亜種異聞帯HAL 夢幻忘却企業ハルトマン・ワークス・カンパニー 作:りおんぬ
原作:Fate/Grand Order
タグ:残酷な描写 クロスオーバー Cosmos in the Lostbelt 星のカービィ ロボボプラネット 擬人化 オリジナルサーヴァント
《OK・READY・>》
《3──2──1──GO!!・>》
『機械仕掛けの獣』『狂った金持ち』『全世界キカイ化計画』『桃色のゲンジュウミン』『銀河最強の騎士』『暗黒の復刻』『FATAL ERROR』
『初めましてございます、皆さま。ご機嫌の程は如何で御座いましょう』
その通信は突然繋がった。
魔術的・科学的問わず、各異聞帯はおろか現在進行形で虚数領域を航行しているシャドウ・ボーダーにまで、だ。
突然の事態に、クリプターや旧カルデア職員が慌ただしくなる。
そうしている間にも、通信は継続している。不可解なことに、どんな手段を講じても通信遮断ができないのだ。
その原因は、他ならぬ当人によって暴露される。
『ああ、言っておきますが通信遮断は無意味です。すでにあなた方の通信は系統を問わず我々がアクセス権を奪取致しましたので』
その言葉は、様々な波紋を呼び起こした。
あるいは驚愕。あるいは唖然。あるいは焦燥。あるいは興味。
そんな下々の反応など知ったことではないといった様子で、通信の主──鮮やかなピンクの髪をした女性は続ける。
『さて、申し遅れました。ワタクシ、ハルトマンワークスカンパニーにて秘書を務めさせて頂いておりますスージーと申します。おそらくこれが最初で最後の挨拶となりますので以後お見知りおきはせずとも結構です』
一礼。
そして、彼女がカツンとヒールを鳴らしながら一歩横にずれると、そこには驚きの光景が広がっていた。
それは……
『地球には、「魔術」「聖杯戦争」「サーヴァント」などという技術が存在すると聞きました』
キリキリと、周りに取り付けられた歯車を噛み合わせる黄金の盃。
そう、それは──まぎれもなく、聖杯そのものだった。
『こちらは、我々ハルトマンワークスカンパニー謹製の聖杯──形式番号SN-UBW-666「ホーリーグレイル」。魔術というものが元来持ち合わせている
ありえない、と誰かが叫ぶ。
そう、聖杯とは数多の魔術技術、その粋を集めて結晶化させた、まさしく魔術の歴史そのものなのだ。おいそれと再現を、しかも一切神秘の絡む余地がない科学技術で再現なぞされてたまるか。
かのアインツベルンでさえ、その作成には無数のホムンクルスを食い潰す必要があったという。
だが、現実としてそれは目の前に確かに存在している。
スージーは通信相手の反応を見て、クスクスと笑いながら言った。
『……ふむ。その様子では、皆さま見た目だけの紛い物と疑ってらっしゃる様子。大変結構、この手の旨い話には裏が付き物ですからね』
──ですが。
パチン、とスージーが指を鳴らす。
『これは紛れもなく聖杯そのもの。御覧に入れましょう、これがその確固たるご証拠にございます』
そういって、彼女は懐からタブレット端末を取り出し、ポチポチと弄り始めた。
それに呼応するかのように、機械仕掛けの聖杯が光を放ち始める。
そして、膨大な光の奔流が画面を埋め尽くした。
それは見た者すべての視界をホワイトアウトさせ、文字通り視界のテロのような状態を生み出していく。
やがて、ホワイトアウトしていた視界が回復する。
そこには衝撃的な光景が広がっていた。
『……サーヴァント・キャスター。私の名はポール・ディラック』
姿を現したのは、
それが、老人にも若者にも、男にも女にも、憤怒にも喜悦にも聞こえる声を生み出している。
今度こそ思考がフリーズした通信相手をよそに、ドロドロ──キャスターとスージーは言葉を交わす。
『……それで? 私のようなひねくれものを呼び出したマスターは君か』
「ええ、当然です」
『そうか。用があるなら呼んでくれ、数式の証明くらいなら手を貸そう』
そう言って、キャスターはさっさとどこかへ行ってしまった。
その様子を見届けたのち、スージーは通信画面へと向き直り、ある宣言を行う。
即ち──宣戦布告、略奪開始の宣言だ。
『これより、我々ハルトマンワークスカンパニーは、ヤバンなゲンジュウミンたるあなた方へ向けて宣戦布告いたします。降伏・講和の期限は一週間後を期日といたしますので、どうか前向きなお返事を期待しております』
その言葉を最後に、通信は一方的に切断された。
それと同時に、どうしようもない衝撃が地球そのものを揺らがす。
震源は南極──だが、直接の原因はほかにある。
その原因とは、
圧倒的なその威容は、まさに
さらに、どうやらこの星そのものが疑似的な異聞帯の要──空想樹としての役割を果たしているらしく、見る見るうちに南極は機械仕掛けの無機質な大地へと変貌していく。
……斯くして、地球にはありえざる八番目の異聞帯が姿を現した。
異聞深度など計測する必要もなく
その名は『夢幻忘却企業 ハルトマン・ワークス・カンパニー』。
そして、その異聞帯のカギを握るのは──
「……ぽよ?」
──いったい何者か。
チョイ役サーヴァントのマジメ解説
真名:ポール・エイドリアン・モーリス・ディラック
クラス:キャスター
性別:男性(※1)
身長:不定
体重:???kg(虚数値のため表記不可)
属性:混沌・中庸
出典:史実
地域:アメリカ
イメージカラー:黒
(※1本文中に出てきた少女は宝具で形作った端末のようなもの)
【ステータス】
筋力:E 耐久:D 敏捷:E
魔力:EX 幸運:C 宝具:EX
【クラススキル】
陣地作成[EX]
「魔術師」のクラス特性。魔術師として自らに有利な陣地な陣地「工房」を作成可能。
キャスターのそれは、戦闘行動に関連するものではなく、あくまで「研究室」である。むしろおっぱじめようものならマスター相手だろうと宝具も辞さない考え。
ランクがEXなのは後述の宝具の性質に依るところがきわめて大きい。
道具作成[E]
魔力を帯びた器具を作成可能。
キャスターは物理学者であって魔術師ではないため、道具なんぞ作らないし作れない。このスキルはキャスターだからという理由で押し付けられたにすぎず、実際彼がまじめにこれを行使したとしても数式研究用の文房具一式を作るのがせいぜいである。
【保有スキル】
高速詠唱[E]
魔術の詠唱を高速化するスキル。一人前の魔術師でも一分は必要とする大魔術の詠唱を半分の三十秒で成せる。
キャスターは数式の解読・読み上げの時のみこの技能を発揮する。
術理解明[C]
術式と呼ばれるおよそ全ての式を解明し、これを修復する技術。
魔術だけでなく破損してしまった魔術回路・魔術刻印まで修復する。
ただし、キャスターの持つそれは数学的方面にしか効果を発揮しないため、事実上の死にスキル。
一意専心[A+]
一つの物事に没頭し、超人的な集中力を見せる。
キャスターの場合、高速詠唱や術理解明などと同じく数学に関連した事象でのみこのスキルをいかんなく発揮する。……たとえその先に待っているものが、無理解と嫌悪による孤独と破滅だろうとも。
無辜の怪物[D]
生前の行いからのイメージによって、後に過去や在り方を捻じ曲げられ能力・姿が変貌してしまった怪物。本人の意思に関係なく、風評によって真相を捻じ曲げられたものの深度を指す。このスキルを外すことは出来ない。
キャスターは「生涯を通してほとんど喋ることがなかった」という逸話から、半ば以上喉が潰れているため、言葉を発することが困難になっている。
【宝具】
『
ランク:EX 種別:対人宝具
レンジ:不明 最大捕捉:10^40人(※2)
(※2あくまで本人の主張であり、確認手段がないため事実上の「無制限」となっている)
ディラック・イクウェイション。
その正体はかつて彼が提唱した『ディラックの海』そのものであり、そしてほかならぬ『キャスター』ポール・エイドリアン・モーリス・ディラックその人。かつて絢爛たる蒸気の世界を夢想した者と同じような状態になっている、といえばわかりやすいか。また、形や体積は自由に弄れるため、体の一部を切り離して形を整えて使い魔のように扱うことも可能。
負のエネルギー、反粒子の具現化というその性質上、狙ったところで対消滅を起こすことが可能。ただし威力は制御できない上に自身も霊核がダイレクトに被害を受ける可能性があり、しかも彼を構成するエーテル体そのものが宝具に変質しているために『
総じて、極めて扱いどころに困る厄介な宝具となっている。