お気に入りがとても減り、若干落ち込んでいた作者です。
それでもまた、少しずつ増えていったので、それを糧に頑張りました! 読んでくださる方、本当にありがとうございます!!
さて、中忍試験編もまもなく終了です。
次の章も既に考えてありますが、前作品には見られないほどシリアス感が続きます。忍は、これくらいのシリアスはあるだろ、という考えの上での投稿なので温かく受け入れてくださると嬉しいです。
「あの分身体はアサギ、君のじゃないんだよね?」
試合会場の中心、アサギの背後からクナイを向けて話しかける。呆けているのか、それとも上からの命なのかは知らないが、試合が止められることは無かった。
「……何を言っているか分からないな」
「最初に違和感を感じたのは、シスイの火遁が第二陣ではね返ってこなかったことだ。
君たちの戦闘スタイルは間違いなくカウンターを狙うもの。 ならば、あの強力な術をはね返
つまり、はね返
「……、」
「そして僕の試合。 次に違和感を感じたのは、君らがカウンターではなく直接的な攻撃を仕掛けてくるタイミングだ。
第二陣が無かったから直接攻撃に移ったのかとも思ったが、それなら今の試合で僕に使った理由が無くなる。
それで考えついたのが、僕らに考える時間を与えないため。
シスイの時は第二陣が無かった理由、そして僕の時は……
水の音に隠れていた、何かが消えたような小さな音について。」
「……ちっ」
シスイも自分の攻撃が、どうして二度目のはね返りが無いのかは不思議に感じていた。 もう少し時間があれば、きっと色々な可能性にいきついていただろう。ただ、何度も乱反射による攻撃をかわし続けたことによる体力の消耗と、初めて見せた直接攻撃に対応しきれなかった。
「だが……それによって、なぜ俺と同じ班の者に刃を向ける。」
「……さっき言っただろ?
あの第二陣からの乱反射は、君と同じ班の二人の分身体だね。」
いつ間にか静まり返っていた会場から、ざわついた声が聞こえる。
「君がこの試合で分身を使ったのは一回、『雷球』を複数方向から繰り出したあの時だけ。 あの時、分身体を消されたオリジナルの君には、確かに分身体のダメージが与えられていた。
でも、乱反射を使用した時には、まるでダメージが無いように見えた。」
「……。」
アサギが押し黙る。もはや、黙秘が肯定と同等の意味を示していた。
「だから僕は、乱反射を起こしているのは別の分身体じゃないかと考えた。
そこからは早かったよ。 光遁を使えるのは、この会場に君たちの班しかない。 そう考えれば、シスイの試合の時に乱反射が発動しなかったことも説明がつく。」
「……どういうことだ」
「シスイの火遁から会場の観客を守るために使ったあの結界、チャクラを完全に分断するんだ。 あの時、結界の中にいた君とオウギは僕の結界によって、自分の分身体へのチャクラ供給が途切れて、乱反射が発動しなかった。」
「……ちっ!!」
ここでようやく、試合を中断するのかどうかの審議に入るようだった。まぁ、関係者席に座っているイビキ先生と三代目は、面白そうに笑みを浮かべているが。
「……さてと、改めてお前に聞きたいことがある。」
「!」
観客の目が、試合に集中しなくなった頃を見計らい、俺はアサギの耳元で囁いた。自分で言うのもあれだが、多分、チャクラの雰囲気とか別人だと思う。
「お前、誰の差し金だ? 光遁なんで、誰が作った?」
「っそんなこと、言うとでも思ったか!」
「言わなくてもいいけど、お前の仲間がどうなっても知らないよ?」
アサギの背後で、クナイの動く音が響く。
「どうせ、ダンゾウあたりだろ」
「!」
「それとも大蛇丸か?」
「……」
「その両方か
まぁ、どっちにしろお前は捕えられる。 負けた時点で、救助は望めないし、光遁のこともきっちり聞かれると思うから覚悟しとくんだな。」
「試合は中断!! この試合は、不正を行ったアサギの敗北とし、勝者は波風ハルト!!!
なお、他二人についても審議が終了次第、発表とする!!」
審判のマイト・ダイさんが勝敗を述べた。っていうか、この人が審判だってこと忘れてた。
とりあえず、俺がここにいる意味はなくなったので、救護室にでも向かうことにした。アサギと同じ班のやつも直に木の葉の上層部が捕らえに来るだろ。
「なぜだ……!」
「……は?」
背中を向けたアサギから突然、チャクラが巨大化するのを感じた。
「なぜ、俺ではなくお前なんだ!!! なぜお前はこんな小さな里を選ぶのだっ!!
最高傑作と言われているお前がっ!!! どうしてっ!!!」
そう言うと、アサギは突然、クナイを握って俺に襲いかかってきた。
「どうして……ねぇ。」
そのアサギを、俺は体術だけで抑えた。……自分の成長具合に驚いていたのはここだけの話だ。
「お前が敬愛するやつよりも、そばにいたいと思える人たちが俺のそばにはいたから……かな。」
「ハルト!!! おめでとぉぉぉぉぉお!!」
「寝てろ、けが人。」
「けが人には優しくして!?!」
「おめでとう、ハルトくん!」
「ありがとう、アオイ。
二人の結果についても、後々発表するって。 でも、最終的にどうするかを決めるのはそれぞれだと思う」
救護室にいた二人には、俺が勝ったことだけは伝わっていたので、二人の対応については俺から話しておいた。
「ふーん。 まっ、それはそうなった時に考えようぜ!!」
「……結構大事なことだと思うんだけど」
「それよりも今は、ハルトくんの勝利祝いだよ!!」
「そうだよな、アオイ!!」
「そりゃあ……、ありがと」
「照れんなって! ハルト!!」
「うるさい」
「いってぇ!!!!」
そばにいたいと、守りたいと思うのは
―きっと同情なんかじゃない。
――未来を知っているからじゃない。
短い期間かもしれないけど、共に過ごした中で
あぁ、こいつらと一緒に生きたい
って思えたから。