お気に入りがものすごい増え、嬉しいです。
ありがとうございます!
それに比例して、低評価も増えていくのですが……。やはり、嬉しさの方が大きいですね(笑)
これからもよろしくお願いします!
……あ、次回から新章です
「……。」
『……、』
「おぉ……、」
『……、』
──バッ!!
「可愛いなぁぁぁぁぁあ!!!」
『た、助けっ、主ぃ!』
「おわっ!? 喋れんの!? こいつ!!」
「喋ってるわけじゃないよ。頭の中に語りかけてるだけ。
弥白、僕は助けられないから、頑張って。」
「お前、やしろって言うのかぁ!!」
『ぎゃぁぁぁぁ!!』
「……シスイ、死んじゃう。」
「ほえ!?」
少しだけ腕の力を緩めたすきに、弥白はシスイの腕から飛び出して、俺の背後に逃げた。
「大変だね、人気者も。」
『……、』
「嫌ではないんだね。母さんは帰ってくるの楽しみにしてたよ。」
『!?』
口寄せ契約をした白狐の弥白を、初めて母さんに見せた日にも、今日と全く同じことが弥白の身に降りかかった。
『モフモフされるのは、もう、ごめんだ。』
帰るなり、いきなりガン見されて、お互い見合ってたはずなのに、弥白が先にジリジリと後退し出して、母さんが急に抱きついた。
「すごいなー! ハルト!!」
「父さんに教えてもらったんだよ。契約するまでは、大変だったけど。……ね、弥白。」
『……。』
申し訳ないのか、恥ずかしいのか、ふいっ、と顔を背けられた。……だいぶ、被害受けたのは、こっちなんだけどなぁ。
弥白と死闘を繰り広げたせいで、父さんには飛雷神の存在などもろもろバレるし、風遁だけじゃなくて水遁も雷遁も扱ってしまったから……。
あの後、色々と説明するのはすごく大変だった。
「まっ! ハルトの父ちゃんに知ってもらえたなら良かったじゃんか!」
「んー、そういうことでいいのかな。」
「小さいこと気にすんなって! それより! 早く修行しようぜ!!」
「うん。」
最早、恒例となった、出会ったらまず一対一から始める。謎のルール。
──キーンッ!!!!
もはや、合図すらなく始まり、中心でクナイがぶつかり合う。
忍術も繰り出そうとしたが、
「ハルト! シスイ!!」
「「!?」」
それは、突然呼ばれた俺たちの名前によって遮られた。
「イタチ?」
「なんで、お前、こんなとこにいるんだ?」
木陰から出てきたのは、まだ一歳になったばかりのイタチ。
「ミコトさんに言ってある?」
「……? 母さんはいなかったよ。」
だからと言って家から出てきていいわけじゃない。
「しょうがない、今日は終わりだな!」
「そうだね。」
「俺も修行する。二人と一緒にやる。」
「お前はまだ一歳だからダメだ、イタチ!」
二歳で、俺に向かってクナイ投げたお前が何言ってんだ。
「二人だけずるい。」
「イタチももう少し大きくなったらね。そうしたら、三人でやろう?」
「じゃあ、見てるだけならいい?」
「まぁ……、それなら危なくないしいいんじゃないか?」
「とりあえず、今日はダメ。ミコトさんが心配する。」
「そうだな……。」
結局、イタチの家で三人で遊ぶことになった。シスイも修行したいだろうが、初めて出来た弟的存在のイタチにはとことん甘い。
この時の俺の言葉に嘘はない。
シスイもやってたし、イタチが二歳になったら、三人で修行したいと思っていた。
……でも、それが叶うのはもっと先のことになるとは、この時の俺は知らなかった。
ちなみに、
「ハルト、」
「ん?」
「……こいつに触ってもいいか?」
『!?』
「触りたいの?」
「……、
もふもふしてる……。」
「優しく触ってあげてね。」
「!! うん。」
あぁ、写真に収めたい。
優しく弥白に触るイタチと、今まで最も優しく触られて、気持ちよさそうな弥白の、癒しの絵が広がっていた。
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「……。」
『……。』
「……んー、」
『……、
主。』
「ん?」
『暇だ。』
「……解除する?」
『主と一緒にいたいのだ、我は。』
「……。」
なんだそれ。ちょっと可愛いな。
「じゃあ、弥白も一緒に考えよ。」
『さっきから、主は何を悩んでいるのだ?』
今日は久しぶりに外出せず、家の中で一人で考え事をしていた。基本的に外にいることの多い俺が家にいるのは珍しく、弥白も不思議がっていた。
……口寄せ動物と一緒にいるなんて変?そんなこと、俺が一番感じてるよ。俺が解除しようとすると、弥白がものすごい悲しそうな顔するんだよ!解除なんて出来ないよ!!
「封印術を作ろうと思って。」
『そうか、封印術か……。
封印術を作っておるのか!?』
「そうだよ。」
『主。封印術に限らず、術を考えるというのは難しいということを知っているか?』
「知ってるよ。」
俺のオリジナル忍術である“風華雷光”も結構、時間がかかった。でも、俺は既に取得のコツは掴んでいる。
それはイメージが重要であるということ。
基本的に誰からも教わってない俺が、忍術を使えるようになったのは完全に元の世界での完成体のイメージを知っていたから。
つまり、オリジナル忍術も、世界の理論に反さないように作れば、イメージを固めるだけで簡単に出来るということだ。……というか、既にそういう風に作ったことがあるんだから、間違いない。
「既にある強力な封印術は、どれも代償が大きすぎる。だから、強力で命を落とすことのない封印術を作ろうと思ったんだ。」
『……主が決めたことならば、我は口を出さぬ。協力しよう。』
「ありがとう、弥白。」
この封印術は、もちろん九尾の封印に使うためのもの。原作では、ナルトには九尾の陽の方を“四象封印”で半分を封印したけど、もう半分の陰の方は父さんがその命を代償にする“屍鬼封陣”で自分の身体に封印した。
多分、陰の方が強力だから四象封印じゃ抑えきれないから、命を代償にする封印術じゃなきゃいけないんだろうな。
しかし、それでは意味が無い。
何が起こるのか分かっているのならば、それの対応策を考える。それが俺の役割だ。
「と言っても、命と同等の代償ってなんだろう……。」
九尾の陰の方を封印するための封印術となれば、それ相応の代償が必要だ。命以外に……、ね……。
『例えば、封印したいものをチャクラ量で抑え込むことは出来る。』
「じゃあ、大量チャクラを封印術式に組み込むとかは?」
『が、日が経てばチャクラは自然と減少する。封印された者が、チャクラが吸い取られることに耐えれればの話だ。』
「そっか……。」
そもそも九尾をチャクラ量で抑え込むこと自体、無謀か……。
「そういえば……、封印術って鍵式だよね?」
『そのような形のものもあるが……。主、どうしてそれを知っている?』
やべっ。
「まぁ、それは気にしないでよ、弥白。」
『……よいが、』
「封印術自体は強力じゃないけど、その鍵を強力にするのは?」
『なるほど……、しかし、封印術と鍵のレベルがある程度、同等でないと、鍵を開いた時に封印していたものが一気に溢れるぞ?』
「鍵を段階式にして、少しずつ開くようにする。」
いいぞ、いいぞ。どんどんイメージが出来てきた。
『主の考えることは、新しくて面白い。』
「そう?」
『あぁ。そして、筋が通っている。不可能なことではない。』
俺よりも絶対に知識のある弥白からのお墨付きを貰い、俺の頭の中で既にそのイメージはできていた。
「弥白。協力してくれる?」
『我に出来ることであれば何でも。』
封印式はそんなに難しいものじゃない。鍵に細工をする。
命に代わる代償を、忍術の性質の量にする。
例えば、基本性質なら五段階で開け閉めができ、逆に言えば、五重で鍵を閉めているということ。
それに、時が経てばヤマト隊長とかの木遁とか、いれればいい。
初期段階は、俺と弥白の風・水・雷・火。そして、カカシさんの土の五段階。
チャクラ量しだいで、封印の鍵を強く出来るようにすればより一層いい。
「……あれ。」
『?』
だめだ。原作では、父さんが先に屍鬼封尽で陰の方を取り出して、残りをナルトに封印していた。でも、今のままじゃ、ナルトに封印することが先になってる……。
「上手くいきそうだったのに……。」
『主は誰と戦っておるのだ?』
その言葉で、弥白の方をはっと見る。
『!?』
「弥白は九尾の同族なんだよね?」
『? ……そうだが。』
「九尾と、直接関わりとかってあるの?」
『そうだな……。
同族の我らは、その恩恵を、僅かだが受けることが出来る。』
「恩恵?」
『簡単に言えば、チャクラを分けてもらえるということだ。』
なんと。
「それは陽の方?」
『……なぜ知っているのかは、もはや聞かぬが。その通りだ。』
つまり、弥白は九尾の陽の方と結合出来るということ。俺が四象封印を覚えて、その細工を父さんにしてもらえば、弥白が引っ張り出す九尾の陽の部分を、先に封印出来るかもしれない。
「……、うん。うまくいきそうだな。」
母さんに、怪しまれないように教えてもらおう……。
『主。』
「ん?」
俺の頭の中を書き出していると、弥白が声をかけてきた。
『主の父には言わぬ方が良いぞ。
我を呼び出した時と同じことが起こる。』
「……そうだね。秘密にしておくよ。」
母さんにもふもふされる弥白と、父さんに質問攻めにされる俺。
そんな未来が見えた気がした。
そんな未来を……、見ていたかった。
「では、近日中にでも決行いたしますか。」
「そうしてくれ。小さいうちから取り込めば、操りやすい。」
「はっ。」
膝まづいていた者がその場から消え、残ったのは杖をついた男だった。
木の葉の闇の部分で、静かに事が動き出そうとしていた