HARUTO~原作のないNARUTOの世界へ   作:ゆう☆彡

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暖かい重み、冷酷な力

「チャクラ、尽きちゃったかな。」

 

腕に感じる重み。それは、全く苦ではない、むしろ、喜びや嬉しさに近かった。

 

実際に、ハルトが行方不明になってから一年近く経っていたのだ。

ミナトが感じるそれは、久しぶりに感じるわが子の愛しい重みだった。抱きかかえた腕の中で、肩に寄りかかって眠る姿は、何処かクシナに似ていた。

 

 

 

──ガサガサ!

 

「!?」

 

突然、草木が音を立てる。敵の接近には気づかなかった。すぐに、音の聞こえた方向から離れ、クナイをかまえる。

 

 

『ミナトっ!』

「弥白っ!?」

 

現れたのは、ハルトの口寄せ獣である弥白だった。

 

『主は……、無事か。』

「あぁ……、無事だけど……、」

 

そこに弥白が現れることは、本来であれば、ありえない事だった。なぜなら……、

 

 

「弥白、消えそうじゃないのかい?」

『……我も驚いておる。気を失ってなお、我へのチャクラの供給は途切れておらぬのだからな。』

 

術者のチャクラによって呼び出されている口寄せ獣は、その人物のチャクラが無くなれば自然と消える。気を失うほどチャクラを使えば、本人の意思に関係なく、消えるのが定石であった。

 

 

「まさか、ここまでとはね……。」

『消えることの恐怖から、本能でやっているという可能性もあるが……、主の場合そうでは無いな。』

 

「ここまでくれば、俺も認めなきゃならないよ。」

 

 

──波風ハルトは天才である、と。

 

それは才能の宝であり、敵から狙われる危険な代物でもある。

 

 

 

『主のチャクラの量は、元来、不均衡であった。』

 

ハルトを抱えたミナトと弥白が歩き出しながら話す。

 

『我を呼び出す時……、あれは、術者自身も気づいてない眠っている力に引き寄せられて、口寄せされる。

主の場合、その気づいてない力と、自覚している力の均衡があまりに偏っていた。そして、主はその力を稀に無意識で使用していることがある。』

「君に勝てたのも、そのお陰ということかな?」

『……まぁ、それも無くはない。』

「?」

 

突然、言葉を濁す弥白の方を見ると、

 

『主に仕えたいと、……我が強く思ったのも理由の一つだ。』

「へー。」

『ニヤニヤするな、顔がだらしない。』

「弥白のデレ、ハルトが見たら喜ぶよー。」

『絶対に見せぬ。』

 

周囲も、そして本人も気づいていない。

未知の力を持つ息子を、ミナトは優しく抱きしめた。

 

 

───────────────────────

 

 

 

 

──……

 

夢の中……??

 

だって、いくら忍だからって中にふわふわと浮くことなんて出来ない。

でも、すごい心地いい感じで浮いてた。

 

 

『精神世界だ、主の。』

「!」

 

久しぶりに聞いた、その声。

 

「弥白!」

『久しぶりだな、主。』

 

弥白のことを抱きあげて、ぎゅーっとしといた。弥白も、嫌がらないでもふもふの毛をすりすりとしてくれた。

 

 

 

「弥白が解除したの?」

 

気絶した時も、弥白へのチャクラの供給がきれないようにしていたはずだった。

 

『そうだな。主の体力が回復した頃を見計らって、解除した。寝ていたこともあって、記憶もゆっくり循環したようだ。』

 

 

目を閉じると、弥白が見た映像が流れてきた。

 

「僕……、忘れられてなかったんだね。」

『そんな薄情な者が、主の周囲にいるはずなかろう。』

 

そうだね、と言う前にハルトの目から涙が零れた。

 

「帰ったら……、母さんに謝んなきゃなぁ。」

『そうだな。』

 

器用にハルトの肩まで登ってきた弥白が、ハルトの涙を拭った。

その涙は、戻ってこれた喜びと、味わうには恐ろしすぎた体験を物語っていた。

 

 

 

 

 

 

『その前に確認したいことがあるのだが……。』

「弥白にも何か変かあった?」

『いや。我自身には何も無いが、主のチャクラが乱れたのは感じた。』

「そっか。」

 

それは弥白が想像していた以上に落ち着いた声だった。

 

その乱れを初めて感じた時、弥白が滅多に感じることがない恐怖に近いものを感じた。

それを自らの身体に入れられたハルトの苦しみは、想像出来ないものだと考えていたのだが……。

 

「もう受け入れたよ。それに、

 

 

 

 

……僕が使いこなせることが出来れば、間違いなく強力になる。」

『!』

 

 

弥白は自らの主に対する評価を改めた。

 

今までも、決して低かったわけではない。契約したのだから、それ相応に使役もしていた。

 

それでも、……尾獣と同族である弥白でさえ、その評価を最高にしなくてはならないほど、波風ハルトは忍として秀でていたのだ。

 

 

 

「弥白に、僕のチャクラの流れを見てほしいんだ。」

『? ……構わぬが、何をするのだ。』

「僕の身体への負担がかかっている場所、わかんないかなぁと思って。」

『了解した。』

「一つ目。血継限界の“晶遁”を手に入れた。もう、だいぶ使いこなせているから、身体への負担はほぼ無いはず。」

 

そう言うと、ハルトは印を組んで結晶の手裏剣を出す。

 

『血継限界か……。火影に報告する必要がありそうだな。』

「そうだね。外交問題にでもなったら、たまったもんじゃないや。」

 

そんな風に笑って話せるのはここまでだった。

 

 

 

「二つ目。ここから……かな。」

『一体……、何を入れられたのだ。』

「これは、僕もはっきりと発動できるわけじゃない。それに、あんまり発動したくないしね。」

 

そう言って、次は目を閉じる。開けた時には、ミナト譲りの青い目ではなく、銀色の鏡のような瞳だった。

 

「これは……ねっ、……っ、鏡眼って言って……っ、瞳術をコピーする、新しいっ瞳術だってさっ。。」

『主! 今すぐ解除しろ!!』

「……っ!」

 

 

発動していた時間はわずか数秒。それでも、解除した瞬間、ハルトは肩でゼイゼイと呼吸をし、汗の量も尋常ではなかった。

 

「やっぱり……、まずい?」

『まずいどころの話ではない。目に集中的にチャクラが集まりすぎだ。

 

痛みは何度もやれば慣れるとしても、そんなことを続けていれば、失明しかねない。』

「そっか……、結構やばいんだね。」

 

 

 

弥白は見逃さなかった。

 

自分の主が、その目を覆うように手を当てた瞬間に、

 

 

まるで新しいおもちゃを手に入れたかのような、……そんな顔をしたことを。

 

 

そして恐ろしいと感じた。

 

自分が仕えた主が、一体どこまで考えているのか。

どこまで自分を犠牲にしようとしているのか。

 

 

──全く想像出来ないことに。


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