「────愛そうか、殺そうか……そ、その前に服はきちんと着ろ!」   作:佐折

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お久しぶりです。リアルが忙しくて放置気味になってました…。
そして読み返して気づきました。エースの格好が時系列的に合わないと。全体的にそこも編集しました。確認しなくても一応読めるようになっているはずです。間違いがあればご指摘ください。たまに作者の捏造設定ということがありますがそこはご了承ください。加えて前書き後書きも削除したものがあります。こちらは特に気にしなくても大丈夫です。
更新の遅い作者でありますが今後ともよろしくお願いします。



女王は楽しむ

私は普通の大学生だった。少し大人しめで読書が好きな、普通の女の子。優しい両親に気の合う友人。勉強はあんまり得意じゃなかったけど、それでも平均点は取れる。そんな、普通の大学生だったのだ。

 

なのに、何故私はONEPIECEの世界に来てしまったのか。それも、スカサハ=スカディという、この世界には存在しない女神の姿をして。

 

今頃、両親は心配してるだろうか。友人にも、借りていた本をまだ返してないのだが。あ、なんか今怒られた気がする。私の部屋でも適当に探しておくれ友人よ。

 

存外神様に嫌われてるかもしれない。今は私がその神様なんだけども。皮肉?皮肉ですか?スカディ様に非が無いのは分かってるけどちょっと神様恨みたい。

 

 

「いやぁ、まいったまいったー。まさか2発目食らうとは思わなかった!」

 

と、私が少しの現実逃避をしている間、テーブル越しに首を鳴らすエースが笑う。本当明朗快活だなこの人。

 

あの後、肌の露出に羞恥した私(の中にあるスカディ様の感性)が2度目のルーン魔術ぶっぱをしたのである。ノー無詠唱・ノータイム。元々ルーン魔術に詠唱は要らないらしいけど、常々抱く詠唱付き魔術のイメージが強かった私はなんとも言えない気分になった。雰囲気とか無いなルーン魔術。便利で助かるけど。

 

「すまなかったな。私は肌の露出をあまり好まぬ故、つい凍らせてしまった」

 

本当、つい、なのだ。条件反射とも言う。さすが神々に求婚されるだけある女神様。無垢なお嬢様感が凄い。

 

 

「いや、俺の方こそ悪かった。メラメラの実のせいか体温が高めだから服はあまり好きじゃないんだ」

 

そう言って、エースは着ているカットシャツを摘む。

 

実は普段から服は着てるらしいが、今居るこの島は比較的温暖らしく、耐え切れず散策中に脱いだとか。その間も手に持ってはいたが、露出が苦手な私は容赦なく凍らせたらしい。なんかごめん。

 

「そうか。難儀だな悪魔の実と言うのは」

 

海で泳げなくもなるし。私本来の姿ならともかく、スカディ様の容姿で溺れるとか想像したくない。美人がもがく姿なんてごめんです。そして悪魔の実無しでもこのスペックをくれたスカディ様感謝。足向けて寝れませんね。自分に足なんて向けないけど。そこは気持ちの問題ということで。

 

「まぁ慣れりゃどうってことは無い。それよりスカディはずっとここに住んでるのか?」

 

「いいや、数日前からだ。実の所私はここに流れ着いた漂流民でな。当てがあるわけでもない故、過ごしていただけだ」

 

しれっと嘘を混ぜる。漂流なんてしてません。

まぁエースが言う程暑いとは思わないが、暖かい気候の島だとは思ってる。もう少し気温が高ければスカディ様が溶けるだろうレベルで。

 

一応動植物には殆ど手を出してないけど、開拓(という名の城建築)をした手前、少しはこの島を知ってるつもりである。

 

けれど、島の外になれば話は別。周辺に何があるのかさっぱり。

ついでにここは何処にある島なのかも教えて欲しい。

 

というわけで、いつかは此処を出ようと思ってる。神の支配は間もなく幕を下ろすのでした。我ながら薄情な性格。

 

「そーなのか。んじゃ俺と来るか?」

 

そうそう、近い内に何処かに出ようと……え?なんて言った?

俺と来る?なんで?

 

「理由は?」

 

「んー…スカディの周りって涼しいんだよな。こう、冷気が体から出てるみたいな?お前と一緒にいると暑くなくてすみそうだ!」

 

「よし、凍らそう」

 

ちょっと期待した私の喜びを返せ。海賊勧誘の理由が「涼しいから」で通るか。通るわけない。確かに私はあまりONEPIECEに詳しくはないけど、そこまで馬鹿じゃない。前の世界で大学生、今はプラス女神様の教養付きである。昨今のセールス勧誘だってもうちょっと上手くすると思う。勧誘って大変。

 

「ちょっ、タンマ!タンマ!今のは冗談だって!いや、涼しいってのも本当なんだけどよ…」

 

「お前は本気で勧誘する気があるのか…?」

 

エースのクルー達よく着いて行ったな。こんな勧誘されたら私は行かない。

 

 

 

…待てよ。勧誘?クルー?

 

「エース、ひとつ聞いてもよいか?」

 

うんうん唸っているエースを向く。取り敢えず頭を抱えるな。イケメンが半額セール…はしてないな。何をしてもイケメンに映るのか、エースって。美形ってお得。え?それも違う?

 

「…なんだ?」

 

「お前の所属の名はなんだ?」

 

敢えて所属と聞いておく。彼の口から一言も海賊というワードを聞いてない。無人島に突如流れ着いた浮世離れ姿の女が海賊なんて物騒な言葉は似合わない。世間知らずの顔をしておく方がいい。

 

「ん?言ってなかったか?俺はスペード海賊団の船長だ!」

 

スペード…やっぱり。

 

「スカディ?」

 

ONEPIECEのエースと言えば“白ひげ海賊団”である。二番隊隊長で船の中では末っ子。親父であり船長の白ひげをこれでもかと敬愛しており、仇なす者は文字通り消し炭案件である。

 

そして……海賊王ゴール・D・ロジャーの実の息子。主にそれを理由に海軍に処刑された人物。

 

少し考えれば分かる事だった。エースは白ひげ海賊団がをいっとう大切だ。背中の刺青なんて最たる例なのに、今ここにいるエースはなんの躊躇いもなく服を着ている。帽子だってテンガロンではない。あぁやらかした……白ひげ海賊団に入る前のエースなんて知らないよ!スペード海賊団なんて名前くらいしか知らないよ!こんなことならもっと真面目に観るんだったなアニメ…。

 

「…やっぱ海賊は嫌か?お前、かなり育ち良さそうだし」

 

黙ってる私を“海賊を否定している”と思ったのかエースは項垂れた。こらそこ、捨てられそうな子犬の顔しない。もう1回氷像にしてやろうかイケメンめ。

 

「そうではない。まぁ育ちはどちらかと言えば良いのは否定しないが海賊が嫌いな訳では無い。ただ驚いただけだ。もっと野蛮なイメージがあったからな。今のお前を鏡に映そうか?とてもそうには見えんぞ?」

 

「え?まじ?俺の事怖くないか?」

 

「寧ろ現時点でお前が海賊だと信じる方が無理だな」

 

単身で島へ上陸。初対面の女を前に警戒心のけの字もないだらけっぷり。よもや勧誘。原作を知らなければ日本で育った私は商人か旅人くらいの認識だっただろうな。

 

「一応本当に海賊なんだけどな…」

 

「別にそこを疑っている訳では無い。言葉のあやだ」

 

「なんかスカディに遊ばれてる感じがする」

 

「正解だ。よく分かったな?」

 

「やっぱからかってたのかよ!」

 

ガリガリと氷の椅子を勢いよく引いて立ち上がったエースの顔は恥ずかしいやら怒ってるやら。なるほど、これが母性をくすぐる人柄か。すごく頭を撫でたい。

 

「まぁそのような瑣末は置いて続きを話そうではないか」

 

「……瑣末」

 

不服そうだが華麗に無視。弟のルフィの前ではちゃんと兄貴してるのに年上に囲まれると末っ子気質。スカディ様の記憶がある私にとって、エースは年下にしか映らない。つまり、頬を膨らませようが可愛いだけなのである。いじらしさ全開がまた良し。

 

まぁそれよりも今大事なのは、

 

「エース率いるスペード海賊団。少し見学してみようではないか」

 

勧誘されたら取り敢えず見学だよね。

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