HARUTO~原作のないNARUTOの世界へ   作:ゆう☆彡

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非人道的に恐怖を捨てる

 

 

「何が、起こったのだ……。」

 

爆発の煙による視覚の異常はない。しかしこの場合、それは一概に良い結果とは言いきれない。

 

 

「……。」

 

──ザッ

 

ハルトと弥白の足下を軸にした結界であるため、ハルトがその場から動くとそれの効果は消える。結界が消えたことにより、充満していた煙が一気に広がる。

 

 

「っ!」

「なん……だよ、これ……。」

 

結界が解かれた中にいた忍、いやもはや忍だったもの。その惨状が、爆発の威力のすべてを物語っていた。分散するはずの破壊の力が全て一点集中になったのだから、当然といえば当然。しかし、目の前の光景はその言葉で済ませるにはあまりにも地獄だった。

 

うちはフガクや三代目でさえも顔を歪める。

まだ幼いシスイが若干後退する。すぐそばにいた三代目がそれに気づき、シスイと共にハルトも自分の後ろへ隠そうとする。

 

 

 

しかし、三代目・ヒルゼンは気づいた。

若干とはいえ、顔を青ざめるシスイに対して、

 

後退することも目を背けることもせず、無表情でその現場を見つめるハルトの姿を。

その目が、あまりにも冷酷であることを。

 

その光景を見て、一人の若く優秀な忍びが育っていることを嬉しく思う反面、

その思考が読めないことに恐怖を感じていることも、また事実だった。

 

───────────────────────

 

 

「……。」

『主、どうしたのだ。』

 

 

あの後、うちは一族や里内の忍が三代目の統率のもと岩隠れの襲撃を抑え込んだ。うちはの実力はやはり凄いもので、共に戦った忍たちは全てが終わったあと、談笑している姿も見られた。……これで、少しはうちはとの溝が無くなればいいと思う。

 

その夜。家に帰った俺に、母さんは何も聞かなかった。母さんほどの忍であれば、近いうちに三代目から詳しい概要を聞くと思うから、聞く必要が無いと思ったのか、それとも帰ってきた俺がそんなことを聴けるような雰囲気ではなかったのか。

残念ながら、分からない。

 

俺は自分の部屋で空を眺めていた。そこに、弥白がやってきて冒頭のセリフだ。

 

 

「弥白もやっぱり、言わない方がいいと思った?」

『……主が、迷っていたからだ。主が言えと我に言えば、迷わず言った。』

「そっか。」

 

あの岩隠れがアカデミーを襲撃してきた時に、俺はすぐに弥白を口寄せして、うちはの集落に向かってもらった。

シスイの言葉、“うちはが外にあまり駆り出されていない”。そして、そのタイミングで木の葉が攻撃される。偶然とは思えないタイミングがとても気になった。

 

「うちは一族が気づかない結界って、かなり上級の術だよね。」

『そうだな。内側の人間は絶対に気づかないよう、上手く細工されていた。外側の人間であっても、あのように巧妙にかけられていれば、気付かぬかもしれぬ。』

 

弥白が向かったうちはの集落には、巨大な結界のようなものがかけられていた。そのために、岩隠れが攻め込んできた直後にはうちは一族の動きが見えなかったのだ。

 

「もしあのまま、うちは一族が動かなかったら……。」

『今回の被害はさらに甚大になっていに違いない。そして、そんな状況で動かなかったうちは一族は、どのような非難を浴びることか。』

「……。」

 

考えただけで恐ろしい。こうやってうちはは木の葉で、少しずつ孤立していくのか。

 

『だが、主のおかげで逆になったようだな。』

「そうだね。まさか仲良くなるとは思わなかったけど。」

『よいことだ。シスイのアカデミーでの立場も、かなり良くなる。』

「それは本人が一番喜んでたよ。」

 

そう言うと、弥白は少し安心そうに笑った。

 

 

「?」

『やっと笑ったな、主。』

「……僕?」

『顔が強ばっていた。何かあったのか?』

 

全然気づかなかった、といえば嘘になる。自覚はあった。

 

 

 

「……何も思わなかったんだ。」

『??』

 

「初めてじゃない。前、ダンゾウのもとから逃げる時も。

人の命を奪っているのに、それに対して恐怖や嫌悪がない。何も感じない。

人として、おかしいのかな……。」

 

人として、当たり前の感情が抜けている気がする。人を殺しているのだ。もう少し、なにか思うことがあってもいい気がした。

 

 

『我は良いと思うが。人間の中で、それは悪いことなのか?』

「どうだろ、悪くは無いんじゃない?変なやつだと思うけど。」

『では、感情で不安定になるよりは良いと思うぞ。それが、強さに繋がっているのであれば、尚更だ。

 

我の契約者がそのような強いものである、という事実は我にとっては嬉しいことだがな。それに、忍である以上、情けをかけている場合ではないであろうからな。』

「……そっか。」

 

この辺はこの世界とは感覚の違う世界で育った記憶のある俺と、この世界が当たり前である弥白との差だろう。

 

 

どこぞの世界で、“恐怖は戦士に必要なものである”と聞いたことがある。

正直、それに納得できたことは無かった。

 

「この世界で生きるのには、丁度いいかもね。」

『??』

 

相手を殺すことに恐怖し怯えれば、自分が殺される。ここはそういう世界だ。

 

「ありがとう、弥白。」

『主の悩みが解決できたのであればそれで良い。』

 

 

覚悟しよう。

この世界は、綺麗事を並べて生き残れるほど優しいせいではない。

 

そして自覚しよう。

 

 

──俺はこの世界で、冷酷に生きていけると。





あけましておめでとうございます。今年もよろしくお願いします。


早速、一週間投稿を守れなかった作者を誰か殴って(泣)
滑り出しがもう……(怒)なんやねんっ!笑笑

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