そして自分が言おうとしたことの多くが、複雑系だともわかってきました。
複雑系という概念を理解するには、『歴史の方程式(ブキャナン)』が重大でしょう。
しかし本格的にここに踏み込むには、もっと複雑系を、ニコラス・ルーマンを、他にももっと多くを学んでからでなければ。
娯楽大作で、とんでもなく重要なことを置くが、それはストーリーと関係を持たず流される、というのがある気がします。
ガンダムの推進剤不要推進。ホワイトベースの地上飛行から、Vガンダムの光の翼に至ってほぼ完成されました。あとは微調整。
「銀河英雄伝説」の、イゼルローン要塞内部の工場と農場とガイエスブルク要塞のエンジンを合わせた時の自己増殖文明の可能性。
これはどちらも作者が、わかっていながら、わかる人はわかれ、とある意味隠した仕掛けでしょうか。……ミュージカル「エリザベート」で、カフェで退屈だと言っている人たちのニュースがハンガリーでエリザベートで喝采を受ける=皇帝の弟マクシミリアン皇帝がメキシコで処刑されたのとほぼ同じ日で、ミュージカルを見ている人の一部が気づけばいい、と隠しているように。
ほかにどんなものがあるでしょう。
超光速が文明を大きく変えることは明白です。
壁、という言葉が使われます。
昔は音の壁という言葉がありました。飛行機が音速を超えるのは難しかったのです。
エンジンも弱かったし、高いところからの落下の力も加えて加速していくと、飛行機が壊れてテストパイロットが死んでしまう。音速を超えた時の衝撃波が、機体そのものを壊してしまうのです。想像を絶するほど頑丈に作らないとならず、そうすると重くなって速度が出ない。
今も、マッハ3以上で出てくる熱の壁、空気との接触で熱が出て鉄でも溶けてしまう問題は解決されていません。だからマッハ4の旅客機などは見られず、超高速偵察機も限られ高価だったのです。
熱の壁は宇宙飛行にとっても天敵です。スペースシャトルコロンビアを破壊したように。
超光速の壁。同じぐらい、本来は、推進剤の壁も重いのです。
ロケットのツィオルコフスキーの方程式。反動推進方式ロケット、今も現実の事実上唯一のロケットの方式。ローラースケートを履いて機関銃を後ろに撃って反動で前進しているのと変わらないやり方。
速度をあげようとするとめちゃくちゃに必要な燃料・推進剤……機関銃で言えば中で燃える火薬と出る弾頭が、増える。
その制限は想像を絶するほど厳しい。指数・対数関数の数学がかかわるためとんでもない数字になり、人間の心にとっては苦手。
推進剤の壁が崩れたら、とてつもなく文明が変わるのです。
Vガンダムのあの光の翼は、本来は人類そのものを完全に変える希望の翼なのです。宇宙世紀がその後破局するのはおかしいのです。
推進剤の壁がないなら、人間が耐えられる地球と同じ重力になる加速度か、それより少し強いぐらいで加速し続け、半分までいったら逆転して減速するだけ。それで、百光年を地球から見れば百年、乗員は十年ぐらいで行けます。往復しても、船で片道十年は大航海時代やシルクロードなら何とか人間がやった旅でした。
太陽系内移動も、費用や時間が一変します。そうなれば、水星近くの無限太陽エネルギーと、木星・土星・天王星衛星の無尽蔵の水・大気原子・石・金属を結合させ、自己増殖工場を有人でも無人でも指数関数増殖させれば、物質的には事実上無限。
本当なら文明がものすごく変わるのです。産業革命前と後の『現実』の人類のように。
『三体シリーズ』でジャン・ベイハイが、何人かの偉い人を暗殺してまで、宇宙船の推進方式を古く実績がある反動推進から、光推進に切り替えた……推進剤不要の重大さをこれほど理解し、これほど強く主張した例も少ない。
それによって、何隻かは水滴から逃れ太陽系から逃れて生き残れたのです。
曲率推進も少し違うぐらいの話です。
推進剤の壁にかなり迫る方法としては、『火星の人』の惑星間移動母船の、イオンを電磁気力で吹き出す方法もあります。光速に近づけるためかなり少ない推進剤ですみます。加速度=力は小さいですが。
『ガンダムSEED』系でも、太陽風を受け取る航法が生じます。
また、外部からエネルギーを受け取る方法もあります。構想された光帆に地球からレーザーを当てる方法、また『三体シリーズ』の階梯計画、並べた核爆弾をタイミングを計算して起爆し蹴とばし続ける方法。
軌道エレベーターも、もっとも多くの推進剤と燃料を消費する地上から宇宙に出る過程を推進剤なしでやろうというものです。
ほぼちょうど光速である推進法は『エンダー四部作』の航法でもあります。光速で動け本人は数日ですが地上では何十年何百年の月日が経っています。
そういう問題で言えば、全ての超光速は過去に行くタイムマシンにもできるという問題もあるのですが。
なぜ推進剤の壁がこれほど目立たないのか。
なんとなく、フェルマーの最終定理の派手さと、ビーベルバッハ予想の地味さを比べてしまいます。後者も難易度も美しさもものすごく高かったんですが。
ほかに、どんな壁があるでしょう?
『現実』を考えてみましょう。
『現実』の人類はどんな壁を破って今ここにいるでしょう?今目の前にどんな壁がそびえているでしょう?
壁、という言葉より、ビッグヒストリーで言われるスレッショルドという言葉が正しいかも。
宇宙全体を複雑さというモノサシで見て、大きく変化したとき。ビッグバンや、宇宙そのものや地球、生命の誕生などが含まれるぐらいの時間スケール感覚。
人類が生じてからの大きな変化。これはスレッショルドよりは小さいかも。
あまりにも長い、まったく石器様式が変わらない時代。
出アフリカと言われる、アフリカ大陸からアメリカ大陸南端・オーストリアに広がる数万年の旅。同時にあらゆる大型動物絶滅。実は太平洋の島々を征服しつくすのはかなり遅く、だからこそモアなども遅くまで絶滅していませんでした。犬、投槍器(アトラトル)、野焼きなどの技術。
そしてわずか数千年前の農業。その重大さを語る歴史と、グレーバーやスコットの多様な歴史の対立はありますが、結局は中東・中国・中南米の三か所で巨大農業帝国が圧勝します。
それと前後してあったと思われる、インド・ヨーロッパ語族の謎……馬を使うごく少数の民族が、ユーラシアの大半をあまり痕跡を残さず征服し、言語といくつかの技術だけを残した。
文字。
数。天文学。
帝国という人の集まり方。
帝国の人数に適応する、枢軸時代。宗教や文字を書く道具、人を支配する方法の進歩。
そして、どこで決定的な変化があったでしょう?
大きく見ると、蒸気船などの移動、蒸気機関という物理的なモノを動かす力の歴史……人力、家畜、正しい馬具と蹄鉄による何倍もの馬力、並行して風力や水車、それから蒸気機関、石油エンジン、電気、ある程度は原子力と太陽光や風力。エネルギーでもある、薪、炭、電気、水力、原子力……。スエズ運河・パナマ運河、鉄道や道路も重要だろう。
医療。伝染病になすすべがなかった人類が、種痘とワクチン、長く反対された壊血病対策のライムジュース、細菌やウィルス、清潔、麻酔と外科手術、抗生物質、健康と清潔への文明全体の変質……解剖、細胞、DNA……と変化を繰り返し、そのたびに乳幼児死亡率を下げ、人口を爆発的に増やした。
人口を増やしたのは肥料など農業革命でもあったし、農産物を運ぶ交通でもあったし、品種改良でもあったし、機械による灌漑でもあったし、農地を増やした新大陸開発……全住民からの土地[虐殺強盗]と森林破壊でもあった。
情報。印刷、電信から、新聞、議会などにもつながるだろう。学校の形も含まれそう。
情報の一種として複式簿記、資本主義そのもの、近代国家につながる財政や金融システムも含まれるだろう
農業革命、産業革命を考えると、情報伝達方法や、政治システムなど、多くの発明が複合的に絡まなければ効果は出ないようだ。
ヨーロッパ以外は技術や人口などいくつかはあったが近代産業国家になっていない、始めたのはイギリスだった。コロンブスが、アメリカ大陸があったからかもしれないが、アメリカ大陸はスペインのイスラム帝国の前にもずっとあった、彼らは船を出さなかった。
そして今はIT、インターネットがあり、AIがあると言われている。それによる滅亡も警告されている。
それがなくても核戦争、温暖化、環境破壊などでの滅亡や文明崩壊も言われている。
同時に人類は、人種や道徳でも人類は滅びる、破滅する、と思い続けてきたし、その恐怖はホロコーストなどにも結び付いた。
情報を集め、試行錯誤・科学で工夫し、資金を集め、新しい機械を作る。
それを政治として解禁する。
膨大な人数の人間が協力する。犯罪や汚職が少なくなる、いいかえれば協力水準が高くなる。
それも、壁を乗り越えられる力を人類に与えていると言える。
これからの人類も、それで壁を乗り越えられると思っているが、実際にはそれはわかっていない。AIで普通教育は無意味になる、人類は不要になる可能性も大いにある。
SF的に今後の人類を見た時、できたら大きく文明が変質すると思われること……
『ブラッド・ミュージック』のように人類そのものが変わってしまうかもしれない。それは滅亡に等しい恐怖でもある。
異星人との接触。『三体』では存在を知るだけでも人類は破滅するという作中本が提示される。最初の生命の発見も大きいはず。
無限のエネルギー。
注目されていないが、生産の指数関数増殖。農牧業の刷新……畑~家畜ではない、十分売れる肉、工業的にエネルギーから直接作れる食料……エネルギーが無限化していればの話だが。
宇宙に行く。軌道エレベーター。推進剤不要。
宇宙で人類が有効に活動できるようになる。革新的な宇宙服、モビルスーツ、宇宙適応遺伝子改造人間……『サイボーグ009』や『天冥の標』の甲殻・酸素いらず、『ガンダム』ニュータイプ、『ヴォルコシガン・サガ』のクァディーなど。
ニュータイプなどは、人間が変わることそれ自体を夢見ている。その結果はおそらく、人類が争わなくなる、協力できること。協力はボーグにつながるのだが。
AIの可能性。人類がより協力できるようになる体制など。
移動、情報、エネルギー、素材……社会体制というか人間の群れ方。
場合によっては人間以上……その一般論として、家畜、未来的にはAIや異星人など自分たち以外との接し方もあるかもしれない。人類が、「自分たち」と「それ以外」を分ける、その「自分たち」を拡張する方法として古代の宗教と建設と帝国、それが一度壊れて中世になり、そこから近代国家で十数億まで「自分たち」にできるようになったし、少なくとも有色人種を動物と法的に定めることもしなくなったし多くの国では動物の拷問や幼児買春を楽しむことが違法になった、その先に異星人やAIも……かもしれない。
それらとは全く違う、今の人類には想像もできないことがあるのかもしれない。
今の人類に見えている壁は何でしょう?
そして壁を破ったら何をするのでしょう。
何をするか……その問いを反転させたら、なぜ異星人は地球を侵略するのか。
『三体シリーズ』で根本的におかしいのは、なぜ優れた技術を持つ三体人が地球を侵略するか。
三つの恒星が不安定でいつ惑星が焼かれるかわからない、だったらどれかあるいは全ての恒星に太陽電池を多数惑星軌道周回させてエネルギーを得て、生活の場は三つの恒星から遠く離れたところに惑星の資源を持って行って巨大船を作り、恒星近くから送られるエネルギーで過ごす、でいいはず。
地球を攻撃する、それ自体は暗黒森林攻撃の面はある。だったら、光粒をやる技術がないなら別の方法でもよかった。
それをいうなら、『宇宙戦艦ヤマト』から、母星が壊れそうなら近くに巨大船・スペースコロニー作ればいい、という、以前に居住可能惑星主義で議論した問題がある。
とはいえ、居住可能惑星主義をいうなら、『現実』でスペインイスラム帝国と鄭和後の中国が、船を作れ科学技術はあるのに海を超えない生き方を選んでいました。
エンリケ航海王子からコロンブス、そして大航海時代。それは、損得よりも、圧倒的に十字軍精神という集団的な精神・目的・制度でした。
エンリケ航海王子自体、ものすごく十字軍にこだわる狂信的な人でした。そして常に、未踏の地を見つけ、そこの人を奴隷にして改宗させることを、教会は強く命令しました……十字軍の延長として。
そのような、集団を擬人化して言うなら強い目的意識が侵略をさせる、それがなければ侵略はない?
また侵略自体、とても儲かって集団を結束させることもある……ハルドゥーンのアサビーヤ。それも侵略が限度を超えると、様々な損が目立って帝国が自壊する。
人類は何を目的にしますか?
壁が見えていますか?壁を破りますか?それでどこに行きますか?
侵略する先がありますか?あったとしてそれは儲かりますか?それとも神の命令ですか?
それとも、実際には今の人類には、それこそ極右・リベラルに対する憎悪・価値観しか目に入りませんか?
もしかしたら、そんな言葉は無意味かもしれない。集まった人類が意思決定する、それは言葉とは無関係かもしれない。制御できないかもしれない。
一人一人の人は何を見ていますか?何を考えていますか?どうしますか?