新章に入りました!!今回のお話は、全く触れてませんが……
やっと本編に近づいてきました!!作者、頑張ります!
第三次忍界大戦の終結
『ごめん、アオイちゃん』
謝罪は、君を守れなかったことに対してではない。
君の意志を全く無視してしまうことに対して。
優しい君は、どんなにその方法を話しても絶対にやろうとしない。その力を手にするくらいなら、死ぬまでいらないと言うだろう。
賢い君は、自らがここで命を断てば全てが解決するということをすぐに理解するだろう。
―――俺は君のその優しさと賢さを利用した。
優しい君は、その状況を見れば【自分が殺した】と意識するだろう。
賢い君は、その状況を見て自害しようとするだろう。
その意識を利用し、その意志を止めるという理由を使い。
君に嫌われても、拒絶されても、
―――失うことだけは嫌だった。
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―――ピッ、ピッ、ピッ……
ガラス越しの部屋から聞こえるのは、無機質な機械音。命の音を聞いてるみたいで苦手なこの場所に、毎日通っている。
「……早く、起きろよ」
そこで寝ているのが、仲間じゃなければどれほど良かったか。どちらか一人だけでも、俺のそばにいてくれればどれほど心強かったか。
第三次忍界大戦の戦場の中で、最も大きな被害をもたらした【
生き残った俺たちの班の隊長であるミナトさんは、すぐに木の葉の上層部の元へ行った。シカク先生も。
ミナトさんの班であるオビトたちも木の葉の救護部隊に助けられていた。
二人とも心配だろうけど、俺たちに負担がかからないように率先して話している。きっと話せないこともあって、そこに俺がいたら上手く話を合わせられないから、ということだと思う。
『難しいことを考えるでない』
「俺、お前がいなかったらダメだったかも」
『主にはお見通しということだ』
不思議なことに、ハルトが倒れても弥白は消えなかった。口寄せである以上、ハルトが死んでしまえば消えるらしいが、そうでない限りは存在を保てるらしい。
それ以上の仕組みは教えてくれなかった。というより、弥白にも分からないらしい。
『主は誓ったのだ、必ず生きると』
「そうなんだ」
『……? 何を言っておる、お主に誓っただろ』
「?」
『『何があっても守る、アオイちゃんと約束したことだから。
これから先、何があっても。 ずっと』
お主が主に言わせたのだろ?
あの言葉で主は誓ったはずだ。 必ず生きなければならない、と』
「俺との約束……?」
未だにその言葉を信じられていないと思われたのか、弥白はさらに話してくれた。
『……主は死ぬ気だった』
「!?」
『死ぬ気だったと言うと語弊があるかもしれぬが、命に変えてもアオイのことを止めようとしていたのは間違いない。 それは主にとって大切な存在だからだ。
しかし、それをやめた。 お主に誓ってしまったから。 必ず生きて守る、と。
そろそろ自覚しろ。 お主は主にとって、言葉一つでその意志を変えられるほどの存在なのだ』
「……っ!!」
それは……ずっと言って欲しかった言葉。
自分とは比べ物にならないほどの才能と頭脳を持ち、出会ってからずっと追いかけてきた。その横に立てる日が来ることを願っていた。
中忍になり、少しはその横に立てたかもしれないと思ったけど、今回の戦いでその自信はなくなった。むしろ、背中がさらに遠くなった気がした。
自分の言葉など届かない、走り続けなければいつか置いていかれるかもしれない。次第に焦るようになった自分がいた。
『置いていくことなどない。 お主らはお互いがお互いにそう思っているだけだ』
弥白が呆れたようにため息をついていたけど、俺は構わず弥白に抱きついた。
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……、
「……、」
久しぶりに来たその場所。相変わらずふわふわとしていたけど、あの時のような心地の良い感覚はなかった。それは、それほどまでに俺がおいつめられていたか、それとも意識が大人になったからなのかはわからないけど。
『!』
「弥白、久しぶり……なのかな?」
長い時間眠っていたという自覚はある。アオイちゃんとはいえ、尾獣に攻撃された、しかも完全に命を狙った攻撃を。
「俺、どのくらい寝てた?」
『まもなく一年になるところだ』
「……一年!?」
まさか、それほどだったとは。
「俺が目覚める前に、弥白から聞きたいことが色々あるんだけど」
『我が説明できる限りであれば、構わぬ』
それほどの時間が過ぎたということは、俺が干渉出来なかった出来事があるかもしれない。正直、第三次忍界大戦が終わったあとの大きな出来事というのは、あまり思いつかなかった。
「大戦はどうなったの?」
『終戦した、実質木の葉の勝利ということでだ。 主が参戦していたあの戦いが、敵の戦意を喪失させたらしい』
「まぁ、一瞬で味方がやられるのを見たら……、するよね」
『【神無毘橋門の戦い】の勝利の貢献ということで、火影がミナト班とシカク班を称えたいと言っていたが、まだ何かをしているという訳では無い』
俺も含めて、眠っている人がいる中、賞賛を贈るということはしないだろう。だが、俺の意識はそこよりももっと別のところにあった。
「……神無毘橋門の戦い?」
『あの戦いがあった場所が、神無毘橋よりも木の葉側の場所だったということだ。 ……何か違和感があるのか?』
「違和感というか、俺が知ってる名前とは違ったから……」
『戦にはその土地の名称がつく。 今の時代しか知らぬ我からすれば、適当な名であると思うが』
「そっか……」
異端の俺が参加したにも関わらず、神無毘橋の近くでことが起こったのは奇跡だったのか……、それとも第三者によって作為的に……。
「アオイちゃんは……?」
正直、これが一番聞きたいことだった。考えてやった事とはいえ、最後は意識を失った。弥白の様子から、上手くはいったと思うけど、それでも万全かどうかはわからなかった。
『命に別状はない、既に目も覚ましている。 アオイが言うには、尾獣の状態も落ち着いているらしい』
「! 何も無く……ってこと?」
『主が封印を施したあと、ミナトもその上から違う封印を施したのだ。 尾獣のチャクラごと封印するのではなく、少しずつアオイに還元できるような術式だ』
「……あぁ、五行封印?」
『!? その通りだ』
俺がアオイちゃんに施した封印術は、三つのチャクラ属性をそのまま三つの鍵にした封印術。奇数の封印術には、奇数の封印術をかけなければ逆効果になってしまう。……さすが父さん。
『起きぬのか、主』
「……起きるよ。 それが俺の責任の取り方だから」
『……、』
精神世界とはいえ、ここまで俺と会話出来ているなら、もう既に目覚めれるまでに回復しているということくらい、弥白にでも分かるだろう。
それでも、俺は起きていない。無意識に起きることを恐れているのか。
『待っているぞ、みなが』
「……、」
『ミナトも、クシナも、シスイもシカクも。 カカシやオビト、リンも。
主が助けた全員が主を待っている。
……アオイもその一人だ』
そう言うと、弥白は俺の肩に乗っかった。そこから、弥白が見ていた風景が見えてきた。
「……君だったんだね、」
『……?』
「……、行くよ。 もう迷わない」
ある日から、右手に感じ始めた温もり。それも途切れることなくずっと感じていた。
何度か意識が遠のきそうになっても、その温かさをたどっていけば意識がはっきりするのを感じた。
―――君が待っててくれたなら、俺はもう逃げない。
「弥白」
『?』
「俺が気を失っていた間も、口寄せされてたんだね」
『!? 主がやったことでは無いのか』
「んー、シスイの側にいて欲しいなぁとは思ったけど。 まさかほんとにできるとは思ってなかった。
術者から独立してきてるのかな……、そんなことある?」
『ないな』
「だよねぇ……、」
まぁ、弥白がいつでもいてくれるなら嬉しいしいいかな。
『!』
久しぶりすぎて、考えていることが弥白には筒抜けだということをすっかり忘れていたハルトの声を聞いて、ゆるりと柔らかなしっぽを揺らした弥白だった。