なんか八坂真尋に憑依したらしいけど、ツッコミとか上手くフォーク投げるとか出来ないし、何より面倒だからそこら辺は本人に任せて俺はボケに回ることにした   作:姉川春翠

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第三話 さあ、闇のゲームの始まりだ。話には全く関係ないけど

 

 

「ほれほれ、これがいいんですかー?」

 

…………。

 

「これだけで済むとでも?」

 

…………。

 

「フフフフフ……」

「おい、ニャルラトホテプ。お前何してる」

「何って、真尋さんを襲う化け物退治ですが」

《ちなみに今倒したのはナイトゴーントだな》

 

  よし、よくわからないがとりあえず。

 

「お前ら、刺すぞ」

 

  真逆、ニャルラトホテプ両名にフォークを突き刺した。

 

 

「で、何だよ今のは」

「あ、あれは真尋さんを襲って来たナイトゴーントという宇宙人で、私は真尋さんを餌にして奴らをおびき寄せました」

 

  状況がわからない。そう思うのが当事者である僕なのだが、おそらく誰もが同じ状況に置かれればそう思うだろう。

  事を遡ること数分前。僕はニャルラトホテプ星人のニャル子と共に少し街を出歩いていた。と言うのも、色々まだわからない事があるからそれを聞く為であったのだが、するとその時、先程ニャル子が倒していた黒い影の様な宇宙人に襲われたのだ。

  ほら見ろ言わんこっちゃない。大体狙われているのに街を出歩けば襲われるに決まっている。そう思っていた僕に対しニャル子が言い放ったのは「護衛対象は泳がせて敵をおびき寄せろ」というどこで習ったかわからない格言だった。

  そんなこんなで、僕を襲って来た変な怪物をニャル子は倒し、僕はそれを途中から聞こえ始めた歪な音を耳で抑えながらほとぼりが冷めるのを待っていた次第だ。

 

《いや、待ってなかったと思うんだが》

「気のせいだろ」

《気のせいじゃねぇし!さっきフォークで刺してたし!》

「お前、ツッコミしないんじゃなかったのか?」

《お前、何としてでもツッコミに引き込むつもりかよ》

 

  だってその方が楽だし、ストレスにもならないし。何よりもその方が五月蝿くないからだ。

 

《お前、普段からそう言う風に思ってたのな》

 

  そんな事よりも気掛かりなのはやはりニャルラトホテプ星人ことニャル子だ。

 

《あ、無視っすかそうですか。何か最近扱い酷いよなお前》

 

  コイツ、僕の護衛にも関わらず犯罪組織側の人間……と言っていいのかどうかわからないが、それをおびき寄せる為に僕をわざわざ外を出歩かせたのだ。ここはきっちり白黒付けないと、後々面倒なことになり兼ねない。いや、もうすでに面倒なことになっているけど。

 

「お前は僕の護衛する気あるのか?」

「それは勿論ありますとも!」

「じゃあ何で僕を囮のような扱いしたんだよ」

「だってそうすれば、スピード解決でいい感じ~♪

ってな感じになれますし」

 

  解決?今コイツ、解決って言ったよな?

 

「なあお前。だったらさっきの奴、拷問とかして組織のこと聞き出せば良かったんじゃないのか?」

《ダメだなー?真尋くんは》

 

  何だ?何か間違っていたか?そうすれば合理的かつ手早く済ませられると思うんだが。それにその方が襲われなくて楽だし。

 

《いいか、少年。よく聞きたまえ》

「何だよ?」

《君の住むこの世界は、ご都合主義で成り立っているのだよ!》

「その通りなのですよ!真尋さん!」

「……。そうか。じゃあそのご都合主義ってのでフォーク刺されても何も文句言わないよな?」

《えっ?ちょ、おま。あ、そうか。コイツの体の中に戻れば回避出来って、何?戻れない……だと?》

 

  一度目を瞑り、何度か大きく深呼吸をする。

 

「あの、ま、真尋さん?落ち着きましょうよ?ねっ?ほら、深呼吸をして」

 

  そしてポケットから数本のフォークを取り出し、口を大きく開いた。

 

「お前ら二人とも、幾星霜の時を経てここで死ねぇ!」

 

  そう叫んだと同時に、僕は数本のフォークを真逆真尋、ニャルラトホテプ両名に投擲した。

 

《「ぎょえぇえぇぇぇーーっ!!」》

 

  その際、二人の叫び声は天高らかに響き渡るのであった。

 

 

 

  夜になると、夕食を食べ終えた僕は湯船にお湯を入れてそこに浸かっていた。

 

「はぁ……落ち着くなぁ、風呂は」

《だな。風呂は落ち着くよなぁ……》

「……いや、お前何でいんの?」

 

  真逆が半透明ではあるが、風呂場の壁に寄りかかり腕を組んで立っていた。僕が裸なのに対し、服が濡れる事のない真逆は私服を着用したまま。

  と言うか、風呂場の中にまで来て欲しくはない。あの漫画のような事が出来るのなら心の奥に閉じ籠って一生出てこないで欲しい。

 

《別にいいだろ?減るもんじゃないし》

「お前まさか、あっち系の人間なのか?」

《安心しろ、それはないから。多分この姿になる前彼女もいただろうし》

 

  とんでもなくポジティブな思考だ。こんな奴の彼女になりたい人間なんているのか?

  いや、もしかしたら彼女はいてもそれは人間ではない可能性もある。例えば、イカとか?

 

《いや、それは色々NGだろ》

「心を読むなと言っているだろ気色悪い。あと例えだ例え」

《いや、例えでも語尾にゲソとか付けられても困ると言うか》

「お前の方が問題あるだろうがっ!」

 

  誰もそこまで言っていないのに、どうしたらそんな想像してしまうのか。一度コイツの脳を見てみたい。そもそも脳なんてあるのかも怪しい所だが。

 

《ホントひどい言いようだよな、お前》

「そもそもお前が僕の心を読まなければ言わないんだけどな」

《あ、うん。反省するつもりが無いのはよくわかった》

 

  反省?反省しても何の得もないだろ。

  しかし朝見ても思ったけど、どうして真逆はこんなに似ているのだろうか。顔立ちが瓜二つなのがどうも気にかかる。

 

「お前その姿って、僕を元にしたのか?」

《いや、特に意識してないな。多分これが俺の素の姿なんだと思うが。別に珍しい事でもないだろ?》

 

  まあ確かに世の中には二、三人似た人間がいると聞くが、しかしよく考えても見ろ。この真逆真尋と言う男は今幽霊だ。つまり――。

 

《真のドッペルゲンガーってか?》

「だから心を読むな。そして近づくな」

《ついにそこまで言うかお前は。まあわからん事もないんだが》

 

  そう言うと真逆はため息を吐く。

  歯を磨く時に鏡を見るからわかるが、本当に真逆は僕に似ている。双子の兄弟のような錯覚を覚える程だ。

  しかし似ていない部分も多々ある。まず髪の毛。真逆の髪の毛は少し変わっていて、黒と銀が入り混じったアンテナが一本立っている。もとい、アホ毛が立っている。

  そして何よりも違うのは性格だ。コイツには人をおちょくる精神があるようで、正直毎日イライラしている。

 

《イライラって……》

「まあ似ているようで似ていないから、ドッペルゲンガーではないだろ」

《いいえ、ドッペルです》

 

  さて、風呂から上がるとしよう。これ以上長く入っていると、逆上せて倒れてしまいそうだ。

 

《……。所でお前、あいつの事どう思っているんだ?》

 

  服を着ていると、真逆はそんな質問をして来た。

 

「あいつって誰だよ?」

《ほら、お前のお守りの――》

「ニャル子の事か?別に特に何とも」

 

  急におかしな事を聞く奴だな。と、小声で呟く。

  ニャル子。それがあのニャルラトホテプ星人の名前。真逆が何故その名前を知っていたかはわからないが、内心有り難く思っている。

  なんせ、いい加減ニャルラトホテプと言うのも面倒になって来ていたし。

 

「って言うか、何でそんな事を聞くんだよ?」

《そりゃあいつ、お前に一目惚れしたって言ってたし》

「は?」

 

  そんな話は初耳だ。

 

「いつ聞いたんだよ?」

《朝聞いた》

 

  ああ、だから僕の攻略法とか何とか言っていたのか。思い出し、ふとある事に気がついた。

 

「一目惚れ?一目惚れって言ったか?お前」

《そう言ったが?まさか今の今までその話をしている事に気づいてなかったのか?》

「まったく気がついてなかった」

《お前、芸人の才能があるんじゃね?》

 

  そんな才能は正直いらない。

  それよりも一目惚れについてだ。あいつが一目惚れって。

 

「悪夢だな」

《おい、ひでぇなお前》

 

  そうか?確かにまあアイツ見た目はいいし。そう、今現在の見た目はいいし。

 

「ま、悪いとは思わないけどな」

《なるほど、ツンデレってやつか》

「どこをどう取ったらそうなった」

 

  しかし、一目惚れか。

 

「僕に一目惚れの要素なんか無いと思うんだが」

《わからんぞ?意外にクラスにもお前を好きなやついるかもしれん》

「ないない」

 

  そう吐き捨てるように言い、服を着た僕は脱衣所から出ようと扉を開いた。すると目の前にどう言うわけか、ニャル子が土下座して待っていた。

 

「……。お前、何してんの?」

「お湯加減はどうでしたか?ご主人様」

「会話をしろよ。そして質問に答えろ。さもなくば刺すぞ」

 

  脅迫染みた言葉を掛けると、下げていた頭を上げてニャル子は満面の笑顔を浮かべた。

 

「どうぞお好きにして下さい。私はご主人様のためならどんな仕打ちをも受け入れます」

 

  この時の笑顔は不快ながらも、どこか可愛らしく見えた。が、すぐにその思考はもみ消し現状の整理を試みる。

  今目の前でニャル子は正座をしている。それに加えてまるで従者のような態度に言動、そしていやに静か且つ徐々に遠ざかって行く真逆の気配。そこから導き出される結論は。

 

「おい真逆。まさかこれは、お前が原因か?」

 

  そう言い、真逆の気配がする方向を睨みつける。すると真逆は少々オドオドしながら立ち止まった。

 

《い、いや! 違うっ!》

「本当の事を言えば怒らないから、な? 白状しろよ」

《これは罠だ! 俺を陥れようとニャル子が仕組んだ罠だっ!》

「同じネタは呆れられるぞ? で、実際どうなんだニャル子」

 

  正直もう確信しているが、万が一の事もある。僕がニャル子に問い掛けると、彼女の口元にニヤリと黒い笑みが浮かんだ。

  そして立ち上がり、真逆の事を指差す。

 

「実は! 真逆さんに『真尋はSMプレイが大好きだからな。お前がM側に着けば、もしかしたら真尋もお前にときめくかもしれない』という刷り込みを受けたんです! ヒドくないですかっ!?」

「ああ、ホント。ヒドいやつだよな」

 

  すると、真逆は俯き肩をプルプルと震わせた。

  ニャル子に裏切られた事が悔しいと感じたのか。それとも。

 

《フフフフフ……あーっはっはっはっはっ!!》

 

  ただのバカなのか。

 

《いや、その冷たい反応はヒドくないか? もう少し反応してくれてもいいんじゃないか? 折角悪役みたいに高笑いまでしたのにさ?》

「ああ、しつこい、ウザいキモイ。もうわかったよ今ので。お前が犯人なんだろ?」

《フッ……そうだ。そして――》

 

  言葉を切り回れ右をすると、顔だけこちらに向けて真逆はほくそ笑む。

 

《今回は……僕の勝ちだね》

 

  そう決めゼリフを吐き、逃げようとしていたのだろう。しかし真逆は回れ右をして、一向に動こうとはしなかった。

 

《あれ? 体動かね》

 

  …………。

 

《あれれー? おっかしいぞー?》

 

  どうやら見た所、真逆は自分の体を自由に動かせない様子だ。

  これは好都合。そう思い僕はポケットの中からフォークを取り出し、逆手に握り締める。

 

《何故だ! 何故動かん!?》

 

  ああ、まったく。何でコイツはいつもいつも。

 

《ん?ま、待て。早まるんじゃない》

 

  何かにつけて僕にちょっかいを出すというのか。

 

《そうだ、貴様に私の所有している土地の半分をやろう。な?悪い話じゃないだろう?》

 

  僕はフォークを振り上げ、そして吐き捨てるように言った。

 

「だが断る」

 

――ズブリっ

 

《い、いぃぃぃやぁあぁぁぁーっ!!》

 

 

(むふふ……さすが真逆さん。これで真尋さんの私に対する好感度は滝登り間違いなしです)

 

  百回程だろうか?高速で真逆にフォークを突き刺した僕は、一度ため息を吐いた。

 

「さてと。おい、ニャル子」

「はい、なんでありましょう?」

「お前、何で僕がSMプレイが好きなんだと思ったんだ?」

「そりゃあ勿論! 真尋さんが事あるごとにフォークで突き刺して来るからに決まってじゃ……ありませんか」

 

  ああ、やっぱりか。結局はコイツも真逆とグルだったんだな。そう僕は瞬時に理解した。

 

「じ、冗談ですよやだなー? あ、私もお風呂に入らせて貰いますね?」

 

 僕は無言でニャル子の肩を掴む。

 

「あ、あの真尋さん?私お風呂に入りたいのですが」

「ああ、そうか。じゃあ言ってやる」

 

  ニャル子の肩を掴み、僕は息を大きく吸って一気に吐き出すように。

 

「お前に入れさせる風呂なんか、あるかぁーーっ!!」

「あーんまりだぁぁあぁぁーっ!!」

 

  と、お互い近所迷惑にもなりそうなくらいに大声で叫び声を上げたのだった。

 

 

 

 

 

 

「ところで、おい真逆。これどうすんだよ」

《あ?何が?》

 

『昨夜にこのブロック塀は破壊されていた様で、現在でも原因を調査中――』

 

《……大丈夫だ。問題ない》

「それ、死亡フラグだからな」

 

 

 

 





この作品を読んで頂き、有り難う御座います。

まさか二話時点でお気に入り件数が100を越えるなんて、私夢にも思っていませんでした。と言うか、わが目を疑ってしまいました。

これからもこの作品をよろしくお願いします。本当はタイトル言いたいけど、うん、長いから無理。

では、次回でまたお会いしましょう。
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