穂乃果ハッピーバースデーチカ!

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高坂穂乃果生誕祭2018Ⅱ

絢瀬絵里は苦悩していた。

彼女ほどの成績優秀者でも知恵熱を出すほど、深刻な悩みだった。

幸い学校は夏休みで授業は無いのだが、もし授業があれば教師に体調不良を心配された事は想像に難くない。

その悩みとは、

「穂乃果への誕生日プレゼント、何がいいのかしら……」

だった。

「穂乃果が好きなモノと言えば、パン……? でもそれはいつも食べてるし、高級や限定なパンはそもそも入手が難しいわよね……」

ブツブツと呟きながら、練習帰りの道を行く絵里。

「化粧品とか? でも好みの問題がありそうだし、そもそもあの子はそういう事にあまり興味無さそうよね……」

「──りちゃーん」

「お菓子……は少し芸が無いわね。手作りなら別だけど、私はことりほど上手じゃないし……」

「──えーりちゃん」

「ペリメニなら作れるかしら? でも穂乃果が好きかは分からないし、プレゼントとして喜ぶかは微妙か……」

「おーい、絵里ちゃんってば」

「本人に訊いた方が早いのかしら……。なるべく自分で何とかしたいけど……」

「ぅ絵里ちゃんっ!」

「はいっ⁉︎」

耳元で出された大声に、絵里は思わず背筋を伸ばした。

「……って、穂乃果……?」

振り返ったそこには、ぷっくり頬を膨らませたリーダー。

「どうかしたの?」

「それはこっちのセリフだよー! 何度呼んでも返事してくれないし、何か小さく言ってたし!」

「ご、ごめんなさい。ちょっと考え事をしてて」

不機嫌な顔も可愛くてつい頭を撫でたくなったが、原因は自分だと思い出し自重する。

「穂乃果がどうとか言ってなかった?」

「それは……」

変な所で地獄耳だ。

「絵里ちゃん?」

そんな目で見ないで欲しい、と絵里は思った。純真無垢な深いブルーの瞳。誤魔化すのは簡単だが、隠し事はできない瞳。

「……穂乃果、今日誕生日でしょ?」

「あ、うん。そうだよ。さっきはみんなでお祝いしてくれて、ありがとね〜。穂乃果、すっごく嬉しかった! でも、穂乃果の誕生日くらい練習休みでもよくない⁉︎ ホント海未ちゃん頑固なんだから!」

話し足りなかった事を全部話すが如く、穂乃果は次々に言葉を紡ぐ。絵里はそれを苦笑しながら聞き流すと、

「だから、誕生日プレゼントをどうしようか悩んでて」

「絵里ちゃん、穂乃果にプレゼントくれるの⁉︎」

パッと輝く表情。本当に分かりやすい。

ナデナデと。無意識に頭を撫でてから、絵里は我に返る。

「でも、何にすればいいか決まらないのよ。穂乃果、何か欲しいものとか、ないかしら?」

「絵里ちゃんがくれるものなら何でも嬉しいよ?」

「この子は本当にもう……」

キョトンと返された言葉に、絵里は小さく息を吐く。

「穂乃果は本当に無欲ね。羨ましいわ」

「えー? そんな事ないよぅ。パンいっぱい食べたいし、雪穂に生意気言われないようになりたいし、絵里ちゃんみたいなすっごい頭脳が欲しいし!」

それを無欲って言うのよ、と絵里は笑顔で言葉を飲み込む。

「そんな穂乃果が、特に欲しいものって無いかしら? 穂乃果に喜んで欲しいのよ」

「欲しいもの、かぁー……。うむむ…………」

腕組みをして悩む穂乃果。

「欲しいもの、欲しいもの……。うーん…………」

そして今度は、頭を抱え出す。

「う〜〜〜ん…………。う〜〜〜〜ん…………」

あまりの悩みっぷりに絵里が発言を撤回しようと口を開いた時、

「あの、穂乃果? そんなになや──」

「──絵里ちゃん!」

「えっ?」

キラキラした笑顔で、まっすぐ見つめられる。

「穂乃果、絵里ちゃんが欲しいっ!」

「え、えええっ⁉︎」

「……ダメ?」

捨てられた子犬のような目。

可愛い後輩のお願いだから何とかして聞いてあげたいけど予想外すぎて対応に困るというかそもそも破天荒な穂乃果の行動に予想つくはずもなくてプレゼントは私みたいな事をまさか自分がやる事になるなんて思いもしなかったわでもこの子の面倒を見られるならそれも悪くないというかそんな現実離れした話を考える前にまずは落ち着くのよエリーチカ。

「穂乃果いつもお姉ちゃんだから、絵里ちゃんみたいなカッコいいお姉ちゃんの妹になりたかったんだ〜。亜里沙ちゃんが羨ましくて。だから、明日一日だけでいいから穂乃果のお姉ちゃんになって!」

「へ?」

思考をフル回転させていた絵里は、穂乃果の最後の一言で我に返った。

「あ……そういう事ね」

「ね〜お願い絵里ちゃ〜ん」

おねだりする子犬のように、見上げてくる穂乃果。尻尾が見える気がする。

断れる訳がないのだ。

「もう……仕方ないわね」

頭を撫で、“明日だけじゃなくていいのよ”という本音を我慢しながら、

「明日だけよ?」

そう口にした。

「やったぁ! 絵里ちゃん大好き!」

太陽のような笑顔を浮かべて、ハグをかましてくる穂乃果。流石に慣れた絵里は、それを優しく受け止め、

「もう、甘えん坊ね」

微笑みながら、頭を撫でた。


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