遅れてしまいました、申し訳ありませんっ!
作者、39℃の熱が出ました。既に治りましたが、皆様も体調にはご注意ください。
《アオイside》
「くそっ、こんな時に……っ!」
「うるせぇ! 殺されたくなかったら、大人しくしてろっ!」
先生とクナイを構えている敵が、言い合っているのをどこか他人事のように聞いていた。
アカデミーの中の一番大きな教室に、アカデミーにいた生徒と先生の、全員が集められていた。……いや、正確に言えば全員じゃない。他の人たちは先生も含めて気づいてないみたいだけど、私はすぐに気づいた。
「(ハルトくんとシスイくん……、どこ行っちゃったんだろう。)」
額当てからして岩隠れだと思う忍たちは、あっという間にアカデミーにいた人たちを人質にしてしまった。そしてその中に、二人の姿はなかった。
「まだ交渉は終わんねぇのかよ。」
「知るか。
だが、合図がなければ殺していいと言われてるんだ。もう少し待て。」
「そうだな。」
私の近くにいた忍が小声で話しているのが、たまたま聞こえてしまった。
「(交渉……、殺す……。誰とかはわからないけど、殺されるのは私たち……だよね? ここには先生達もいるけど、それでもかなわないの?)」
聞こえてしまったことで、より一層不安が募る。
それでも何故か、どこかで安心している自分がいた。それは、ここに二人がいないことによる安心。
──たくさん過ごしたわけじゃないけど、二人は群を抜いてクラスではすごかった。
──シスイくんの性格上、みんなをおいて一人だけ助かろうなんてしない。
──そして、あの二人は……強い。
それだけで大丈夫のような気がした。
────ドガーーンッッッ!!!
大きな爆発と煙。視界が見えなくなっていく中で、
優しい二つのチャクラを感じた。
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「でもよ、俺たちだけで大丈夫か?アカデミー内はなんとかなるとしても……。」
「シスイがちゃんと考えてる……。」
「バカにすんなー!!」
いやぁ、シスイはもう少し年齢に見合う思考回路を持った方がいいよ。誰だよ、こんな小さな子に物騒なこと考えさせるようにしたのは……。
……俺だな。
「大丈夫だよ。もう、手は打ってある。僕らもアカデミー内が終わったら、向かうからね。」
「? どこにだ?」
ある情報が来るまで、しばらく待機していたところ、アオイさんの近くにいた忍が話していたことが、口パクから色々とわかった。
──交渉、──殺していい
どこかで交渉しており、失敗すればここにいる人質を殺すのだろう。簡単に想像できる。
「まぁそれは、ここをおさめてからね。」
「おう!」
多分、ここを制圧するのは簡単だ。シスイもかなり強いし、ある程度解放すれば、先生方も戦えるようになるだろう。
でも、俺はこの戦闘を少し利用しようと考えていた。
「シスイ。本気でいきなよ。」
「! ……気づいてるってことか?」
「逆に、なんで気づかないと思ったの?」
シスイは意外にも、写輪眼を開眼したことを俺に話さなかった。別に、それがどうということではないけど、理由はわからなかった。
「別に言わなくてもいいよ。
今日、僕も新しい技を見せるから。本気でいってほしいなって思っただけ。」
「分かった!」
俺は見せようと思った。シスイにだけは。
それは、未来のため。
──俺はシスイの相棒でありたいし、
──シスイの相棒は俺でありたかったから。
その為に、この力を君に認めてもらいたかった。
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「“水遁・水陣壁”」
「“火遁・豪火球の術”!!」
ハルトが人質となっている木の葉の忍の周囲に水で壁を作り、シスイの火遁で岩隠れの忍に攻撃する。
「感触は?」
「……全滅は無理だな。」
「充分だよ。」
「お、お前たち、何してるんだ。」
何も無いように話し出すハルトとシスイに、講師の忍が話しかける。
「助けに来たんだ! もう心配しなくていいぞ!」
そのシスイの言葉は、生徒には安心できるのものだが、講師にとっては純粋に喜べない言葉でもあった。
それでも何も言わないのは、守ってもらったことは事実であるから。そう認識する忍は問題ない。
問題なのはそういう認識よりもプライドが先行する忍だ。
「うちはになんぞ助けてもらわなくとも、我らだけでどうとでもなった!!
余計な手出しは無用だ!!」
──ブチッ
「……やば。
“風遁・風の刃”」
ハルトを中心に広がる風の塊は、みんな手を縛っていた岩隠れの忍の術を器用に壊していった。
しかしシスイによって一人の忍だけはその術が届く前に、その手に掴まれていた。ハルトの術はシスイが防ぎ、手は縛られたままだった。
「げっ……、」
「じゃあ、何とかしてみろよ。」
「!?」
「俺らの手を借りるまでもないんだろ? じゃあ、大人しく縛られてないで一掃してやってくださいよ、先生。」
「あ……っ、いやっ……。」
それは、普段のシスイからは考えられないほどの圧。
うちはが貶されたことで、普段温厚なシスイの中で何かが切れたのだ。
「頼みますよ、先生。」
「や、やめろ……っ!」
周りは驚きと恐怖の声があがる。先生たちにどうにかしてと懇願の視線が生徒から向けられる。
「シ、シスイくん、やめて!」
「シスイ、やめろ!」
少ない生徒たちが必死に止めようと声をかける。しかし、その言葉もシスイには聞こえてないようだった。
シスイの手が講師の忍を持ち上げ、その身体は中に浮く。
「他の先生方もどうにかしてくださいよ。
“風の刃”」
ハルトの操る風が、器用にシスイの手から講師の忍をかっさらった。
「ハルト!!」
「今なにかしても、何も変わんないよ。
理不尽な力で聞かせるより、実力を見せてやればいいんだよ。」
「……ごめん。」
「シスイは間違ったことしてないよ。」
ハルトの手が自然とシスイの頭を撫で、笑った。
闇の覆われていたシスイの瞳には光が戻り、普段、表情をあまり変えないハルトの意外な姿に、生徒たちは少しざわつく。
シスイが落ち着いたのを見ると、ハルトは風を操りゆっくりと講師の忍を下ろして、その手を縛る術も解いた。
「た、助かった……。」
「……、」
下ろした忍は、ハルトに礼を言うために顔を上げると、そこにハルトの姿は無く、
「……
二度目はないと思え。今ここに、彼(シスイ)がいることに感謝するんだな。」
「!?」
いつの間にか、背後から首筋にクナイを当てられていた。
「ど、どうして……、うちはの者に……っ!」
「……未来、わかる日が来る。いや……、
俺が来させる。」
「どういう……!?」
後にも先にも、ハルトの決意を聞いたものは、この者しかいない。
ハルトは感じた。シスイはナルトに似ていると。
周りがなんと言ってようと、大切なものは守る。
熱くなりやすい。
そして、仲間想い。それは木の葉の人という単位で。
違うのは、才能を見せ始めたのが早すぎて、幼少期から目をつけられてしまったということだ。
──そんな忍を木の葉の闇で消させない。
──シスイを支えていく。
波風ハルトが、
──うちはシスイを火影にすると、
誓いを立てたことをまだ当人ですら知らない。