「意味が分かると怖い話」の中の「戦争に行った息子からの電話」が元ネタなんですが、しばりんぐさんの短編を読んだら私も無性にこのネタの話が書きたくなりまして、しばりんぐさんの許可を得て(というよりは「好きにして良い」というような事をメッセージされて)書いてみました。
【古龍観測隊】から【ドンドルマ】に【古龍】が近付いているという連絡を受けた【大長老】は、「速やかに迎撃の準備をせよ!」と、各ハンターや【
彼らだけでなく、住民達も避難したり残る者らが家の窓に頑丈な板を打ち付けるなどして大わらわになっている中、田舎の村に手紙を書いているハンターがいた。
『父さん、母さん。僕はこれから【古龍】迎撃に向かいます。
なあに心配は及びません。心強い仲間がいますし、【
前にも話した通り、【古龍】は一頭で天災クラスの被害を被る【モンスター】です。
僕が村の専属ハンターだった時、村に【クシャルダオラ】が来たのを覚えてますか?
あの時はかなり苦戦し、勝ちはしたものの死闘になって、僕は生死の境を彷徨いましたね。
ですが、今回はあの時とは違います。僕もあの頃よりかなりランクが上がり、誰もが苦戦するような【モンスター】を狩る事も任されるようになりました。
【古龍】も狩場で報告されたものを何度か狩った事があります。
もちろん過信はしておりません。【彼ら】の存在は自然の理と同じ。その自然現象を我が物にして攻撃するかのような能力は、脅威でしかありません。
ですが、僕は負けるつもりはありません。
もし討伐出来なかったとしても撃退にまでは持って行くつもりですし、村を護ったあの時のように、今回も街を護り抜くつもりです。 この仕事が終ったら帰るつもりでいますので、土産話の武勇伝を楽しみにしておいて下さい』
手紙を受け取った父親は、村中の人々に自慢して回った。
元々専属ハンターだった彼が街では大活躍をしていると知って、村民も「帰って来たら盛大な歓迎会を開いてやろう」と盛り上がった。
彼は筆まめな方で、それまでも何度も手紙を寄こして来ており、折に触れて父親から話を聞いていた村民は、父親同様家族のように思っていたからである。
ただ、母親は彼の身を心配していた。
【ハンター】という職業の過酷さを、彼が専属ハンターだった頃からずっと見ていたからである。
我慢強い彼は大怪我をしても気丈に振る舞い、母親だけに苦痛を訴える事があったのだ。
それから何故かパタリと連絡が途絶え、数ヶ月経った頃にようやく手紙が来た。
心配で胸が張り裂けそうになっていた母親が喜び勇んで封を切ると、こんな事が書かれてあった。
『連絡が遅れてすいません。結論から言いますと、【古龍】は無事に討伐もしくは撃退され、街を護る事が出来ました』
ここまで読んだ母親は歓喜に咽び、一緒に顔を突き合わせて手紙を読んでいた父親や村民は一斉に歓声を上げた。
『ですが、街の被害は甚大で、復興のために連絡が出来なくなっておりました』
連絡が途絶えた事の理由が分かり、その場にいた全員がさもありなんと納得した。
『町民だけでなく大切な仲間や【
皆は彼の心境を慮って心痛な表情になった。
『僕も長い療養生活をおくる事になりましたが、今はもう大丈夫です』
皆はホッと胸を撫で下ろした。
『ですが、僕の大事な狩り友が、両足切断の大怪我を負ってしまいました』
「それは可哀想にねぇ……」
「もうそいつは、ハンターとしてやっていけなくなったんだなぁ……」
皆は、そう同情した。
『彼は街で知り合って意気投合し、ずっと一緒に狩りをするようになった仲です。親友と言っても良い。そんな彼を、これからも助けてやりたいのです』
村にいた頃から彼の優しさを知っている皆は、彼ならそうするだろうなと言い合った。
『そこで、彼を引き取って、村でずっと面倒を見てあげようと思っています。今度帰る時に一緒に連れて帰ってやりたいので、その許しを得たいのです。父さん、母さん、お願いします。彼を連れて帰っても良いでしょうか? 村長さんや村の皆とも話し合って下さいませんか?』
それを読んで彼の両親も村長及び村民も、皆ざわざわとし始めた。
話し合いの末、「気持ちは分かるが一生の面倒は難しいのではないか」との結論になった。
そして、その旨を手紙にしたためた両親は、それを息子の元へ送った。
それから後、再び連絡が途絶えた事に心配していた両親の元へ、息子の死体が届いた。
彼らが見たものは、無残に両足を引き千切られた、変わり果てた姿だったという。
その両足には治療の痕があり、回復はしていたようであったが、死因は自殺であった。
手紙での彼の真意を知った全員が、その場で泣き崩れたという。
既出ですし、面白味が無いかもしれませんが、無性に書きたくなったんです。