作者、夏休みを存分に満喫しておりました。
ここから、きちんと週一投稿、していきたいと思います。
そして、久しぶりの一作目。……既に、地雷多し。
どうか、広い心で呼んでやってくださいm(_ _)m
なにか意見があれば、反映できる限りはしていきますので、ビシバシとお願いします!!
「そういえば、ハルト」
「ん?」
「母さんには帰ってくること伝えてあるのかい?」
ハルトも揃い、今回の任務・神無毘橋への増援に参加する二班が集まった。あとは出発するだけだったのだが……、
「伝えられてないんだ。 この任務に参加するって聞いたのも二日前だから、急いで帰ってくるだけで精一杯だったよ。
まぁ、任務が終わったらちゃんと会いに行くよ」
「クシナさんも会いたがってたよ、ハルトくんに」
つい先日、クシナに会っているリンたちは、ハルトに任務で会えないことに隠してはいるが悲しんでいるクシナのことを知っていた。
ハルトも、本当ならすぐに母に会いに行きたい。見た目では分からないが、父であるミナトに会えたことも、実はハルトにとっては凄く嬉しいことなのだ。それでも、私情で任務を遅らせる訳にもいかない。それはハルトが一番よく分かっていた。
だからこそ、任務が終わるまで我慢しようと思っていたのだが……
「じゃあ、驚かせちゃうかな?」
「ミナト、お前言ってないのか」
「あはは……」
「……??」
ミナトとシカクの話の内容が理解できていないハルトたちの耳にとびこんだのは、聞いたことのあるその声。
「よかった! 間に合ったってばね!!」
「「クシナさん!!」」
門の所へやってきたのは、まさにハルトが一番会いたかった人。
今回の任務に参加する人数分の軽食を持ってきてくれたのだ。……七人分。
「みんなの分、小分けにしてたら遅くなっちゃった。 間に合ってよかった!」
そう、七人分なのだ。クシナは今回の任務に、ハルトが参加することを知らなかった。もちろん、いるとも思っていなかった。
「母さん……」
「えっ??」
一年ぶりに見る息子の姿。半年前にミナトから元気にやっていることは聞いていたが、それでも聞いただけ。実際に会えるのはまだまだ先だと思っていた。
「いつ帰ってきてたの?」
「さっき。 この任務の招集がかかって急いで戻ってきた」
「もーー!! 戻ってくるなら、来るって言いなさいってばね!!」
「ご、ごめん……」
クシナがすごい勢いでハルトに近づいてきた。思わず身体を強ばらせたが、その身体は優しく包まれていた。その優しさはハルトに、無意識で身体の力が抜けさせる。
「おかえり! ハルト」
「うん、ただいま」
ハルトがクシナの腕の中で顔を上げて笑って言った。元気そうな息子の姿を見たクシナは、もう一度ハルトを強く抱きしめた。
───────────────────────
「そろそろ出発するか」
「そうですね。 クシナ、お弁当ありがとう」
「「ありがとうございます、クシナさん!!」」
リンさんとアオイちゃんが、母さんに笑顔でお礼を告げていた。そんな二人を見て、母さんが自分の子どものように撫で回していた。
「みんな、しっかりね! 頑張ってくるのよ」
母さんの言葉にしっかりと頷く、……オビト以外が。
「あと……オビト」
「んぁ?」
「あんたは、おっちょこちょいで、慌てんぼうで、ドジで、バカで間抜けなんだから、人一倍気をつけること!」
「オビト、めちゃくちゃ言われてんじゃんか!」
「シスイ! あんたもとんでもない所でドジで間抜けな行動するんだから、気をつけなさいよ!」
「お前も言われてんじゃねぇか、シスイー!」
「へん! オビトよりはいわれてねぇよーだ」
「だから、オビトさんだろ!」
母さんが注意してたのに。そっちのけで二人で喧嘩を始めていた。……二人とも、横で九尾化しそうな勢いの母さんに気づいて。
「どっちもどっちだってばね!!!」
「「いってぇぇ!!!」」
……オビトはともかく、俺の知ってるシスイはこんなバカなやつだったかなぁ。まぁ、前向きに考えて年相応ってことでいっか。
「はぁ、まったく……。
いい? 怪我でもして帰ってきたら、ゲンコツじゃ済まないからね!!」
母さんのその言葉を聞いて、突然、現実に引き戻された気分になった。
そうだ、これから行く神無毘橋はオビトが戦死されたと思われる戦い。その事を知ってる俺からすれば、最早、母さんのセリフはフラグにしか聞こえない。
「へっ! 俺を誰だと思ってやがる! 俺は火影になる男、うちはオビト様だぞ!!
心配なんていらねーよ! 絶対、任務を成功させて、そんで……怪我なくみんなで帰ってくる!!
約束だ!!」
心底、みんながオビトと母さんを見ていてくれてよかった。俺は多分今、ものすごく場違いな顔をしているに違いない。俺の知っている通りにことが進みすぎている……。
「そーそー!!」
「!!」
そんな、かなり絶望的な気分になっていたところに聞こえてきたのは、……俺にとっての希望の声。
「オビトが帰ってくるってことは、みんな無事だから心配しなくて大丈夫だって!」
「はぁ!? どういう意味だ、シスイ!!」
「それに……」
オビトが怒ってシスイを追いかけて、こっちに向かって来た。……こっちに向かって来た!?
―――ガシッ!!
「……なに?」
「俺たちがバカで間抜けでも、ハルトがいるから大丈夫!!」
「!!」
俺の肩を組んで、何故かシスイが自信満々に母さんに言いきった。
「な! ハルト!!」
俺のすぐ横に、満面の笑みを向けたシスイがいた。
引っ張られる、この存在に。沈みそうになっても、無理矢理にでも引っ張りあげようとしてくれる。
そうだ、沈んでいる場合じゃない。
変えられないんじゃない、……変えなきゃいけないんだ。
「うん、ちゃんと皆で戻ってくるよ。 ……絶対に」
「ふふっ、……約束だってばね!!」
母さんも、俺の言葉を聞いて笑顔になってくれた。
「っし、行くぞ!」
「「「「「「はいっ!!!」」」」」」
こうしてまた一つ、俺は新たな誓胃を胸に、神無毘橋の戦いへと向かった。
「……、」
……いつか、クシナと話したことがあった。
『そういえば、ずっと聞きそびれてたけど……』
『ん?』
『何故、君は彼を……、いや、最近は彼らを、そこまで気に入ってるんだい?』
『……あの子たちは、ハルトと真逆だから』
『ハルトとかい?』
『ハルトは賢くて、忍として見ても親からの贔屓なく優秀な忍だと思うわ。 その賢さで忍の悲しい部分を知っても、それでも、あの子が真っ直ぐ歩けているのは二人がいるからだと思うの。
私がハルトに夢をのせてるように、ハルトはオビトやシスイに夢を乗せている。 その夢がきっと、ハルトを真っ直ぐな忍に育ててる。
そんな三人を見てたら、私もまた夢をのせたくなったの』
『夢?』
『いつかあの三人が、この世界を、次の世代のためにもっともっと良くしていってほしいって。 』
『……そうだね』
『そして私たちに、もう一人子どもが出来たら……
頭が良くなくてもいい、生意気でもいい。
明るくて、仲間を大切にして、真っ直ぐに歩いていけて。
そして、ハルトと支え合って、引っ張っていけるような、強い意志のあるあの二人みたいな忍に育って欲しい。
あの子たちには、ハルトと同じくらいたっくさんの夢をのせてるから』
「真逆か……」
「どうしたの、父さん」
「いや、なんでもないよ」
神無毘橋に向かう道中、クシナの話を思い出した時に、俺の脳裏に浮かんだのは、出発前のハルトの顔だった。オビトの声で、多少明るくなったあの場で、ハルトだけは暗い顔をしていた。
「夢をのせる……、もしかしたら、ハルトは夢を導くとこまでやっちゃうかもね」
―――あの暗い顔からの決意の顔が、ミナトの予測をさらに確信に変えていた。
―――木の葉において、ハルトの実力を一番きちんと理解し認めているのは、同班の教官であるシカクでも、幼い頃からともに修行したシスイでも、ましてや火影でもない。
―――父であるよりも前に、忍としての類まれなる才を持ち、その上で父親でもあるミナトだった。
―――そのミナトのハルトに対する評価は、間違いなく最高評価であり、そしてそれは決して過剰評価ではなかった。
波風ハルトは、既にそこまでの評価に値するレベルにまできていたのだ。そんな彼に、夢を描くことも導くことも、容易な事のようにミナトには思えたのだ。