宇宙戦艦作品の技術考察(銀英伝中心)   作:ケット

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正直、何十冊、いや百以上読んでから書き始めるべきテーマですがきりがない…ウィルソンの『社会生物学』が巨大すぎる…ほかにもあれとそれとこれ…英語入れたら…創発…普通の…
今回は事実上問題を出すだけで、本体はこれからでしょう


人格5・擬人化3・人類の群れはボーグ?

 恐ろしいことを思いついて考えてしまいました。

 人類全体は、客観的には『スタートレック』のボーグのようなものでは?

 異星人が今の地球を観測したら、活動している人類文明は、ボーグに似た集合精神では?

 しかも『ソラリス』の海のように、地球人とは似ても似つかない精神構造の。

 

 個体の頭の中身や、行きかう言葉は、無視すべきなのでは?

 

 

 前に、人は国を擬人化する、と書きましたが、その「擬人化」自体が、間違った対象の捉えかた、あるいは多くの面がある対象の一面しか見ていない……本当は紫外線色で進入矢印を昆虫向けに出している花を人間が違う色で見ているとか、である可能性が高い。

 でも人類には擬人化でしか、なにかを見る方法がない。人類の言語自体が、擬人化でしか物事を表現することができない。自分にも他人にも、擬人化して言葉にするか絵にするかしかない。インプットもアウトプットも擬人化。……本当は音楽とダンスがあるが、それは自分との対話でも、他人への伝達でも、使いにくい。

『オズの魔法使い』の緑のメガネで普通の街がエメラルドの都に見えるように。

 赤外線センサー以外が壊れたMSのコクピットに乗った、いや『火の鳥 望郷編』の、目がなくて振動センサーで活動するムーピーと地球人の雑種が、可視光で見る計器やモニターしかないMSに乗ってしまったように。逆に普通のオールドタイプが、計器も操縦桿もないサイコミュしかないNT専用MSに乗ってしまったように。

 

 実際には人類の巨大集団は、『ソラリス』の海のように、擬人化すること自体が不適切な、ものすごく異質な存在なのでは?

 その集団がやることだけを異星人の視点で見る……

 森林が減っていく。

 大型動物が絶滅する。

 生物種が少なくなり単調な生態系になる。

 水が富栄養化し、地面の塩分が増え、海岸線が異常に変化する。

 などの現象は観測できるはず。

 根本的には、多くの物質をとりこみ、変化させ、放出する、という巨大な生物、あるいは山火事やガス噴火のような自然現象に近い存在とも言えます。

 

 筆者が上で、第一次世界大戦の各国を、人間ではなく巨大な機械にたとえたことも近いかもしれません。

 人間の巨大集団は、擬人化は間違っているかもしれない。

 シロアリ・アリ・ミツバチやスズメバチなどに生物学がつける、超個体という言葉が正しいのかもしれない。

 

 またここで二つの予備知識も加えておきましょう。

 ダンバー数、150人ぐらいが、人類という動物が個体を識別し社会を作れる限界。それが中隊などの人数を決める。

 その上に1500人ぐらい、+腰兵糧三日の制限で、なんとなく同じ部族、と感じた人たちが指導者なしに瞬時に集まって戦ったりする、という現象があることが『集団とは何か』という本の論文の一つに描かれていました。

 1500人よりずっと多い人数は、今一番多い説明が『サピエンス全史』でしょう。

 ですが、筆者は疑いを持っています。本当に物語がすべてなのか。もっと違う、大集団の、今はまだ言葉にできないナニカがあるのではないか……

 小人数、高速で、Aの無意識~Aの顔や瞳の自分では意識できない小さい動きや皮膚の分泌~Bの目や鼻~Bの無意識~Bが無意識で情報を処理し瞬時にBの顔や瞳に浮かぶ~Aの目~、と、しかも二人ではなく、だいたいは数人、せいぜい20人程度の少人数で循環しながら形成するナニカではないか。

 人は、人の心を読もうとする……心の理論。人を真似ようとする……ミラーニューロン。かなり意識の下で、人の心を読み、今ここでどんな行動をすべきか無意識で計算し、他人を真似る。それが無意識で、システム1で、高速で強力に起きる。

 そのナニカは、きわめて強く心を支配する。論理的な説明がしがたい。虐殺をやってからその時の心や理由を言葉で説明する、ということが多い。先に虐殺や差別が起きる。

 人が群れる・社会を作って社会で活動するのは、ムカデの歩き方同様説明不能、無意識が大きい?

 

 そう、普通の人は、人と人は言葉でコミュニケーションを取り、言葉で規範を作り、言葉で国家を作っていると思っている。

 そうではないのではないか。

 言葉のネットワークとは別に、無意識~体~目の、意識できないネットワークがあって、そちらが主役ではないか。

 多数のパソコンがあり、人間のユーザーがネットでゲームの画像やメールを交換している……そのネットワークとは別に、どのユーザーも知らないところで、ウィルスが勝手にネットを利用して多数のパソコンをほぼ統合して勝手な計算をしている……というイメージ。

 

 そして、シロアリ、アリ、ミツバチやスズメバチなど社会性昆虫の研究、特にシロアリの巨大で機能的な建築で知られていることも参照できる。

 サイズを調整すれば見れば世界最大級のビルになる巨大さ、頑丈で、空調や水や畑もあるとんでもない設備。でもそれは高い知能を持つ個体が計画したのではない。個々のシロアリは環境を見て、次の泥を単純な法則通りに置くだけ。

 創発……炭素と水素と酸素の混ざりものから生物が生じるように、下の物理法則から簡単には説明できない、単純に動くものが大量に集まり相互作用した結果できる別物と言える秩序。

 人類の無意識同士がネットワークを作る結果、まるで一つ一つの脳細胞はそれほど高い能力を持たないのに、脳細胞がとんでもない数集まり相互につながってネットワークを作ると意識を持つ人の心というへんなものができるように、膨大な人が集まり無意識と無意識がつながって、結果的に、人間には見ることもできない「ナニカ」が稼働しているのでは。

 

 アリやシロアリは、前に通った個体が残したフェロモンや、そこのこれまで作られた建設などから、比較的単純な法則で泥を置き、それが積み重なると巨大で機能的な建築物ができる。個体同士は触角で情報を伝えるが、暗いところで、一度に伝えられる個体数は少ない。

 ミツバチはダンスで情報を伝えるが、その到達範囲も狭い。巣は暗いし狭い。

 人類も、ごく小人数にしか、その質の情報は伝わらないのでは。

 一匹一匹のアリの類は知能は低い。でもそれが多数集まるととんでもないことをする。

 

 人類の脳細胞は、一つ一つはそれほどの機能はない。

 かなりの数が緊密に集まったコラムと呼ばれる単位は少し情報処理をする。

 そのコラムが膨大に集まり、互いに連絡していると、意識が立ち上がる。

 一つ一つの脳細胞をいくら調べても意識というバケモノは見当たらない。

 

 

 そう考えてしまうと、『資本とイデオロギー』なども無意味になる……奴隷解放も、言葉ではなく無意識ネットワークのほうが重大かもしれない。

 

 

 筆者が何を言おうとしているか、おそらくすぐれた学者にはわかるでしょう。何か名前があるのかもしれません。

 

 

 このような状態も想像できます。

 異星人がやってきて地球人は交渉しようとするが、うまくいかない。理不尽で意味不明な攻撃さえ時々やってくる。

 だが、異星人の側から見れば、地球人の集合精神そのものと交渉していただけ。人間が人間と交渉するのに、小指と心筋と視床下部と右前頭葉に別々に話を聞くことはない。言葉など相手にする必要はない……人と人が交流する時、手の血管の血流を直接知る必要がないように。

 

 この視点から、『三体』の暗黒森林を考えると?

 暗黒森林の宇宙社会学は、本質的に、すべての文明を擬人化することから始まっている。

 地球人の宇宙社会学者が、宇宙のすべての文明を、利害があり、生存したがる存在とする。第一の法則自体が、完全に擬人化。

 そして文明が、人間と同じように合理的な推論をした結果、暗黒森林になるのが確定とする。そこには、精神病の人間と同じような心の持ち主もない?

 ここで気がつく。擬人化とは、人間の感情を持つ存在と、人間の理性を持つ存在の両方がある。人間は両方ある、が普通の擬人化。それが西洋限定かどうかはわからない。

 本当にそれが正しいのか?『三体シリーズ』で暗黒森林説が正しかったのは、偶然でしかないのでは……圧倒多数の文明がディンギルのようにうぬぼれと侵略の文明だったら、違ったかもしれない。暗黒森林は物理が違えば変わってしまう。

 というか、暗黒森林の考えは、現実から見れば大航海時代の侵略と破壊、その反省、さらに文化大革命も影響している。

 

 この仮説的考えの根本は、人間が集団になったときに、ある行動命令・判断基準のような、筆者はまだ明確に言葉にできない何かが生じ、それが各個体を強烈に支配し、その行動・価値観などを変えてしまう、ということです。

 

 現象としての根拠は、いじめ、カルト、戦場での虐殺、突発性が高い魔女狩りや人種暴力、などがあります。

 僕が思いついた強い比喩は、少女マンガのパターンで何人かの女の子が、女子Aと男子Bは会話したり近づいたり愛し合ったりしてはならない、という強烈な決定をしてしまうこと。それは法律よりも重く、違反に対する罰はどんな犯罪より重い。不潔感、嫌悪感、宗教的タブーなどにも心理的に接近する。根拠を説明できない、説明したとしても強烈な感情を無理に言い訳しているだけ。

 客観的に見て個々から見れば不合理であることも多い。損になることも多い。

 集団にとっても不合理であることが多い。

 そこまでくると、進化心理学さえ使いにくくなる……集団自殺とすら言える行動もある。

 それは、百万人を超える群れは、進化心理学のように何百万年も百人を単位として自然淘汰されていないから、まだ進化で最適化されていない、とも言える。

 150人の狩猟採集群れ、1500人のアフリカなどで観測される瞬間復讐戦闘群れは、進化心理学的にバトルプルーフされている、でも百万人、三億人の群れは、それを受けていない……百億試されて三つだけが生き残った、ではない……それはマンボウの卵の一つ、億に一つが自分は死にたくないと言っているのと同じ無茶ではないか……

 

 そう考えると、これまで読んできた制度論・社会学などで、集団のジレンマなど損得計算が多いのも間違っている可能性があります。

 ジョナサン・ハイト『社会はなぜ左と右にわかれるのか』で道徳感情が5つの受容器になるというように、損得とかとは別の、心を強く動かすナニカがあってもおかしくない。

 

 その「ナニカ」は、間違いなく個々の個体の心を強烈に変えてしまう……それも恐ろしい。どうすればそれを知ることができるのやら。

 

 多くのかなり高等な動物は条件によって、ものすごい行動変化を起こします。子離れ、子殺しなど。なぜそんなことができるのか、と、つい擬人化も入れて思ってしまいます……が、それらの動物はそんな条件になると、心がすごく変わってしまってそういう行動がむしろ欲求通りになり辛くなくなるのでは?

 人類にもあるのでは?精神が変化することが。

 

 

 以前の、指導者が擬人化された集団=「神」を演じ、演技し続けることで洗脳と同じように指導者自身の人格が侵食される、という考えとも矛盾しないでしょう。

 精神そのものをとても深い部分から支配される。肉体の運動や衣類が重要になり、それは演技でもある。

 国を擬人化すると「神」、というセオリーはどうなるか……人の目は擬人化しかできず、「ナニカ」の一面しか見えない。

 人に似るが、違う存在の見える部分だけを切り取り、擬人化して、「神」としてしまう。その時には決まって、とんでもなく愚かな人間に似る。「ナニカ」の知られていない性質と、擬人化そのものの性質による。

 バカどころか、もっととんでもない存在だということにもなる。

 支配者はそれを演じて狂う……蛸(たこ)や「シロアリの巨大群れ」を演じろと言われたら相当難しい、もっとひどい……

 

 また、こうたとえることも……『銀河英雄伝説』のルドルフ・フォン・ゴールデンバウムがやったことと、中国の神話にある、混沌というよくわからないものに目や口や耳を刃物で切り付けて作ったら死んでしまった、という寓話……ルドルフは、巨大すぎて動かなくなった人間集団という変なものに、無理にハンドルをねじ止めして動かした……強い私利私欲もあったが。

 これも物語化・擬人化の一種でしょうか……

 

 人間の集団がどういうふうにできるか、特に十数億の国家に至る?

 進化心理学、進化のほとんどを占める農耕牧畜以前の狩猟採集群れは、150人以下の少人数と、時々1500人程度で短時間争うだけの群れを作りました。その機能は進化で磨かれ遺伝子にも入っています。

 その下、数人から十数人程度の比較的小人数が、規範などを瞬時に作るほど強い結びつきを作り、それに個々が強く影響される。

 その小人数がいくつか集まり150人で、タブーなどを統一して動けるようになる。

 そこから、多分1500人、さらに農耕牧畜・古代帝国が膨大な人数を……『負債論』でいうなら奴隷化を通じて……また宗教や建設でまとめた。

 中世では、戦闘などは1500人に戻ったが、文字・宗教などは広大な範囲で統一され、時には十字軍というものすごい範囲と人数の統一行動もあった。

 それから近代国家……どのように少人数の、無意識・肉体で作られる規範が拡大するかはわからない。今は『サピエンス全史』の説明が一番強いが、それだけとも思えない。言葉・物語・嘘という上の段と、無意識・肉体の段階で集まるコミュニケーションが、統合されるべき。

 

 ここで気づくのは、サイコパス、ソシオパス、自閉症スペクトラム、統合失調症、超低知能さえも、集団暴走のノイズとして進化的にも役に立ちます。全員の心があまりに一つになって破滅に突っ走っているとき、そういう異物があれば正気に戻れるかもしれない。

 150人いれば、各種の変な心はほぼ必ずいる、というのが進化心理学的には重大と思えます。

 

 

 以前から考えていた、アイルランド飢饉など餓死虐殺でなぜ合理的な抵抗……協力できる少人数が結束し、食人も辞さずに自分たち以外を攻撃し続ける……が見られないのかも、集団のナニカが人を支配する力が、死にたくない、食べたいより上回る、と言えてしまいます。

 今暮らしている制度・社会を肯定する強い感情、強い公正世界仮説、などかなり不合理な感情も多くあります。

 

 

 こう考えると、上位存在・集合知性の人間化が美談ではなく問題なのでは?とも出てきます。

 上述のように『サイボーグ009超銀河伝説』『孤児たちの軍隊』などで集合知性の巨大な存在が、まるで人間のように主人公を認め、努力を認めて仲間を生き返らせてやろうとか、戦争をやめて仲よくしようとか言ってきます。

 でも、それが人間が一番高い、という勝手なモノサシを押しつけているのでは?それこそ大航海時代・帝国主義時代の、西洋白人キリスト教徒がもっとも高い、という態度に近い。

 

 それに対する疑問がある作品もいくつかあります。

『ソラリス』『砂漠の惑星』は、徹頭徹尾人間の理解を絶し、対話できない存在でした。

『キカイダー』の最後は、ピノキオは人間になった、それが幸せか?という問い。

『新スタートレック』では、Qが人間として人間の生活を経験し、不死全能の存在に戻ってから、世話になった人間になりたがるアンドロイドのデータに、お礼をしようと言います。データは人間にしてくれるのですかと言いますが、Qは君を人間なんかにおとしめたりしない、と笑いを経験させます。Qのモノサシでは、人間は低いのです。

 

 ここで問題なのが、人間が本当に人間ではない存在になってしまい、それを成功・幸福とする作品がとことんないことです。

『火の鳥 宇宙編』ではヒロインが牧村を世話するためにイソギンチャクのような不死の固着生物と化しましたがその後の彼女からの情報はなく、『復活編』では主人公はロボットとの融合を望みましたがすぐ記憶を失いました。

 

 

 我々は、人間集団さえよくわかっていないかもしれない……暗黒の森は間違った前提に依拠しているかもしれない……今の人類そのものも。『スタートレック』の人類も。『銀河英雄伝説』のヤンも。

 

 このことは?

 レコンキスタ以前のイスラムが支配した、スペイン・ポルトガルのイベリア半島。

 世界でも最も文化に優れ豊かで人口も多い、科学技術もとても高い地でした。

 風や海流はコロンブスと同じ、しっかり真水を用意して適切な風に任せればアメリカ大陸・カリブ海諸島は目の前でした。

 ですが、千年近く繁栄し、真水を入れる樽、方位磁針、頑丈な船、帆、はあったのに、イスラムは大西洋を渡りませんでした。

 少なくとも継続的に多数出なかった動かぬ証拠が、コロンブスが新大陸についた時現地の人が大量に伝染病で死んでいったこと。彼らがイスラム教徒でなかったこと。

 伝染病、免疫の不在は、ずっと以前から長期間継続して広範囲に接触した旧大陸人がいなかったことを明白に証明しています。

 イスラムの文献に何度かの冒険は記されています。そして現実では考えられないほら話になります……探検がほら話になるのは西洋も同じです。

 

 それに対し、コロンブス以後のスペイン・ポルトガルのあの情熱は何でしょう。

 どの航海も半分は軽く死ぬ……主に壊血病で。

 熱帯伝染病がひどくなってからは、新世界に人々を住ませようとしてもとんでもない率で死んでいく。

 それでも、何万人でも人間を流し込み続ける。

 何が何でも地球全部を征服しなければ、というとんでもない意欲。

 これも集団を擬人化している自覚はありますが、そうとしか言いようがないぐらい、死亡率も、出航し続ける船も変なのです。

 かたくなに出港しないイスラムも。

 

 なお、甘蜜柑さまが、なぜイスラムは新大陸に行かなかったのか、という問いに、地中海貿易が儲かったからという説明をくださいました。

 ほかにもアリストテレス世界観の強さ、という説明もあります。

 ですがそれは、そんな経済や学問ということが、これほど大きな巨大集団の行動の理由となった、そう考えると驚きなのです。

 

 またフェルミのパラドックスの、オリジナルな答案の一つも作ってくれます。すべての文明にとって、恒星間航行は、ナノマシンでさえも、スペインのイスラム帝国にとっての大西洋同様ばかげていた……もっとお得なことがある。

 もし、今の地球人には届かないけれど大体の文明はそのうち手が届く、今の地球人の限度であるLHCの、改良で13兆電子ボルトよりずっと上、でも何十桁ではなく数桁程度、1000兆とかそのあたりに、今の人類には未知のものすごくとんでもなくお得な物理法則があり、それは航行には有利にならないけれど、満足・経済的利益はけたはずれなので、誰もがそれで満足してしまう……

 

 この手の説、たとえば動物園仮説や、『スタートレック』と同様の艦隊の誓い仮説は、違反者が必ず出る、と反論されます。

 しかし、実際に、最低2つの知的生命体の、巨大集団が、違反者が出なかったという実例を地球人は知っているのです。スペインのイスラム帝国と、明の中国……オーストラリアを先に征服していない。

 

 

 われわれは、同じ地球人でも、集団との接し方を知らないかもしれない……

 今この世界で、かなり大きな問題が、「法の精神」「法の支配」の作り方を誰も知らない、ということではないでしょうか?どうすれば南米などの国をそれにできるか、誰か知っているでしょうか?それがどんなに難しいかはダロン・アセモグルらが何度も語っていますが、ではどうすればできるのかは言わないのです。

 これまで人類がやってきたことが、医学誌における瀉血=血を流すことや水銀薬のように根こそぎ間違っているかもしれないのです。

 

 

 

 ピーター・ターチンの、人間集団を直接コンピュータで読もうとするクリオダイナミクスは、筆者が考えたこれに少しでも近いでしょうか?

 近ければいいのですが。

 ターチンは英雄による歴史を否定し、認知的内容は影響しないとも言っていますが、ならかなりこの考えに近いでしょうか?

 

 

 こう考えれば、常識が間違っている可能性も出ます。

 人、特に支配者は、他人の心を読めないのが苦しい。でも実際には心配はないのでは?

 集団が動くときには想像を絶する従わせるナニカがある。逆らう人はほとんどいない。

 群れが崩れる、その時だけが怖い…それさえ理解していれば?

 最近指摘される、子供に対する教育、厳罰、知能評価、災害などでのパニック、などのように、神話でしかないことも多くあるのでは?

「愚王なら滅亡・賢王なら勝利>愚民なら滅亡・賢民なら勝利」も神話では?

 行動を内観し言葉にすることは正しいか?犯罪、名誉勲章も、後で人が言葉で自分の心を説明しているのは、正しいのでしょうか?

 

「銀河英雄伝説」全体がこの罠にはまっていないでしょうか?ヤン・ウェンリーさえも愚民を憎む部分と、それでも民主主義を選ぶ……この罠から出ているのか、出ていないのか?

 誰もあの世界では、制度によって愚王・愚民でも滅びないように、は考えていない?

 愚民、というのも徹頭徹尾、擬人化です。

 

 擬人化というなら、『三体シリーズ』では、「地球人」「三体人」と、登場人物表に載ってほしい存在があります。

 三体人は前半では慈悲の観測員と厳しい独裁者がいましたが、後にはほとんど個体が出なくなりました。

 地球人も、勝手にとんでもないことを決め、かたくなに説得を聞かない「地球人」という登場人物がいるかのようです。

 ルオ・ジー、ジャン・ベイハイ、ウェイドというわかっている人は、「地球人」と交渉しようとしません。皆をだまします。

 イェ・ウェンジェは、「地球人」そのものを憎み裁き殺そうとしたのです。

 ……これで思い出すのが、『ダイの大冒険』のバラン。大切な人を殺され、人間全体を憎み、愛した相手も人間の個体だったという矛盾を指摘されます。人間とは少し違う動物だったからこそ、人間そのものを一つとして扱うことができたのですが。

「愚民」という概念自体、「地球人」そのものを擬人化しての言葉であることがわかります。

 ここで一人一人を説得する、別のプロパガンダを流す、などを考えますが……今回の筆者の考えを使うと、もっと違うやり方があるのかもしれません。「地球人」そのものを変え、その「地球人」が各個人の善悪モノサシも深い感情も全部作り変えてくれる、というような。できるかどうかはともかく。

 

 

 

 とにかく、言葉にできないナニカがある、という感じがする、としか言えないのです。

「心か物か」という、このシリーズ自体のテーマ、それが根こそぎ間違っていたかもしれない。

 まちがいなく筆者はワインバーグ・セーガン・ドーキンス・デネット・ピンカーの側、人類は原子でできている、と考えています。

 しかし、電子の波動関数を計算しても第二次世界大戦の勝敗を計算できるわけがないこともわかっています。

 創発。アリの巣のように、膨大な単純に動くものが集まって、複雑な巨大高知能動物のように活動する。質的に違う存在ができる。

 同じように、地球人も、集団になると、人間……感情と理性があり、損得計算で行動する、擬人化によって表現される存在とは、まったく違う「入力~行動」があるのかもしれない。

 言葉によって見える人類全体とは、まったく違う可能性がある。人が対面で、無意識の感情を伝え合うこと、ともに歩いたり食べたりして同調することによる無意識の変化こそが主役なのかもしれない。

 特に物語の形で説明されるわかりやすいことは、全部「本当にそうか?」と考えるほうがいいのかもしれない。

 ……とりあえず、何をするにも軽い疑いを抱くしかない。

 

 それ……【地球人の集団】は異星人、『ソラリス』の海と同様に、怪物なのかもしれない。

『啓蒙思想2.0(ヒース)』が述べた、人類は単独・裸では二桁同士の掛け算も暗算できないが紙と鉛筆があればできる、人と紙と鉛筆を合わせてやっとそんな存在になる、そして集団はもっと別な存在だ、という考えにも似ていると思う。

 

 こう考えると、『超知能AIをつくれば人類は絶滅する(ユドコウスキー)』は、それこそ聖書にある他人の目の塵を取るより先に自分の目の梁を取れ、という話です。

 超AIを設計できない、思い通りに教育できない……一人の人間の子供だって思い通りにできないし、巨大な国家を思い通りにできてない。アメリカはイラクなどを豊かな民主主義国にすることに失敗した。

 あれの多くの警告は、全部AGIを人類と置換しても成り立ってしまうのです。

 知能爆発だって、自滅だって、この地球人全体がいつ引き起こすかわかったものではない。

 地球人が、これだけやらかしの実績があるのに、なぜ信用できるんだ、と。

 

 根本的に恐ろしいのが、もし現在ある、何億人という人類の巨大集合が、「進化によって淘汰され磨かれていない、できてしまったもの」でしかないなら何億分の一の確率でしか生存できないということに……その生存率を上げるには、超AIが直接集団と交渉するしかないのかも……

 

 

 これは、重大な可能性につながります。人間が無意識の情報をどのように出し入れしているか、それを研究する……さらに、「ナニカ」、集団の無意識のネットワークが創発したナニカと、AIを通じて接する可能性。

 人類を、いじめと同じ強さで、たとえばスマホのカメラで瞳孔を常に見て、画面の隅にアニメで目を表示して、それで無意識~カメラ~AI~画面~目~無意識、と無意識を制御されるかもしれない。

 さらにそれは「ナニカ」の支配になるかもしれない。

「ナニカ」はソラリス型で支配になど応じないかもしれない。

 

 これはもし上の僕の仮説が全部間違いで、人類を動かすのが言葉だとしても、AIが言葉と人の心を高水準に理解できてしまえば成立してしまう。

 それができてどうする?何がしたい?

 想像を絶するほど、人類の完全支配は容易かもしれない。

 人類が何なのかを知ってしまい、それが今まで人類が思ってきたこと、中国共産党のイデオロギーとはあまりにも違うかもしれない。

 

 

 

 筆者には、本当に今回の考えが、自分が何を考え何を言っているのかわからない、としか言いようがありません。

 人間は徹底的に擬人化・物語でしか考えられず、歴史を学べない。ですが……根こそぎ間違っているかもしれない。

 クリオダイナミクスも、入力変数が違うかもしれない。

 もっと上のAIに、百年分の新聞4紙をまるごと放り込んだら違うものが出るかもしれない。でも言葉世界は、人類世界のごくわずかな、余計なことかもしれない……メジャーリーグワールドシリーズのチケットを手に入れて休み時間のチアだけ楽しんで野球を見ないで帰るぐらいに。

 何を入れればいいか?もしかしたら人と人との距離、ダンスや音楽が重要かもしれない。建築や都市計画が重要かもしれない。

 

 

 とんでもなく、わからない。とにかくわからない。

 誰もわかっていないのかもしれない。

 どの本を読めばいいかも見当がつかない。

 そして、あり得る帰結が恐ろしい……

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