「そろそろですね」
「あぁ、そうだな」
「「「「「??」」」」」
先頭を走る父さんとシカクさんが、二人で話し始めた。すると、すぐに、
「一旦、下に降りるよ」
「「「「「「はいっ!」」」」」」
父さんの合図で、木をつたって走っていた俺らは地上に下りる。
「ここからは二手に分かれる。
迂回するが敵を避けれるだけ避けて、前線の状況を把握し補給や戦闘援助に出る部隊と、そいつらが前線に着くまでの道中の敵をひきつけ、なおかつ木の葉に侵攻させないための囮部隊だ。
囮は俺の班とミナトの五人、最前線に行くのはカカシを隊長にオビトとリンで行け、いいな」
……なるほど。この世界ではこんなふうに別れるのか。
正直、原作で父さんと三人がバラバラで行動した理由は思い出せなかった。それに、俺たちの班もいるから二つに分けるならシカク班とミナト班でわかれるかもしれないとも思っていた。が、カカシ先生が上忍になったことで、カカシさんを隊長にしたスリーマンセルを組むことも出来る。それに……
「頼むぜ、カカシ隊長!」
「頑張ろうね!」
「……おぅ」
ミナト班は、原作とは比べ物にならないほど良いチームワークの班として有名だった。スリーマンセルを組ませることに疑問などわかないだろう。
「うん! 君たちなら問題ないよ、俺が保証する」
「「「はいっ!」」」
「お前らに不満がある訳じゃないが、お互いの状況は知れていることに越したことはない。 俺たちの方で何かあった時はすぐにお前達に報告するようにする」
「……? どうやって……」
オビトとが純粋に疑問を口に出したが、頭の良いカカシ先生でもその方法は分かっていないみたいだった。そりゃあ、忍界に携帯なんて便利なものは無いから。
「ハルト」
「はい」
シカクさんは俺の方を向いた。ちなみに、申し訳なさそうに父さんも。
「ハルトの口寄せをカカシ達につけてやってくれ」
「どういう……」
カカシ先生の疑問の声をかき消すように、俺は弥白を口寄せした。
『提案したのは……ミナトか』
「ごめんね、ハルト、弥白」
「おぉ! 弥白ぉぉ!! 久しぶりだなぁ!!!」
『相変わらずだな、お前は』
「お久しぶりです、弥白様」
『様はやめてくれ、アオイ……』
シスイとアオイは、一年ぶりに弥白のことを見たせいか、いつも以上に弥白のことをもふもふしてた。
弥白は助けを求めているような気がしたけど、ちょっと放っておいた。
「弥白は口寄せの中でも少し特殊らしくて、離れた場所にいても俺と意思疎通ができるんです。
弥白にカカシさんたちと一緒に行ってもらえれば、俺を通じてお互いの様子がお互いに分かるんです」
「ミナトから聞いた時は信じられんかったが、本当なんだな」
「はい、実際に使ったこともありますから」
そう俺が言うと、一瞬だったが父さんの顔に影がかかったのが分かった。
もちろん、実際に試したことがあるというのは俺がダンゾウら【根】に誘拐された時のことだ。俺としては新しい力を二つも手に入れさせてもらったし、無事に帰ってこられたのだから、そんなに気にしてないのだがやはり息子が連れ去られたというのはあまり思い出したくないらしい。
……まぁ、それを思い出してシカクさんに提案しているのは父さんなのだが。
「何があったのかは……ま、いつか聞かせてくれ」
「……分かりました」
シカクさんがその話を躊躇ったのは、父さんの雰囲気を感じ取ったからだけではない。
「……ねぇ、シスイ。 すんごく重いんだけど」
「我慢しろ」
「……、弥白はカカシさんの方に行くんだよ?」
『分かっておる』
「ほんとに……?」
その話をした途端に、シスイが急に俺の腕に絡まり、弥白も俺の肩に乗っかったきたのだ。
シカクさんもカカシ先生たちもあの件には関わっているとは思う。けどこの様子を見ると、詳しくは聞かされていないんだろう。ここにいる中であの事件をきちんと理解しているのは、父さんとシスイ、そして弥白だけという事だ。
二人がこんな行動をすれば、誰でも聞くのを躊躇う。シカクさんの言う通り、いつの日か言えばいい。
「出発しようか。
カカシ、ここからは頼むよ」
「はい」
「お前達三人は、木の葉の最前線まで敵との交戦は極力避けろ。 俺たちは、向かってくる敵全てを相手する気で行くぞ」
「「「「「はい!!」」」」」
シカクさんの合図で、それぞれの部隊に分かれて走り出した。
弥白はカカシ先生達についてる。そして向こうの班は、原作以上のチームワーク力を発揮するだろう。
―――この時の俺は、少し楽観的だった。
もしかしたら、オビトの闇堕ちは事件すら起こらないのではないか。
起きたとしても、弥白が傍についている限り、俺にはすぐに情報がくる。大怪我も負わないのではないか。
考えていなかったのだ。
敵側にも新しい戦力がいた時のことを。
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「“影縫いの術・
「“風遁・
シカクの影が彼岸花のように広がり、触れた敵をその場に縛り付けた。動けなくなった敵をミナトが一網打尽にしていく。二人だけでも、充分戦えていた。それは二人の実力がそれ相応のものであるというのもある。しかし……
「思ったよりも苦戦しませんね」
「そうだな、敵が想定していたよりも少ないってのもあるが……」
「はい。 あの三人の力は想定以上でしたね。
さすがシカクさんの班ですよ」
「茶化してんのか、ミナト」
「まさか、本音ですよ」
前線でハルト、シスイ、アオイが戦い、そこから逃げ出した敵を後ろで待ち構えているシカクとミナトが倒すという戦法を取っていた。
……取っていたというのは、語弊があるかもしれない。勝手にそうなっていたのだ。
ミナト班のチームワーク力は木の葉では有名で、チームの力としてはそれに勝る班は無いというのが、今の木の葉での認識だった。ミナトもシカクも先程まではそう思っていた。
しかし、シカク班はそれを遥かに上回っていた。その三人が戦っているところには、例え上忍である二人でも介入しない方が良いと思えたのだ。そんな三人の元を抜けて、ミナトとシカクの元にやって来る敵の数はたかが知れていたのだ。
「“水遁・
「“雷遁・
ハルトが出現させた大量の水は、敵である岩隠れの忍の足止めをすると同時に波で襲う。そこに、アオイの雷遁を発動することで、水で通りやすくなった忍達を痺れさせる。
「俺も負けてらんねぇ!
“烏分身の術”!」
シスイの口寄せである烏を媒介にした分身。影分身よりもチャクラを使わないので大量の分身を作ることが出来る。
大量のシスイの分身が戦場を駆け回る。
「……ねぇ、まさかとは思うけど」
「大丈夫! アオイのことは巻き込まない!
“
「あのやろ……っ!
ごめん、アオイちゃん!」
「えっ!? ハルトくんっ!?」
ハルトはアオイのことを抱き上げ、飛雷神で爆発から逃れた。
「さすが、ハルト!! 信じてたぞー!!!」
分身一つ一つが爆弾となるこの術は、戦場のあちこちにいたシスイの分身による爆発の威力は凄まじかった。そんな中でもシスイが自信満々にアオイは巻き込まないと言ったのは、ハルトがそばにいるなら逃げることなんて容易なことだと分かっていたから。
だからこそ、味方がそばにいながら爆発させることはないだろうという、敵の心情の裏をつけたのだが……
「……アオイちゃん、やっていいよ」
「あー、、、シスイくん!」
「お?」
「逃げてね!」
シスイが呼ばれた方向を見ると、苦笑いして手を合わせているアオイと、親指を立てたハルトがいた。
「シスイ。 俺も信じてるよ」
その顔は笑っているが、何故だか悪寒がした。そして、立てていた親指は下に向けられていた。
「“火遁・
「なっ!? てめぇ!ハルトォ!!」
「お互い様だ」
アオイが放った火遁の術の炎は、シスイの烏分身大爆破の爆風にのって僅かに息のあった岩隠れの忍にトドメをさした。
「俺まで息の根、止められそうになってるんですけど!?」
「信じてたぞ」
「あの顔は信用できねぇ!!」
戦場とは思えない少し気の抜けた会話かもしれない。だが、それが逆に敵に動揺を与える。大多数の目からは、誰も意識していないような偶然起こったことのように見えることだが、ある一人によって必然的に起こされていることには気づかない。
ここの能力も、三人のチームワークと互いの信頼も、木の葉だけに限らず既にこの戦場においてもトップレベルであった。
そのことに気づけるレベルの忍が、感心と若干の畏怖を抱いていた。
「(さすがだよ、ハルト……)」
『主!!』
「!! ……カカシさん達の方で動きがあったらしいです」
俺たちの目の前の敵をあらかた倒し、さらに前に進もうとしていた時だった。
『想定していた数よりも多い。 三人と我だけでは対処しきれていない!』
珍しく聞く、弥白の焦った声。
「先生! 任務には直ぐに戻ります!! なので、許して下さい!!」
その後ろから、突然聞こえてきたのはオビトの声。そして、走り去る二人分の足音。
「弥白、今のはどういうこと」
『……、
岩隠れの襲撃を受け、戦いの中でリンが連れ去られた。 二人で助けに行くらしい』
「「「「!!」」」」
ここでもまた……違うことが。