【千の塔を誇る街・楼蘭】編、最終話でございます!!
読者の皆さんのご意見で書かせて頂いた章でしたが、想像以上に楽しく書かせていただきました!ありがとうございます!!
次回からは予告通り、【第三次忍界大戦】編に突入します!
よろしくお願いします!!
そして、ついこの間、最長記録を更新したかと思いきや、今作品も更新しました。
間違いなく、作者のNo.1最長作品でございますm(_ _)m
今回の作品は完全、オリジナルです。何か、よくわからない点や間違ってると思われる点は指摘していただけると嬉しいです。返事はできる限り、書かせていただきたいと思っています。
「……、」
「……、」
「ヤマト隊長ぉ!? ここどこだってばよ!?」
「あの人が、術式を間違えるとは考えづらいし、何よりまだ記憶が消えていない……。 一体……」
「すみません、俺のせいです」
ナルトとヤマトが目覚めた場所は、自分たちが元いた世界ではなく、何も無いただただ黄色い空間が広がる世界。そして、記憶は消すと言われていたのに消えていない記憶。
そこに現れたのは……
「ルト! 弥白!!」
「君たちは……」
「心配しなくても、あなた方をどうにかしようとかそういう訳じゃありません。 ただ、色々説明しとかないといけないと思いまして」
ヤマトの方を向いて、少し笑った。呼び止めたのは、主にヤマトのためだと遠回しに言ったのだ。
「ここでのことも消えるということかな?」
「そうですね。 今、あなた方の記憶が消えていないのは、あの時に展開された術の上から俺が別の術かけたからです。 ここを出る時には、記憶は消えます」
言われても信じられない話だった。
ヤマトには、ハルトが一緒にいたのが誰なのか分かっている。間違いなく四代目火影である波風ミナトだ。
若くして火影になるほどの実力と、その妻・クシナから得意とする封印術を学んだ彼の術を上から塗り替えるなど、普通の忍には出来ない。
そして、この世界に来てからヤマトが最も気にかかること。
それは、目の前にいる彼だけが、自分の記憶にはないということ。見たことも聞いたことも無い。唯一、似ている人は誰かと言われれば、それは間違いなく“若かりし頃の四代目”である。
「質問、といっても聞きたいことだらけだと思うので、俺から説明します。
まず、あなた方がやってきたこの世界は、本来のあなた方の過去ではありません」
「「!?」」
「まぁだからこそあなた方が元の世界に戻る前に、世界と世界の間の空間に俺の空間を作り出せたんですが。
全く違う世界とは言いきれませんが、言うなれば平行世界というやつです」
ナルトは既についてこられているか怪しいが、理解はしようとしている。ヤマトは逆に、理解ができているからこそ信じられなかった。
「いいかな」
「なんでしょう?」
それでも、聞かなければならないことがあった。それは隊長という立場からすれば当然の行動だった。
「もし仮にここが、僕たちの本来の過去ではないとしても、僕たちの世界でムカデが封印術式を取り込んだという事実は変わらないよね? 僕たちはムカデを倒したけど、それでは意味が無いということかな?」
「いいえ、意味はあります。 それが、この世界があなた方の世界と全く違うと言いきれない点です」
そう。ここが自分たちの世界ではないのであれば、元の時代、元の世界に戻ったとしてもなんの解決もしていないということになるのだが、それでもハルトはヤマトの疑問に即答した。
「今回倒したムカデという男は、あなた方がいた世界にいたムカデです」
「……言いきれるわけがあるみたいだね」
「俺の世界にムカデがいたとして、その男が過去に遡ってこれるはずがないからです」
「……」
「……全然、わかんねぇってばよ」
ナルトの頭は既にパンク寸前だった。が、それを放っておくハルトではない。
「わかりやすく説明するよ。 ナルトの世界では龍脈の封印術は四代目火影のものだったんだよね?」
「そう……だってばよ」
「でも、この世界で封印術式を施したのは俺だよね?」
「あぁ!」
「いや、封印術式を見ただけで誰が施したかは、術をかけた本人にしかわからない。 ムカデに取り込まれていた時点で誰の術かは……」
「いえ、取り込まれていた時点で俺のではありません」
ハルトはナルトの世界で、ムカデが倒されているという何かしらの証拠が欲しかった。だからこそ、龍脈の封印はハルト自身が行ったのだ、説明ができるように。
「あの封印術式は、取り込もうとしても取り込めないように組んであります。 むしろ、取り込もうとした時点で、その人が逆に封印されるように。
あなた方の目の前で封印術式を取り込んだ、つまり、取り込める封印術を組み込んだあなた方の世界のムカデだということになります」
「なるほどだってばよ……」
ナルトにも少しは理解出来たようだ。
「いや……、まだ少し足りないよ」
しかし、実はハルトが示したこの仮説にはもう一つ重要な事象が必要だった。それにヤマトは気づいていた。
「封印術というのは、圧倒的なチャクラ量もしくはその封印術に対する知識があれば、その効果をあまり発揮させずに解くこともできる。
君の能力は未知数だから。 四代目の封印術を解いたムカデの知識はとんでもない。 君の封印術を完璧に攻略されていたとしたらどうなる?」
それは、ハルトの実力。
ムカデよりも明らかに上であると認識できなければ、今の封印術による説明は完全ではないのだ。
「さすがですね」
「……君の正体が不明瞭すぎるからね。
疑ってはいないけど、信じ切ることも出来ない。
僕らの世界で何事も無かったとしても、その歪みがどこにどう表れるか知っておきたいんだ」
「……そうですね」
ヤマトの言葉にハルトは、今までの真剣な張り詰めた雰囲気を解き、柔らかで穏やかな笑みを浮かべた。
「「……?」」
「最初にここでの記憶は消えると言いましたよね?」
「ええ」
「では何故、俺があなた方を呼び止めたと思いますか?」
「それは……」
「消える記憶なら、こんな話もしなくていい。 どんなに心に違和感を感じたとしても、あなた方の世界でムカデが倒されていなければ、あなた方はなんの疑いもなくもう一度ムカデと戦うんです。 この世界の記憶が無いんだから」
「「!!」」
「呼び止めた理由……、それはたとえ記憶が消えても心で覚えてしまった部分で、自分の現状と差異が出てしまうと思ったからです」
「差異……?」
「『
そうすることで起こる混乱を避けたかったんです」
ハルトが話しても全く理解できない。それはハルトが若干、難しく言っているせいでもある。
「俺と弥白はあなた方の世界にはいない、
この世界だけの存在です」
「「!?」」
消えるとわかっている記憶。
その心には、……どうか、その存在を、少しでも。
───────────────────────
「俺の名前はハルトと言います。
……波風ミナトの息子です」
「!?」
「やっぱりなんとか【ルト】だったってばよ!」
ヤマト隊長だけが異様な反応をする。それもそうだ。波風ミナトすなわち四代目火影の息子といえば、それは今、俺の目の前にいるうずまきナルトだからだ。
ミナトの名前を知らないナルトはその事には反応できない。
「俺の名前。 聞いた事ありますか?」
「……いや」
「ナルトも俺じゃなくて、君の隊長の言葉なら信じられるだろ?」
「ん? お、おぅ!」
ナルトが笑顔で答える。
「そんな君の隊長なら分かるはずだよ。
俺の封印術を取り込むなんてことは不可能だって。
父と母からチャクラ量と封印術を受け継ぎ、
そこから改良してオリジナルの封印術を作ったんだから」
ぶっとんだ話、自分でもわかってる。それでも、ナルトの世界で四代目火影とクシナの実力を考えれば信じられない話でもない。
それを最大限利用させてもらった。
ちなみにこの話。 実のところ、本当かどうか確かめる術はない。それでも自信満々に、ナルトの世界でムカデが倒されていないということは無いと言い切ったのには、理由がある。
それは、俺の世界ではナルトが楼蘭を訪れる時に、俺がついて行けばいいと思っているから。つまり、未来の俺がなんとかすればいいと思ってるから。
きっと何かしらが起こっても対応できるし、それに、世界というのは不思議なものだ。
世界が違う時点で親子関係などないミナトやクシナとナルトの間に、共鳴という形で親子関係が示されたりする世界同士が全く切り離して考えられるものでは無い。
ならば、この世界での出来事も多少なりともナルトの世界に影響を及ぼすはず。その要因として、最も考えられるのが俺だというわけだ。
「……分かりました、と言ってもここでのことも忘れてしまうのだから意味が無いか、」
「いえ、さっきも言った通り記憶には無くても心には残っています。
きっと、元に戻った世界がどうであれ、何かしら腑に落ちる部分はあると思いますよ」
一通り、このとんでもない話をヤマト隊長は信じてくれた。
さすが、ヤマト隊長。
―――ポワァ……
「「!!」」
「そろそろ時間ですね」
ナルトたちの身体が再び透けてきた。俺が父さんの上からかけた術の効果がきれそうなのだ。
「ハルト!!」
「!?」
多分、話がよくわからないからだろうが、静かにしていたナルトが大きな声をあげた。
「俺ってば、ハルトが話してたこともよくわかんねぇけど、ここでの記憶は消えちまうんだよな?」
「そうだね」
―――きた。
……そうだよ、ここでの記憶が残らないことをこんなにも強調したのは、ナルトに気づいて欲しかったから。
記憶が消えるなら、あの
その質問に答えてあげたかったから、
「じゃあ……っ!
お前は、俺のなんだってばよ!!」
「……お、れ??」
「おぅ!
今回こっちの世界に来て、俺ってばずっと自分より小さいお前の話ばっかり聞いてだってばよ。
お前ってば、絶対俺と関わりある!!」
本当にいいのか、そんなことで。
それを知っても、俺は君の世界にはいない。君にはなんの力にもなれない。
「お前、俺がヤマト隊長の言葉なら信じられるとか言ったけど、俺はルトの言葉でも信じてるってばよ!!」
「!」
なるほど。だからちょっと躊躇ったのか。
「ルト!!」
ナルトたちの身体がさらに消えていく。
もう時間はなかった。
自然と、口角が上がるのがわかった。
「ナルト、お前に言いたかったことがある」
「? ……なんだってばよ」
「これから先、俺はお前のそばにはいてやれない。それでも、どうか忘れないで。
どんな時でも俺はお前の味方だ。
……俺は、お前を信じてる。
お前は、俺の……自慢の弟だ」
父さんがナルトに自分の息子の話をした時に、俺の事を少しだけ見た。考えれば、俺が兄なら
ナルトが手を伸ばす。
あれ、俺の方が小さかったはずなのに、同じところに目線がある。
ナルトが見てる幻影か、時空の歪みのせいか……。
どっちでも構わない。
高くて届かなかった頭に手を当てて、
「また会えるよ、必ず」
「にい……ちゃん……っ!」
「……ありがと」
ナルトの暖かな気配を一瞬感じたあと、その姿は本当に消えた。
「父さんと呼び方、ちゃんと分けてくれるんだなぁ」
『主』
「うん、そろそろ戻ろっか」
『うむ』
「戻ったら、ちょっと俺の話に付き合ってね」
『もちろんだ』
きっとまた会える。
俺の、世界で一番愛しい弟に。
一つ、大きな秘密を共有した【
大きな光のもとへ、歩くために。
弥白との会話は、次の次で明らかになります。
次の話では明らかになりませんが、しばしお待ちください。