弟と一緒に地球という人外魔境に送られた下級戦士だけど何か質問ある? 作:へたペン
参加者全員が予選を無事突破し、鶴仙流の天津飯という三つ目の男と餃子という白い肌の小柄な男も当然ながら予選を突破している。
パンプットというよくわからない選手以外の戦闘力は軒並み200前後と戦い方次第で誰が勝つかわからない。
技術的には亀仙人が飛び抜けているが、カカロットは戦いのセンスがあり実戦で成長する。
クリリンは器用な立ち回りを覚え始めたし、ヤムチャは技術面で荒いところが目立つが一撃入ればどこからでも狼牙風風拳に繋げられる連撃の柔軟性を持つ。
多少の戦闘力の違いは戦闘に影響を及ぼさないと思った方がいいだろう。
臨時アルバイトする予定だった選手用の食堂に謝りに行ったら、試合に出てくれた方が観客も喜ぶと逆に応援されてしまったのだから、その声援に応える為にも情けない試合は出来ない。
出場するからには優勝するつもりで頑張るとしよう。
くじ引きでの対戦の組み合わせは、ヤムチャと天津飯、私とジャッキー・チュンもとい亀仙人、クリリンと餃子、悟空とパンプット。
ヤムチャと天津飯、クリリンと餃子はくじ引き前に軽い言い合いをしていた。
選手がくじを引く度に餃子が不自然に手をかざし指を動かしていた事から、何か特殊能力で抽選を操作した可能性がある。
餃子の行動には注意を配った方がいいかもしれない。
そして第一試合ヤムチャ対天津飯はヤムチャの猛攻から始まった。
開幕ヤムチャの飛び蹴りを天津飯は左手で防ぎ右手を突き出して反撃をしてくるが、ヤムチャはそれを飛び蹴りの態勢のまま右手で払いのけ、そのまま体を捻り回し蹴りで天津飯の態勢を崩す。
「新狼牙風風拳!!」
今の攻防で天津飯が実力者だと判断したヤムチャはまだ相手が様子見をしている内に攻められるだけ攻めておこうと、回し蹴りから直接つながる空中起点からの狼牙風風拳を仕掛けた。
連撃で責め立てるが天津飯は倒れないよう足を踏ん張り、5発目からは攻撃を防ぎ始め、50発目の攻撃となると下半身に攻め入る隙があると判断して下から掬い上げるようなボディーブローでカウンターを狙う。
だが足元が留守になりがちになるのは既に私が指摘している弱点だ。
ヤムチャはあらかじめ足蹴りなどの攻撃を警戒していたようで、連撃の動作から攻撃に転じた僅かな隙をついて流れるように後ろに回り込み後ろ回し蹴りで天津飯を蹴り飛ばした。
吹き飛ばされる先は場外だが流石に簡単には勝たせてくれないようで、天津飯は苦痛に顔を歪ませながらも空中で停止して舞台へと戻って来る。
「くそ! こいつもキャロットと同じで飛べるのか!! 今ので決まったと思ったのにしぶとい野郎だぜ」
「ふ……ふふ……」
「なにがおかしい?」
「いや、嬉しいだけだ。お前のような奴が居たなんてな。この俺がわくわくするなんてな。こんな事は初めてだ。お礼に良いものを見せてやろう」
「いいもの、だと?」
「俺の本気をな!!」
天津飯はどどん波をヤムチャに放ってそれを避けさせると、勢いよく地を蹴り追撃しに行く。
ヤムチャがそれを迎撃しようと拳を突き出すが、どうやら突撃してきたのは天津飯の残像拳によるフェイントだったようで、天津飯本人はヤムチャの間合いの外で立ち止まり妙なポーズを取っていた。
「鶴仙流、太陽拳!!」
天津飯から放たれるのは気の放出による光。
選手控え室の外から覗き見していた私達も目が痛む程の眩い光だ。
至近距離で食らってしまったヤムチャはしばらく目を開けてはいられないだろう。
「強烈な閃光を放って目を眩ませ天津飯選手の猛攻だ!! だがしかし!! ヤムチャ選手倒れない!!」
審判の実況ではやはりヤムチャが押されているようだ。
私達が目を開けられるようになった頃には、ヤムチャはダメージの蓄積で足元がふらつき始めていた。
「卑怯な技使いやがって……」
「ぬるい亀仙流と違って鶴仙流は相手を殺す事に特化している。流派の違いは大きかったな」
「だったら、とっておきをお見舞いしてやるぜ!!」
ヤムチャも目が見え始めたようで、一度天津飯から距離を離す。
もうヤムチャに勝ち目はないと思っているのか、天津飯は追撃しようとはしない。
ヤムチャは相手の態勢も崩さずにかめはめ波を撃つつもりなのだろうか。
だとしたら避けられるか防がれるかして余計な体力を失うだけだ。
「繰気弾!!」
ヤムチャは片手に気を集中させ圧縮された気の弾を作り出す。
当たれば確かにかなりのダメージになるとは思うが、やはり単発として出す技というよりもトドメの一撃用の技である。
案の定、高速で放たれる繰気弾を天津飯は余裕をもって避けた。
だがヤムチャの目はまだ死んでいない。
それどころか口元がにやけている。
ヤムチャが右手を動かすと繰気弾はヤムチャが右手を動かした方向に曲がった。
「つっ!!」
高速を保ったまま急に曲がった繰気弾を天津飯は再び回避するが、その表情にもう余裕はない。
高威力高速度を保ったまま自由に操れる気弾。
確かにとっておきの技と言ってもいい性能だ。
だがこの繰気弾は致命的な弱点を抱えている。
天津飯もその事に気付いてしまったようで、避けながらも指先をヤムチャに向けた。
「貴様の負けだ!! どどん波!!」
今のヤムチャの練度では繰気弾を動かす事に集中し過ぎて他の行動をほとんどとれないのだ。
普段なら避けられたであろうどどん波に吹き飛ばされヤムチャは場外に落ちてしまった。
新しい技の性能を過信し過ぎたヤムチャの敗北である。
気の概念を教えた事でヤムチャが早期に繰気弾を開発しましたが、また技の荒さが目立ってしまったようです。
そして太陽拳はやっぱり強いと思います。