こんにちは。たくさんの方に読んでいただいており、とても嬉しいです。
投稿スピード、これ以上は遅くならないように気をつけます。今後もよろしくお願いします!
──ザッ、ザッ、ザッ、ザッ
──キーーー
「おい、出ろ。」
「……。」
「……ちっ、」
──ザッ、ザッ、ザッ
「おいっ!!」
──ガンッ!!!
「なっ!?」
地面に力なく倒れた根のやつを見下ろす。
──上手くいってよかった……。
俺の中の能力が判明してからも、実験は続けられた。それは次第に定期的になり、実験と実験の間隔も同じものになっていた。
そうすればだんだん分かってくる。
今日は誰が俺を迎えに来て、誰が連れて帰るのか。
そいつの特徴や、実力。
時間をかけて情報を集めていった。
そして選んだのが、今日。
俺のことを連れ出す際、中に入ってきた時に牢の鍵を閉めない唯一の人物。まぁ、忍としてはダメだが、俺にとっては好都合。
「さてと……行くか。」
捕まった時にとられた武器を取り返せないのは痛いが……、まぁまた作ればいいか。
ということで、足下に転がっている忍が持っていた刀と、クナイなどをいくつか頂戴した。
もはや布でしかない布団を羽織り、大きく一つ息をつく。
ここからはスピード勝負。根のアジトだ。チャクラ探知なんて簡単に出来てしまうだろう。チャクラを練った瞬間から、追跡が始まる。
たくさん集めた情報の一つ、──脱出経路。
やってくるやつの足音の方向、響き方。そんな些細なことで、ある程度目星はついていた。
目を閉じて、遠くに意識を向ける。気づくかどうかはわからないが、一応、伝えておく。
──やっと……、かえるよ。
「……よし。」
胸の前で十字型に印を組む。
「“多重・影分身の術”!!!」
かつてない量の影分身を出現させる。陽動と万が一の戦闘に備えて。オリジナルの俺は出口に向かって一直線に走る。
「!」
影分身は、その術が解ければその記憶やらがオリジナルに伝わる。走り始めてすぐに、影分身が解けたのが分かった。
「もう、戦闘が始まってるってことか……。」
避けては通れぬ道だとは思っていたが、ここまで早いとは思わなかった。……さすが、根の本拠地。
一瞬でも戸惑ってる暇はない。
俺が脱走した時点で、幻術はかかかってないことに気づくだろう。てことは、殺してでも俺を止めに来るというわけだ。さすがに、ここにいる根の忍を全員相手してたら、……死ぬ。
影分身の目的は、陽動と戦闘だけじゃない。オリジナルの俺が出口に向かうまでの時間稼ぎもある。
──ドガーンッ!!!!、という爆発音が響き、地面が揺れる。どこかで大規模な戦闘が繰り広げられてるんだ。
大量の影分身を引き連れて、出口の手前、大きな広間のようなところに出る。
「やっぱり、一筋縄ではいかねえよな。」
アジトというのは、出口が複数箇所あっては意味が無い。敵の侵入も逃亡も防げないからだ。
一箇所しかないからこそ、最終的にはそこに戦力を集めれば敵を叩けるってわけだ。
──集まってくる前に逃げたかったんだけど、やっぱ無理か。
出口手前の広場に、大量の根の忍が集まっていた。
「止まれ、波風ハルト。傷つけないようにお前を連れ戻すのが、我々の任務だ。
大人しく捕まれ。」
「あんな実験されたところに、大人しく戻るとでも思ってんのか。」
「……交渉決裂だな。お前を止める。」
そう言うと、一斉に根の忍たちが動き始めた。……え、止めるって何を?俺の息の根?
「どっちも止められるわけにはいかねぇな。
行くぜっ!!!」
「「「「「「「「「おう!!!」」」」」」」」」
「“風遁・花散舞”!!」
「“雷遁・風華雷光”!!」
もはや十八番となった俺の連携術。影分身と合わせて二チームでほぼ同時に術を繰り出すことによって、今までのタイムラグを失くした。
全員を殺れるわけではないが、若干でも数の有利が向こうにあるならば、広範囲攻撃をするのが最善の策だ。
「“水遁・爆水衝波”!」
「「「“水遁・水龍弾の術”!!」」」
水遁の中でもかなりの高等忍術に分類されるこの術。爆水衝波で辺り一帯を水気の多い状態にしても、影分身と一緒に一体を繰り出すのが精一杯だ。
それでも、この術の威力はその代償に見合う。
巨大な龍が出現し、根の忍を大量に呑み込んでいく。
そんな水の襲撃に紛れて、一気に接近戦に持ち込む。数も、ようやくほぼ互角になる。
「「「「「“真空剣”!!」」」」」
相手は暗部、しかも根の忍だ。あちこちで俺の影分身が消え、その情報が入ってくる。その量に、処理が追いつかなくなりショートを起こしそうになる。
それでも……
「“多重影分身の術”っ!!」
例えきつくても、俺は諦めるわけにはいかない。
「くそっ、まだ増えるのかっ!!」
「絶対に通すなっ!!」
まるで誰かが来るまでは、止めておかなければと言わんばかりの気迫。まぁ、それを悟られてる時点でどうかと思うが。
「「「「“雷遁・四柱しばり”」」」」
「!!、 くそっ!!」
オリジナルに向けて、確実に雷遁を繰り出してくる。大量の影分身の中から、オリジナルを勘だけで当てるなんて不可能だ。
「“晶遁・紅の果実”」
何度も同じ術に捕まってるようじゃ、ただのバカだ。雷をまとっているロープのようなものを弾く。
「来たか……。」
勘ではないとすれば、誰かが見破っているということになる。
それが可能な人物で、一番最初に思い浮かぶのは……
「ダンゾウ様。」
──志村ダンゾウ
その両の瞳は本来ならば輝くはずのない赤色であった。
「随分と暴れてくれたらしいな、波風ハルト。」
「……
あんたを引きずり出すためだよ。」
「何?」
俺はここに連れてこられて初めて、ダンゾウを直接見た。
「あんたには聞きたいことが山ほどあるんでな。」
「……、聞き出せるものなら聞き出してみろ。」
「……もちろん。そうさせてもらうっ!
“晶遁・一糸光明”!」
「“風遁・真空波”」
──お前が俺に与えたこの力で……。
術がぶつかり合い、爆発が起きた。