作:姉川春翠

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まず謝らせて下さい。

タイトル長くて本当にすいませんでした(滝汗)


第一話 俺、真逆 真尋は憑依したらしいっす

 

 

 

 月明かりもない暗い夜道を、僕八坂真尋は果てし無く途方に暮れながら駆けていた。

 もう何時なのかもわからない闇の中で、僕は何者かに追われていた。何故追われているかはわからない。追われる理由なんてわからないし、何より心当たりがない。

 とりあえず僕はただひたすら恐怖しながら逃げる。のが、普通の人の変質者とも何かとも、得体の知れない何かに対する反応だろう。

 だけど僕は違った。普通ならば感じる恐怖など微塵も感じず、代わりに呆れ返り途方に暮れていた。同時に言いようもない怒りが込み上げていた。

 その原因は走りながら聞こえている声にあった。

 

《おいおい、逃げるばっかじゃつまんねぇって。戦えよ》

「無茶言うな。僕は変質者と戦う肝なんて持ってないって」

 

 つい先ほど聞こえた声。実は僕にしか聞こえなかったりする。その理由はある日突然僕に憑依した魂みたいな物だからだ。

 そいつにはちゃんとした名前があって、何でも冗談抜きに“真逆 真尋”というらしい。

 冗談であってほしい所だが、本当のことだ。夢であってほしい所なのだが、現実のことなのだ。現実逃避したいところだが、そんな暇などない。

 

《いやマジつまんねぇって!ただの変質者だろ? お得意のフォークで対抗しろって!》

「うるさい! お前と話してたらある酸素がなくなるだろうが!」

《何? 俺と話してたら、地球温暖化になって水没する?》

「誰もそこまで言ってないだろ!?」

 

 僕が途方に暮れている理由をお分かり頂けただろうか?

 走っている最中、それも全力疾走に近い走りの真っ只中に大声を出している。だから、体が酸素を求めてしょうがない。僕の息はもう荒れ荒れだ。だというのに、僕の体の中にいる真逆は喧しくボケをかまして来るのだ。

 

「ああ、もう! 誰か! 誰かぁ!」

 

 さっきから何度か周りに呼び掛けているが、不思議なことに誰からも返事がなかった。普通ならば窓を開けるなり人の気配がするのだが、代わりに感じ聞こえてくるのは僕をイライラさせる真逆の声だけだ。

 

《誰もいねぇって。それにこんな夜中に大声出して、ご近所さんに迷惑だろ? 母さん、そんな子に育てたような覚えはありませんよ!?》

「お前は僕の母親じゃないだろ!? わざとらしい裏声出すな気色悪い!」

 

 正直言うと、変質者なんかよりもこっちの喧しいのをどうにかしてほしい。色んな意味でこっちのが質が悪い。

 それに僕が逃げているのは、その相手がただの変質者ではないと感じているからだ。逃げる直前に見た影は異様だった。そして、今いる道も。

 辺りには普通に住宅が立ち並んでいる。だと言うのに先ほども言ったが、僕が何度助けを求めて叫んでも人が出てくることはなかった。

 

《ほらほら走れ走れ! 追いつかれるぞー?》

「お前さっきまで戦え戦え言ってなかったか? と言うかそんな口叩いてる暇があったら、お前も助けを」

《あー、無理無理。俺の声お前にしか聞こえないから。叫ぶだけ無駄の無駄無駄無駄。お前がうるさいと感じるだけだ》

「自覚あるなら今すぐその口を閉じろぉ!」

 

 そう叫んで、僕はハッとした。当てのない暗い夜道を、ただ行き当たりバッタリで走っていた僕の前に行き止まりが立ちはだかったからだ。

 

《おぅ……行き止まりだな。わかりやすく言えば断崖絶壁並みの》

「お、お前はなんでそんなに緊張感ないんだよ……」

 

 立ち止まったことにより息を切らす僕。が、背中に悪寒を感じすぐに辺りを見回し、ぼんやりとした頭で上空を見る。そこにはかろうじて人型と認識できる何かがいた。

 得体の知れない何かどころじゃない。僕の背筋は恐怖で凍り――

 

「ぼ、僕はあんなモノに追われていたのか?」

《……。みたいだな》

 

――着くことはなかった。

 さすがの真逆も想定していなかったようで、何とも微妙な声のトーンで言う。

 化け物。そう呼んでもおかしくはない得体の知れない生物は降り立ち、僕の前に立ちはだかる。気持ち悪い。実に気色悪い。

 背には高い塀。目の前には怪物。絶対絶命、まさに袋小路とはこのことなのだろう。

 

《あー、しゃらくせぇ。体貸せ体》

 

 そう真逆が言うと、体が意思に反して動き出した。

 ちゃんと意識はあるし視界も良好。その代わり体は僕の言うとおりに動かなかった。わかりやすく言えば、金縛りにあった感覚と言えばいいのだろうか。

 

「おい化け物だか履き物だか巻物だか出来物だか絶叫ものだか――」

《長いんだよ! ていうか何するつもりだ!?》

 

 そう言うと、僕の手が二、三度握ったり開いたりし、なんとなく口がニィっと動いたような気がした。

 

「んなもん決まってんだろ?あの化け物をぶん殴るんだよ」

 

 そう真逆が言うと、僕の体は目の前の怪物に向かって走り出した。

 止まれ、止まれ!

 そう考え、思っていても僕の体は留まることを知らない。そして僕の体は拳を握り、怪物の体に直撃したその瞬間――

 

――ズドガァン!

 

――とまあ、物凄い轟音と共に目の前にいた怪物がものの見事に、跡形も無く吹き飛んだ。

 しかもその勢いは留まることなかれ、周りにあった塀も殴った衝撃からか瓦礫と化した。と言うか。

 

《やり過ぎだバカ!》

「え、槍が通りすがりの仮面ライダー?」

《んなこと誰も言ってない! 難聴かよお前は!?》

「難聴じゃない。真逆だ」

《うるせぇよ!》

 

 殴りたい。そういう衝動に駆られるが、何分真逆は僕の体の中。殴りたくとも殴れない。

 

「ほれ。体返すぞ」

 

 そう言った途端、僕に体の感覚が戻ってきた。突然のことにバランスを崩し、持ち堪える。

 

「お前に体使わせると碌な事にならないよな。なんか左手痛いし」

《それはしゃーない。体が馴染んでへんし》

「なんで突然変な喋り方になるんだよ」

《特に意味はない、キリッ》

「口で言うなよ」

《口などないわ。あるのは不屈の闘志のみ!》

 

 無視だ無視。こう言う時は無視に限る事を僕は知っている。

 

《そんな虫のいい話はない》

「誰が上手いこと言えと? あと心読むな気色悪い」

 

 異様な疲れが僕の体に重くのし掛かる。今日はもう早く帰って寝たい。そう思っていた時だった。

 

「あれー? もしかしてもしかしなくとも解決しちゃいましたー?」

 

 そんな、なんとも気の抜けた声が何処からかともなく聞こえてきた。

 なんとなく嫌な予感を感じながらも、僕は声の聞こえた方、上の方を見上げた。

 

「情報ではただの普通の地球人なのに、まさか倒してしまうとはいやはや」

 

 そこには白銀の髪をした、碧眼の少女がいた。

 

「こんばんは。いつもニコニコあなたの隣に這い寄る混沌、ニャルラトホテプです」

 

 この時僕は、毎日が喧しい日常になってしまうような、嫌な予感がしていた。

 

 

 僕の嫌な予感はそう遅くはなく、むしろ早々に的中した。

 

「おぉー! さすが地球。真逆さん、これが地球ですかー!」

「おぅよ! これが地球の、いや日本の文化よ!」

 

 ニャルラトホテプと名乗った少女と、僕の体を使って好き勝手言っている真逆がテレビアニメを見てはしゃいでいるのだ。と言うか。

 

《お前はなんだ! ニャルラトホテプと名乗ったそこのお前!》

「いやー、まさか八坂真尋さんの中に憑依している者がいたとは。しかも名前が冗談抜きで“真逆 真尋”とは」

《無視するな! さっき真逆の声に反応していた時点で聞こえているのはわかっているんだからな!》

 

 ニャルラトホテプと名乗った少女と真逆はそれでもしれっとした態度でアニメを見ている。

 フォークを刺す。そういう行動をしたいが今体の主導権は真逆にある。こうあってはどうすることも出来そうにない。

 

《おい真逆。極力僕の体は使わない約束じゃなかったか?》

「そういやそんなこと言ってたな」

 

 そう真逆が言うと、体の主導権は僕に戻った。説明はしづらいが感覚でなんとなくわかる感じだ。

 

「さてと……」

「よし! いけっ、そこだーっ! ってギャーッス!?」

 

 とりあえず僕はアニメに熱中しているニャルラトホテプと名乗ったやつの手の甲にフォークを突き刺した。

 

「さ、刺さったー!? 刺さりましたよ真尋さん!」

「なんでお前さっき僕を無視したのに、僕と真逆が入れ替わったのはわかっているんだよ」

「だってさっき真逆さんが体を返すみたいなことを」

 

 よくわからんやつだ。素直にそう思う。

 

「それで? お前は何者なんだ?」

「あ、待ってください真尋さん。今いいところなんで」

 

 どうやらまだ足りないようだ。僕は二、三度くらい連続して手の甲をフォークで突き刺した。

 

「ひっ、ぎゃっす!?」

「次は16回連続で行くが、どうする?」

《アイフル〜♪》

「話ややこしくなるからお前は黙ってろ」

 

 隙あらばボケてくる真逆をどうにかしたいが、今は目の前に集中だ。

 

「わかりましたよ、わかりました。それでなんですか?」

「聞きたい事があるってさっき言ったよな?」

「そんな一昔前のことを――スイマセンホントスイマセン」

 

 何か言いそうだったため、僕はフォークを無言でちらつかせる。すると目の前の少女は片言でわざとらしく謝った。

 

「お前は何者だ。僕はそれをまず聞いているんだ」

「私ですか? 私は先ほど申したように、ニャルラトホテプと言います」

「ニャルラトホテプと言うと、あのクトゥルーのか?」

「はい、そうです」

 

 ふぅん。って――

 

「待て、僕の知っているのは」

《黒衣の修道服を着た女性の姿をした――》

「そうそう、じゃない! ややこしくなるから喋るなって言っただろ!?」

《喋りたくな〜る》

 

 もういい。無視だ無視。

 

「僕のイメージだともっとこう――」

《オパーイが豊富な――》

「――モンスターのような感じなんだが。触手とかがあって」

《フッ……やるな少年! だがまだまだだ!》

 

 なんだろうな。今なら見えない何かにフォークを突き刺せる気がする。

 

「まあご説明しますと、私ニャルラトホテプはあるお仕事でやって来たのですよ」

「仕事?」

 

 どうやらニャルラトホテプも僕の思いを理解したのか話をし始めた。

 やっと話が進む。そう思うと内心、安堵のため息が出る。

 

「はい。惑星保護機構がある情報をキャッチしたことが発端で、私はここ地球にやって来たんです」

「惑星保護機構?」

《あれだろ? 簡単に言えば、動物愛護団体の宇宙版だろ?》

「はい、そうです」

 

 ふぅん……って。

 

「真逆、なんで知っているんだ?」

《ん? そういやなんでだろうな?》

「怒るぞ、いい加減」

《いやいや、冗談抜きで、本当にわかんねぇんだよ。何か知らないが、どっかで聞いたことがあるんだよなぁ〜?》

 

 ちなみに僕に憑依している真逆には、それ以前の記憶がないらしい。あるのは“真逆 真尋”という名前だけらしい。

 

――それにしたっていらん知識が豊富な気がするが。

 

 と、つい話が逸れてしまった。

 

「なるほどな。つまりお前はニャルラトホテプという名前の宇宙人ってことか」

「はい。というか、冷静ですね真尋さん。普通なら非現実的で疑いを持つはずですが」

「もうすでに非現実的なことが身に起こっているから何とも言えん」

「なるほど……確かに」

 

 ニャルラトホテプは納得してくれたようだ。だって、憑依なんてどう考えても非現実的だろ。

 

「まあそれでですね。我々が追っていた犯罪組織が地球で大規模な取り引きを行なうみたいなんですよ」

《麻薬とか宇宙にある武器とかか?》

「近いですね。というか真逆さん詳しいですね。あなた実は惑星保護機構の人だったのでは?」

《ないない。確かに人間離れした怪力を持っていた記憶はあるが、普通の人間だったはずだ》

「人間離れした怪力の時点で普通の人間ではない気もしますが」

 

 確かにそれは僕も思った。しかも僕の体を使ってもそれが再現出来ているのだから尚更だ。

 

「と、話が脱線しかけましたが、真逆さんは何故私が真尋さんに接触したかわかりますか?」

《さっき追って来てたのがその犯罪組織のヤツなんだとしたら、人身売買か何かか?》

「ご明察……正解です」

「待て待て待て! 僕が知らない間に話が進みすぎだろっ!」

《いや、そうでもないだろ》

 

 さっきまで話が全く進まなかったのは何だったんだ?

 そんな疑問が浮かぶほど話が着々と進んでいた。

 

「人身売買って、なんで僕が」

「そこら辺詳しいことはわかりませんが、真尋さんが襲われたのも事実です」

 

 そう言われてしまっては反論のしようがない。僕はなんとも言えないような表情で、ニャルラトホテプの話を聞いた。

 

「まあそんなわけで、私は真尋さんの護衛かつ犯罪組織の取引ルートを潰すためにやって来たわけです」

「なるほど、大体は理解出来た」

「でも正直、私の護衛別にいらなさそうですね。真逆さん強いみたいですし」

《いや、そうでもねぇよ。今回はちょっと面倒だったから倒したが、本来この体はあまり使わないようにしてんだよ》

「何故ですか?」

 

 真逆が僕の体を使わない理由。それはなんでも、体が真逆に馴染みすぎると僕の存在が消えてしまう可能性があるらしい。実際そうなってしまうかは本人にもわからないらしいが、万が一消えてしまっては胸糞が悪いだとか言っていた。

 とまあ五月蝿い時が多いのがあれだが、僕の存在が消えてしまうことを良しとしない辺り、なんだかんだ言って良い奴なんだと思っている。

 

「なるほどなるほど。こちらとしても真尋さんが消えてしまうのは色々と困りますので、ありがたいですね」

《そうそう。つまりはお互いのためになるわけだ。というわけだから、まあ、こいつのお守りはお前に全て任せた。精進するように》

了解(ラジャー)!!」

 

 何故真逆がニャルラトホテプに対して偉そうなのかは知らない。が、しかし何でだろうな。真逆はああ言っているけど、なんとなく他にも理由があるような気がする。それもとんでもなく碌でもない理由が。

 

《ほう? そこに気づくとは、やはり八坂真尋もただのバカではなかったということか》

「お前まさか僕に喧嘩でも売ってんのか?」

《今なら大安売り、今だけ大特価! なんと原価1000000円のところをたったの999999円!!》

「どこが大安売りだ! どこが大特価だ! ただの1円引きじゃねぇか! て言うか高いわっ!!」

 

 ワナワナと込み上げてくるドス黒い感情。僕はそれに対して、フォークを強く握り締めた。

 その怒りが伝わったのだろう、ニャルラトホテプが少々顔を引きつっているのが見える。

 

「ほら真逆。他にも理由があるなら言ってみろ。返答次第では僕は修羅をも大邪神すら凌駕出来る存在になれるぞ?」

「ま、真尋さん。マジで修羅や大邪神を凌駕しそうなオーラを――」

「ほら真逆。他にも理由があるなら言ってみろ。返答次第では大邪神様ことニャルラトホテプが犠牲になるぞ?」

「――んな理不尽なっ!?」

 

 理不尽?

 いいや、違うな。これはただの憂さ晴らしだ。

 

「それを世間一般で言う理不尽と言いまして――」

「ほう? いつからお前は僕の心を読めるようなご身分になったんだ?」

「イ、イヤー? ナ、ナンノコトデショウカネー? ほ、ほら真逆さん。他にもちゃんとした理由があるんでしょう? ありますよね!? あるんだろお前! ほら、はよ吐けやっ!」

 

 恐怖からか段々恐喝染みた言い方になるニャルラトホテプ。そんな少々壊れ気味の奴を傍目に真逆はスー、ハーと深呼吸をして言った。

 

《なんか八坂真尋に憑依したらしいけどツッコミとか上手くフォーク投げるとか出来ないし何より面倒くさいからそこら辺は本人に任せてとりあえず俺はボケに回ろうと、そう思っただけであ〜る》

 

 真逆がマシンガン並みの速さでそう言うと、リビングは一気に静まり返った。当然僕の怒りの沸点は最高潮に達したわけで、とりあえず現状でわかることは――

 

――ニャルラトホテプ、アウトぉ〜♪

 

「えっ? ちょ、真尋さんっ?」

 

――なんか真逆真尋が憑依したらしいけど僕の体の中にいるからどうすることも出来ないし何よりストレスが溜まっておかしくなりそうだしとりあえず憂さ晴らしだとかストレス発散だとかその他諸々の理由で僕はニャルラトホテプの手の甲を16回くらい連続でフォークを突き刺した。

 

「ひぎぃ!? ぷぎゃぁ!? ぎゃふん!? ギニャァァァアっすっ!?」

 

 その結果後に残ったのは、大邪神様ことニャルラトホテプの悲痛の叫び声だけだった。

 

 




どうも。初めましての方は初めまして。そうでない方はそうですね……シャッス!嘘です、こんにちは。
いつもダラダラ、と思いきや毎日が勉強。不屈の心です。

ノリと勢いで始めてしまった今作。とりあえず言いたいことは、タイトルが長いよ。自分でもびっくりだよ。というか結構読者置いてけぼりな気もw

一応予定としてはアニメ二期辺りまでやるつもりです。人気が出ればもう少し行くかも? 出ない可能性高いですけど(汗)

P.S.真逆の設定とか書いた方がいいですかね?
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