前回の、帝国が安定し、力がたまった時なぜそれを正しく使わないのか……それを考えてみます。
『火の鳥 未来編』のラストの、生命を正しく使う、とは違うでしょう。
筆者は痛いのと死ぬのと滅びるのが嫌なので、正しいと思っているのは「飢えない」「戦いで強い」「治安維持」。
戦争で勝つには国力・物量と技術水準、だから「食糧生産力」「工業生産力」「教育が行き届く」「研究発明が自由で報われる」「交通・交易が盛ん」なども必要と思っています。文化や人権、法や官憲の公平なども。たとえば人口の大半が飢えていたり奴隷だったりしたら、多くの天才児が無駄になります。宗教や党の理論に反する研究・言論が禁じられ本が焼かれる社会では科学の進歩も進みません。商売に膨大な賄賂が必要な国でも生産性は低くなります。道路がひどいだけでも国力は大きく低下します。柔軟に方針を変えられる、硬直や傲慢とは遠いことも必要です。
以前、欠乏と豊穣の項で、SETIが電波文明を探査するように戦艦数だけを見たことに似ています。
史上多くの思想家・歴史家はこれに同意しないでしょう。今の思想家たちも。
比較的最近であるアーノルド・J・トインビーも、技術の進歩と文明の進歩を切り離しています。「文明が停止もしくは衰退する時に技術が進歩することがあるし、またその反対に文明が動いているときに~技術が停止することもある」と。
当時の、きわめて広い知的階層全般の趨勢でしょうか?銀英伝のハードウェア否定主義は時間は少し経っていますがその影響も?
力を正しく使う、それをしない。
むしろロボットアニメ、それも原作漫画がある古典にそのテーマが多く見られます。
『ガロン』『鉄人28号(横山光輝)』など。核兵器の影響も大きいでしょう。
古いスーパーロボットアニメの多く、また『イデオン』などもその系譜です。
本来土木工事、惑星を改造して豊かに暮らすためにと与えられたガロンを悪用したがる無数の悪役。特に過去編では、本人の良心と関係なく軍の任務、義務として。
正しく使えば良いことにも使える力を、悪いことに使い、争奪する。
力の争奪と言えば、『ロスト・ユニバース』『ヤマモト・ヨーコ』『海軍士官クリス・ロングナイフ』など超技術異星人遺跡の争奪戦もよく見られます。
技術をリバースエンジニアリングして使うことより、むしろ争奪戦のほうが主になってしまうことが多いように思えます。
また四つの、小説ではない本を参照します。いや、それを読んだ方が多分早い。
『なぜ国家は衰退するのか』『自由の命運』(アセモグル&ロビンソン)
『21世紀の資本(トマ・ピケティ)』
『暴力と不平等の人類史(ウォルター・シャイデル)』
『なぜ国家は衰退するのか』は、地理的には一体であるハイチとドミニカ、アメリカとメキシコ国境の町、韓国と北朝鮮などの極端な貧富の差がなぜなのかを追求します。『銃・病原菌・鉄』の地理説に対する反論でもあり、制度が原因とし、その制度はパチンコ玉のように多くの偶然による、とします。
民主主義・自由経済……国家がしっかりしていてしかも少数のエリートの好き勝手ではない、という国は働き発明するかいがあるので発展する。そうではない……ソマリアのような無政府もスターリンの独裁国も一つの袋に詰めた……国々は発展しない、と。だから現代中国ももうすぐ潰れると言ってます……さてそれはどうなるか。
また、民主的な国は民主主義に戻りやすいし、腐った国は革命があってもまた次の独裁者が暴虐をやる……『火の鳥 太陽編』の未来側のように……制度の慣性はとても強い、と。
考えてみますと、『銀河英雄伝説』のローエングラム帝国がそれなりに良い国とされるのは、ラインハルトたちが無欲であることに依存しています。次代のヒルダとミッターマイヤーまではよくても、その次もその次も……は保証できませんし、ミュラーだって老いたら変わる可能性は十分あります。ヤンが自分も独裁者になって老いたら変わるかもと恐れたように。それを抑止するものは何もない、そして非民主的で権力を抑制せず権力者が富を集めるのが容易な国には、強い慣性、「寡頭制の鉄則」がある……
『自由の命運』は同じ作者が上の論をさらに発展させたもので、国家と社会がともに強め合っていかなければ、自由に生き豊かになることはできない、と。
国家だけが強すぎる独裁国家や警察国家、法律や制度はまともに見えるけど中身は腐りきった国、無政府状態の国未満、逆に社会だけが強すぎる=古い道徳に縛られた国などを分ける。
『21世紀の資本』は、r>g(資本収益率>経済成長率、要するに株>給料)、という単純な式を歴史の多くの場から導き、第二次世界大戦後先進国は例外でありそれは終わったとしています。
『暴力と不平等の人類史』は、平和だと格差は際限なく拡大する、という恐ろしい傾向を多くの歴史から抽出しています。逆に平等は、人口の何割も無惨に死ぬような大戦争、大革命、大虐殺、大疫病など地獄絵図がなければ起きない、善意・言論・選挙だけで平等になることは絶対にない、という恐ろしすぎる結論を出しています。
さて、繰り返します……帝国が統一されました。飢えて殺し合っていた流民たちが腹を満たし、無人となっていた農地をふたたび耕し、破壊された水路を修理しました。
新しい水路も作りました。
それで、秦や隋のように工事や外征のやりすぎですぐ滅びるのでなければ、何十年か豊作も続きます。そうすれば赤ん坊も餓死したり侵略者に虐殺されたりせず育ち、人口も増えます。技術も行き渡り同じ田畑からより多くの収穫が得られるようになります。大都市で交易が増え、工業生産も増えて農具も安くなります。
多くの人口。多くの作物。多くの鉄。
金貨や銅貨も増えます。貨幣経済は生産をより便利にし、生産量も増やす面もあります。布も高級な陶器も増えます。読み書きできる若者もたくさんいます。船さえも増えます。
国は強くなったはずです。大工事でも、侵略戦争でもできるはず。
力です。正しく投資し十数年待てば何倍にもなる、資本です。
ですが、歴史上の多くで、それは衰退の始まりとなるのです。
数々の銀河帝国もそうなのでしょうか。
力を何に使うか。
税金を下げる。
軍備を増やす。
開拓。スペースコロニー。テラフォーミング。ダイソン球。
探検。新しい文明を見つけに。秘宝、技術を秘めた遺跡を求めて。真相を求めて。
運河・治水・港湾。道路・鉄道。軌道エレベーター。ワープゲート。銀河鉄道。
贅沢。王室の浪費。さまざまな勢力の浪費。
宗教。巨大な寺や教会。道徳や宗教そのもの。議論と宗教裁判。科学研究の禁止。
外征。儲かる外征。儲からない外征。
宮廷闘争と内乱。
バブル。チューリップ。南海やミシシッピの泡沫。鉄道。IT。土地。宝くじ。ねずみ講。サブプライム。
支配と秩序そのもの。粛清、秘密警察、宣伝戦。
力を正しく使えばいい……力で、より大きな運河を作り、より大きな船を作ればいい。
船で遠くまで行き新しい文明を見つければ、スペインのように膨大な黄金を得られることもありますし、ポルトガルのように香料貿易で稼ぐこともできます。
近代以降であれば、まず新しい溶鉱炉や転炉を試してみればいい。電信という新しいアイデアを試してみればいい。原爆という新兵器を作るといい。
昔でもカナート(雪山から地下に掘った水路)やコークス製鉄には行きついていました。
秦は全国を統一してすぐ巨大工事に多くの民を酷使し、反乱で滅びました。
しかし、秦は工事で儲かったことがあるのです。
昭襄王の時代、蜀の地の都江堰。始皇帝が若いころの鄭国渠。どちらも大規模な治水工事で、秦に莫大な農業生産と、交通の便による利益をもたらしました。
隋の中国を縦断する大運河も、必要と利益ははっきりしていました。
儲かるのです。力が足りなかったのに無理にやっただけで。後知恵で言えば、三代目当たりで国の力が高まったときにやっていれば、また巨大宮殿だの陵墓だの不老不死だのよけいなことをしなければ最高でした。
またピラミッドのように、当時は農閑期の農民のための公共事業であり……諸説あるにせよ……また何千年も観光資源となった、ということもあります。
ひたすら税金を下げて民の生活水準を高める、という考えもあるでしょう。戦前の日本は民力休養が言われました。
ただし現代では減税は、金持ち優遇政策とされます。何を財源とするかも問題になります。
スペイン帝国は、新大陸の金銀を贅沢と戦争に使って衰退した、というのが教科書的な記述ですが、具体的には。また、選択の余地はあったのか……そう使わなかったら即座に滅ぼされる状況だったり、王が破門されたり、など。
力……資本、金のある面として、膨大な力を蓄積して、一つの方向にぶつけることもできます。
前に言った、二人で大きい石を運んで水路を作り新しい畑を作るように。帝国は、そして国でも大商人でも金持ちは、膨大な人数を集めて大仕事をさせることができるのです。
資本、力は正しく投資すれば、時間はかかりますが何倍にも増えます。当たればもっとけた外れに。
ですが、多くの文明は、少なくとも生産力と軍事力を増やす方向には力を使わないのです。
そして財政的に破綻し、民が貧しくなり農業生産も低下し、国全体が腐敗して、内乱が相次ぎ外からの侵略者に襲われ滅亡に至るのです。
加えて、鉱山や森林の枯渇、前に考えた周辺蛮族の成長もあるでしょう。長い目で見れば確率的にほぼ確実な自然災害・気候変動もあるでしょう。中国の黄河は百年周期で土砂がたまり洪水が起きますし。
『国家はなぜ衰退するのか』でいえば、少数が圧倒多数を収奪する、近代先進国以外の歴史上諸帝国はイノベーションがないので一時は集めた富で興隆しても衰退するのは必然、となります。
逆にそれは、『銀河英雄伝説』では自由惑星同盟が有利ではないかとも思われますが……とりあえず人口半分で生産力は近い、一人あたりは二倍近いと。
……『スコーリア戦記』でも『彷徨える艦隊』でも『タイラー』でも暴虐帝国に勝ててませんねえ。『銀河英雄伝説』では、帝国は名君が出た場合全体で正しいことができるが、民主主義国は常に質が低めになる、という古代ギリシャ以来普遍の議論をふまえています。
さらに『自由の命運』では、強い力を持つエリート集団は富国強兵を嫌う、と論じています。野蛮地域では呪術師が出る杭を打ち英雄を、意欲を潰し悲惨な平等を強いる規範がある。制度は近代的でも腐敗した国ではエリートは、富国強兵の過程で自分たちに逆らえる強者が出てしまう、自分たちの利権が減るのを嫌がる。というように。
ついでに、「一つの方向に」というのも危険があります。集中した方がいいのは戦術と共通する正しいことですが、人間は群れの統一性を無限に高めること、それ自体を目的にしたがります。
秦の始皇帝は焚書坑儒もやらかしました。『三体シリーズ』の空間歪曲技術禁止、『宇宙戦艦ヤマト2199』のイズモ計画禁止など、考えることも禁じたいという人の心は極めて強いものです。
道徳そのものが間違っていることもあります。
『三体シリーズ』の地球人の自滅は前に記した通り。
中国の五胡十六国時代を見ると、良い皇帝が寺に大金を出したり、中国は統一されねばならぬと無理に北を征服しようとして自滅したり、が繰り返されます。道徳的になろうとして損をする、その道徳が間違ってるんだ、と叫びたくなります。
儒教そのものが、明の時代に海外に出るのを禁じ、中国文明自体の歴史での敗北を招きました。
人間はすぐ、復古……幻想である過去に戻りたがるとか、永久に安定しいかなる変化も潰す、とかをやってしまいます。農業を尊び商工業を否定することも実に多いです。
何よりも、科学を、多様な進歩を否定するのが最悪です。
それをやったら、今はよくても上の技術水準の敵に攻められればひとたまりもありません。アヘン戦争の中国が、イギリスの進歩した大砲と船の前に惨敗したように。『三体シリーズ』で木星の裏に隠れた地球人が、次元兵器で全滅したように。
宇宙戦艦の文明も……
『銀河英雄伝説』で、ラインハルトはルドルフ・フォン・ゴールデンバウムはせっかく力を得たのに自己神格化に使った、と批判しました。
『スターウォーズ』のパルパティーン帝国は、新秩序を作りましたがそれで何をしたのでしょうか?何がしたかったのでしょう?
目的。
『三体シリーズ』の地球人は、地球人が生き残ることが目的でした。ただそれも純粋ではなく、逃亡主義禁止などよけいなものを付け加えたのが失敗の元でした。
『ガンダム』の宇宙世紀の、腐敗していると言われる連邦高官は何を目的としているのでしょう?
『航空宇宙軍史』は遠大すぎる戦いに没頭し、人道などを忘れています。
戦争自体が目的になり、それ以外が目に入らなくなることは人間に実によくあることです。
『タイム・シップ』のモーロックはとてつもない力を得、闘争心を遺伝子レベルで除き、数学の研究に没頭しています。
『老人と宇宙』は、コンスー族が何を目的としているのかわからないのが、多くの種族にとって困惑の種です。
『幼年期の終わり』では、知的生命体の本当の目的は科学進歩でも巨大戦艦でも文化でもない、それらは袋小路種族の牢獄でしかない……本当の上は別にありました。
『ローダン』では、〈それ〉はテラナーに何を期待しているというのでしょう?そして『火の鳥』は?
そして『現実』の人々、そのさまざまな群れは、何を目的とするのでしょう。
それは道徳でもあります。何を正しいとするか、何を目的とするか。
権力、戦争、宗教……世界をきれいにする・異論や穢れた人間集団を潰す、贅沢……人間は事実上常に、国力を高めるとは違う方向に力を使います。
そして腐敗し衰退していく帝国では、多くの強い人、名のある豪族や宦官外戚、節度使などさまざまな強い人……おそらくは膨大な人数の血縁集団の代表……が、ひたすら私利私欲を追求し国を食い荒らし、ライバルとなる貴族や妃を一族皆殺しにし、一般の民を苦しめます。
協力がなくなるのです。
文明が平和であるだけで格差が拡大するのなら。
考えてみれば、何人も同じ広さの田畑を持っていても、少し運がよく収穫が多い家や運が悪く少ない家、たまたま自分の種もみにいい突然変異があった家……ささいな差が積み重なり、差は広がっていくことになるのでは?
余計にもうかればそれを元手として、新しい事業を試すことができる……それで差が広がることは多いでしょう。
それがある以上、農民が強い者の奴隷となり、土地が豪族に集中し荘園となり、帝国が衰えるのは必然となります。
税や兵役に苦しむ農民が豪族のところに逃げ、国に属する農民が減って税収も徴兵される兵も減る、というのもよく言われます。
その結果地方の、独自の軍事力もある集団=反乱予備軍が生じ、同時に中央政府の税が減るのも必然でしょう。
平和そのものが、格差拡大によって文明を衰退させるのだとしたら。
『タイラー』では上述のように老いたタイラーは、銀河の全人類が統一され平和なままだったら、千年単位の時間が経つと文明を保てないという予想を聞き、銀河三分でずっと戦争を続けることを選びました。
多くの本で、近代化に至ったのがヨーロッパであり中国でない理由として、ヨーロッパは統一が難しく中国は容易であり、統一されないヨーロッパでは研究者はある国で禁じられたら別の国に亡命し、より優れた船や大砲を禁じるのではなく国が努力する動機があったから、と言われます。
中国も三国・南北朝など分裂し争う時代に盛んな産業、豊かな文化が栄えることもありました。
『なぜ大国は衰退するのか』でも中央集権化自体が衰退の理由になるとあります。
格差が拡大していく……
では全員から一人に金を集めたら。
今の先進国はどんどん格差が拡大します。結局は、多数から少数に金を集めています。
ではその金持ちがどうするか。
贅沢と投資の二択があります。貯蓄は実質投資でしょうか?
いや、それはそれこそ、天下が統一されて膨大な税を集めた皇帝も、その後権力を得た宦官も同じです。
贅沢するか。投資するか。貯蓄するか。
逆に少数の金持ちから金をとって全員にばらまいたら。
貯金するか。消費するか。投資するか。
貯金は投資と同じなのか。『現実』の以前の先進国では、人々が貯金したら銀行はその預金を新型転炉に投資して、より安く丈夫な鋼鉄がより速く安い鉄道を可能にし、投資を何倍にも増やしました。それで預金でも高利回りという言葉がありました。今は古語辞典ですが。
今はそれがないように見えます。どれほど金があっても、いい投資先がないようなのです。ずっとバブルと崩壊を繰り返したり、長期停滞だったり……何でマレー半島横断運河を掘ったり、新型高速増殖炉を試してみたりしないんだ、と思いますけどね。
投資先不足……帝国が安定し、低い枝になった実が尽きたら。割と簡単に開拓できる森や沼や運河、近場で土地も豊かで征服したらおいしい敵が品切れになったら。
江戸時代の日本、椿海などおいしい干拓が終わり、次に印旛沼を干拓しようとしても簡単ではなかった……椿海に比べ印旛沼は投資に対する儲けが低い、当時の梯子では届かない高い枝の実だったのかもしれない。
……そう考えてみると、かなり今更ですがルドルフ前の銀河連邦の衰退は、ひょっとしたら短期間でテラフォーミングできる質の良い星が切れたから、テラフォーミング中に放棄された星というのは航路と星の環境が悪くて儲からなかった……?
金はあってもぼろもうけの投資先が見当たらない、贅沢をするしかない……?
格差が拡大したことと、投資先不足に関係はあるのでしょうか?
意欲が高い自作農ではなく、豪族の奴隷である農民は、借金して高価な農具を買うことができないから鉄工業も衰える……豪族は木の農具で少ない収穫でもいい?……中南米の、先住民を奴隷にする巨大地主が工夫・投資をしないで今も貧困な国を作ったように?
行き場のない資金がバブルに行くこともあります。1970年以降の『現実』は、本物の進歩が事実上なくなったからバブルを繰り返す以外できなくなった、とも考えられます。
『現実』の近代以前は、人口が増えればそのうちその地域の開発の限界が来て、人口過剰になって文明崩壊、それを繰り返したと見ることもできます。近代が限界を打破するまで。
贅沢。
多くの文明で、多くの有力者の最大の「目的」に「贅沢」があります。
それは国を滅ぼすことも多いようです。
贅沢、それ自体が悪でしょうか?
多くの人は贅沢を憎みます。贅沢が帝国の衰亡の理由だ、という人も多いでしょう。
ですが、『銀河英雄伝説』で質素すぎるラインハルトが、贅沢を禁じる気ですか、少しは贅沢してくれないと下の人が過剰に縮こまって景気が悪くなります、と諫言されたことがあります。
倹約も、経済にとってマイナスになることがあるのです。
有名な言葉に、芸者を揚げて豪遊すれば、料理人や三味線引きなど多くの人に金が落ち経済が回る、とも。
『現実』の江戸時代の三大改革の後ろ二つは徹底した倹約令で、贅沢を禁じるものですが……いい結果にはなりません。
もっとも強い形が、スパルタ。鉄の貨幣を使うなど徹底的に贅沢を禁じた軍事のみの国。強くはありましたが、先はありませんでした。
ルイ15世の寵姫ポンパドゥール夫人は、贅沢の一環としてセーブル焼や士官学校など文化や国家そのものに貢献しています。
ドイツのある領主は錬金術師をつかまえて脅しつけ、マイセン磁器という巨大な富を得ました。
問題は力を何に使っているか、です。
特に宗教……王の巨大墓も含む……は、多少文化を高めるにしても膨大な国力を無駄に使うことになるものです。
でも間違った征服戦争はもっと桁が違いますが。
とはいえ、「何が正しいのか、お前は何が正しいのか知っている全知者ではないだろう」という問題もあります。占星術のために星座を観測したら航海に役だったり、不老不死薬を作ろうとしたら火薬ができたり、ということもあるでしょうし。
考えてみると、『スターウォーズ』のパルパティーン皇帝は、不思議とそれほど贅沢な印象を与えません。ダース・ベイダーも。質実剛健な軍人、という感じです。
宇宙戦艦作品には善悪問わず、割と質素な支配者も目立ちます。軍事、征服を優先する印象が多いからでしょうか。
『ヴォルコシガン・サガ』のグレゴールもそれほど贅沢はしません。セタガンダ帝国、またジャクソン統一惑星の大豪たちの贅沢はよく描かれていますが。
『ヤマト』の侵略者としては邪悪な帝王たちも、規模は大きいですが崩れるほどの贅沢という感じではありません。ただ、都市帝国や暗黒星団帝国の首都星などは、その規模自体が兵器であると同時に宮殿でもあるのかもしれません。
無論、絢爛豪華な宮廷が描かれる作品も『銀河英雄伝説』のゴールデンバウム帝国のノイエ・サンスーシー、『タイラー』のラアルゴン帝国、『スコーリア戦史』『スターキング』『デューン』など多くあります。
腐敗してとんでもない財産を作っている軍人も多くみられます。『彷徨える艦隊』のシンディックが特にひどいと言われます。
巨大企業の超金持ちの贅沢が描かれることも多いです。
必要に応じて規模が大きくなる、それが贅沢に見えることも多くあります。都市帝国、『宇宙軍士官学校』のケイローンの恒星を惑星軌道で囲う超巨大コロニー、『ファウンデーション』『スターウォーズ』『目覚めたら~』などの惑星全体が都市となった首都など。
『ファウンデーション』では何千億の星々を支配する、官僚機能だけでそれだけの都市が必要になったとのことです。
デス・スターもイゼルローン要塞も、軍事上必要であると同時に贅沢にも見えます。
繊細な贅沢もあります。
『叛逆航路シリーズ』では士官は妹が手紙に書いた詩を楽しみにし、また茶器・紅茶そのものがきわめて高価になります。
軍が多い戦艦作品で、将兵の生活水準、特に食も話題になります。
『宇宙軍士官学校』では兵は平時は玉のごとく戦時は塵埃のごとく、という言葉とからめて、超高級日本料理店のような米飯や魚の質の高さが確保されます。ほかにも飲食のシーンが割と多いです。
『銀河英雄伝説』ではラインハルトが幼年学校の食の質の悪さに文句を言ったりします。
『タイラー』ではぼったくりの達人が要所で活躍します。
『叛逆航路シリーズ』で、前任者が水だけだったので茶を与え、時に酒を景品に競わせるブレクは厳しくとも慕われます。それでも艦は艦長でも狭い部屋、兵は寝棚に何人も詰められています。
贅沢にも、質があるようです。退廃した贅沢、というのも何となく人は感じてしまうのです。巨大な黄金と、繊細極まりない象牙細工の対比のような。
『火の鳥 未来編』の衰退した一般大衆の会話は、なんというか筋肉質ではなく、変な細かさ、軟弱さを感じさせるものでした。
逆に人は贅沢を、特に退廃を憎みます。『銀河英雄伝説』のルドルフ・フォン・ゴールデンバウムは退廃を憎み、ゲルマン文化以外を厳しく抑圧しました。
ナチスドイツも退廃芸術を弾圧しました。ソ連も中国も、昔の日本も様々な文化を厳しく弾圧しました。
今も、共産中国やタリバンも文化を弾圧しています。先進国でさえも差別や児童ポルノ、平和教育などに関係し、質や激しさは様々ですが文化の弾圧はあります。『Dr.スランプ』の初版と同じものが市販されることは永遠にないでしょう。デフォルメ黒人や先住民など差別表現をごまかすためなど、いくつかはストーリーそのものが崩壊するほどの改変をされているのです。
贅沢に平行して、金持ちであること自体が政権ににらまれ、財産を奪われ族滅されることも多くありました。
革命前ぐらいのスペインやフランスは、王が商人を脅して大借金をして踏み倒したり、悪くすれば首をはねたりすることもよくありました。
『現実』の古代ローマや江戸日本では、成功した商人が私財を投じて道路・水路など公共工事をすることもあります。得られるのは永久に名が残るという名誉であり、また族滅を免れることでもあります。
やはり軍事力や権力がなければ貨幣だけでは安全ではない……となれば、地方豪族や軍人、宦官や外戚に取り入って、国自体を腐らせることに。
古来、権力者の贅沢の極みとして、不老不死があります。
現実には、今のところ不老不死は不可能ですが、SFであれば可能であり得ます。
ついでに、今は技術進歩により、不老不死やそれに近い電脳アップロードの実現が近い、という人たちもいます。
不老不死への妄執は、歴史的にも多くの悲惨をもたらし、同時に進歩にもつながりました。
不老不死のためと多くの鉱石や薬草を調合し、結果新しい薬剤ができれば多くの人が助かります。
火薬もそのためだと言われています。燐の単離も、賢者の石を求めて尿を煮詰めたことでできたのだと。
『火の鳥 黎明編』では火の鳥を求めての征服が、結果的に国を広げています。
不老不死とはずれますが、豊臣秀吉は子種を求めて虎の肉などを求めました。
多くは前述ですが……
『ローダン』では実際に、五次元シャワー、後には細胞活性装置という限られた不老不死が存在し、それがストーリーの根幹を担っています。何百年にも及ぶ話でありながら、主要メンバーを活躍させ続けることができるのです。
『デューン』のメランジは抗老作用があり、だからこそ砂漠の惑星に巨大な価値があります。
『ノーストリリア』の羊から得られる不老不死薬は、子供の小遣いで地球を買える富をもたらします。
『ヴォルコシガン・サガ』では、無法のジャクソン統一星で金持ちがクローンの体に脳を入れる長命法がはびこっており、マークはマイルズになりすましてその人間農園を襲撃しました。
『火の鳥』こそ、不老不死に対する人間の妄執が最大のテーマとなる作品です。
不老不死を求める権力者はすべて滅び、得てしまえばもっとひどい悲劇となります。
『太陽編(修正後)』の大友は、火の鳥を無理に追って自滅するのではなく、偽物を作って利用し権力を得るという、ある意味での正解をつかみました。ただし本当の不死だったヨドミを見た時感情を抑えられず自滅しましたが。
『都市と星』では、不老不死は容易ですが、記憶の蓄積に耐えられなくなるので千年でリセットします。それはそうです、不老で健康でも、毎年黒歴史が蓄積されるのを何百年耐えられるでしょう。
『現実』では、特に古代ローマ・中国・イスラム・インドでは贅沢に際限はありません。
人間が、少なくとも誰もが真実だと信じていることのひとつに、「権力者・政権・政府がすごい贅沢を見せつければ、民は恐れ入って服従する」があるようです。
人を服従させること、権力は人の無限大の欲望ですから、当然贅沢も無限になります。
巨大な宮殿。際限なく重い衣類や王冠。巨大な宝石。それらが、巨大な戦艦や兵の銃、公開処刑の残虐な道具と同様に、支配の有力な道具だ……と支配者たちは思ってしまうのです。
不思議と近代以降はそれが弱いようです。今の日本の皇居や首相官邸は別に超巨大建造物ではありません。せいぜいオリンピックで巨大競技場を作るぐらいです。むしろ新しい宗教団体が巨大建造物を作ることが多いです。
むしろ冷戦の時には、宇宙開発競争や加速器などのビッグサイエンスさえ、国の威信を見せつけるためと言われました。実際冷戦が終わると、要するにただの贅沢、税金の無駄遣いとされ、国が出す金は大きく減っています。
逆に、敵国の贅沢……あらゆる文化財を破壊することが、敵を屈服させる有効な手段だとも、人類は意識せず確信しているようです。それは魔術・宗教の次元の話でもあります。敵の神像や本はそれ自体が生きた神で、それを破壊すれば敵神を殺すことができる、そうしなければうちの神が怒って祟るから、と。というか人が大切にしている物を取り上げて破壊するのは、近代軍の入隊から小さい子供のいじめまで普遍的に行われる人を壊して奴隷化する方法ですし。本当にどれほど人類は文化財を破壊することが好きなのやら。
国も金持ちも地方豪族も、建設的な投資をしない理由としては『自由の命運』で強調される、格差社会を保つために国を弱くする、という動向もあります。
宗教・道徳が、進歩そのもの、経済成長さえも嫌うことも重要でしょう。国そのものが建設的な投資をすることを罰したら、無駄な贅沢をしたり賄賂に使ったりする方が処刑されない可能性は高いでしょう。
どのような贅沢が国を発展させるか、また衰退させるか……単純ではありません。
実際には、どんな贅沢よりも兵器や兵站、港湾などの方が圧倒的に高価、というのも重要なことでしょう。
また考えると、贅沢には、希少性という隠された前提があります。
黄金はなぜ、それを手に入れ身につけ見せびらかすと贅沢なのか。少ないからです。鉄や銅、砂や海水に比べて。
スペインが中南米で手に入れたような量ではなく、地球そのものより多い黄金が手に入ったり、あるいは簡単に恒星のガスを絞り出して原子番号を変えて黄金にしたりできたら、それは貴重ではないのです。……軌道エレベーターだけでも黄金が希少でなくなったら、世界経済大丈夫でしょうかね……
希少性。それが価値を作ります。
以前も触れましたが、『銀河英雄伝説』で金銀やラジウムに価値があるのは、本来はおかしいのです。
『ガンダム』宇宙世紀で、資源を確保したマ・クベがこれでジオンは十年戦えると言ったり、結局資源不足で文明崩壊に陥ったりしたことも。
無数の小惑星を、さらに規模を大きくし時間をかければ水星や火星も、連邦型ソーラシステム……多数の鏡で太陽光を集めて処理すればいいのですから。無重力を活かし溶かしてピザのように回して遠心分離したり、分留……薄い酒を熱して強い蒸留酒と水に分けたり、塔で原油を熱してガソリン・軽油・重油・アスファルトと分けるように……したり、溶かしては固めて海氷やジュースの氷が分離されるように分けたり。
多くの作品が、『現実』とさほど社会構造が変わっていないことに、鉱業の困難と資源の希少性があります。ついでに農業も工業も革新されていないことも。
逆に希少性から解放された、『スタートレック』『タイム・シップ』『断絶への航海』などでは貨幣が意味を持ちません。
希少性では宝石も面白いことがあります。
上述したように、『宇宙の旅』シリーズでは木星の恒星化で、ダイヤモンドがばらまかれています。『ヤマト』のイスカンダルにダイヤモンドの塔が林立しているのもそういうわけでしょう。
『銀河乞食軍団』では、天然宝石はいくらでも手に入るけれど、人造宝石は一つ作ってレシピを捨てれば宇宙に一つしかないので希少価値があります。
『ヴォルコシガン・サガ』では、ヴォルコシガン家が代々貯めてきた宝石は外宇宙と接してすぐ人工宝石の流入で価値を失いました。
『スターウォーズ』の、ライトセイバーを作るためのクリスタルなど天然でなければならない、とすることで希少性を維持することもあります。
麻薬ですが『レンズマン』のシオナイトも合成・人工栽培が不可能なため希少性が維持されています。
他にも生物などは希少性が強いです。
特に遺伝子資源、技術移転ともなる種や卵は、実際の価値はけた外れどころではありません。長いこと中国が独占していたカイコ=絹、激しい争奪戦があった茶やスパイスの種、ゴムの苗、などなどのように。
古代中国は膨大な資金を投じて西方から汗血馬とウマゴヤシを手に入れましたが、どちらも巨大な価値があります。いくら出しても損ではありえません。ウマゴヤシは空中窒素固定能力があるマメ科牧草です。
希少性による価値では、たとえば『叛逆航路シリーズ』ではずっと昔の紅茶器セットが星系を買えると言われます。
贅沢は文化、生きる方法(ウェイ・オブ・ライフ)でもあります。
イギリスやフランス、中国は自らの「文明」を極めて高く誇っています。実際にはイスラム帝国も、自らの文明文化を高く誇っています。
船で半年の距離があり本国の三倍の土地と倍の人口を統治していても、オランダ東インド会社なんとか総督やスペイン帝国どこそこ副王が独立しようとしなかったのも、反乱したら故郷の劇場に二度と行けないからかもしれません。単なる忠誠心かもしれませんが。
「欲しい」を作り出すのがライフスタイル、ウェイ・オブ・ライフでもあります。贅沢の方向を決めるのも。
『銀河英雄伝説』では、ルドルフ・フォン・ゴールデンバウムはドイツ趣味・ゲルマンを銀河全人民に強制しました。
ウェイ・オブ・ライフは、死者の弔いも大きい。明治政府は全国に特定の葬送法を強制しました。キリスト教は排除しつつそこを強制するのがおかしいところですが……ウェイ・オブ・ライフが条約改正に関わると思われていたので手段は選びません。
葬送法はあまり目立たないような……
『彷徨える艦隊』では星を信じる宗教もあり、艦隊での戦死者は水葬に似た儀式で恒星に投げ込みます。いつかその星が超新星爆発をして飛び散ったガスが新しい星になり、再び生命になるのだ、と。
確か『ヤマト』も似たような儀式で宇宙葬だったと思います。
『デューン』では遺体の水分を分け合います。
文化の力は、それこそ『マクロス』では軍事力以上に勝負を決めました。
『三体』では三体人の側にも大きな変化をもたらしています。
贅沢の結果もある……とされますが、ある時期から歴史上のあらゆる帝国は、財政が厳しくなります。
古代ローマも江戸幕府も、貨幣を改鋳します。純金でできていた金貨を、金の含有量を半分にすれば同じ数字の金貨の数が倍になり、その分国の利益にできるのです。通貨発行益、シニョリッジと言われるものです。
そうすると、貨幣の希少性が下がります。パン一つに必要な金貨が二倍になり、物価が上がります。古い純粋な金貨の退蔵も起きます。インフレ。
さらに紙幣であれば、いくらでも印刷できます。元はそれで繁栄し、滅んだそうです。
『タイラー』では、銀河統一に伴う経済混乱をさらにハイパーインフレを暴走させ、紙幣を刷りまくりました。
新大陸を征服したスペイン帝国は、たくさん金銀が入ってくるのにインフレになり、財政が破綻するというカホな(誤字ではなく『リングワールド』より)めにあいました。
税、特に主要穀物の税とは違う政府収益、というのも歴史の中では興味深い問題になります。
昔は、国王も要するに大きい武装地主の一つで、自分の領土の農民の税を受け取ったりいろいろしていました。ただ、大きい国になってしまったら、王が直接商売をすると経済が壊れると言われています。
スペインにとって、新大陸からの金銀の税は、議会などにはからなくていい王自身の小遣いでした。だからこそ好き勝手に戦争して破産しまくったと言われます。近代の産油国もそうですが、税とはずれた、好きに使っていい巨大収入があると国をコントロールできず貧困になると言われます。
……ラインハルトは貴族財産で平民の生活水準を上げ、後には新領土=同盟の税が(功臣に分配するのではなく)直接帝国政府に来るようにしましたが、産油国と同じことにならないか不安です。
世界各国で重要だった、主要穀物の税とは違う政府収益に塩税があります。中国では鉄や茶も。明治日本は酒とタバコ……今でもタバコ代の大半は税金です。ガソリンにも。塩専売がなくなったのも最近。
近世のフランスやスペインもありとあらゆるものが専売だったとか。フランス革命はそれに対する不満も……
専売制には、麻薬取締と共通点があります。物の売買を規制するので、闇が儲かるのです。中国では何度も、塩密輸商人ネットワークが反乱を起こして国がひどいことになっています。
宇宙戦艦作品で似たようなことはありましたっけ……宇宙海賊に、横暴な権力に対する抵抗の面があれば話が膨らみますが、絶対悪とする方がいいのでしょうか。
関税や貿易も、たいていは君主の独自収入です。
また考えてみれば、『銀河英雄伝説』の、ラインハルトが大貴族の財産を奪って平民の生活水準を高め、同盟を征服した、というのはおかしいのです。
あの状態の帝国であれば、帝国も大貴族も借金でぴーぴー言ってるのが歴史のパターン。
貴金属の価値が大きいことなどもあるでしょうが……内戦をやらかしたのだから大借金、紙切れ軍票にならないわけがないと思うのですが。
門閥貴族の贅沢は、屋敷や芸術品も大きかったようですが、私設艦隊がけた外れに大きかったと思います。
軍事は、そこらの贅沢とは桁の違う金がかかるのが常ですから。
暴力を伴う変革で、膨大な富が階級間を移動した、というのはイギリス宗教改革、フランス革命などであったと言われます。土地は燃やせませんし、どれだけ借金があっても土地自体は価値がありますし……
中国の歴代帝国も多くは、中ぐらいで誤った征服をして膨大な金を使いつくします。
……日本の江戸幕府は大火事や火山噴火で使い切るという面白いことになりました。
中国の、たとえば漢の武帝などは西の騎馬民族を攻めて貯金を使い切りました。似たようなことは後にも繰り返されます。イスラムの帝国も。元々帝国は、特に中国は、それ以上西進しても割に合わなくなった時点で破産必至では……という気がします。
きりがないうえに、勝っても得るものがありませんから。降参させて傭兵としたらそれはそれで危険ですし。
誤った征服、といえばラインハルトが同盟を征服したのは正しかったでしょうか?常に敵がいる状態のほうがよかったということは?
『彷徨える艦隊』で、ギアリーが帰還後すぐに遠征を繰り返したのは、軍事費の上で大丈夫だったのでしょうか?特に異星人探査の遠征は、得る物は事実上何もなかった、望めなかったはずです。
格差の拡大。社会の変質……多数の自作農から少数の大地主。
利益が大きく国力を強める投資先がなくなる。
無駄な贅沢や軍事で巨額の予算を使ってしまう。
それで王朝の初めは軽税でも税収が多く、王朝の末期は重税でも税収が少ない(ハルドゥーン)となるとさえ言われます。
資源枯渇や気候変動、周辺蛮族の成長などもあり、それらが栄枯盛衰を引き起こしている……
それにしても……今のこの『現実』も格差が拡大していると言われますが、膨大な金を集めた人たちはそれをどう使っているでしょう。膨大な額を慈善に費やしている人も多いそうですし、信じられない贅沢をしている人もいるそうですし、すべてをまた投資して数字を増やし続けていることも多いようです。
しかし、国も個人も、どれだけの金が今、人類の未来のため、滅亡を防ぐため、進歩のために使われているでしょうか?核融合や軌道エレベーター、自己増殖性ナノマシンなど、人類文明を前進させる技術、加速器のような科学そのもの……『三体』で地球人の加速器を封じることで科学の進歩を止めた、それほど重要……、そして天才児を無駄にしないための世界全体での教育・児童福祉にどれだけの投資をしているでしょう?
今の『現実』の人類が、ゴールデンバウム帝国や『彷徨える艦隊』のベア=カウ族、ボーグ、暗黒星団帝国を、明帝国やオスマン・トルコ帝国を笑えるでしょうか?