投稿、遅くなりましたm(_ _)m 人生で初めて、海外に行ってまいりました!感じたことは……日本語って素晴らしい( ;∀;)
予告通り、弥白とのおしゃべりの回です。
疑問があった方もいたかもしれない、弥白が口寄せされていない時にどうしてハルトとおしゃべり出来るのかを解明している回になります。
オリジナルの設定が盛り込まれているので、地雷の方はご注意ください。
「俺はね、この世界のことを知っているんだ」
『そうか』
結構すごいことを言ったはずなのに、表情一つ変えずに言葉が返ってきた。
「……あれ、そんなに衝撃的じゃない?」
『いや、充分におどろいている』
ナルトに別れを告げ、自分の作った空間から戻ってきた後、木の葉から来ていた父さんたちを見送った。
もちろん、父さんの記憶も消えているわけなのだが……
「……色々と終わったみたいだね」
「!?」
「僕たちは木の葉に戻るよ。
ありがとう、ハルト」
父さんに関しては、本当に記憶が消えているのか疑わしかった。なんの説明もなく、一人で全て納得しちゃったよ……。
ここまできたら、最後のありがとうも何に対してか怪しくなってくる……。
そんなこんなで、俺と弥白だけが楼蘭に残り先程の会話だ。
確かに、ナルトたちに「自分と弥白はこの世界にいるはずのない存在だ」とは言ったけども、だからと言って全く驚かれないのも変な感じだ。
『主の言葉であるなら、疑いはせぬ。 言葉は事実として受け入れるだけだ』
「……ありがとう」
『なぜ照れる』
「言わなくていいよ……」
変な感じというよりも、もはや恥ずかしい……。信頼を完全に向けられるというのは嬉しいものだが、何だかこそばゆい。
「俺は全く違う世界の人間だった。 その世界で死んで、目が覚めたらこの世界にいた。
この世界のことを俺は前の世界で見た事がある。 だからこそ、俺は過去で起こったことも未来で起こるであろうこともある程度想像出来る」
『なるほど、結界を下に張る準備をしたのもそのためか』
「……いや、そうじゃないんだ」
『……?』
「俺の知ってる世界がそのままここにあるなら、あの時にあの結界を発動する機会はなかったはずなんだ」
『それでも主は発動した』
「あの時だけじゃない。 ナルトが傀儡に捕まった時も、あれはあんなに苦戦するはずじゃなかった。 ……少なくとも母さんの助けがなくとも何とかなっているはずだった。
楼蘭の人達が働かされていた場所で大量の傀儡兵器に襲われた時も、俺が加わらなくても何とかなるはずだったのに」
『結果的に、我も加わったということか』
「うん」
やっぱり、楼蘭の街だけで考えても異常なことが起きすぎていた。
「俺が関わった【根】との事件も、誰かが俺の代わりに受けたっていうのは記憶にない。 ましてや新しい瞳術なんて聞いたことない」
『岩隠れの者どもが襲撃に来たのも、うちはの集落に結界がはられていたのも……』
「全部イレギュラーなことだ」
こうやって、改めて話すと色々なことが起きてる。
そして、誰かにこうやって話せる日が来るなんて思いもしなかった。
『うむ、考えなくとも主のせいだな』
「うぐっ……、随分とぐっさり刺すね、弥白」
『だがその全てを主が片付けておるのだから、問題は無いだろう』
「下げてから上げるのね」
弥白と見合って、笑いあった。誰かに話すことでこんなにも心が軽くなるものなのか。
確かに、話す前までは起こる全てのことに対処しなくてはと焦っていたのかもしれない。これからは、弥白にも頼むことが出来る。そして弥白は、疑問に思わずにそれに協力してくれるのだ。
「……」―――ヒョイッ
『!?』
横で一緒に座って話をしていた、相変わらずふわふわで真っ白な毛で包まれている弥白を抱き上げ、腕の中におさめた。
「これからも頼むね、弥白」
『あぁ』
決意を新たに前を向く。
これからは弥白と一緒に未来を作っていけるのだ。
「あ、もう一つ言うことがあった」
『?』
「俺、弥白のことは初めて見た」
『……!? 我は存在していなかったのか』
「んー、そういうこと……って、そんな落ち込まなくてもいいじゃん!?」
何の気なしに言ったのだったが、当の弥白はズーンって音が聞こえそうなくらい落ち込んでいた。
「いいじゃん、弥白は初めから俺だけの相棒だって決まってたんだよ、きっと」
『……! そうだな』
耳がピーンっと立って、ゆるりゆるりと尻尾が揺れた。……喜んでもらえて何より。
『……、なるほど、主のせいだと思えば納得がいくこともある』
「ねぇ、俺のせいにを乱用しないで?」
『いい意味でだから気にするな』
「いや、するでしょ……」
弥白が納得げに言うと、俺の肩に乗ってきた。
『主はこの世界の常識は知っているのだな?』
「んー、まぁ多分、わかると思うけど」
『では、口寄せ獣とは普段どこにおるか知っているか?』
「口寄せ獣……?」
んー、ナルトだったらガマ吉とかってことだよな……、ガマ吉は普段はガマの国にいるよな、あの仙術の修行する場所……
「それぞれ好きな場所にいるんじゃない?」
『……まぁ、間違いではないが。 口寄せ獣は本来自分の住む世界にいるものだ、例えばミナトの場合なら口寄せはガマだからガマの国にいるというようにな』
「うんうん、」
『では、我はどうだ?』
「ん? 弥白は……、弥白って自分の住む世界に帰ってる……っけ?」
弥白が本来なら自分の住む世界に帰ってる時間……、すなわち俺が口寄せしていない時間のことだ。
「弥白……、俺と会話してる時あるよね?」
『してる時、というより我は主と契約してから自分の世界に戻ったことは無い。 普通、口寄せしていない口寄せ獣と話をすることなど出来ない。
ましてや、主の考えていることが我の中に流れてくることなどありはしない』
「じゃあ、なんで……」
『だが、一つだけ例外がある。 口寄せ獣ではないが、術者の精神世界で繋がっていられる存在。
主も知っていると思うが』
「んー? ……あ!
尾獣……」
『その通りだ。 奴らは封印された者の精神世界に住まう。 だからこそ、協力することが出来れば互いの思考などを共有することも出来る』
「……!」
『その顔は、そのような場面を知っているという事だな』
「うん」
八尾の牛鬼も雲隠れのキラー・ビーと協力関係にあって、幻術にかかったビーさんを話しかけて起こしたりしていた。
九尾の九喇嘛もナルトの精神世界にいたし、そこからナルトのことを見ていたって言っていた気がする。
『……主?』
あまりにも普通に話していたり、何かと弥白の方から助けてくれた事で、弥白が俺の中にいることに全く違和感を感じていなかった。
あまりにも当たり前に弥白を頼っていた自分に無力さと、弥白を縛っていたことへの罪悪感が生まれた。その事を知らずに、自分の秘密を弥白に話してしまった。重荷を背負わせたのだ。
「ごめん、弥白」
『どうしたのだ』
「なんも気づかなくて。
弥白も自分の住む場所に戻りたいよね」
弥白にとって俺の精神世界はあまりに狭すぎる。そしてそれは同時に、弥白から故郷を奪っているのだ。
『主、我が主のもとを窮屈と感じていれば、すぐに主にこの話をする。 主なら我が頼めば、おそらく故郷に戻れるようにするだろう。
しかし、そうしなかったのは我が望んで主のもとにいたからだ』
「……、」
『主のもとは落ち着く。 それに、
我は主の傍にいたいのだ』
「……、」
『自信が認めた主と意識を共有し、共に戦えるというのは、我にとっては心地よい。
主が気にすることでは全くない』
自分がもといた世界とはかけ離れた場所で、知っている人物にばかり会う中、自分と同じ新しい存在に出逢えたことが嬉しかった。幼いながらに色々と理解していくことは、同時にわずかな孤独をも生み出した。
「弥白、これからも俺と一緒にいてくれる?」
『何を当たり前のことを』
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『主、大丈夫か?』
「……今の全部聞こえてた?」
『……、そうだな』
話している俺の声は、前を走るシスイたちには聞こえない。弥白と会話する時は基本的に、頭で会話してる感じだ。
「意識しないと弥白に考えてること筒抜けなの、何とかならないの?」
『意識すれば良いのだが……』
「……無意識で恥ずかしいこと考えちゃうじゃん」
少し照れながらも、弥白だからいいかと納得した自分に苦笑しながら、再び前を向いて前の背中を追った。