ペプシマーン
異世界に移転して3年。冒険者ランクもCになり、やっと生活が安定した俺は、自宅にて休んでいた。
どうも今日は元の世界の事が思い浮かんで離れない。
そんな中、ふと音楽が聞こえて来た。ギターやベース、ドラムが使われているこの世界では絶対に聞こえるはずのない音楽。
そして、このホームシックのような感覚の原因を思い出した。
2年前と同じように元の世界から人が移転してきただろう、恐らくこの音楽はそいつが持って居たラジカセか何かが原因のはずだ。
そう思い、窓から大通りを見ると、青い筒のような物がいくつも間隔をあけて置いてある。
赤い丸のようなマークもついていて見覚えはあるが離れているため詳しく見えないし、思い出せない。
思い出そうとしていると、右側から音楽が近付いてきた。
どんな奴が来たのだろう、俺が期待しつつ右を向いたとき、そいつを見て絶句した。
筋骨隆々の体、素晴らしいランニングフォーム。そして何より、赤い丸の入った青と銀色に色分けされた全身タイツに彼を称えるかのような音楽。
こいつを俺は知っている。こいつは…こいつは…
「ペプシマンじゃねぇかぁ!!!!!」
ペプシマンは、地面に置かれていた青い筒、ペプシコーラの缶を回収しながら走っていく。
それを見て、俺は思った。地面にペプシコーラが置かれているのだ、あわよくば一個位回収したい。
回収できなかったとしても奴が本物のペプシマンならばペプシコーラの自販機へ向かって走っているはずだ。
瞬く間にそのような結論に達した俺は、銅貨の詰まった袋片手に外へ飛び出した。
大通りへ出て、すでにペプシが無く、音楽が左側へ遠ざかっていく事に唖然とした。
遠くから見た時はそんなにでは無かったが、どうやら相当に足が速いらしい。
全力で走っているが少しずつ音楽と前に居る影が小さくなっていく。
見失ってはならない、俺は強迫観念に捕らわれた様に、実際捕らわれつつ走った。
そして見えた物は、ペプシマンが自販機の前から走っていくところであった。
ペプシが飲めなかった、そう思ったが自販機が消える様子はない。
とある配管工の能力者のステージは、ゴールと共に消え去るのだが…
走って喉が渇いていた俺は、銅貨を硬貨投入口へつっこみ、ペプシコーラを買う。
ヤバい位美味い。久々の人工甘味料の味だ。そしてなにより、酒とかのように気が抜けて無く、喉にガツンと来る炭酸!
銅貨で何故買えるのか、なんで残っているのか、そもそもどうしてペプシマンなんだ、そんな疑問も頭に浮かんだが、自然に消えて行った…