なんか八坂真尋に憑依したらしいけど、ツッコミとか上手くフォーク投げるとか出来ないし、何より面倒だからそこら辺は本人に任せて俺はボケに回ることにした 作:姉川春翠
なんとか年内に上げることが出来ました。
「というわけで、幻夢境に来ましたよ真尋さん!」
「何がというわけなんだよ。また僕の記憶が飛んでるんだけど。急すぎるんだよわけわかんねぇよ」
「真尋さん、二度も同じこと言わせるんですか?」
「少年。同じネタは飽きられる」
「なら今まさに同じネタが展開されているわけだが」
《真尋、それに触れてはいけない。触れたら爆発するぞ。色んな意味で》
バカみたいな会話をしている僕達は、ニャル子とクー子の任務のためにとある場所に来ていた。そういうことにしておこう。もうなんか、何もかもが面倒くさい。
《ここは夢の世界だ。邪神の中には、人間の精神に侵攻してくるタイプもいる。それから地球の人間を守るために作られたのが、ここ〝幻夢境〟だ》
「ありがとう、解説くん。次からお前のことは解説くんと呼ぶよ」
《やめろ。いややめてホントに、なんか頭が湧いたやつみたいだから》
「ん? お前の頭はもうおかしいだろ?」
《あーはい、そうですねー》
とりあえず真逆のことは無視して、内容の無い会話もやめて、現状の確認をしよう。
僕は今幻夢境という場所にいる。
学校を早引きして家に帰った直後、クー子の携帯に仕事の連絡が入った。なんでも、幻夢境で何かが起きて、それを探るためにここへ来る必要があったらしい。
それは別に構わない。こいつらは紛いなりにも惑星保護機構という機関で働いている者たちだ。その仕事でどこへ行こうと構いはしないし、止めるつもりもないし、むしろどっか行ってくれるなら願ったり叶ったりなんだが。
「何で僕まで付き合わされるんだよ」
僕がここに来たところで、なんの役にも立たないというのに。
「そんなの、私のモチベーションアップのために決まってるじゃないですか」
「そうか。じゃあ帰っていいよな」
「ちょちょ、ちょっとどうしてですか?」
「そんな理由で僕を巻き込むなよ!」
それにしても、なんか寒いな。
《そりゃ、ここは凍てつく荒野ってとこだからな》
「どうにかならないのか? この寒さ」
身震いしていると、ふと、あることを思い出した。そして何も言うことなくクー子に近づき、両手を出す。
「あー、あったかい」
「少年。わたしはストーブじゃない」
無表情ながらもこちらを睨むように見てくるクー子。でも僕は無視する。
「それでクー子。何が起きたか、上は分かってるんですか?」
「だいたいは。なんでも幻夢境を管理してる連中からの定期連絡が途絶えているらしい」
「……なるほど、連中に何かあったって事ですか」
ニャル子とクー子。二人の話の内容がいまいち理解出来ず、僕は首を傾げる。よし、解説くんに頼もう。
《だから解説くんはやめろって言ってるだろ》
「お前の扱い大分分かって来た」
《いや、だから……》
「それで解説くん、どういう事だ?」
真逆の抗議なんて無視する。そうすれば勝手に話し始めるだろうから。
《こいつめ……あー、まあ噛み砕いて話すとだな。幻夢境を管理してる奴らには定期的に連絡することが義務づけられてるんだが、二人の話を聞くにその連絡がここ数日かそれ以上無いみたいだな》
「……つまり?」
《つまり不測事態が起きたか、連絡忘れてたりする気が無かったりのどちらかってとこだろ》
「そう。どちらにしろ、接触して確かめなければならない」
近くで聞き耳を立てていたのか、クー子が補足した。
ふむ、なるほど。それを調査するために、この二人はここに来なければならなくて、僕はそのとばっちりを受けたわけだ。あい、わかった。
「それで、そいつらはどこにいるんだ?」
「あそこ」
クー子が指を指して場所を示す。そこには、巨大な山がある。もしかして、あれ登るのか?
《いや、多分シャンタッ君を使うんだろ》
「シャンタッ君? ああ、シャンタッ君ね」
そう言えばニャル子がなんか馬のような顔をした竜のような何かを飼っていたな。確かそれの名前がシャンタッ君だったか。
《と、待った。なんか聞こえ……上からなんか来るぞ》
「えっ?」
真逆にそう言われ、なんとなく耳を傾けてみると、何やら音がする。まるで花火を打ち上げた後の音のような。
そして空を見上げて、気づいた。何かが落ちてくるのに。それも、予想だにしない速度で。なんだよ、あれ。
直後、衝撃音とともに地面が揺れた。一瞬、体も浮いた。
「な、何だぁ!?」
揺れが漸く収まり、落下して来た物を見据えた。
これは……ロボット?
「にしてはなんか、すごく歪な姿をしているような」
「あ、これ蕃神ですね」
「蕃神? 地球の神々を守ってるっていう?」
「そう。貧弱な幻夢境管理者を守護するための。やつら、自分の身長と同じくらいの高さから落ちても死にますから」
「貧弱ってレベルじゃないだろそれ。なんてスペランカーだよ」
惑星保護機構ってのは好い加減な組織だよな本当に。
《それより、おいニャル子》
「なんですか真逆さん。そんないつになく真面目な顔をして」
《あれ、多分ジャックされてる》
「は?」
ニャル子の代わりに声を上げる。
「そんなまさかー」
《あ、おいバカ》
真逆の言葉を信じていないのか、ニャル子がヘラヘラとしながら蕃神に近づいた。
だが僕は知っている。こういう時、そう、真面目な顔をしている時の真逆の言葉は的中すると。
その証拠に、ニャル子が近づいたとほぼ同時に蕃神の胴体上部から出ているパーツが動いた。あれはまさか、砲塔か?
「ニャル子。普通に考えてみろよ」
「何がです?」
「もし地球の神々に何かが起きてたりしたら、こいつにも何かが起きてる可能性があるんじゃないのか」
言い終わるか終わらないかのところで、何かが目にも止まらぬ速さで通過した。そして遅れて、轟音が耳に届いてきて……て、これってつまり。
『――敵性反応確認。危険度Cと想定』
「おいこらニャル子。これどう見ても」
「いやー、そうみたいですねー」
「なに悠長に構えてるんだよ!」
これヤバイんじゃないか? 後ろの方見てみたら、着弾地点がすごいことになってるし。あんなもの食らったらひとたまりもない。
「クー子、これどういうことですか!」
「わたしに言われても、わからない」
クー子が眉を寄せる。そりゃそうだよな。
「て、おい! 二撃目が来るぞ!」
「……はっ! クー子危ないっ!」
ニャル子が叫び、クー子の体を両手で突き飛ばした。
なんだ。なんだかんだ言って助けることもあるんじゃないか。
そんな思いを他所に、突き飛ばした先でクー子がレーザーに直撃した。
「ておい、鬼かお前は」
こいつそこまで毛嫌いしてるのか。そう思わずにはいられない。
「ニャル子、痛い」
一方のクー子は、直撃を受けて尚生きている。こいつ炎の神性だし、熱耐性があるのかもしれない。それはそれとしても、ニャル子の行動はどうかと思う。
「どさくさに紛れて亡き者にしてやろうと思ったのに。それはそうとクー子、ここは任せますよ!」
「嫌。絶対に足止めなんてしないから。さっきまで空気だったもん」
「何を贅沢なこと言ってますか。ていうかそんなこと言っている場合じゃないでしょう」
この後に及んで二人が言い争い始める。大丈夫なのか、こいつら一緒にいさせて。上司の方も、そもそも相性の悪い二人を組ませるなよと思うけど。
《……なあニャル子》
「はい、急になんですか真逆さん」
《あれ、ぶっ壊していいか?》
真逆の発言にまたも驚かされる。
え? こいつ今ぶっ壊すって言ったか? つまり僕の体を使うってことか?
「おいおいおい真逆。あの話はどうしたんだよほら、僕が消えるかもしれないっていう」
《なんか、無性にあれ壊したい》
フォーク刺して突っ込んでやろうかと思ったが、あることに気づいて押しとどまった。真逆の目が、獲物を求める獣のようにギラギラと光っている、そんな気がしたからだ。
それを見たニャル子が、少し真逆のことを見て、クー子の方に向き直った。
「クー子、割とマジで任せていいですか? ほら、早く行かないと手遅れになるかもしれませんし」
「それを言うなら、蕃神がここに来て攻撃してくる時点で手遅れ」
「ほら、先日話したでしょう? 色々と問題があるんですよほら。それでも嫌なら取引しましょう」
「……取引?」
ニャル子がクー子に何かを耳打ちする。その間にも真逆が僕の体を使って飛び出しそうだ。
「わかった。引き受ける」
一体何を話したんだ。よくは分からないが、クー子の鼻から血が流れている。大方、引き受けた暁には一晩好きにしていいとか言ったんだろう。こいつなら言い兼ねない。
「真尋さん、あなたエスパーですか」
「お前の方がエスパーだろ。僕の心を読むなよ。ていうか当たりかよ」
こいつホントあれだよな。んで後でこう言うんだろうな。ただの口約束だとか。
「今日ほど真尋さんが怖いと思ったことはありませんよ。いえ、いつも怖いんですが」
「ほほう? それはつまりまだまだ温いってことか」
「いえ、そういうわけじゃないんで勘弁してください」
というか、さっきから蕃神のやつ、律儀に話が終わるの待ってないか? 二度も攻撃したのに、今は音沙汰も無いし。
真逆は真逆で、真面目な顔しながら固まってるし。それが逆に不真面目に見えるし。
もしかして真面目なのは僕だけか?
真逆が一瞬真面目な空気にさせたと思ったらこれかよ。
「まあとにかく、任せましたよクー子。ご武運を!」
ニャル子はそう言って、カプセルを投げてシャンタッ君を出す。大きいとはあまり言えないが、まあ二人ぐらいならその背中に乗れるかもしれない。
「ほら真尋さん、急いで乗って下さい」
「あ、ああ……」
いつの間にか乗っていたニャル子に手を引かれるがまま、背中に乗る。あまり心地の良いとは言えない感触がするけど、贅沢は言ってられない。こうなると急がないといけないかもしれない。
《いや、でも僕ってそもそも無関係の人間だよな?》
僕の呟きを他所に、シャンタッ君は飛ぶ。高度が瞬く間に上がっていく。振り返ると、クー子と蕃神の姿が見る見るの内に小さくなっていた。小さな点が、一つ、二つ……三つ。
《あれ? そう言えば真逆は? ていうか、あれ?》
ふと、異変に気がついた。体の感覚が、酷く曖昧になっている。恐る恐る、僕は自分の体を見てみる。
《なあ、ニャル子。ひとつ聞いていいか?》
「なんですか真尋さん。ん? なんか真尋さんの声、変な聞こえ方してます」
《僕の体、どう見えてる?》
「どうって……」
ニャル子が振り向き、絶句している。
もう一度自分の体を見てみる。なんとなく透けているような気がする。
「気がするではなく、透けてますよ真尋さん」
ニャル子の発言に、今度は僕が絶句する。
透けている? なんで?
答えが出てくるよりも先に、僕は今いる位置よりも更に高い所を仰ぎ見て。
《……なっ》
「菜?」
《なんじゃこりゃあぁあ――っ!?》
これでもかと大きな叫び声を上げた。
◇
取り残されたクー子はすぐに異変に気づいた。先程、シャンタク鳥のシャンタッ君の背中に乗っていたはずの少年が側にいる。見た目は変わっていない。
「少年、ニャル子と行ったはずじゃ」
クー子の問いに、その少年は答えない。
代わりに出てきた言葉は――。
「破壊だ。立ちはだかる障害は、全て破壊だ」
まるで何かに取り憑かれたかのようなオーラが出ている。
〝――確かニャル子の話では、少年の中には二つの魂があるって言ってた。もしかしてその魂が?〟
その実態はニャル子も本人もわからないと言っていた。しかしクー子は、半透明の体の、少年に似た姿をした少年を認識している。
〝――少年の少年って、なんだか判りにくい。もう一人の少年と呼ぼう〟
そのもう一人の少年が、少年の体を操っているのだろうか。何はともあれ、危険なことに変わりはない。早く避難させないと。
しかしクー子はすぐに動けなかった。もう一人の少年が放つ雰囲気に、ただならぬ物を感じたからだ。
「破壊。破壊、破壊、破壊、破壊」
そう同じ言葉を繰り返す様は、まさに異常だった。まるでもう一人の少年もまた、何かに取り憑かれているような。
『目標の危険度、測定不能。キケン、キケン、キケン、キケン』
蕃神もまた、同じ言葉を繰り返し始めた。二つの存在がそれぞれ別の言葉を同じようや繰り返しているというのは、傍から見れば異様で滑稽だが、クー子には分かった。これはマズイ状況だと。
何か手を打つべきか。そう思った瞬間、クー子は我が目を疑った。少年の体が、炎に包まれ始めたのだ。蕃神が何かしているわけではないとすると、あれは話に聞いたもう一人の少年の力だろうか。
否、聞いていたものとは違った。もう一人の少年はニャルラトホテプの力を使うと聞いていた。しかしこれは自分と同類の力ではないか。
クー子は言葉を失うと同時に深い疑問を抱いた。――これは……いやこの存在はなんだ? と。
「これより、破壊を開始する」
それが合図となり、少年を覆っていた炎が弾けた。
「なに……あれ……?」
思わずクー子は呟く。
炎の中から出てきたのは、姿形全てが変わった少年の姿だった。髪が長い赤髪に変わり、顔立ちも女性のように変貌し、そして何よりも服装が制服から炎を模した露出の高い物になっている。
「さあ、選択肢をやろう。1に燃やされるか、2に溶けるか、3に爆発するか」
どれも選択したくないものだった。
「それとも4の……」
言い終わるよりも先に、少年の体は動いた。一瞬にして蕃神の頭部へと飛び、握り拳を作る。
「ぶん殴られるか!」
叫び、蕃神を文字通り殴った。少年の体の何倍もある巨体が、いとも容易く宙に舞う。頭部は殴られた瞬間に放たれた爆発により瞬く間に溶けて、無くなっている。
巨躯が伏し、その衝撃で大地が揺れた。クー子の体が僅かに浮く。
着地したと同時に、少年は両手を交差し、天に掲げた。するとどうだろう、クー子の使う機動砲台と同じ形をした物が出てきたではないか。しかもその数は一つではない。十もある。
これにはクー子も更に驚かざるを得ない。主にキャラ被り的な意味で。
「さあて、次は燃やしてやろう」
砲台から無数のレーザーが放たれる。それらは蕃神の体を焼き、溶かし、終いには爆発を起こす。
最早一方的だった。
蕃神もそれなりの巨大な力がある。それは二度の射撃で証明されたろう。そしてそれ以上の力を隠していた筈だ。
しかしそれをお披露目する間も無く無惨にも破壊されていく。
〝――ぐすん……私の見せ場が。活躍の場が。ニャル子との愛の巣が〟
そしてクー子の思い描いた
それはそれとして、クー子は真面目な話、あることを考えていた。
〝――これだけの力と惑星保護機構に関する知識。もしかしたら彼は、かなりのエリートだったのかもしれない〟
元々この考えは、ニャル子のものでもあった。あの耳打ちの際、ついでに挟んでおけということで聞いたのだ。
そう考えて思い出した途端、元の思考に戻る。クー子の思考はあっちへ行きこっちへ行きを繰り返し始めた。
「ふぅ。力使ったらだいぶ衝動が落ち着いた。ったくなんなんだよこれ」
もう一人の少年が不満げに呟く。どうやら片がついたらしい。蛮神を見てみると跡形もなく消え去り、衝撃に耐えきれなかった地面は大きく陥没していた。
「まあいいか。んじゃまあ本陣に向かうとするか」
真逆が振り向く。
「ほらクー子。行くぞ」
もう一人の少年に呼ばれ、何故か懐かしさのようなものがクー子の中で渦巻く。
「少年、ううん。もう一人の少年、あなた一体なにもの?」
「……そうだな。んー」
もう一人の少年は腕を組んで口元に手を当てる。まだ変身を解いておらず、その容姿故か妙に色っぽい。
「まあお前にならバラしといてもいいかもしれない。意外と喋らなさそうだし」
真逆はくすりと笑い、クー子に告げる。己の正体と真相を。
「えっ……?」
クー子はこの時の衝撃を、生涯忘れることはないだろうと思った。
どうも、なんとか有言実行出来た不屈の心です。
ふふふ、もしかしたら今回の話で真逆の正体が分からなくなった人がいたりするのですかね?え?いない?そうですか、残念。
そうそう、ニャル子の原作ももうすぐ揃います。今現在所持している巻は1、2、3、3、4、5、5、6、6、7です。
あっれー?なんか被った巻が増えてるぞー?アホだな私。
さて、今年も残すことあと僅か。皆さん、良いお年をです。ではでは、次回で会いましょう。