「ふぁぁ…ねむ…」
屋敷の中で、俺はあくびをしていた。
…正直、こんな平和な生活してていいものなのか…とは思っている。というのも、俺と『煩悩の姫』は、たまに行われるイベント以外では、このように屋敷でのんびりしている。『姫』の方は、ギルドに入っていて、サブマスターになっているものの、1週間に数回程度、ギルド勧誘するぐらいなのである。
しかも、この屋敷には、滅多に人は来ない(来るのは『姫』のギルドのマスターさんか、『姫』の熱狂的なファンの魔剣使いぐらい)ので、正直言って、「暇」なのである。
「アクタル…お茶いれて…」
『姫』が気だるそうに言う。どうやら、ギルド勧誘をしても、人が来なくて落ち込んでいるようだ。
「はいはい…今いれますよっと…」
俺がこう言った時に、ドアノッカーの鳴る音がなった。誰か来たようだ。
「すいません、姫様。お客様が来たみたいなので、後でよろしいでしょうか…」
「むぅ…仕方ないですねぇ…。…ちょっとお客さんの対応をしていてください…。私、まだ準備が出来ていないので…」
「分かりました」
『姫』が自身の部屋へ急いでいったのを確認した後、俺はドアを開けた。しかし、そこに立っていたのは、いつもとは違う見慣れない顔の男であった。しかし、俺…いや『姫』も知っている人であった。俺が気づいたのは、男の隣にいる女性…いや「魔剣少女」、あれは確か…『魔剣グラム』。俺らが知っている中で、『グラム』を使う魔剣使いといえば…あの『トロイア討滅戦』の時に戦った、あの『ジャガーノート』使いの男ぐらいだ。
…あの人が、何故こんな場所に…
「久しぶりだな、『煩悩の騎士』。この前は世話になった。」
…なんだ?俺たちに皮肉を言いに来たのか?
しかし、今の俺には、『三池典太』も『戦槍ミネルヴァ』も…『小狐丸』も手元にない。それに対し、相手は『グラム』を顕現させ、多分『ジャガーノート』もいるのだろう。つまり、今、攻撃されたらひとたまりもない。相手に敵対心が無いのを願う…
「…安心してくれ。こちらに戦う意思はない…」
良かった…。本当に敵対心無くて良かった…。
「…あ、これつまらないものですが…」
相手はそう言って、菓子折りを渡してきた。…意外と軽い。
まぁ、前に敵対したとはいえ、客人は客人だ。屋敷内に入れなければ、非常識ってものだ。
「…えっとぉ…、何しに来たのか分かりませんが…とりあえず中にドウゾ…」
「お邪魔します。…ところで主は…?」
『姫』はたしか…
「なんでしょうか?こんなとこまで尋ねてきたのは…」
出てきた。しかも、やけに真面目。まるで俺と初めて会った時みたいに。あの忘れっぽい『姫』でも、自分が苦しめられた人のことは覚えてるらしい。
「いや…、少し騎士殿と話したくてね…」
…俺と?何故?いやいや、『姫』と話がしたいなら分かる。でも、俺?
「…アクタルと?」
『姫』も不思議がって首を傾げている。そりゃそうだ。
「…つまり…その、『アクタルと話がしたい』が為に、こんなとこまで?」
…ん?『姫』のようすが…。なんかいつもと違う。珍しく戦闘モード。
…よく見たら、震えていた。虚勢を張ってただけだった。かわいい。
「いや、待ってくれ。何度も言うようだが、私に戦う意思はないんだ。…菓子折りの中身を見ていただければ分かってもらえると思う。それは私なりの『親睦の証』だ」
俺は、菓子折りを開いた。まぁ、軽かったし、こういうのの典型的な例、「石鹸」だろうと思っていたが、中に入っていたのは、なんとビックリ、ペ⚫シコーラではないか。
…第二魔界にもあるんだ、⚫プシコーラ。俺が元いた世界じゃ、俺もよく飲んでたけど、正直俺はコ⚫・コーラ派だ。
『姫』はというと、小声で
「テネプシコーラ?」
と呟いていた。違うそうじゃない。
…というか、その隣のはメ⚫トスじゃないか…。とりあえず、『姫』に小声で
「あー…このお菓子(?)と一緒に飲まないで下さいね。これと一緒に飲むと、お腹の中でBDが起こります…」
と言っておいた。『姫』も
「わ…分かりました」
と言っていたから大丈夫だろう。
「で…では…、そちらのテラスで…」
「…待ってくれ、私から提案がある。」
ん?なんだろうか…。客人がどこかに連れて行くようだ。
「…で、ここは?」
「ご存知ないか?ここは『リゾルタ海岸公園』だ」
…俺たちは、客人に誘われて、海に来ていた。まぁ、夏だ。海は来たかった。
『姫』が、頭に手を当てて困惑してる。
正直俺も困惑はしている。相手から提案されて、何故海なのか…
「分かりやすく言おう、ここは海だ」
「それは流石に分かる…」
「それは…分かりますわ…」
俺と『姫』は、さらに困惑した。
「…で、男子更衣室はあっちで、その反対側が女子更衣室だ。」
「…なぁ、なんでこんな場所に…」
「さぁ、行動開始だ!!」
相手が、そう言って俺の背を押し、『ジャガーノート』と『グラム』が『姫』の手を引いていった。『三池典太』が遅れて走っていくのも見えた。
『サービスシーンを書くと思っていたのか?残念、無しだ!』
「…お待たせしました…」
『姫』が恥ずかしそうに出てきた。フリルのついた水着を着ている。あと水着なのは…『三池典太』か。青色のビキニだったか。…というか、来た女性陣5人に対し、水着なのが2人という。『ジャガーノート』、『グラム』、さらに『ニルヴァーナ』も水着ではない。
「あの…『ニルヴァーナ』?さっきも言ったけど…せっかく海に来たんだからさ…」
『姫』がこう言うと、ニルは
「あるじぃ?もしかして、ニルが水着を着ること、考えてたなぁ?」
と言った。あちらでは『ジャガーノート』が
「あれれー?もしかして私が水着を着ると思ってたのですかー?」
と言っている。
「「救えないなー」」
ニルと『ジャガーノート』の声がハモった。やはり精神に攻撃してきそうな魔剣が2人いると…辛い。
「殿ー、早く行きましょうよー」
『三池典太』は無邪気に私の腕を引っ張る。
「…すまない、俺はこの人と話があるんだ」
俺はこう言って断った。
「さぁ…海の家にでも行こうか」
客人はそう言い、俺を海の家に連れていった。
「…騎士殿と『三池典太』は仲がよいようですな」
「…あなたと『ジャガーノート』、『グラム』ほどではないと思いますが…」
「謙遜しないでいただきたい。実際、あの時に、私は負けたのだから」
あの時は…『戦槍ミネルヴァ』だったが…まぁ、一緒にいるという観点から言えば『三池典太』との方が仲がいいのだろう。
「…んで、こんな場所にまで来て、私に話ってなんですかね?」
「あぁ…そうだな。騎士殿…」
客人がこう言った時、俺は警戒した。しかし、客人が続けた言葉はこうだった。
「騎士殿は、どの魔剣が好きなのか?」
は?なんで?俺は困惑した。
「…それは…どういう…?」
「言葉通りの意味だ」
…え?そんなこと聞きに、私に会いに来たのか…
「あ…あぁ、俺は…全魔剣をすこるんだが…」
『すこる』、これは『魔剣を好きになる』という第二魔界特有(?)の言葉だ。
「…そうか、私は…分かるようにジャガノ、グラム、ルナ…あとエンプレスに、ロールお嬢様がすこなんだが…」
客人が自身が『すこ』な魔剣を話し始めた。…『姫』なら「私はニルヴァーナをすこるよ!」とか言うだろうな…
「殿ー!」
『三池典太』が走って来ている。
「ん?どうしたんだ?」
「なんと、大典太ねぇ様からアイスを貰いましてね!」
「あー、あんま走るなよ。アイス落とすぞ」
俺がそう言った刹那、『三池典太』が人にぶつかり、アイスが相手の身体に落ちてしまった。
「あ、すみません!俺の魔剣が…」
俺がこう言うと、相手の方が『三池典太 』に
「すまねぇ、オレの身体がアンタのアイス食っちまった。今度は、これでもっと豪華なアイスを食べるんだな」
と言って、メダルを渡してきた。なに、このイケメン。キョクチョー?
あれから、時間が経ち、海に夕日が沈んでいく。
「…そろそろ帰りますか…」
「…そうだな…」
俺と『姫』は疲れきった声で言った。
「…あ、客人」
「…なんでしょうか?」
「…一応、俺らは、アンタのこと…信用することにした」
「そうですか…それは良かった」
…実際、この方とは、もう戦いたくないから…な…
…まさか、あの先生から「『トロイア討滅戦』のその後、書いていいですか?」と言われるとは…
あ、今回の作品は実質その先生とのコラボです。…私なんかでいいのかなぁ…。
今回は、私のネタを詰め込みたい欲から長くなりました。(作品書く欲が少なくなっていたのは内緒で…)
…というか、もうその先生が誰かバレる描写してるからなぁ…怒られないことを願う。