迫りよる巨大な地獄
「…三輪」
「申し訳…ありません」
開口一番、城戸正宗は三輪の名を呼んだ。
「怒るつもりは無い。お前は痛手を負わせた。よくやった」
「いえ、近界民を全て倒すのが俺の…」
「過ぎたことだ。…それでは本題に移る。林道支部長」
「はいよー。じゃ、千佳ちゃん。頼んだよ」
「は、はい」
玉狛支部の雨取千佳が前に出てきた。
「近々…というより、もしかしたら今日、近界民が来るかもしれません」
(そうか。予知能力)
なら、なぜ奴らの時は反応が無かった…?
「さて、君が言ったからこんな大規模な緊急会議を開いたのだが、何があるのかね?」
鬼怒田開発室長が千佳に訊いた。
「はい、今までにないほど強大な反応がするんです。もしかしたら
「それは困るな…。鬼怒田さん、対応できますか?」
忍田本部長が質問した。
「できる。だが、時間がかなりかかる。イルガー五体の自爆を耐えるのにはおよそ5日。それ以上なら…」
「では、至急取り掛かるように」
「分かった。開発室、聞いておったな!すぐ取り掛かれぃ!」
『了解しました!』
鬼怒田の席にあるであろうモニターから威勢のいい声が聞こえてきた。
「では、この場は解散とする。連絡があれば後に伝える」
「じゃあ三雲くん、千佳ちゃん行こうか」
「千佳?どうした?」
修が千佳の異変に気がついた。
「近界民…。来ます!」
ザワザワッ!
司令室内がざわついた。
直後、緊急警報が鳴り響いた。
――
「これは…!」
デカすぎる!
街ひとつを覆い尽くすくらいの巨大な丸く黒い物体が出現した。
中からは龍の形をした、同じく街ひとつを覆い尽くすであろうトリオン兵が出現した。
「き、緊急警報を発令しろ!」
「はい!」
――緊急警報、緊急警報。巨大な近界民の出現を確認しました。街の住民の方は至急、できる限り遠くに避難してください。繰り返します…――
「各正隊員に告げる!緊急司令だ!至急防衛に迎え!隊の隊員が全員揃わなくても構わん!これは
城戸司令が三門市全体に放送した。
「三門市役所ですか。こちら界境防衛組織、ボーダーです!近隣の市町村に伝達してください。三門市付近に住んでいる方は至急遠方へ避難してください、と!」
沢村本部長補佐が近隣の市町村に避難を勧告している。
「千佳、行くぞ」
「うん。でも、遊真くんは?」
「空閑は既に戦っているだろう。それにさっき、城戸司令が黒トリガーの使用を許可してた。いま、空閑は『玉狛第二』じゃない。1人のS級隊員だ。空閑のことは気にするな。行くぞ」
「分かったよ」
「「トリガー
2人の身体がトリオンでできた戦闘体に切り替わった。
「陽介、レッドとリーフを迎えに行きたい。すまないが、先に向かっていてくれないか?」
「分かった。白チビ行くぞ」
「了解。『
2つの印が出現した。
「じゃあ待ってっかんな!」
「おう!」
さて…。
(レッドは南、リーフは南南西か…。2人が比較的近くて助かった)
「ピジョット」
腕の召喚機からボールを取り出し、空に向かって投げた。
中からは大きな体の鳥ポケモンが飛び出した。
「レッドの所に行くぞ!『そらをとぶ』」
その場から飛び上がり、南へと向かっていった。
「レッド!」
「……!(グリーン…!)」
レッドは瓦礫に寄っかかって、座っていた。
「傷、大丈夫か?」
『大丈夫だよ。少し痛むけど、オボンのみをいくつか食べたら回復したよ』
召喚機に入力し、会話を成立させた。
「そうか。なら良かった。…早速本題だ。アレと戦うんだが、大丈夫か?」
グリーンが「アレ」と言い、指さしたのは巨大な龍の形をした「ナニカ」だった。
『なんだアレは!?』
「人々に害を成す存在らしい。さっき聞いた」
『害を成す…』
レッドは少し考えたような仕草を見せた。しかしすぐに了承の意を示した。
「そうか。じゃあ次はリーフを助けに行く。行くぞ」
レッドはリザードンを繰り出し、空を飛んだ。
「リーフ!」
ㅤリーフの腹は貫通し、地面が見えている。
「レッド!ふっかつそうを出せ!早く!」
ㅤ召喚機に何かを入力し、緑色のスムージーのようなものが入った瓶を取り出した。
「既にすり潰してあったか!流石だな、レッド!」
ㅤレッドからそれを受け取ったグリーンはそれをリーフに飲ませた。
「くそ、早く…ポケモンじゃなきゃダメなんてことは無いだろ…死んでないだろ…まだ『ひんし』のはずだ…早く…早く…」
ㅤこんなに焦っているグリーンをレッドは見たことがない。ポケモンリーグのチャンピオンだった頃もグリーンは残り一体って状態でも冷静でいた。やはり、人が死に瀕している時は焦るものなのか。
ㅤすると、リーフが咳をした。
「ゲホッゲホ」
「リーフ!」
「あれ、私…」
「細かいことはあとだ!体は大丈夫か?動けるか?戦えるか?」
ㅤ怒濤のように質問を浴びせた。
「え?私はちょっと辛いけど、ポケモンにならなんとか…」
「わかった。今すぐピジョットに乗れ。アレと戦うぞ」
ㅤ同じ説明、同じことを再び繰り返した。
ㅤその結果、
「分かったよ。私も戦う!」
「無理しない程度にな」
ㅤということになった。
ㅤ3人揃ったレッドたちはすぐにトリオン兵の元へと向かった。