話は進まず、ハルトくんの暗部時代の話になります。
走りながらこんなに話せないだろ!、とか暗部の話していいのかよ!とかは気にしない方向でお願いしますm(_ _)m
「そういえば、カカシさん」
「何?」
「上忍昇格、おめでとうございます。 言いそびれてました」
「あぁ、ありがと」
カカシがおめでとうと祝福されているにも関わらず、今一つ表情が晴れないのは、おめでとうと言っている人物が一番上忍に近いところにいるからだった。
「お前も受けてたら、昇格してただろ」
「……そうですかね」
「んな事あってたまるかー!! 俺が先に上忍になるっ!」
「ハルトー!! 置いていくなんて許さねぇ!!」
「なんだ、お前ら……」
ハルトと話していたはずなのに、何を聞きつけたのかオビトとシスイが群がってきた。嫌悪感を滅多に出さないハルトの顔から、ものすごいオーラが伝わってきた……無表情という形で。
「すいません。 俺、合格祝いとか用意してなかったんですけど、カカシさんって何か欲しいものありますか? あんまり想像できなくて……」
「確かに!! カカシの欲しいものって、分からないよね!
同じ班の私でも、あんまりピンと来なかったし……」
小隊の後ろを走るリンも会話に参加してきた。
「なんでもいいのか?」
「……俺のできる範囲でお願いします」
カカシは少し考えた後、ん、と思いついたように言った。
「あの後、楼蘭の街で何をしてたのか聞きたい」
「俺、あの後もあそこにいたなんて言いましたっけ?」
「いたんだな」
「嵌めたんですか……」
「まっ、お前があのまま
「いやいやいや!!
それはさすがに無理だろ!? ハルト、暗部の任務で行ってただろ! なぁ!?」
「いいですよ、そんなことでいいなら」
「ほら見ろ……って、いいのかよ!?」
「カカシさんも参加してた任務ですし、話しても大丈夫です」
ねぇ?とでも言いたげにハルトはミナトの方を向いた。
「ミナト先生が行った任務なら、先生から聞いたけど、その後の話は知らないかも……」
「俺も知らないからね」
「特に話すようなことは無いですから。
火影様にも伝書で報告したことですし……」
んー、とあったことを思い出すように考えていた。
「特に何も無かったのか」
「はい。 隣街に襲われたくらいです」
ハルトは本当に何事も無かったかのようにすんなりと言った。
そんなハルトを見て、カカシが口を開いた。
「……ハルト」
「はい?」
「それは何も無かったとは言わない」
「でも、俺一人で事は済みましたから」
「それはお前だからだよ」
ハルトはよく分かっていなかった。が、この任務が終わったら火影様にきちんと報告しなければならないことだということが、ミナトやシカクの苦笑いする反応を見て察した。
「話す価値があるようなので、この話にしますね。
シスイたちは知らないと思うからざっくりとだけ言うと、楼蘭という街に流れるチャクラと同様の力を持つ不思議な力“龍脈”を悪用しようとした奴がいたんだ。
傀儡を操るチャクラ糸を龍脈を使ってほぼ無限に使いこなし、操った傀儡兵器で忍界を治めるとか言ってたかな」
「夢デカイな!!」
「感想はそこなの……。
とりあえずそいつは倒せた。 けど、また同じように龍脈を悪用しようとするやつが現れるかもしれない。 それを危惧した楼蘭の女王が、龍脈を封印することを決意したんだ」
「俺が封印しようとしたんだけど、結局ハルトが封印したんだよね」
「はい。
実はあの時、俺がその龍脈に施した封印は、その力を完全に使えなくするのではなく、その放出能力を極限まで制限するもの。
だからミナトさんやカカシさんが里に戻った後、俺は楼蘭に残って、龍脈のこれからの使い方とコントロールの仕方を考えていたんです」
「そんな封印術があるのか……」
「ですが、その放出量は限りなく少なくても、使用できることに変わりはない。 その力の存在を察知して、楼蘭は隣の街から襲撃を受けたんです」
「大丈夫だったのかよ……」
「俺がまだ、楼蘭にいたので。
おかげで、龍脈の有効な使い方も思いつけました」
「有効な使い方?」
オビトの心配も他所に、ハルトは話を続ける。
「龍脈の力を楼蘭を守る結界に使うことにしたんです。
チャクラと同じ力を持つ龍脈の良い点は、誰かの力を犠牲にすることなくその力を使える点です。 楼蘭を治める女王の意思一つで操ることができます。
楼蘭の規模があまり大きくないことと、出入りする人間が少ないからこそ可能なことですが」
このハルトの発言に、特別な反応を示した忍が三人いた。
「どういうことだ?」
「楼蘭の人には攻撃から身を守る術はほとんどありません。 襲撃を受ければなされるがままというのが現実です。
なので、守りに特化した結界を張ることにしたんです、出入りが難しいくらい強力なものに」
「そんな結界が作れるんだね」
「木の葉でも作ろうと思えば作れますよ。 でも、木の葉は外界との接触を遮断する訳には行かないから、出入口がありますよね?」
「私たちが出発してきた、あの門のこと?」
「うん。 結界は意図的に作っているとはいえ穴があるとその効力は落ちるから。
多分、火影様もそれをわかっているから、木の葉の結界は防御に特化したものじゃなくて、探知に特化したものになっているんだ。
防御に特化していれば、あの岩隠れからの襲撃も無かったと思う」
思い出されるのは、ハルトたちがアカデミー生だった時の“木の葉襲撃事件”。
探知に特化した結界ではゼロ距離の攻撃は防げないが、防御に特化していればそれに限らない。
「楼蘭に張った結界は、穴を一つも作らないものにしたんです。 それが、出入りする人間が少ない楼蘭だからこそ出来た理由です」
リンやアオイ、シスイは今の説明で納得した。しかし、カカシだけは違った。
「だがそれだと、全く出入りが出来ないよな? 出入りする人間が少ないってとこは、多少はするってことだろ?」
「そうですね。 閉鎖的な桜蘭でも、やはり外に出る人はいます。
ですが、それも限られた人だけです」
「そういう人はどうしたんだ?」
カカシのその質問に、ハルトが一瞬答えることをためらった。それは、この結界の話を始めた時から何も質問してこない上官二人が気になったことに、理由の一つがあった。
「……、
結界にチャクラを練り込ませたんです」
「??」
「結界とはすなわち、異物を拒絶する力です。 ならばその結界に、対象の人物を異物と認識させなければいいんです。
外に出る可能性のある人、例えば楼蘭の長のチャクラを結界に混ぜたんです。
混ぜる方法を教えれば、その長が許可した人だけが楼蘭に入れるようにすることが出来ます」
この世界で生きている以上、チャクラがゼロである人間は限りなく少ない。
“わずかな量でも結界に認知させれば、拒絶されることはなくなる”
それがハルトの張った結界の正体だった。
カカシも納得した様子を見せ、シスイらはハルトを褒めたたえた。
それを後ろ目で見ながら、先頭を行く上官二人が火影から聞いていた話を思い出した。
「……ミナト、火影様の話おぼえてるか」
「俺も、同じことを思い出してました」
それは、ハルトからの楼蘭での出来事を伝書で受け取った火影に、二人が召集された時の話だった。
『木の葉に張ってある結界の特性を見抜いただけでなく、その結界と異なる効力の持つ結界を他里で作り、その成果を見せたらしいな』
『『……、』』
『波風ハルトが考えた結界、木の葉でも適用出来ぬわけではあるまい。 儂はこれを取り入れようと考えておる』
『『!!』』
里を守るための重要な結界。はるか昔から変わっていない結界を、まだ七歳の子どもが考えた結界に変えると里の長が言っているのだ。ミナトもシカクも驚かないはずがない。
木の葉の結界に関することはまだ秘密の情報のため、この場にいる中でハルトの話に驚けるのはミナトとシカクだけのはずであった。
―――そのはずだったのだ。
「なぁ、ハルト」
「ん?」
ハルトの話が終わり、シカクとハルトとシスイが最後尾に着く形で走る中、シスイがハルトに話しかけていた。
「さっき言ってた結界、木の葉でも取り入れればいいのにな?」
「「……、」」
シカクも先頭を走るミナトも、シスイの言葉を聞いていた。
「……、
俺の話聞いてた? 人の出入りが少ない楼蘭だからこそできた結界なんだよ。 大量の人が出入りする木の葉では、結界にどれだけの人のチャクラを認知させなきゃならないか分からないだろ」
「んー? でも結界に認知させれるってことは解除もできるよな??」
「「!!」」
シスイが何の気なしに言った言葉。それはミナトやシカクも考えていたことだった。だが、ハルトの施した結界がハルトのオリジナルであるということから、それが可能かどうかも分からなかったのだ。
それにも関わらずシスイは、まるで当たり前かのように言った。
―――ハルトになら出来ると言わんばかりに。
「……、」
「ハルト??」
シスイを真剣に見ていたハルトが、その表情を崩して笑った。
「そうだね、できるよ」
「だよなぁ! だったら入って来る人は認知させて、事がすんで木の葉を出たら解除するってのを繰り返せば木の葉も守れそうだな!!」
そう言うと、シスイは満足そうにハルトの少し前を走り始めた。
「さすがシスイ、正解だよ」
「!」
最初からその答えを望んでいたかのように。
そう言ったハルトに気づいたのは、シカクだけだった。
次回からは進みます!!
よろしくお願いしますm(_ _)m