宇宙戦艦作品の技術考察(銀英伝中心)   作:ケット

46 / 62
家畜・ライフスタイル・地理

 中世・封建時代。

 日本の武士も西洋の騎士も、トルコのスィパーヒーも、「馬」「農地」が共通します。

 家畜、土地配分、ライフスタイル。それが社会システムも決めてしまう。

 宇宙戦艦作品では、家畜ではなくエンジンとなる?他にも様々な技術。

 今も土地利用と生き方……地理。

 

 旧大陸の軍事、また農業でもなんでも、馬がとても重要になります。

 それこそ『銃・病原菌・鉄』は、大型家畜を得られるかどうかこそ文明の強弱を決めるとしました。豚や牛もありますが、馬以外は見ていないと言っていいでしょう。アフリカでもしカバが家畜化できたらと書かれているのも、馬と同じように乗って戦える家畜ならアフリカ人も勝てた、ということです。

 そして歴史書に書かれていない人類の最初、インド・ヨーロッパ語族という文字通りインドからヨーロッパまで広がる人類の多数派の言語。その分布ともっとも古い語彙は、牧畜と穀物栽培をする人たちがユーラシア大陸のとても広い範囲に広がり力をふるったことを示しています。おそらくは『火の鳥 黎明編』のような暴力と、さらに家畜から感染した伝染病が中南米の膨大な人を殺しつくしたように。

 アフリカが暗黒大陸だった……イスラム帝国も征服できず、かといって自力発展もできず帝国主義西洋に踏みにじられたのも、特殊なハエが媒介する伝染病が馬や牛の飼育を許さないことも重要です。

 

 伝染病の項では、家畜や作物の伝染病も重要であることを触れるべきでした。

 今の日本でも多くの被害になっている豚コレラ・口蹄疫・鳥インフルエンザ。

 アイルランド飢饉を起こしたジャガイモの伝染病。

 旧大陸のブドウを危うく絶滅させるところだった、アメリカのブドウについてきたフィロキセラ=ブドウネアブラムシ。

 ヨーロッパの牡蠣(カキ)が壊滅し、日本から入れてなんとかなった。

 ニレ、クリなど旧大陸でも新大陸でも徹底的に伝染病で全滅に瀕している重要な木。

 江戸日本の大飢饉を起こしたウンカ、それに近いのが中国を何度も破壊したイナゴ(バッタ)などなど。

 今も地球人は、トウモロコシや小麦の悪質伝染病一発で絶滅しかねない、巨大なカメやワニの背の島で暮らしている存在です。だから筆者はさっさと核融合か宇宙太陽発電でエネルギー~人工光合成または化学合成細菌~細胞培養にして、農牧業を歴史民俗博物館送りにしろと言ってます。

 

 近代軍も、エンジンが本格化するまで歩兵・騎兵・砲兵の三兵種でした。

 馬はかなり大きい動物です。オートバイというより軽自動車の感覚、それが突進してきた時の恐怖感と激突の力は歩兵にとっては強烈です。

 そして、鉄道まで、また自動車や飛行機が進歩するまでは、徒歩より陸上で顕著に速い唯一の交通手段でした。

 西洋の大砲を可能にしたのも、その多くは馬の牽引力です。

 騎士などを見れば、馬を養える領主はかなり独立した軍事力になれるようです。宇宙戦艦作品であれば惑星と艦隊にも当たるのでしょうか。

 

 

 

 まず家畜のリストを考えてみましょう。

 

 新大陸先住民を考えると、特に古い、ともに凍ったベーリング海峡を渡りアメリカに行ったのが犬と思われます。

 犬は原始時代では狩猟を補助し、人同士の戦いでも奇襲を警戒してくれます。歩く湯たんぽともなり、寒冷地で眠るにはとても有用です。また人が食べられない残渣を食べます。かなり広い範囲で食べることがタブー、毛皮もあまり利用されませんが、原始時代には有用だったでしょう。

 大規模文明となってからは、戦闘補助・警戒、番犬が相変わらず重要であり、また狩猟補助、小型犬によるネズミ対策にも有用でした。

 牧畜の補助でも重要です。

 

 狩猟は大規模文明となっても人間にとってはとても重要です。

 洋の東西を問わず、貴族は狩猟を愛します。

 日本のゴルフのような富裕層の社交手段でもあり、イギリス文化ではキツネ狩りが重要です。

 西洋では広い湿地や森林が狩猟用に保護され、密猟の罪は法の歴史でよく出てきます。自然の中で生きる能力が高い猟場管理人やハンターは様々な作品で活躍する職種です。

 日本でも富士の巻き狩り、曾我兄弟の仇討ちがあったように武家貴族の重要なパレードであり訓練であり儀式でした。貴族も鷹狩りは好みます。

『銀河戦国群雄伝ライ』でも雷やその息子たちが狩猟を好むシーンが描かれています。

『ヤマト2』でもガトランティスの軍人が恐竜狩りを楽しみました。

 異常な異星生物の極端な狩猟を楽しんだり生活にしたりする作品も多くあります。今は非難されますが、アフリカなどのとんでもない獣を駆る、というのは人間にとっては大きい魅力がある話のようです。

『火星航路SOS/惑星連合の戦士』のように、惑星でのサバイバルでも狩猟は生死を分けます。現実でもサバイバル技術というのは、実質的には狩猟で食べる技術です。

『ファウンデーション』でも贅沢な星での極端な狩猟があります。

『ツインスター・サイクロン・ランナウェイ』はガス惑星で生物を狩って資源を得る生活からです。

 貴族でなくとも、肉や皮革を入手できる狩猟は農民の生活でもそれなりに重要でした。狩猟採集民と農民の壁がそれほど高くないことも多いです。

 上述のように毛皮狩猟はカナダ・ロシアなどの歴史でとても重要です。また帝国主義時代、西洋諸国がアフリカを征服するのに、巨大獣を狩るという貴族の楽しみは大きい要素でした。

 日本は異例なほど毛皮を使わない文明でしたが、鎧や槍の鞘などに鹿などの皮革は重要でした。また害獣駆除も農民にとっては必要なことでした。

 狩猟に関係して鷹・チーターなど、人間の飼育下で安定して繁殖させることはできない、でも子をつかまえて訓練すれば言うことを聞く、と家畜に準じる動物がいることも興味深いです。ゾウも繁殖は無理ですが訓練は可能です。

 

 犬は『宇宙の戦士』で独特の使い方をされます。犬を使う部隊があり、その兵は犬と深く結びつき、犬を失ったら壊れるほどです。

『スタートレック ヴォイジャー』のキャスリン・ジェインウェイも犬好きで、地球の婚約者に犬を預けていました。

『タイラー』では遺伝子改良で兵器化した犬が活躍します。けた外れのスピード、装甲宇宙服を薄紙のように切り裂く牙、ビームすらはじく防御。最初の運用で、あまりの凄惨さに皆が封印を決意します。

 用なしになった改良犬はアザリン暗殺未遂に使われ、タイラーの智謀を引き出し、またイサム・フジが世に出るきっかけにもなります。

 ドッグレース、走らせて賭ける娯楽にも使われ、軍を捨てて市井に暮らすことを決めたタイラーはその予想屋をしていました。

 

 

 何よりも歴史を決めたのは馬。

 上述のように、『銃・病原菌・鉄』は、まさに馬の有無こそ、スペインがインカを滅ぼしたのであってインカがスペインを滅ぼしたのでない歴史を作ったと喝破しています。

 インド・ヨーロッパ語族がこれほど広く存在しているのも、歴史が文字になる以前に馬の力で広い範囲を動いたからでしょう。

 人間が乗って高速移動できる、という他の家畜にはない能力。口の、歯がない部分が神が設計したかのように、そこに棒……はみ・くつわを通してコントロールすることに適していました。

 背骨の構造も人が乗ることを許すという奇跡。どんな大型犬でも、子供が乗っても犬は身体を壊すからやってはいけないとのこと。

 肉・乳・革・蹄のニカワ、接着剤も相当に有用です。骨さえも矢尻とされました。

 乳も馬乳酒とするときわめて栄養価が高くなります。

 なにより、遊牧民の戦闘力を支え、歴史の多くで多くの文明を滅ぼし歴史の流れを支配し続けました。遊牧民の歴史の方が本筋だという人もいるほど。中国は遊牧民と戦うための存在といってすらよく、明が海を捨てたのも遊牧民との戦いに専念するためとされます。

 スキタイ、フン族、モンゴル帝国、ティムール……匈奴、女真、清……歴史のあらゆるところに遊牧民の破壊力が出てきます。

 人の服装なども、実際には馬に乗るためでもあります。たとえば先端がとがったブーツ、いや西洋靴全般の先端がとがり、裸足になると足の指がゆがんでいる。それは鐙(あぶみ)に突っ込むためです。西部劇で必須の拍車も、まさに馬に乗るためです。

 中国でも胡服騎射という、騎馬民族に合わせて服や戦法を改良したことが戦闘も、ライフスタイルも大きく変えました。実は伝染病という形でそれ以上の変化もあったことは知らなかったとしても。

 新大陸ではたぶん人類のやらかしで馬のたぐいは絶滅しています。それこそが歴史、文明競争を決めたと言っていいでしょう。

 動力としても、特に正しい頸木・ハーネスをつけたときには牛より速く強い力を発揮し、それが北ヨーロッパの重い土を耕し膨大な食糧生産を実現したと言えるでしょう。産業革命後も、すぐに蒸気機関が動力のすべてになったのではなく、水力に並んで長く動力として多くの機械を動かしました。馬の労働力は産業革命・近代化を支えた莫大な農業生産の増加に欠かせない貢献をしています。馬車も、運河の両側に馬道を作って船を馬に曳かせるのも、産業革命史でも欠かせない重要性がありました。

 その正しいハーネスと鐙(あぶみ)は、人が馬に乗るようになってから何千年も発達せず、また中国のほうで開発されてからヨーロッパに伝播するにも膨大なタイムラグがありました。

 馬車も交通機関としても重要です。

 そして忠実だったからこそ、どれほどの死と苦しみを……犬もそうですが。

 乗馬は貴族のたしなみであり、また落馬で王子が死ぬこともかなり多いです。『風と共に去りぬ』でもボニーの悲劇になりました。

 競馬も重要な娯楽・賭博です。日本ではその一種が神事でもあります。乗馬以前の馬戦車もヒクソスのエジプト征服、中国でも春秋戦国から漢まで主力兵器だったなど歴史を作ったものであり、また馬戦車のレースは古代ローマ帝国から東ローマ帝国でもずっと重要でした。

 

『新スタートレック』のピカード艦長は乗馬を愛し、艦に自分の鞍を持ち込んでいます。

『スーパーロボット大戦OG』のレーツェルは常に自分が使う機体の名を愛馬の名前トロンべとします。最新の専用機は馬に変形するほど。家が豊かな軍事貴族だからこそ馬を飼う莫大な金を出せるという事でもあります。

『機動武闘伝Gガンダム』でも東方不敗の愛馬である風雲再起が、自ら巨大機械馬の操縦者となり活躍します。

『ヴォルコシガン・サガ』のマイルズも乗馬好きで、多くの名場面があります。

 幼児期、祖父が慣習通り障害のある孫を殺すべきだと思っている中、祖父の愛馬に乗って飛び出しボサリより高くなった、ボサリより速く走れると叫んでやはり落ちて骨折し痛みにへこたれぬ強さを見せつけ心をかなり傾けさせた。

 山奥の村に愛馬を連れて捜査に行き、その馬を傷つけられたことにこそ深く怒った。

 昔の貴族の一人が息子に背かれて愛馬を相続人に指名したという笑い話。

 考えてみると、『銀河英雄伝説』のように核戦争で人類絶滅寸前になっても馬が残っていることが多いのは不思議ですが……実際多くの帝国で貴族は乗馬を愛しています。それほど、貴族たちは家族を半分捨てても仔馬のつがいをシェルターに入れ自分の食も分けたのでしょう。

 

 

 羊・山羊が家畜としては本当に重要と言えるでしょう。

 チンギス・カンをはじめ遊牧民も羊こそ主力でした。

 羊は膨大な数になり、少ない人数でコントロールできます。いい犬がいるともっと少人数でいいです。しかし非常にもろく、悪天候などで簡単に大量死します。だからこそ遊牧民の生活は不安定で、大規模侵攻を始め文明を荒らしまわることにもなります。

 日本は異例なほど羊肉を食べませんが、世界ではとても重要な食肉です。

 羊毛も衣類として優れ、イギリス文明の中核です。逆に大航海時代、アジアに毛織物が売れなかったことが貿易のバランスを崩しました。

 山羊は羊より肉や乳の味は劣りますが、より質の悪い食物に耐え、山間地での自給自足には向いています。

 羊・山羊ともに、木の芽や草の根を貪欲に食べ、蹄で土を固めることで、過剰放牧されると砂漠化の原因になることも重要でしょう。

 上述ですが、『ノーストリリア』は超金持ちである人々は羊を飼う生活を貫きます。『天冥の標』では羊の寄生虫が重要な異星人でした。

 

 

 牛。これもある意味では馬に劣らない重要性があります。

 牛乳・乳製品……ヨーグルト・チーズ・バター。バターを精製したギー。インド文明ではギーはもっとも清浄で神聖な物質です。

 ヒンズー教では牛そのものが神聖であり、牛糞さえ清浄とされるほど。

 バターとオリーブ油は、ヨーロッパの食文化を南北で大きく分けます。また遊牧民の間では、レンガのようにした茶とバターが重要な食品です。

 肉はもっとも愛される食肉であり、皮革も大きく丈夫でとても重要。

 巨大な体躯は強い動力となり、犂を引かせて耕すのは人間の最も重要な生き方でした。

 遊牧民・半遊牧民の財産は牛であり、多数の牛を持っていることがそのまま豊かということで、牛の群れを連れて行けばどんな美女でも娶れます。

 ヤク・スイギュウという少し違う家畜が結構おり、それで多様な気候に対応するのも興味深いです。他にもガウルなどがあるそうです。ある意味トナカイやアメリカバイソンも半家畜です。

 上述ですが『大航宙時代』ではビーファローの肉や皮の交易の話があります。

 スペインでは闘牛があり、『幼年期の終わり』ではオーバーロードによって禁じられます。

 

 牛・羊などは、糞さえかなり重要です。

 乾燥させた糞は貴重で質のいい燃料となります。

 また、土に混ぜることで漆喰や版築に草を混ぜるような効果があり、壁を塗ったりもします。土に混ぜて床に塗り、繰り返しほうきで掃くと、コンクリートの土間のように硬くなるそうです。

 肥料としても重要で、ヨーロッパでの三圃式農業は、休閑地で家畜を放牧して糞尿を土に落とさせ、それで土を肥えさせることが重要でした。

 逆に、馬車に依存していた産業革命期の大都市は、大量の馬糞に悩んでいました。大きな不潔の原因でもあり、過去に行ったピカードらは辟易しました。

 

 

 豚。ユダヤ教・イスラム教が食べることを禁じていることで、世界の食生活に大きな偏りを作っています。

 中国でもヨーロッパでも重要な食材であり、豚の油脂、ラードも重要な油でした。

 多産の象徴でもあります。

 実際には知能が高く体脂肪率も低く、トップアスリート級の足とけた外れの力を持ち、鋭い牙で下から人の股の特大動脈を斬り上げる危険な猛獣でもあります。ラグビーやアメフトのプロ選手が鎌を逆手に握ってタックルのように低く突進しアッパー気味に股間だけを狙う、と考えたらどんなに怖いか。特に昔の養豚では死亡事故も結構あります。

 大航海時代以降、多くの島に放されて生態系を破壊している生物の一つです。野生での生存能力も高く、巨大化することもあります。

『フルメタル・パニック!』ではある島で、野ブタを殺して少し報酬をもらっています。

 また特殊な人格を西洋人は感じているようです。『動物農場(オーウェル)』のイメージもあるでしょう。ファンタジーのオークが豚頭なのは新しいでしょうか?

『禅銃』で知性化された豚は世界を支配しようとしました。他にも『啓示空間 シリーズ』でも豚人が悪党として活躍します。

『宇宙軍士官学校』では肋骨を増やしてベーコンを多くとれるように遺伝子改造し、技術で身体を支える豚を作った、と地球人の肉の欲望が表現されます。まあ日本人もリールで十メートルも巻くウナギを作ったりしていますが。

 

 

 ニワトリも重要な家畜と言えるでしょう、肉と卵という食料として。

 また日本では美しさや鳴き声を競う品種改良もあります。

 日本以外では闘鶏は重要な娯楽です。

 ほかにもアヒル、ウズラなどの家禽が羽根・肉・卵などに用いられます。

 

 

 猫もSFではかなり重要です。特に神林長平は猫・警官・言葉をよく使います。

 猫もかなり古い家畜であり、特にエジプトでは神聖視されました。太陽~雄ライオンのたてがみ・ライオンそのものの強さと恐怖~その小型版としての猫、とも聞きます。

 農耕生活、穀物の大量備蓄はネズミとの戦いであり、猫はその主力でした。

『敵は海賊』の主人公の一人、特殊な猫型異星人。精神的にも異質きわまるとんでもない怪物なのですが「敵は海賊、アプロは味方」と愛されます。

 それこそ『ドラえもん』が猫型ロボットです。かなりプロポーションは異なりますが。

『星界シリーズ』でもアーヴは猫を愛し、艦船から猫を下ろせ、が戦時のしるしになります。

 

 

 ラクダは砂漠に適応したかなり巨大な家畜で、それがあるとないとでは砂漠での移動・貿易がまったく違います。

 イスラムの興隆などに、ラクダの進歩がかなりかかわることも言われます。

 ユダヤ教ではラクダを食べることは禁止、でもイスラム教では許可され重要な食材、というのも興味深い点です。

 

 

 上述ですが、筆者は小型家畜も重要だと思っています……が、奇妙に少ない。

 ウサギ、また後に毛皮用に家畜化されたフェレットなど。

 新大陸の重要な家畜にモルモットもあります。

 

 家畜というか……ネズミ。

 人間にとってある意味宿敵とも言える存在です。人間が多くの食物を備蓄するようになってからずっと人間から隠れて人間の世界に住み、繁栄しています。

 そして史上最大級の被害をもたらした伝染病、ペストの媒介者。船がつけばもやい綱などを通じて、どれほど注意しても素早く港に入り、病気を拡散する。

 また多くの島にも荷物を通じて入り、膨大な生物を絶滅させる。

『銀河ヒッチハイク・ガイド(ダグラス・アダムズ)』では人間より賢く、実験動物とされつつ逆に人間を実験台にしている、という皮肉があります。

『マルドゥック シリーズ』の副主人公、強大な人工兵器ウフコックも。

 

 医学はまたまとめるべきでしょうが、ネズミ・ウサギ、さらに犬やサルなども含め、多くの動物が動物実験に用いられています。それがなければ間違いなく筆者も、今の日本人の八割以上も生きてはいないでしょう。

 ワクチンを作るのにも多くの動物が生きた工場として使われます。またカブトガニの生き血がなければ現代医学が成立しないことも知られています。

 

 

 ミツバチも重要な家畜となっています。

 ハチミツは砂糖の普及までほぼ唯一の貴重すぎる甘味料、蜜蝋によるロウソクも他の発明があるまでは代替品がないほど最高の照明資材でした。あらゆる神々が喜び、あらゆる王侯貴族が絶対に必要としました。蜜蝋は化粧品や薬品、磨くなどでも重要です。またロストワックス……ロウを精密に加工してから砂に埋めて鋳型とする手法は、金銀銅鉄問わず超精密な金属製品を作る古来の重要な手法です。

 またその、完全な社会性の生態は政治思想家にとっては憧れとなります。すべての成員が、唯一の指導者に完全に忠実で、自己犠牲を一瞬もためらわない……ミツバチの毒針は刺したら内臓ごと抜けて自分も死んでしまう。「私」がゼロ、「公」が100%。ナポレオン一世はミツバチを紋章としました。

 そして『エンダーのゲーム』のバガーこそ、ミツバチをモデルとした集合意識異星人の代表格です。

 また『スタートレック』のボーグも、クイーンとドローン(オスバチ)という、ミツバチをモチーフにした集合意識異星人です。

 

 カイコも昆虫で、重要な家畜と言えるでしょう。

 普通に見る蛾の一種のようですが、野生では生存できないほど家畜化されています。

 その美しい絹糸は、古来中国文明が独占してきました。カイコそのものとクワ、養蚕・製糸技術、それらは千年以上西洋に漏れることはありませんでした。

 また日本でも、昔は絹糸を使う技術が伝来していたそうですが、その技術は維持されず繭を切り開く真綿という形でしか利用できませんでした。

 そして世界経済の歴史のあちこちで重要な役割を果たしてきました。

 あまりにも美しく、あまりにも高価で、あまりにも価値が高い。

『海軍士官クリス・ロングナイフ』のスパイダー・シルクなど絹の上位の物資も見られます。

 

 日本での絹糸のように、高度な技術が失われた例も歴史では結構あります。

 古代ローマ帝国は土木技術全体が失われ、道路や水道橋は悪魔の仕業とさえ言われました。

 モンゴルによる破壊後のバグダッドも、特に灌漑システムが破壊され再建もされず、地域全体、さらに科学精神を失わせてイスラム文明それ自体が衰えることにつながったそうです。

 レコンキスタ後のスペイン、ユダヤ人もイスラム教徒も追放し、灌漑設備を維持せず羊遊牧に特権を与え、今も貧困国になる道を選びました。

 マヤ文明、アンコールワット、セイロン島の遺跡など、森に埋もれた文明も多くあります。

 

 

 家畜ではないですが、クジラやイルカも結構重要です。きわめて知能が高い、異質な生物。

 日本の開国にかかわる、捕鯨産業の重要さ。特に照明や機械の潤滑油として、石油以前にどれほど必須だったか。

『ギャラクシーエンジェル』では母艦の宇宙クジラがいろいろな役割を果たします。

『ガンダムSEED』では宇宙のクジラの化石が宗教を破壊するなど大きな役割を果たしました。

『海底牧場(クラーク)』では重要な食糧ともなりました。

『銀河ヒッチハイク・ガイド』では人間より知能が高いイルカはちゃんと警告を聞きました。

『航空宇宙軍史』でのイルカの残忍な兵器化は誰もが地獄の底を覗いたような絶望感に包まれます。

『知性化 シリーズ』ではイルカを知性化したことが地球人の役割を色々と変えます。

 他にも知性化されたイルカが活躍することはあります。

 また多くの作品で、クジラやイルカの絶滅が惜しまれます。

『宇宙軍士官学校』ではかなりの無理をしてクジラやイルカを宇宙に避難させています。

 

 

 大航海時代からの歴史を見ると、家畜や、家畜以外の生物による生態系の破壊が目立ちます。

 人間は存在を意識することもない小さいトカゲやヘビがあちこちの島で在来の鳥や虫を絶滅させ続けています。

 

 そして、あらゆる動物、それを変形させたドラゴンなど架空の幻獣が、魔術……トーテム、群れのシンボル、連隊旗や国の紋章となる図像として、多くの人を支配し膨大な金額を使わせています。

 

 

 

 ライフスタイル……地球人が生きるという事。

 ゼロから考えましょう。異星人の汎銀河動物園の飼育係として、地球人を飼育することになった。

 実際問題、大航海時代からの闇の歴史として、西洋人は多くの先住民を動物として珍獣に並べて動物園に展示し、凄まじい執念で死体遺骨を収集し所蔵しました。オーストラリア先住民やイヌイットが激しい法廷闘争を戦い、日本でもアイヌの骨の問題があります。

 この想像をすれば、人間の生理学や心理学の相当部分を理解し直すことができます。

 逆に、死ぬ条件を除いていくことでも生かすことはできるでしょう。

 

 空気。ある程度の気圧、二つの酸素原子が結合した気体が必要だが、酸素100%でも死ぬ。薄めるために窒素、あるいは他の化学反応しないガスが必要。

 真空で生きられないから『冷たい方程式』がある……『タイラー』や『銀河戦国群雄伝ライ』では宇宙空間でも人はかなり生きられる。『天冥の標』の甲殻化、酸素いらず(アンチ・オックス)、また『サイボーグ009』も真空中で活動できる。008は水中行動力が特に高い。『ドラゴンボール』のフリーザの種族は真空生存可能、サイヤ人は地球人同様不可能と言われる。

『レンズマン』のナドレックの種族は地球大気ではまったく生きられない。他にも空気自体が違う種族は多くある。

『星系出雲の兵站』では、たとえばメタンを呼吸する生物は地球人とは、土地の奪い合いにならないので争いにならなくてすむかもしれない、という話も出る。

 温度。膨大な種類の化学物質が、空気に許容量以上に含まれていないこと。だから二酸化炭素は除去しなければならない……酸素を追加し続けるだけで二酸化炭素が多くても死ぬ。

 湿度、空気中の水蒸気が多すぎても少なすぎても、身体を悪くするし様々な資材が破壊される。たとえば水にずっと身体を浸していたら皮膚が崩れて死ぬ……だから水牢という拷問処刑がある。

 温度を保つためには、一般に熱源となるエネルギー源が必要。場所によっては冷房。地域によっては、暖房のためのエネルギーが生存に必須で、調理・入浴・移動以上に多く必要になることもある。

 水。重力。

 食物。カロリーとなる炭水化物・脂肪・タンパク質……たとえばピスタチオの森でそればかり食べていると脂肪とタンパク質は豊富だが糖質がなくて妊婦が病むとのこと。点滴栄養まで知られていなかった必須脂肪酸もある。タンパク質、何種類かの必須アミノ酸をちゃんと得るのは難しく、崩れたらペラグラという厄介な病気がある。

 他にもビタミンやミネラルが不足したら病気になって死ぬ。

 脚気も古来、貴人も含め多くの死者を出した。森鴎外のもう一つの顔、軍医学の重鎮として日露戦争で何万もの兵を死なせた……他にも脚気で死んだ重要な人はとても多い。

 さらに厄介なのがビタミンCで、新鮮な植物か生の動物の一部からしか得られず、大航海時代には膨大な人を死に至らしめた。そして実験によって、生のライム果汁が事実上唯一の特効薬と明白になっても、政府や医学会はあまりにも長くその実験結果を受け入れず、膨大な死者を出し続けた。

 睡眠も絶対に必要。『マルドゥック』のボイルドは先の戦争では爆撃機パイロットで、寝る暇のない出撃で覚醒剤を大量に投与され、大規模な友軍誤爆をやらかした……『現実』でもあった問題。そして改造によって、眠らなくてもいい体にされた。

 雪原などでは目を保護しないと紫外線で視力を失う。また冷たいと凍傷となり、手足を、また生命を失う。

 不潔でも病気のリスクがどんどん高まり、死ぬ。

 そして身体を深くは傷つけられない、病気でもない……その先に、不老不死ではない・寿命。

 また何より、地球人は群れ動物であり、群れに参加することを強く求める。『ヴォルコシガン・サガ』でコーデリアが、人を一人きりで閉じ込めるのはどんな基準でも刑罰になる、と言います。『現実』でも一切愛情を与えずに孤児を育てる実験がありその子たちは死んだとのこと、またチャウシェスク孤児という悲惨もあります。

 

 その、清潔な水、栄養が十分にある食糧、凍死せずに眠れる家や布団、それらが必要とされる。

 それらを生産し、分配するのが経済の根本。

 ただ、それと同じ、いや多くの状況でそれ以上に、人は魔術的に正しくあること、また常識的に許容されるライフスタイルを求める。群れに参加する、とほぼイコール……群れに参加するという酸素濃度と同じく生存条件は、ライフスタイルを合わせることでもある。

 自分の常識とは異なる服装をするだけでかなりの苦痛があります。だからこそ、軍隊は人の人格を壊して洗脳するため、服や髪を支配するのです。

 旧約聖書で、英雄サムソンは髪を切られたら力を失い、奴隷とされて髪が伸びたら力が戻りました。

 中国が清に征服されたとき、髪を弁髪にするか首を斬られるか、とあり、それが漢人の巨大な恨みになり、また広い中国人のイメージにもなりました。

 上述の胡服騎射……新しい戦法に対応するには、服装・文化そのものを変える必要すらあります。世界そのものの変化でもある……明治維新の日本の、断髪・洋服・廃刀令もまさにそれです。

 

 作品ごとに多様なライフスタイルがあります。

 まして種族が違うなら、もっとライフスタイルは異なります。

 特に『スタートレック』では実に多様な異星人のライフスタイルが描かれます。他にも短編では膨大に。精神が異質な異星人も。

『スターウォーズ』でもさまざまな異星人の生活を映像として描いてきました。

 

『エンダーのゲーム』は異質でありながら、家や農地を大切にしていたバガーが死に絶えた地に地球人は移住し、涙しながら生活を再建しました。

 小惑星に作られた基地の天井の低さが、それが人類用ではなくバガー用だと示していました。

 

 食料生産という、ライフスタイルというか何かの最大の違い。

 ある意味その変形として、たとえば『スターウォーズ』非正史のユージャン・ヴォング、『宇宙軍士官学校』の粛清者、『ローダン』の時間警察など、工業ではなく生物を兵器とする種族もあります。

 物質文明ではなく精神文明、というのもあるでしょう。『レンズマン』のアリシア人のように、また多くの精神生命体のように。

 

 

 どのように食物を生産するか。

 以前もかなり検討しました。酵母やレプリケーターなど。

 付け加えるなら、『目覚めたら~』の、とてつもなく巨大な長くのびる人工動物から肉を得る、藻類カートリッジから普通の料理に見えるものを合成する、なども興味深い進歩です。

 

 ここで少し検討したい……なぜ『現実』の地球人はこれほど穀物を好むのか。

 穀物、イモ、そしてサゴヤシ、ナツメヤシ、遊牧民の肉と馬乳酒、イヌイットの生脂身……どれでも人は生きられる。どのように違うのか。

 

 最近、筆者はグレーバーをはじめ、文明そのもの、都市農耕自体が悪だ、と言わんばかりで多くの常識を否定するような本を結構読んでいます。

 昔の狩猟採集民は、初期の農民に比べて栄養状態がよく労働時間も短いこともよく言われるようになりました。

 ではなぜ。……悪のため、人を支配するため、奴隷にするためだ、と。

 

 穀物は、ほぼ同じ時期に、枯れた葉茎の上につきます。

 収穫し、乾燥させると、単位重量当たり多くの栄養があり、しかも長期保存ができ運搬しやすい食物になります。

 収穫直前を襲い、人を追い散らして稲刈りしてしまうのも何とかできる。

 青いままでも、馬など家畜の飼料には十分なる。

 ……馬に乗った武装した、賊というか貴族というかは、収穫前の畑や穀物倉庫に火をつけてやると脅せるのです。馬でふみにじる、あるいは青いまま刈って馬に与えることも可能。

 そうしたらみんな餓死する。だから言いなりになるしかない、奴隷にされようと、女を奪われようと、子の半分が餓死することになろうと、何をされようと。

 運びやすいことは、特に水運があると、商人が先に権利を買ってしまい、農民が飢えるのを気にせず運び出してしまうことも可能になってしまいます。アイルランド飢饉、ウクライナ飢饉などのように。いや、歴史の大方がそうだったように。

 大量の食料を集め、多くの人を脅して奴隷化して集め、高密度の人の暴力で他を征服する。それが穀物でしょうか。

 

 新大陸のサツマイモやジャガイモが急速に普及し、中国の人口さえ増やしたのは、鳥だけでなく人にも奪われにくいからです。

 収穫期のイモ畑を襲って、全部掘って奪うのは、機械がなかったら大変です。ただ馬や人の足で踏みにじり、表面の葉を切りまくっても、土の下のイモは無事です。

 また、保存性もそれほどよくない。水で処理してデンプン粉にする、薄く切って干す、ジャガイモは凍らせて踏むなど工夫すれば別ですが、それは多くの人手がかかることです。略奪者や商人はそれを待つ余裕はない。

 保存状態にあるイモは、大抵は水分をそのまま含んでいます。余計な重量、運ぶ効率が悪い。

 それこそキャッサバなどは、ただ土に埋めたままにしておくのが最良の保存法です。

 また、アイルランド飢饉前後で、ジャガイモの必要労働力の少なさも道徳的に非難されました。旧約聖書のアダムとイブの話もあり、人は苦しんで労働しなければならない、が西洋知識人の伝統的な考えです。それこそ啓蒙思想家が、先住民は土を耕していないから所有する資格がない、全部奪っていい、としたように。

 南洋のタロイモ・ヤムイモについては検討するのが難しい……

 日本ではサトイモの一種で田イモがあるそうですが、それほど稲に比べて収量が落ちるんでしょうか……日本で、正月の雑煮が米を原料にしたモチではなく、サトイモである地域があるそうです。稲、米をある意味トーテムとしている「日本」とは別の流れもあるという事でしょう。

 

 サゴヤシは熱帯の森の中の樹。何年も、それこそ奪われ切られないように護衛するだけ。害虫すらろくにつかず、雑草を処理する心配もない。

 切り倒し、切り開き、髄を砕いて水で処理してデンプン粉にする作業はありますが、本当に楽な主食です。

 逆に、奪うのは泣くほど大変です。大木を切り倒して丸太を運ぶなんてごめんですし、処理作業をゆっくりやっていたら逆襲されます。

 そして森。馬という兵器を持った賊というか貴族が襲うにはとても不便です。

 また熱帯雨林は食料の長期保存・輸送にも不便です。

 逆に交通も不便であり、サゴヤシで生きる民が協力し、大軍を作って騎馬の民と戦うには適していません。

 

 ナツメヤシも主食になるほどカロリーが高い糖分の塊で、砂漠に近い土地でも少ない水で育ちます。

 受粉に多くの労働力が必要です。

 これも、広い地域に分散するので、軍として集まるには適していないでしょう。灌漑もある程度必要ですが、穀物ほど大規模の治水=大人数集団、そのまま軍になるものではないのかもしれません。

 

 遊牧民……常に戦闘力では農耕民を圧倒してきました。なにしろ足のある食料とともに走り、広い範囲の草と水を濃縮してくれるのです。

 砦を包囲したらすぐ包囲する側が飢える、という公式を崩せます。さらに全員が狩猟の達人で、凄まじい水準の服従と勇気があります。

 しかし、独力で金属を加工して武器を作ることができません。

 また、あまりにも強いカリスマ一人に絶対服従するシステムなので、広い範囲の農業国家を滅ぼし征服して、そのカリスマが相続に失敗したら四分五裂が常です。

 つい定住してしまって遊牧民の強みを失うことも多い……それこそイブン・ハルドゥーンがアサビーヤ、武人精神を失うから滅びると言ったように。

 

 イヌイットなどは、ちゃんと検討していませんが、圧倒的な人数の少なさ・人口密度の低さ。

 

 反乱を起こさせないために主食を作らせない……これも、特にプランテーションの歴史では重要でしょう。

 同時に、プランテーションの奴隷を食わせるための食料も儲けになり、多くの人が力を入れました。パンノキという熱帯樹木が夢の食物とされて多くの力が入れられました。またキャッサバを始め多くの食料の伝播に奴隷・プランテーションが大きくかかわっています。

 

 

 穀物の性質、さらにその延長にある、近代国家の、定住主義。

 土地所有は近代化そのものにもかかわりますし、土地所有のルールの違いこそ大航海時代以降の膨大な列強の極悪を作っています。とにかく白人キリスト教徒、近代の選民以外の土地は全部奪わなければ気が済まない、とばかりに。だからこそ今も、土地を所有するなんて馬鹿げている、というアメリカ先住民長老の詩が語り継がれています。

 さらに、それはSFの居住惑星主義にもなるのでは?

 船で暮らすのはそれ自体がノマド、近代国家が憎み罪とする生き方……ロマ(ジプシー)はユダヤ人や同性愛者同様、ホロコーストの犠牲者となったほど。

 ちゃんと人が登録され、逃げることができない状態で、土地と人の名前が一対一対応し、人も土地も売買できる状態にしたい……惑星に閉じ込めておきたい、宇宙生活はしてほしくない?

 

 文明が、別の衣食住を許さない……だから水田稲作にこだわる日本は北海道・樺太に広がれなかったし、あれほどの執念で古代日本は蝦夷・隼人を征服しようとしました。

 ただ、上述のように正月の雑煮がモチではなくイモである、反抗もあると。

 遊牧・狩猟採集に対する敵意も常に強烈です。

 大航海時代以降、西洋・キリスト教宣教師は、熱帯で女性も上半身裸で暮らす人々に驚き、激しく西洋的な衣類を強制しました。

 

 日本も明治維新後、混浴をはじめとする卑猥な習俗を厳しく取り締まり、裸婦の絵なども取り締まりました。キリスト教自体は禁止傾向だったのに、不平等条約改正のためか、西洋キリスト教が求める性道徳だけは強く強要したのです。……今の日本の保守派は、その歴史も忘れて西洋的性道徳が日本の伝統で普遍道徳だと思い込んでいます。

 始皇帝も淫乱な習俗を破壊したことを自慢しています。淫祠邪教の破壊禁圧は洋の東西を問わぬ征服者・権力者の自慢で、ある意味普遍的道徳です。

 

 また、近代文明は萌芽更新も嫌うという傾向もあります。萌芽更新、ある程度雨に恵まれた森……日本やヨーロッパのような……で、オーク・樫など多くの広葉樹に見られる生き方。

 それらの木を切っても、切り口から芽が出ます。根は無事なので、普通に種から木が育つよりも短い期間で、また何本かの大きい木になります。

 短期間でまた切り倒すことができ、安定して多くの薪炭を得、また若い枝や葉を緑肥として田畑にすきこむことができます。

 それをなんとなく嫌う、理解しないのが近代文明らしい……

 

 

 特に大きなライフスタイルの違いである、農民・遊牧民・狩猟採集民。それは近現代で、ブルジョワとプロレタリアートという変形にもなりました。

 さらに日本では、河原者など普通の身分とは違う、差別されて移住しない人たちも注目されます。海外ではロマ(ジプシー)、ユダヤ人などもそれに近いです。

 仕事そのものが、大きなライフスタイルであり、身分にもなる、という。

 軍人そのもの、また修道院や寺など集住する聖職者もまったく違うライフスタイルです。

 

 ライフスタイルそのもの。

 日本の都会で生活している大半の人。

 まず起床する……畳に布団、ベッドのどちらかが大半。掛け布団や毛布で保温。寒い時には暖房や電気毛布も。

 着替える。寝るときの服装と、外出の服装は違う。

 トイレ。日本では基本的に水洗便所、大量の水道水を使う。特に今の日本の若者は、『JoJoの奇妙な冒険(荒木飛呂彦)』三部を通じ、豚が糞を食う豚便所、無菌である砂漠の砂で拭く砂漠便所など世界ではトイレが多様であることも知っている。

 食事。ちゃぶ台はもう少ないはず。多くはダイニングテーブル。多くの人は、家にキッチンがあってそこで調理する。外で買った食物を電子レンジなどで加熱する層も多いという。

 仏壇に手を合わせることもあり得る。

 体を洗うかどうかはともかく、洗顔・歯磨き、女性は化粧、服を着替え、金や各種カードが入った財布やハンドバッグ、今はスマホを持って家から出る。

 自動車、バス、電車などでかなりの距離を移動する……職住分離。

 そして職場では、立って配膳や調理、あるいは工場のラインで作業する、自動車を運転する、オフィスで椅子に座り机の上のコンピュータを入力したり紙に文字を書いたりする。他にも膨大な多様な仕事。

 移動して帰宅し、犬の散歩をすることもあり、また入浴して身体を清潔にし、娯楽を楽しむこともある。

 衣類は洗濯しなければならず、食器も洗浄しなければならず、家や家具、便器や浴室設備も結局は清掃しなければならない。

 大きい庭がある家なら庭の植物の水やりもある。

 

 ……かなり多くが、「家事」という別の作業ジャンルに分けられる。健康体、かつ清潔な体と衣類で出勤・通学することが求められる……それを維持するために必要なこと。

 多くの家事は、戦後日本では専業主婦という形で女性の仕事とされ、また以前の日本や今も世界の多くの富裕層では使用人階級の仕事でもあった。

 

 それら、ライフスタイルの多くは、過去や今の『現実』の国によってもある程度の違いがあることはわかるでしょう。

 たとえばアメリカの富裕層の多くは広い芝生とプールがあり、その手入れが重要な家事になります。

 西洋人は暖炉にとてもこだわります。熱で言えば燃焼効率も悪く、熱の大半は煙突を通して外に出てしまう、さらに昔は煙突掃除という悲惨な児童労働にもなりました。ですが、肉を回し続け脂を肉にかけ続けながら遠火で焼くのは、現代の真空低温調理と同様に硬い塊肉を柔らかく美味にできる優れた調理法でもあったのです。

 暖房・調理だけでも、たとえば日本は昔は囲炉裏というシステムを用いていました。それは煙でいぶされることで虫に強くなる茅葺屋根、またカイコの保温、食物の燻製など多様な役割を果たし、長くいぶされた竹が高級茶器になるなど思いがけない用途にもつながります。

 そしてライフスタイルには宗教の禁止も影響し、時にはそれが生命を奪うことすらあるのです。グリーンランドに定着できなかったバイキング、キリスト教が命じるパンとブドウ酒の生活を捨てられず、イヌイットのように農業を捨てて生肉のビタミンで生きることができなかった。スペイン帝国領の新大陸では、宗教が命じるある意味迷信で、先住民がやっていたトウモロコシの石灰処理やアマランサス栽培が禁じられたためにペラグラが蔓延した。

 それこそ『スターウォーズ』非正史のユージャン・ヴォングは自らを常に拷問していると言っていいほど苦痛を伴う改造をしている。『現実』でも通過儀礼として入れ墨、歯を抜く、身体に何かを刺すなど苦痛を伴う儀式は多く見られる。近代西洋も、軍隊などは長い期間かなり強い苦痛を与え続け、かなり人間改造と言っていいことをしている。

 

 意外と大きいライフスタイルの違い……

 ダクトテープ。日本人は、あらゆる梱包などに、当たり前のようにガムテープを用います。しかしアメリカではダクトテープという、日本では普通には手に入らない丈夫なテープが愛用されます。ちなみに排気ダクトの修理にだけは適していないそうです。

『彷徨える艦隊』では、人類よりはるかに優れた技術を持つスパイダー・ウルフ族が求めた物資がダクトテープでした。何を欲しがるのかなかなかわからず、先任下士官に聞いてすぐわかるのもコミカルなエピソードでした。様々な修理に使われ、ダクトテープがなければ戦えないとさえ言われます。

『火星の人』でもアメリカ人宇宙飛行士であるワトニーはダクトテープは崇拝されるべきだ、と言います。事故の時の気密をはじめ、あらゆる場で主人公の生命を何度も助けます。

 

 日本では、日常で何かを切るときには、薄い交換刃を折るカッターナイフが普及しています。

 しかしアメリカでは、台形の使い捨て刃を交換するユーティリティナイフと呼ばれるものが普及しています。カッターナイフよりやや厚く丈夫で、三角に刃が突き出ます。一枚の替刃を二度使えます。

 

 他にも、椅子に座るのと正座、正座自体の歴史の新しさ。歩き方そのもの。荷物を引きずるか、背負うか、頭に乗せるか。などライフスタイルを世界全体、歴史と今、そしてさまざまな宇宙戦艦作品の間で比較するとどれほど多様か……

 そして『ヒューマン・ユニヴァーサルズ』にある強い共通性。合理・物質とは大きく異なる、精神・魔術の論理の重要性。

 近代というのが、ライフスタイル全体、精神をどれほど変えてしまうものか。

 また技術によってどれほどライフスタイルが変わりうるか。

 

 さらに、ライフスタイルの多くには娯楽があり、魔術儀式・宗教儀式であるものも多くあります。

 政治が厳しい世界では、たとえば『銀河英雄伝説』で皇帝の像を拝む義務があるように、政治的なことにも忠誠を表明する動き、ライフスタイルの違いが常に求められるでしょう。

 

 芸術、娯楽、スポーツ……それを歴史全体、各地域、各宇宙戦艦作品でまとめる、まだまだこれからいろいろ必要です。

 

 そして、家族。結婚や性の形。異星人も含めた多様な生殖。……どれだけ読み返さなければならないやら……『現実』だけでもえらいことに……

 

 

 

 地理。これも本当に重要……上は天文下は地理、という言葉を何度も山岡荘八の作品で読みました。

 ライフスタイルは地理の一分野でもあります。世界のあちこちの国・地域で、食べるもの・着るもの、家の作り方や形、それらが違う、と。

 

 そして地形そのもの。

 航行可能河川の重要性は以前強調しました。

 海、いや大きめの川であっても普通に騎兵や歩兵でそのまま渡ることができない。城壁より手ごわい。深い森林、特にマングローブも同じようになる。

 また山は耕しにくく軍でも通りにくい障壁でありつつ、実は空気を上空に持ち上げて冷やし水分を搾り取り雨雪とする、気象や農業にも多くの影響を与えている。

 それこそアメリカ大陸の存在、南北アメリカ大陸が細くてもつながっていることがメキシコ湾流という大海流になって、たとえばパリは北海道より緯度では北なのに温暖、のような違いに。

 つながりが細いから、インカ文明はアステカ文明と連絡できなかった。それもプレートの動きのせい。

 プレートの動きは火山噴火や大地震になり、時には大噴火のチリが気候を変えて江戸日本を飢えさせ、のみならずフランス革命の原因にもなったように歴史を動かす。

 日本史の重要な転換点、第二次大戦の敗戦前後でも南海を始め多くの巨大地震、また幕末も巨大地震、戦国末も巨大地震で秀吉が建てた大仏が焼けた……それ以前の戦記ものでも、乱世にこそ大地震大津波の話は頻出する。多分、偶然ではない。

 大被害で飢えた人が暴れることもあるし、国の財政が破綻することもあるし、また宗教~呪術~道徳~政治が一体化していれば自然災害=君主の不徳=倒すべきだ、となってしまう。

 

 地形そのものが気候、作物を決める。

 サハラ砂漠、オーストラリアなど、事実上緯度だけで決まる砂漠。大きすぎる大陸によるタクラマカンなど。大陸の西岸で山などの具合でできる、南アメリカの砂漠。

 そして熱帯雨林の雨。ナイル川というチート。

 地中海性気候、ブドウとオリーブ。

 肥沃な三日月地帯。

 富を独占する、緯度で言えば狭い帯。

 

 地球の地理、中国と地中海の連絡の困難さ、でもわずかな交易は可能。これも歴史を大きく規定しているでしょう。

 秦や古代ローマが、互いを征服することはできなかった。でも仏教伝来は可能だったし互いの硬貨は出土している。長く絹や磁器の秘密は隠せたし、鐙(あぶみ)の伝来も遅かった。

 

 それこそ、この『現実』、今の年代=大陸配置と太陽活動からとは違う初期条件から地球人の歴史を始めてみれば、あらゆる違いが見えてくるでしょう。

 ささいな違いを地図に追加しても……日本と朝鮮半島を陸続きにしたり、太平洋の真ん中に大陸を追加したり、アフリカをユーラシアから大きく切り離したり、モンゴルから黒海に超巨大河を流したり、オーストラリアをちょっと南に移動させて豊かな温帯にしたり、コンゴ河を北に流して第二で十倍のナイルにしたり。

 

 視野を広げれば、地球が球形であることすら「地理」です。

『オマル』は球でない広い世界で多くの種族が角逐します。『タイム・シップ』のダイソン球の内側、『リングワールド』なども惑星よりずっと巨大な世界です。

『目覚めたら~』や『宇宙軍士官学校』ではスペースコロニーの異質な遠景が主人公に強い印象を与えます。

『時の眼』は時間も空間もぐちゃぐちゃになっています。

 

『銀河英雄伝説』こそ、まさに地理によって作られた物語です。

 帝国と同盟、二つの大きく見れば閉ざされた大領域。その二つを結ぶ二つの回廊……イゼルローン回廊は惑星のない恒星に要塞を築いて封鎖でき、フェザーン回廊にはフェザーンという居住可能惑星があってそれは第三の国、後には首都にもなった。

『スタートレック』は、ワープが遅いこともあり、極端に離れた地域の連絡が大きく歴史を動かします。

 宇宙空間の基地の近くにつながったワームホールを中心とするドミニオン戦争。遠くに飛ばされたヴォイジャーの帰還旅そのものが、ボーグと連邦の関係を大きく変えていく。

『彷徨える艦隊』も多くの星の配置、それぞれのジャンプ点の数や行き先によって作られる物語です。

 また、技術によって輸送が変化したことによる変化もじっくりと描かれています。

『ヴォルコシガン・サガ』も同様に、ジャンプ点でつながる多くの星の関係によってそれぞれの国の興亡があります。要衝だから征服されたコマール、要衝だから居住可能惑星がなくても繁栄するヘーゲン・ハブ……

『銀河戦国群雄伝ライ』で上述ですが師真が、先に残虐な虐殺をしてから兵の故郷の星々に出没し、家族を心配する兵の反乱を誘発した策こそ、地理を用いています。その兵がどこで徴兵されたか、どの星が人口密集地で、今戦っている艦隊の徴兵先になるか、を知っているから。それこそ商人だからこそでもあります。

『三体シリーズ』で、地球人は木星・土星という太陽から離れた巨大ガス惑星があるからこそ掩体計画にすがり、逆にそれは遠くから観測できるものだったからこそ長い目で見れば宇宙全部の破壊につながる兵器が使われたのです。『彷徨える艦隊』でも恒星を巨大盾としました。

『航空宇宙軍史』こそ細かな、太陽系の各惑星の距離の変化、それぞれの惑星の表面の様々な特徴を描きつくし、活かしつくして壮大な歴史を展開しました。

『星界 シリーズ』では実際の宇宙とは大きく異なる地理が、独自の超光速航法によって築かれます。だからこそ首都失墜が帝国の分断さえ意味していました。

 

 地理はそのまま資源分布でもあります。多くの作品で資源の争奪がある……場所によって資源が多い所と少ない所があるからこそです。

 また上述ですが、ジャンプ点自体も重要な資源として争奪されます。古来人が、ジブラルタルやマルタなど要衝を争って戦ったように。

 

 地理を言うなら、その地理をある程度変える努力として、治水も触れておくべきでしょう。

 中国の伝説的な歴史は、禹、治水に成功した為政者から始まると言ってもいいでしょう。上述ですが、秦の天下統一には二つの大治水工事が大きく貢献しています。

 後の隋による大運河は隋そのものを滅ぼし、同時に中国を爆発的に発展させもしました。

 古代エジプトも治水によって作られた帝国です。メソポタミアも。

 エジプトもメソポタミアも、日本もオランダも、イタリアも、多くの海岸や湿地を埋め立てて豊かな農地として人口を増やし、工業を可能にしました。

 産業革命を起こしたのは水力であり、運河です。後にスエズ運河・パナマ運河、またアメリカの五大湖からニューヨークに至る運河も、人類文明全体を変えると言っていいほど影響があります。

 そう考えれば、コロンブスやダ・ガマが大航海時代を切り開いたこと、テラー号など北西航路の探索も、治水の一つと言えるかもしれません。

 

『銀河戦国英雄伝ライ』では六紋海での師真の華麗な水攻めこそがすべてをひっくり返し天下統一に結びつきました。

『銀河英雄伝説』ではフェザーンやヴェスターラントの水不足も重要な要因です。

『クラッシャージョウ』のクラッシャーによる工事も治水に似たものです。

『宇宙軍士官学校』や『目覚めたら~』に描かれる超巨大転送ゲート、『彷徨える艦隊』のハイパーネット・ゲートなども、港湾・運河・空港・鉄道・高速道路など交通インフラの整備に当たるでしょう。ただし、運河は交通だけでなく灌漑・治水など多様な用途を持ちます。

『サイボーグ009 超銀河伝説』には天然の高速交通可能な宇宙現象がありました。

 

 上述の、緩衝地帯や辺境、それ自体が地理の一部と言っていいでしょう。

 

 

 戦争そのもの……地政学となる。それ次第では、下手をすると戦術・精神と無関係に戦う前から結果が見えるほどの差にもなる。

 細かい地理が、『火の鳥 乱世編』で描かれた義経のひよどり越えや何人も犠牲者を出す山路、桶狭間のような逆転にもつながる。

 

 生きること、ライフスタイル、宗教やそれ以前の常識・人の心のありかた……

 地理。ライフスタイル。それがどれほど、『現実』の各時代、各地、そして各作品で違うか。作品の中でも地域や種族でどれほど違うか。

 その全体像をまとめて理解するには、さらに気象学やプレートテクトニクスなども統合せねばならず、まさにビッグヒストリーの域にもなるのです。

 そして人の共通性を見るか、それとも多様性を見るか。人の多様さ、時間でも場所でも……また、生理学・医学・DNAの共通性、『ヒューマン・ユニヴァーサルズ』。

 異星人だとそれぞれどれほど違うか。それとも、『三体シリーズ』の暗黒森林という巨大な共通点のような、また物理法則そのもので結ばれているのか……逆にわかりあえる希望もあるのか。またもっと根本的に違う世界も『クロックワーク』『ジーリー』『三体X』などないわけではない……

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。