なんか八坂真尋に憑依したらしいけど、ツッコミとか上手くフォーク投げるとか出来ないし、何より面倒だからそこら辺は本人に任せて俺はボケに回ることにした 作:姉川春翠
「し、しまったですョ! もうカートリッジがないですョ!」
うん、なんとなく知ってた。と思いながら苦笑を浮かべる。この体でほんとに浮かんでるかは知らんけど。
「どうやら我が宇宙CQCジャマーキャンセラーブレイカーイレイザーコンファイナーオブストラクターバスタークローザーバニッシャー改零式タイプ2カスタムネオファイナルの勝ちのようだな!」
途中から聞いてなかったけど、こいつらどんだけジャマー系のカートリッジ持ってたんだよ。
「なんでこれだけ付き合わされた挙句に何も事態が好転してないんだ?」
「やっぱり日頃の行いじゃないか?」
こめかみを押しながら項垂れるニャル子(真尋)に苦笑しながら答える。
別にこいつの行いが常日頃悪いわけではないけど、たまにフォークで刺したり刺したり刺したりするのが良くないんじゃないかな。
「うぅ……これじゃ宇宙CQCが使えない。まるで玩具にされた気分……」
クー子が涙目で訴える。
そうだよな。あんだけ砲台が出たり消えたりのやりたい放題されたらそういう気分にもなるよな。
「なに塩らしくしてんですか。ここはバシッと生身で抑えに行きなさいよ。まずはCQCの基本を思い出して、さあいけクー子!」
「あなたが宇宙CQCだと思ったものが宇宙CQC……あなたが宇宙CQCだと思ったものが宇宙CQC……あなたが宇宙CQCだと思ったものが宇宙CQC……」
ぶつぶつと呪文のようにクー子が唱える。自己暗示的なやつなんだろうか。まあ、近接格闘が普通だもんな。うん。
すると対面にいるイス動がカートリッジを機械に装填しこちらに向けてきた。
どうやら逃走した際に見せた邪神召喚をするつもりみたいだな。
「ふん! これ以上邪魔だてさせるものか! 出でよ我が僕たちよ!」
トリガーを引くとレンズ部が発光しナイトゴーントの群勢が現れる。その数は見た感じ二十程度と言ったところか。
一体どこにジャマー系に加えてこれだけの数を召喚するカートリッジを隠し持っていたのかは疑問だが……。
「またナイトゴーントかよ!」
幾度となく見てきた姿に飽き飽きしたのかニャル子(真尋)が声を上げる。
俺もちょっと登場回数が多い気がするなとは思っていたけど、気のせいじゃなかったみたいだ。
「……宇宙CQC無しでもナイトゴーントくらいは倒せる。けど数が多い」
「いくらなんでも数が多すぎるですョ。本来ひとつのカートリッジに入れられるのは数体ほどのはずなのですョ。それがひとつのカートリッジにこれだけの数なんておかしいのですョ」
どうやらこの数はイス香でも未知の数らしい。
現状戦力となり得るのはクー子だけ。真尋はニャル子の体を上手く使えないだろうし、ニャル子に至っては真尋の体ゆえに激しい戦いは厳しい。イス香は言わずもがな戦いには不向きな奴だろうし。
そんなことを考えていた折、真尋(ニャル子)が舌打ちを鳴らした。
「こうなったら仕方ありません。正直これをするのは嫌だったのですが」
「何か策があるのかニャル子?」
ニャル子(真尋)に問いかけられて真尋(ニャル子)がこっちを見る。うん、ややこしい。
それはそれとして何故か俺の方に顔を向けているわけだが、いやまさかな。
「そんなの決まってるじゃないですか。真逆さんがこの真尋さんの体を使ってチョチョイのチョイで万事解決するんですよ」
そのまさかだった。こんにちは真逆真尋です。
「いやいやいや、さすがにこれ以上はまずいって。お前も気づいてるんだろ? 未来に影響が出始めてるってさ」
「未来に影響が出始めてるって、それの何がいけないんです?」
「何がってそりゃ――あっ……」
そうだ。そいや俺、ニャル子にはまだ自分の正体を話してないんだった。
「いやほら、真尋が消えちまうかもしれないだろ?」
「でもそれってあなたの感想ですよね?」
「それはそうなんだけども。てかその返しはズルいだろお前」
「正直私は半信半疑なんですよね。真逆さんの言うその真尋さんが消えてしまうかもっていう話。だってもし真尋さんがそんなに曖昧な存在になってしまっているのなら、今こうして入れ替わってる時点で何か起きないと説明がつかないじゃないですか」
確かにニャル子の言い分は一理あるし、実際のところ俺も自分の正体と照らし合わせた時にそんな予感がするってだけで、どちらかの消滅が起こるという確証たるものはない。
「それに今この群勢に対処できるのは真逆さん……あなただけですよ」
宇宙CQCジャマー以下略は宇宙CQCを封じるためのもの。一方で俺の力は宇宙CQCとはまったく異なるもの。おそらく効果を受けず力を存分に振るえるはずだ。
そうニャル子は考えているのだろう。
「う、うむ……」
「あー、すまん。ひとつ聞いていいか?」
頭を悩ませていると不意にニャル子(真尋)が声をかけてきた。
「んだよ、今取り込み中で――」
「なんであいつら律儀にこっちの話が終わるの待ってんだ?」
「……いや知らんがな」
指摘通り確かにナイトゴーントの群勢はこちらの様子を伺うばかりで特に襲ってくる様子はない。イス動の指示がないからだろうか。
「ふん! 媒体の関係上フォーカスを受けないと行動に移せないだけだ。勘違いするな!」
「いやもうマジでメタいとかいう次元越えてんだろその発言」
ニャル子(真尋)と声を揃えてツッコミを入れる。
「このままだと話が一向に進みませんよ真逆さん」
「え、なに? この世界の時間進行俺に委ねられてんの?」
「今はあなたの視点なんですから当然でしょう?」
「もうやだこの世界」
「……それについては同感だよ真逆」
ニャル子(真尋)と二人して項垂れる。
困り果て助けを求めるべく俺はクー子に視線を送る。あいつは正体を知っている。それなら少しくらい助け舟を出して――
「……もう一人の少年。決断すべき」
――くれなかった。
「真尋……いいか?」
「こうなったらもう仕方ない。頼んだ真逆」
真尋からの許可も出た。
仕方ない。本当は今回静観しているつもりだったが、ここまで注目されてしまっては却って行動を移さないわけにもいかない。
「分かった。クー子、少し時間を稼いでくれるか」
「……分かった」
返事をするとクー子は構えを取る。どこかで見たことある構えだがなんだったかなあれ。
「真尋さんも
「仕様がない。ただ戦うのは真逆の準備が終わるまでだぞ」
ニャル子(真尋)も戦闘体制に入る。
「私は戦いの行方を見守っているのですョ!」
「いや待てお前もなんか出せよあいつみたいに。てかまだ充電が終わらねーのかよ」
「残念ながらジャマー系しか持ってこなかったのですョ。充電もあと少しといったところなのですョ。一生の不覚ですョ」
「お前一生の不覚が多そうだな」
「ショボンヌなのですョ」
とりあえず話は纏まった。それまでイス動とナイトゴーントが微動だにしなかったのはホントどういうことだよと言いたいところだが、こちらとしては有難い状況だ。
「ふん。ようやく話が纏まったようだな」
「なんで律儀に待ってくれてたんだよお前もお前で」
「だから言っただろう。媒体の」
「分かった。もうそれ以上言うな」
ニャル子(真尋)はイス動の発言を遮ると駆け出す。どうやら襲われる前に襲い掛かる算段らしい。前までナイトゴーントに逃げてたはずなのに逞しく成長したものだ。
「ゆけ! ナイトゴーントたちよ!」
イス動の号令に応え、ナイトゴーントたちが雄叫びをあげて突っ込んでくる。
それにしても数が多い。幾らナイトゴーントとはいえ、二人だけではこちらに流れ込んでくるのは必至と言えた。
「真逆さん急いでください」
「あーもうわかったよ」
俺は目を閉じて体の奥底から力を入れる。すると腹のあたりから何か込み上げてくるような感覚があった。おそらくこの体にある俺の魂の塊が外に出ようとしているのだろう。
「ふん! ぐ、ぐぬぬぬぬ……ッ!」
込み上げてくる何かを吐き出そうとさらに力を込める。今俺の周りには気のような何かが出ているだろう。多分。
「うお……ォ……オオオオオォーッ!」
気合いの雄叫びとともに俺は口を開けて込み上げてきた何かを吐き出した。
「オロ……オロロロロロ……オエェゲフッごぼろろぉ」
「いや……えっ? 真逆さん?」
吐き出した何かを俺も目視する。
口から出てきたのは茶色い液体。白いものが入り混じったその何かに俺は見覚えがある。
しかし止めることが出来ず途中から虹色の滝となって地面に溢れていく。
ちらりと視線を泳がせると、俺の隣で真尋(ニャル子)とイス香が絶句しているのが見える。
前方にも視線を向けると、今まさに戦いの火蓋が切って落とされようとしていた筈の面々が動きを止めてこちらを見ている。
「オボロ! オボボオボボロ!」
「いや何言ってるか分からないです」
デトロ! 開けろいと市警だ! と言ったつもりである。
「いやなんで突然」
「オボロボボロ」
特に意味はない。
「文字数に対して内容が合ってないんですが」
しばらく真尋(ニャル子)とこんな感じのやり取りをしていると滝の流れが止まった。
ふぅと一息吐いてから、俺は頭の後ろに手を当てて舌のような何かを出しながら言い放った。
「ごめんニャル子。お昼に食べたカレー全部吐き出しちゃった」
そう、俺が吐き出したのは魂の塊ではなくお昼に食べたカレーだった。どうやら思っていた通り消化されていたわけではないらしい。そりゃそうだよな。
「あーなるほどやっぱりカレーでしたかってこのスカポンタン!」
「だって出ちゃったものは仕様がないじゃん」
「今の状況分かってます!? ふざけている場合じゃないんですよ!」
「いやだってこの体からどうやって出るか分かんないし」
「……え、マジですか?」
「うん、大まじ」
戦うことを了承したのはいいけど、よくよく考えたらこの体から出る方法が分からない。
今までは真尋の体から自由に出入り出来ていたが、それはあくまで真尋に主導権を与えられたからだ。
だが今は誰かに体の主導権を握らせることも出来ない状態。とりあえず試しに力を入れてこの体から出るような感じをやってみたが、結果ご覧の有様だ。
「ちょ、これは想定外ですよ」
「すまん。俺も想定外だったわ」
「ククク、どうやら目論見は外れたようだな」
俺たちの動揺を見てイス動が笑う。奴からしてみれば格好のチャンス。この機を逃す手はない。
「ゆけ! 全員排除するのだ!」
ナイトゴーントが一斉に襲い掛かる。
「くそ!」
ニャル子の体で真尋はすぐさま応戦する。徒手空拳で敵を倒しているあたり、それなりに扱えているようだ。
「……少年ばかりにカッコいい思いはさせない」
負けじとクー子も応戦。二人の処理速度は速いがそれでも限界がある。
内四体のナイトゴーントが二人の攻撃を掻い潜りこちらに向かってきた。
「わ、私は非戦闘員なのですョ! 守ってほしいのですョ!」
「ちょ、イス香さん!? 私を盾にしないでもらえます!? 大事な真尋さんの体に傷が!」
イス香が真尋(ニャル子)の背後に縮こまっている。ニャル子の指摘通り真尋の体を盾にしているような状態だ。
「まずい! おいクー子!」
「こっちも手が離せない」
「くそ! どうにかならないのかよ!」
複数のナイトゴーント相手に善戦する二人も焦りを見せる。
こっちにいるメンツは戦闘できない者ばかり。増して真尋に至っては自分の体の危機なのだから動揺して当然だ。
「なっ!? ちょっと真逆さんあれは!」
「ん? おお、あれは……」
こちらに向かっているナイトゴーント達が縦一列に並んでいる。あのフォーメーションには見覚えがある。
「あ、あれは噂に名高いジェットストリームアタックなのですョ!?」
まあそれだと四体目は一体誰なんだって話になるんだけど。
でも縦に一列か。それならなんとかなるかも。
「しゃーない。試してみるか」
「真逆さん? 何か秘策が?」
秘策つっても単純なことだ。
俺は何処からかともなく酒瓶を模したぬいぐるみを取り出すと、バットのように構える。
「ふん! その小さな図体で何ができるというのだ」
今の俺の体は確かにおかしな猫のぬいぐるみ。その大きさは両手の平に乗せられる程度のもの。
だが忘れないでほしいことが一つある。我が力は肉体にあらず、魂に刻まれているのだということを。
つまり別にこの体でも怪力は自在ということだ。
「ほーむらんこんてすとー」
ふざけた口調でそう言いながら、軽く力を入れて酒瓶をスイングした。
すると先頭のナイトゴーントの足に酒瓶が当たるや否や、轟音とともに後列の三体も巻き添えに吹き飛んだ。
「ハ?」
「エ?」
「エ?」
「イ?」
「ヤベーイ」
あまりの衝撃にニャル子(真尋)、クー子、真尋(ニャル子)、イス香、そしてイス動の順番で素っ頓狂な声を発する。
「さあ、反撃を始めようか」
俺はキメ顔でそう付け加えた。