~魔法少女リリカルなのはReflection if story~   作:形右

45 / 51

 ある節目(おわり)を越えて、少年少女は前へと進んでいく。

 長い長い夜の果て―――
 見出したものを胸に、更に未来へと足を踏み出した。

 そうして、失われたものや壊れたものを越えていった先にある、守り抜いた幸福(しあわせ)日常(じかん)を過ごしていく。

 ―――別れの(トキ)
 けれど、これは物語(みち)の終わりではない。

 これは物語の後奏曲であり、同時に明日へと捧ぐ前奏曲。
 終わりなき道の先を目指す決意や覚悟。それぞれの想いを込めた旋律が『絆』を謳い、旅路(さきのみち)を紡ぎ始める。

 そんな未来に込めた願いと祈りが、ここに結びを得たのだった―――





第二十六章 誓う願い、何時かへの約束

 取り戻した未来と絆

 

 

 

 ある夏の夜に起こった、一つの事件。

 

 遙か遠い星より始まったその連鎖を止めるべく、〝魔法使い〟たちはその事件へと立ち向かった。

 加速し続ける螺旋(あらし)に呑まれそうな、己が明日を守る為に。

 そうして巻き起こる嵐の最中。戦いの終わりを告げる華が、果ての空に咲いた。

 決着を歪ませたその華の先に、少女は夢を見る。自分自身の疵を確かめ、越えて行く為の『夢』を。

 

 裡に抱いていた痛みを経て、それでなお彼女が選び取った世界。

 これはそんな、長い長い夜の果てに―――ある少女の迎えた、旅路の節目(おわり)と、新たな夜明けの時間である。

 

 

 

 ***

 

 

 

 七月下旬。時空管理局・東京支部では、事件の事後処理が忙しく行われていた。

 とはいっても、これは事後処理の膨大さもさることながら、負傷者の治療の目処が立つまでに時間が掛かったという部分もある。漸く節目を迎えたに当たり、クロノたちもフローリアン姉妹を初めとした事件の関係者に対し、改めて聴取や今後のコトについて話せるまでに至った。

 だが、そうはいっても簡単ではない。

 今回の事件は関東全域が危険域に指定され、過去にあった二つの事件以上に大仰な案件(モノ)になってしまった。しかも、終盤に姿を見せたマクスウェルや、侵攻用『機動外殻』のもたらした被害は甚大。本来の首謀者(くろまく)であるマクスウェル所長はもちろん、事件の首魁と目されたイリスや、無断渡航者であるフローリアン姉妹についても、採決はそれぞれ重いものになるだろうコトが予測されている―――

 

 

 

「―――というのが、事件終了時における管理局の見解だったわけだが……」

 

 そう前置きして、クロノは聴取を行っていたフローリアン姉妹に向け、現在の見解を述べていく。

「確かに、地球に与えられた被害は甚大だった。しかし管理局は次元世界の司法機関であって、地球における司法とは、また別のものという位置づけになる。故に、此方が其方に問う罪は『無許可の異世界渡航』と、『管理外世界における別の技術の漏洩』についてだ。

 それらに加え、君たちが提供してくれた〝医療用ナノマシン〟と〝ヴァリアントシステム〟による負傷者や街に対する姿勢が認められて、君たち姉妹については厳重注意の上で監視対象から外す、ということになる。

 本格的な戦闘行為が結界生成後であったことから、死傷者が出なかったことがこの結果の一番の要因だ。戦闘被害についても、物質的なものについては〝ヴァリアントシステム〟による技術提供によって解決してくれたことが大きく関連している」

 ―――そう。基本的に『管理局』は、『管理外世界』に介入してはならないという不文律が敷かれている。次元世界を治める司法組織という理念の下に創設された『管理局』は、あくまでも次元世界のバランスを保つことが目的だ。

 その為、魔法やそれらに類似する技術体系の漏洩を阻止し、万が一漏洩した場合はその案件を速やかに解決することや、実際に被害が出た場所の修繕や魔法技術の秘匿を行うことが何よりも優先されている。

 つまり、管理外世界に敷かれた法と『管理局』の行う裁きは、全くの別なのだ。

 『正義』という目標の下にあっても、世界のバランスを保つことに尽力する姿勢は、端的に言って管理世界のエゴそのものだといえる。

 故に、

「……こんな結果だからこそ、敢えて最後にこう忠告しておく。この結果は、故意に罪状を軽くする司法取引と何ら変わらない。現場の僕らからの配慮や譲歩と言った情の部分が無いとは言わないが……あくまで、管理局側の思惑(エゴ)と、君たちの持つ技術(モノ)が釣り合った結果だということを、決して忘れないでくれ」

 クロノは、フローリアン姉妹へ向け最後にこの忠告を加えた。

 結果として事件は解決を迎え、魔法技術という体系の下で働く管理局員の中からしか負傷者が出なかった。

 しかも『フォーミュラ』と『ヴァリアントシステム』という技術体系を、容疑者の内にいる姉妹やイリスを泳がせる事で、今後も監査目的で輸入することが出来る。

 だから、管理外世界ではこれ以上事を荒立てない。

 第一世界であるミッドチルダが次元世界統治の中心である為に、そうした力をストックしておこうという思想に基づいた、管理外世界である地球への魔法といった技術の漏洩防止措置。

 『管理局』が選び取った選択は、とどのつまりそういうものだった。

 無論、アミタやキリエもそれは分かっている。同じように、こういった組織の姿勢を否定しないまでも、苦々しく思うクロノたちの心情も……。

 だからこそ、二人は静かに短く「はい」とだけ応え、与えられた『許し』の意味を心に深く刻み、飲み下した。

 しかし、まだ確かめていないことが一つ。

「―――あの、あたしたちはこれで終わりみたいですけど……その、イリスの方は……?」

 どうしても気がかりだったことが、一つ残っている。それを確かめるべく、キリエはイリスが受ける罰についてクロノに訊ねた。

 クロノの方も説明するつもりだったようで、キリエが切り出してくれた流れに合わせ、残された事柄を語っていく。

「結論から述べておくと、彼女が法の裁きを越える措置を受けることはない。

 事件の構想について彼女本人の意思が介在している可能性は指摘されているが、創造主であるマクスウェルによる操作と、〝ウィルスコード〟による思考誘導。これらの材料があれば、少なくとも彼女も遠からず釈放されることにはなる。だが、これも幾つかの条件が必要になる。

 彼女自身の意思はもちろん、彼女がエルトリアへの帰還を望むかどうかにもよる。そして、君たちが今後、彼女とどう向き合っていくのかということにも……だからいずれ、イリスと再会するまでに君たちの答えを決めておいて欲しい。それによって、僕らも彼女に対するアフターケアを変えていく」

「…………はい……ありがとうございます」

「本当に、何から何まで……ありがとうございました、クロノさん」

 アミタとキリエはクロノから告げられた事柄に対し、改めて礼を述べた。クロノは「構わない。先程のことだけ忘れないでいてくれるなら、それで良いんだ……」と二人にいうと、エイミィを呼んで今後の監視期間を過ごす二人の部屋の手配を任せる旨を伝える。

 やがてやって来たエイミィに連れられて部屋を出て、本局にある寮の空きまで案内して貰った。

「空き部屋だからちょーっと味気ないかもだけど、臨時局員の長期滞在なんかも視野に入れてるから、基本的な生活は出来るようにはなってるよ。もし分かんないことがあったら、あたしやシャーリー辺りに聞いてくれれば直ぐに教えられるからね~♪」

 そういってエイミィは二人に色々と本局のオススメスポットなどを教えると、クロノに呼び戻されて地球の支部へと帰っていった。短い時間ではあったが、明るい彼女のおかげで二人の多少沈んだ気分も幾分かは晴れていた。もしかすると、クロノはそういった意味(アフターケア)で自分たちの下にエイミィを寄こしてくれたのかも知れない。

 そんなことを考えながらアミタは手近にあったベッドに腰を下ろし、そのまま横になって天井を見つめる。ちらりと横目にキリエの方をみてみると、キリエもソファに身体を預け、仮想画面(モニター)に流れてくる映像をぼんやりと眺めていた。

 久々に姉妹揃って同じ部屋に居る割りに、どこか虚ろな沈黙が漂っていた。聴取を受けた疲れも無くはないが―――どちらかというとこれは、虚脱感に近い。

 

 少なくとも、自分たちにとってこれ以上無い終わりだ。

 

 姉妹揃って法を犯しながらも、故郷へ帰ることを許された。裏の思惑がどうであれ、彼女らが地球で出会った人々は情の深い人々ばかりで、内の何人かは命を託し合ったりもしたくらいだ。そうした人たちからの配慮は素直に嬉しい。……だから、今感じているこの感覚は、先程クロノの言っていた『答え』なのだろう。

 これから先において、自分たちが如何にして進んで行くのか。

 何を背負うのか。――いや、

(背負う、というのは少し違いますね……)

 罪科を背負うというのは、意識から咎人になるというコトではない。……そう、罪が己を決めるのではないのだ。

 クロノに言葉として告げられ、胸に刻んだもの。

 結果はこの上なく素晴らしくとも、見方を変えてしまえば簡単に認識など変わってしまう。

 だからそれは、自分が選んだ道によって誰かにとっての罪を背負うということ。

 生きてきた瞬間ごとの―――必死に手繰り寄せた運命という名の結果に、どれだけ自分が胸を張れるかと言うことだ。

〝空を見上げていれば、背筋も伸びる〟

 以前、アミタはキリエにこういったことがあった。つまりはそういうことだ。

 下を向かず、前を見る。自分たちが手に入れた『幸せ』が、偽りでないと認められているのなら後悔しない。

 後ろめたさを感じるよりも、取り戻した『幸せ』に胸を張り、この先へと繋いで行くことこそが、何よりも『幸せ』の意味を守ることになる。

 ……故に必然のように、姉妹の中にある『答え』は、言葉を交わすまでもなく初めから決まっていた。

 遙かな未来へ捧ぐ贖いの道。

 それは暖かで、取り戻した幸福の時間に他ならないのだから―――

 

 

 

 

 

 

 空を見上げ、明日を想う

 

 

 

 ―――そして、また少し時は過ぎて。

 ユーリが、ディアーチェら三人と再会出来る日が訪れた。

 

 はやてに連れられて、ユーリは藤見台にある小高い丘までやって来た。

 小高い丘の上では優しい風が吹いていて、まだ夏であるが汗ばんだりすることもなかった。

 きょろきょろと辺りを見渡すが、三人の姿はない。しかし、それも当然。時計はまだ、待ち合わせの三十分前を指している。どうやら気持ちが逸りすぎて、かなり早く着いてしまったらしい。

 改めて自分の昂揚についてユーリは自覚し、軽く深呼吸して気持ちを落ち着かせる。

 ユーリとはやては本局から転移で来たのだが、あの三人は最初から此方に滞在している為、転移では来れない。おまけにユーリは釈放の確認を取る為に、誰もいないところで解放の手続きを済まさなければならなかった。

 ―――とはいえ、あくまでそれは形式上の話。

 いまさらユーリにそんなものを確かめるまでもなく、はやてはさっさと局へ報告を送る。如何に確認や記録が必要とは言え、叛逆の意思の有無など確かめるのは無粋な気もしたが、これも仕事だ。仕方が無い。

 はやてが幾つかの文を綴る中、ユーリはただ静かに時が過ぎるのを待ち続けていた。

 そんな中でふと、三人のコトを想い浮かべてみる。嘗てのエルトリアでの日々や、自分を救ってくれたあの戦いの記憶を。

「――――――」

 思い返すと、三人と話せたのは殆ど戦いの最中だった。しかも最後の戦いの後、彼女らは医務局の預かりを経て、一時的にユーリやイリス、フローリアン姉妹から距離を置かせるという名目で海鳴市にある月村邸で保護されていた。

 『ウィルスコード』に関する懸念もあったが、基本的には三人の罪状が他より軽かったというのが主な理由だ。フローリアン姉妹やイリス、そしてユーリに比べると、意外と三人が敵側に回っていた時間は短い。戦闘場所も《オールストン・シー》でのものが殆どで、この辺りは事業主であるバニングス夫妻と月村夫妻が、施設の復旧を条件に不問という形で決着が着いた。この辺りは『ヴァリアントシステム』による復旧作業の迅速化もさることながら、両夫妻の懐の広さが大きく影響している。

 ともあれ結果として三人は比較的早く釈放され、経過監査の名目で月村邸へ預けられたというわけだ。そうして今日、三人は漸く主人との再会の時を得ることになった。

 面会の機会が無いでは無かったが、釈放までの期間を縮めるため、治療や聴取が優先されて会うには至らなかった。―――しかし、そんな日々も漸く終わりを迎える。

 今日を過ぎれば、また三人と一緒にいられる。これまでも長い時間が間にあったことを考えれば、一時間も無いなら焦らなくてもいい。

 そうして、また優しい沈黙が流れて行く中で―――

「そういえば……ユーリは、これからどうするん?」

 はやてはふと、思い出したようにユーリにこう訊ねてきた。

 訊かれ、ユーリは少し考えてみた。確かに取り戻した時間は、先へと繋がっていく。しかし、それをどう使うのかを、まだ彼女は明確な意志(コトバ)にしていなかったから。

 けれど、答えは初めから胸の内にあった。

 自分が歩いて行きたいと願う道も、生きていきたいその場所も。

「―――エルトリアに、帰りたいです。亡くなった人たちを弔って……みんなの夢を、もう一度」

 叶えて行きたい、とユーリは言った。はやてはその答えに「うん」と頷き、穏やかな微笑みを向ける。

 同じように笑みを返しながら、

「グランツやエレノアの病気もわたしが診てあげられたら、って……」

 と、続けた。

 すると、はやての傍らに浮いていたリインが思い出したようにユーリの前へ出て、言葉を続ける。

「そっか。エレノアさんたちとは顔見知りなんですよね」

「ええ。でも前に会った時は、こんな小さな子供たちでしたけど」

 そう言って自分の胸より少し下辺りを示すユーリ。今はもうすっかり大人になっているのだろうが、彼女の仕草は今でも二人が子供だった頃の思い出として色褪せてはいない。

 ちょっとだけチグハグな時間の感覚と、何となく過ぎた時間の長さに、少しユーリはおかしそうにくすくすと笑う。釣られてはやてやリインも笑い、三人の笑いが止んだ頃。再び丘を柔らかな風が抜けていく。

 もう一度深呼吸をして、ユーリは眼下に広がる街並みを眺めながら、頬を撫でる風を静かに感じる。

 柔らかな風は、この街の色そのもの。改めてみると、初めて見た時に比べ、随分と印象が変わった様に思う。

 初めて目にしたこの街は、酷く夜に沈んでいた。

 誤解は誤解のまま、新たな疵さえも生まれようとしていた。しかし、そんな新しい疵だけが残されていくのかという予想も、痛みを伴う目覚めも越えて―――帰ってきた時間は、本当に穏やかなものになっていた。

 だからこの取り戻した時間も街に生まれ集った星々と同じように、明るく輝きを増しながら、また紡がれていくのだろう。まだ遠く知りもしない、けれどきっと幸福な時間へと繋がっていける―――と、ユーリはそう思った。

「皆さんのおかげで、イリスたちとも話が出来て……分かって貰えて。止まっていた時間が、やっと動き出したような気がします。本当にありがとうございました」

「ううん。お礼なんてええんよ」

 ぺこりとお辞儀をしたユーリに、はやてはそう言って首を横に振った。今こうして得たものは、自分たちの力ではなく、ユーリたちの堅い意志こそが引き寄せた結果だと告げるように。

 しかしそれは、

「……せやけど、もうすぐお別れになってまうのは、寂しいなぁ」

 こうして言葉を交わす時間も、残り僅かであるということでもあった。傍らのリインも残念そうに、

「〝夜天の書〟の守護者としてのお話、もっと聴きたかったです……」

 と、ユーリにしょんぼりとした顔を向けている。―――が、ユーリはリインに「いえ」と手を軽く振ると、自分にはそこまで語れることは無いと応えた。

「本当に、〝夜天の書〟についてわたしが話せることなんて、殆ど無いです。

 わたしはただ、ずっと付き添っていただけで……彼女を幸せにしてあげられませんでしたから」

 ユーリは元々、『夜天の書』に後付けされた存在。辿って来た軌跡こそ同じだったが、あの呪いを解くこともなく、付随したという始まりと同じく、離れていった。

 だから、ユーリははやてにこう言った。

「あの魔導書の物語に、本来わたしは必要なかったのかもしれません。……ただ、ほんの少しでも。あの子があなたに出会える軌跡と奇跡を手伝えていたなら、とても嬉しいです。長い長い旅の最後に、あなたのような主に出会えて……きっと、何よりも幸せだったと思いますから」

 最果てに得た救い。

 たとえ、その結果が空に還ることだったとしても―――最高の主と騎士たちを、呪いなき未来へと誘えたのならば、それはとても幸せだったのだろう、とユーリは言った。

 永久に続く忌まわしき闇を祓い、光ある未来へ主と騎士たちを導くこと。……それは、何よりも彼女が望んでいたことだったから、と。

「…………うん」

 ユーリのその言葉に、はやては改めて救われたような気がした。

 ―――あの雪の日。

 泣きじゃくって、引き止めようとした。漸く揃った『家族』を、また失いたくないと駄々をこねて、我儘を言って。

 ……本当は、分かっていなかったわけではない。

 理屈や道理、そして彼女の意志も、分かっていたはずだった。けれど、あの別れははやての中に今も深く刻まれている。

 何よりも気高く、何よりも残酷なほど優しかった、あの『旅立ち』が。

 でも、あの時の言葉を……また思い出した。

 

〝―――私はもう、『世界で一番幸福な魔導書』ですから―――〟

 

 自分よりも長く、その傍らにいて、その情景を覚えていたユーリの言葉から―――そう告げられた言葉の意味を、今になってすべて呑み込めた気がした。

「ありがとう。……ユーリ、ほんまにありがとう……」

 少しだけ震えたはやての声に、ユーリはただ微笑みを返す。やがて、最後に告げるべきコトを経て、もう一つの針が動き出した。

 丘へ続く階段を昇ってくる音と、やって来た者たちの声と共に。

 

 

 

「足下、気を付けてね?」

「「「うむ/はい/うんっ」」」

 すずかの呼びかけに元気に返事をした三つの声の主は、ユーリがかつて救った猫だった少女たち。同時に今回の事件においての大トリを担った立役者、のハズなのだが……。

 

「―――あれ……?」

 

 丘を登ってきた者たちの姿を見るや、はやては惚けたような声を漏らす。

 まず階段から見えてきたのは、紫と金の髪の少年少女。ここまでは良い。あの三人を連れてくるのはすずかとユーノの二人だという報告は受けていた。いたのだが、後に続いてきたディアーチェら三人の姿は何故か―――

「王様たち……なんか、縮んだ?」

「別に好きで縮んだわけではないわッ!」

 そう。何故か、その姿は記憶よりもだいぶ小さかった。

 猫に戻ったからというわけでもなく、単純に三人の体躯は五~六歳程度にまで縮んでしまっていたのである。なお、ディアーチェは驚いて固まっているはやてに先程の発言を撤回させようとしているが、生憎と驚きが勝っておりその声は届いていない。

 事件解決後から忙しくて会っていなかったこともあり、はやてはこの三人を見るのは初めてだった。故に驚きも大きかったわけなのだが、他の面々はそこまで気にしている様子もない。驚いた様子のはやてに、三人を連れてきたすずかとユーノは苦笑している。

 そんな二人の様子に気付き、目の前の状況について説明を求めたのは、ごくごく自然な流れだったと言えるだろう。

「ちょう、ユーノくん。これどういうことなん?」

 が、こうなると困るのは問いを投げられた側である。

 ついでに言うと、一般人であるすずかは魔法に関して詳細な説明となると難しいので、必然的にユーノが説明に回ることになる。

「えーっと、話すと長くなるんだけどね……?」

 薄々分かっていたとは言え、いざ説明となると少々気後れしてしまう。まずはどこから話したものかと記憶を辿り、ユーノは一先ず手短に説明を述べる。

「三人はあの戦いで一度猫に戻ったんだけど、シャマル先生が傷の治療を終わらせた後、サービスってことで三人の人間としての体躯を組み直す手伝いをすることになって……で、僕とかアルフ―――あとちょっとリーゼさんたちもだけど―――みんなで変身魔法(じゅつしき)を組んだら、こうなっちゃって……」

 ちらりと、シュテルへ視線を向けると、彼の意図を察したらしい彼女はユーノの言葉に補足を加える。

「今回の戦いで私とレヴィはリンカーコアを王に託しましたから、その影響が残っていたのかも知れません。なので回復するまでは、しばらくこの姿ですね」

 ディアーチェにリンカーコアを託し、そこから再び譲渡し直すという行程を辿ったこともあり、現在の三人はかなり貯蔵できる魔力量が衰えているらしい。

 二人の言葉を受けて、はやてはどうにか状況を呑み込んだ。しかし、理解がイコール納得という事にはならない。それならそうと教えてくれても良さそうなものなのにと、少し不満が残る。本気で攻めたいわけでもないが、知らなかった分、膨れてしまうくらいは大目に見て欲しいものだ。

「事情は分かったけど……それやったら教えてくれれば良かったのに、ユーノくんイジワルやねぇ」

「ゴメンはやて。僕も結構忙しかったから、つい……」

 はやての心情も判るので、ユーノは苦笑しつつもはやてを宥める。するとそこへ、シュテルとレヴィが口を挟んできた。

「ですがおかげで、こうしてまた言葉を交わせるというのは有り難いです」

「でも、ちっちゃくなって動きにくいし……これならネコの姿でもよかったかなぁーって思うときもあるケドねぇ~」

 二人の感想はそんなところらしい。尤も、シュテルも不満がないわけではなく、模擬戦などはしてみたかったという話だったが。

 シュテルですらそうなので、フィジカル的に有り余っているレヴィの方は思う様に動き回れない現状にさぞかし不満なのだろう。話が出来るのは良いが、小柄な体躯をむずがってレヴィが腕を振っていると、ユーリはそんなレヴィを宥めるようにして彼女の頭を優しく撫でた。

「ふふっ、どんな姿でも三人とも可愛いですよ~」

「えへへ~♪」

 ユーリに撫でられ、レヴィは嬉しそうに笑う。

 元の姿ほどではないが、可愛がってもらえて話もできるなら今のままでもいいかなー、とレヴィはあっさり篭絡されていた。

 そうした影響も少々残ってはいたものの、やっと再会出来たという事実は変わらない。レヴィに続き、シュテルとディアーチェもユーリの元へ歩み寄り、四人はお互いの存在を確かめ合う様に抱きしめ合う。

 嬉しそうな笑みと、穏やかな時間はゆっくりと過ぎていく。

 やがてディアーチェがはやてたちの視線に気づき、恥ずかしがって離れるのに合わせ、シュテルも一歩退く。レヴィだけは特に気にしていないらしく、ユーリの腕の中に残ったままだ。

 そうして再会も一段落した辺りで、これからの話について話題が移っていった。

 

「王様たちは、ユーリと一緒にエルトリアへ?」

 はやてがそう訊くと、ディアーチェは「無論だ」と胸を張って応える。するとレヴィも続けて、楽しそうにユーリと顔を見合わせながら、

「ずっと一緒って約束したし~。ねー、ユーリ~♪」

 と言って、ユーリにすりすりと猫の子らしく甘えた様子を見せる。

 ユーリも彼女のそんな様子が嬉しいらしく、柔らかな微笑みと共に、幼い姿になったレヴィのことをあやすように「はい。そうですね~、レヴィ」と言って更にぎゅっとレヴィを抱きしめていた。

 そんな二人を微笑ましげに眺めながら、シュテルもシュテルで自身の〝惑星の再生〟への興味を語った。美しい故郷を取り戻したいという気持ちや、ユーリやイリスの夢だった部分もそうだが、彼女自身その研究に興味があると。

 しかし、少し意外だなとはやては思った。なのはから聴いていた印象や指揮船でのやり取りから、シュテルは戦いというか、魔法戦技系の方が好きそうな気がしていたからだ。

 それを訊いてみると、シュテルはこう答えた。

「確かに己の技をぶつけ合う戦闘も心躍りますが、様々な事柄を研究することも楽しそうでしたから。それに、『無限書庫』の方からの資料提供(きょうりょく)もして下さると師匠(ししょー)が約束して下さったので」

 シュテルの応えに、はやてもそうだったのか、と納得はした。―――だが、その中に一つだけひっかかりがあった。

「……そういえば、今シュテル、師匠ってゆーとったけど……それって誰なん……?」

 そう。師匠、と呼ぶような人物がシュテルにいたとは聞いていない。というか、そもそも目覚めたのがごくごく最近であることを考えると、なおさら違和感が涌く。

 しかし、シュテルの方は別段気にもしていない様子で、

「誰と言われましても。目の前にいますが」

 と言って、あっさりとユーノの事を指さした。

「え、ユーノくんが……って、ちょおユーノくん、いつの間にシュテルのお師匠さんになったん⁉」

 またしても驚愕の事実をあっさりと明かされ、はやては再び驚いたようにしてユーノをまじまじと見つめた。

 ユーノはそんな視線を困ったように受け流そうとしたのだが、

「いや……別に何があったわけでもないんだけど―――」

「そんな……、酷いです師匠(ししょー)。あの暗き迷宮の中で、あれほど心躍るひとときを過ごしたと言うのに……」

 そこへ、シュテルがまた爆弾を投げ込んできた。

「…………ユーノくん……まさか」

「誤解だよ! 書庫についてきたシュテルがやってみたいっていうから、読書と検索の魔法教えただけからね⁉」

 はやての向けた視線が何かの疑いを深めたようなものに変わった瞬間、ユーノは即座にそれを否定する。

 少々紛らわしい言い回しはあったものの、事実無根であるのはその通りだった。

 なんでも、乗り掛かった舟ということで、三人の持つ魔法以外の知識やユーリと共に『エルトリア』へ向かう時のために―――と、月村家に資料を渡しに通っていたら、途中からシュテルが『無限書庫』に行きたいと言い出したらしい。それがきっかけとなり、いつの間にか師匠認定されていたとか。

 師匠なんてガラじゃない、とユーノは言ったらしいが、

「あなたは躯体(このカラダ)の基であるナノハの師なのですから、わたしがあなたを『師匠』と呼ぶことに差支えはありません」

 と、シュテルは彼の主張をあっさりと踏破して呼び方をそのままに固定してしまったとのこと。

 確かに間違ってはいないので、否定はしづらかった。ついでに言うとシュテルは読書魔法や検索魔法が上手かったので、ついついユーノも楽しくて教えることに熱が入ってしまったとかなんとか……。

 重ねられていく説明で、また納得するはやて。

 何だかさっきから納得してばかりな気もするけれど、別段それは悪いことではない。確かに悪いことでは無いのだけれど、

(……あかんなぁ、これはちょっと強力なライバルの出現かもしれへん……)

 はやてはぼんやりとそんなことを思った。

 どこかオリジナルと重なる、けれどデータ基に影響されたとかではない、シュテルの懐き具合(せっきょくせい)を垣間見ながら―――。

「ところで師匠(ししょー)、次に書庫に行けるのはいつですか?」

「いや、残りの資料検索は僕がやっておくから、シュテルはユーリと一緒に過ごして良いんだよ?」

「わたしが行きたいのです。むしろ、ユーリたちにもあそこを見せたいです……!」

「そういうことなら、まぁ―――でも、どうかなぁ……そんなに面白いわけではないと思うんだけど……」

「そんなことはありません。―――レヴィ」

「んー? なぁにー、シュテるん」

「『無限書庫』の未整理区画に行くのですが、行きませんか? 強い門番や、もしかすると魔物がでるかも――『行く!』――だそうです師匠(ししょー)

「おいシュテル! それなら我もよばぬか⁉ 仲間外れにするでないわッ‼」

「無論です。王のお力が必要になるかもしれませんし、ぜひ」

「えっと、それならわたしも……今のこの子たちだけだと、お手数をかけてしまうかもですから……」

「………………」

 あれよあれよと進んでいく状況に対し、はやては何となく医務局で養生しているなのはのことを思い浮かべた。

 何気に一番近い筈の少女を放置して、まったく別の繋がりが構築されてしまっているこの現状。はやてもそこそこ書庫には行く方だったが……このケースは、これまでとは明らかに一線を画しているのではないだろうか。

 データの基礎素体や本人の気質もさることながら、魔法資質や共通項らしき要素がちらほらと見え隠れしている。

 これは案外、深刻なのではないだろうか。

(…………アカン、これは大ピンチかもしれへんよ? なのはちゃん……)

 と、そんなことを思われていた頃。

 本局にある医務局の一角で、なのはが小さなくしゃみをしていた。

 

 

 

 

 

 

 ***

 

 

 

 本局にある医務局内の病室にて、可愛らしいくしゃみの音が響いた。

「―――くしゅんっ」

「ありゃ。なのはってば、ケガに続いて今度は風邪?」

「ううん……風邪じゃない、とは思うんだけど…………なんだか、その、()な予感がするっていうか……」

「厭な予感ねぇ……」

「うん……」

 どこか深刻そうな親友の様子に、お見舞いに来ていたアリサは、なのはの言う『予感』とやらが気になったものの、その思考は傍らにいたフェイトの声に遮られる。

「あっ―――! 気になるのは解るけど、だからってベッドから出ようとしちゃダメだよ⁉ なのははまだ病人なんだから!」

 いくら回復したとはいえ、なのははまだ重症患者である。

 ハッキリいうと、むしろ事件からまだ一ヶ月程度でここまで回復できたのは驚異的なスピードだ。如何にエルトリアからの協力があったとはいえ、急激な回復による弊害は肉体に影響を及ぼす。そんな状態の病人、とりわけ親友ともなればおいそれと勝手を許すわけにはいかない。

 しかし、なのはもそれは判ってはいる。判っているが、それでも行かねばならないと本能的な部分が警告している気がするのだ。

「え……あ、でもフェイトちゃん……もうだいぶ良くなったし…………その、ちょっとくらいなら……」

 何か将来的な不安を掻き立てられる直感の大本を確かめるべく食い下がるが、フェイトはそれを許さない。ついでに言うと、彼女本人の意思に加え、頼まれごとでもあるのでここで折れるわけにはいかないのである。

「駄目ですッ‼ そんなことだろうからって、ユーノになのはが無茶(ヤンチャ)しないように見ておいてって頼まれたんだからっ!」

 事件解決直後から、治療系が得意という事もあってユーノは良くなのはのことを診ていた。医務局の人間でもないユーノが駆り出されていたのは、本局にある書庫の勤務という事や単純に彼が事件の中でなのは同様に『ナノマシン』をフル使用していた一人だったからというのが大きい。加えて、普段の生活圏の近さと情報の扱いに長けていて、患者の様子を把握するのに秀でているとなれば呼ばない手もなかった。

 しかし今日、ユーリとディアーチェたちが再会するに当たり、ユーノはある事情から海鳴(ちきゅう)へ出向くことに。その為、今日はユーノの居ない分もフェイトに任せた形になった。

 実際、こういう時の抑止としてフェイトは実に適任である。

 何となく、姉か母親っぽい厳しさを見せてくれるから―――というのはユーノの弁であるが、割と当たっているな、と、フェイトとなのはのやり取りを見ていたアリサといつの間にか来ていたシャーリーはそう思った。

「あはは……。フェイトさん、厳しいですね」

「でもその様子じゃ完全にアタリみたいねぇー……っていうか、しばらく付きっ切りでもそんなだったから、ユーノも疲れちゃったんじゃない?」

「…………ぁぅ……」

 身に覚えがあったのか、なのははしょんぼりと大人しくなる。尤も、親友二人に加え、後輩にまでこうも言われては沈んでしまうのも仕方がないが。

 とはいえ、それとこれとは別だと反論を続けようとするものの、生憎と都合の良い言葉は出てこない。そこから「ぇと」「その」「ぅぅ……」など、なのはの言葉(オト)にならない呻き声じみた抵抗が続き、やがてまた最初に戻って大人しくなった。

 流石にここまでくると押さえつけ過ぎるのはなんとなく躊躇われるが、かといってなのはの自由にさせておいてまた無茶をされても困る。……おそらく「自由にしていいよ」と言ったが最後、ほぼ一〇〇%転送ポートに向かうのが想像に難くない辺りが、何よりも困りどころなのだが……。

 なので、フェイトは第三の選択肢を取る。

「えっと……そ、そういうことじゃないと思うよ? 確かユーノ、ユーリに渡さなきゃならないものがあるって言ってたから……」

「渡さなきゃいけないって、ユーノが?」

「うん。そう言ってた」

「ふぅん……。でも、ユーノってユーリとそんなに話したわけじゃないのに、渡さなきゃならないって―――まさか、一目惚れして告白でもする気なのかしらね?」

「ッ―――⁉」

「ひ、ひとめぼれって、そんな……ぁぅ」

 あくまでアリサは冗談として言ったのだが、思いの他、効果は覿面だった。とりわけなのはの方は、精神的ダメージが臨界突破しかけている。

「ちょ、ちょっとアリサ……」

 その様子にフェイトは憤慨するが、生憎と顔が赤く迫力に欠ける。それがなんとなく面白くて、アリサは続いてフェイトの方も少しだけ揶揄った。

「あはは! フェイトってば顔真っ赤よ~?」

「も、もぉ、アリサぁ……ッ!」

 敢えて一番深刻そうな表情を見せたなのはを放置してフェイトを揶揄う辺り、アリサは完全に楽しんでいる様だ。

 まぁ、この辺りは()()()()()と判っているからこそだが、ちょっと揶揄い過ぎかも知れない。信じていようがいまいが、この辺りは乙女心的には割かし深刻である。そのため一旦矛をひっこめては見るが、しかし。

「ゴメンゴメン。ユーノがそんな軽い奴じゃないことくらい分かってるってば。……でも、実際ユーノがユーリに渡すって、何を渡す気なのかしらね?」

 未だそこについては謎のままだ。ユーノから頼まれたフェイトも、その辺りは聞いていなかったようなのだが。

「なんだか、本当に大切なことみたいだったし……」

 という事だけは聞いていたらしい。とはいっても、『大切なこと』と言われて内容まで推察するのは難しいだろう。

「大切なことかぁ……なにかしらね、ユーノがユーリに渡そうとしてるのって」

 が、フェイトは。

 少しだけ心当たりにも似た部分があるようで、

「分からないけど、もしかしたら…………ううん、たぶんアレは……ユーリの―――」

 短く、あの時のユーノの表情を思い出しながら、彼がユーリへ渡そうとしていた物の中身を思い浮かべていた。

 

 

 

 ***

 

 

 

「―――ユーリ」

「……? はい、何ですか?」

「うん。僕も一度戻らないといけないから、その前にこれを渡しておかないといけないと思って」

「ぇ……? これ、は―――ッ⁉」

 再会の昂揚も収まりを見せ始めた頃。

 ユーリたちの帰還までの、残された期間を過ごす滞在先である八神家へ向かおうかという時に、ユーノは彼女を呼び止めて、やっと渡すべきモノを渡すことが出来た。

 心の憂いが一切なくなったわけではないけれど、

 まだ残された柵や不安が残っているのは事実だけれど、

 ユーリと彼女の大切な人たちが更に先へ進む為の、一助になれば良いなと願いながら。

「君の、過去の記録。……いや、〝記憶〟だよ」

 渡された、一冊の魔導書型のストレージ。そこに込められていたのは、彼女(ユーリ)の辿って来た過去の軌跡。

 

 ───古き世界。

 永い戦乱に晒され、領土(くに)生命(みのり)を奪い合っていた場所で……一冊の魔導書が生まれ、後に名を変えて、歪みの果てに一人の守護者を傍らに置いた。

 そんな、一人の少女の記憶であり記録。

 彼女の命と、名に込められた『絆』である。

 

「…………」

 長い旅の中で薄れていた記憶と、初めから知らなかった記録を目の前にして、気づけばユーリは泣いていた。

 別に、自分のルーツに迷っていたわけではない。

 居場所は在り、家族も二つめの故郷も確かにある。……けれど、ユーリにも一つだけ、欠けていたものがあった。

 それは、彼女にとっての始まりの場所。

「……もしかしたら、そこには辛いことも収められているかもしれない。

 でも、そこに込められた〝祈り〟は、確かに君だけのものだから―――君がこの先に進む時にきっと、君のことを支えてくれるって、そう思ったんだ」

「…………はい……ありがとう、ございます……っ」

 少しだけ震えた声で、ユーリはユーノに礼を告げた。

 造られた命の起源。それは、幸せな事だけではないのだろう。

 親友だった少女が、創造主()の悪意によって辛い運命(キズ)を与えられてしまった様に。―――しかし、知らないという事はそれよりも、もっと痛い事であるように思う。自分が認められていても、根底を知ることが出来ないから。

 その状態が悪でなかろうと……否、悪でないのならば尚更に。

 知らなくてはならないのだろう。守る為の『魄翼(つばさ)』も『鎧装(よろい)』も、大切な人々との絆を紡いできた『魔法』も、等しく彼女の原点にこそあったものなのだから……。

 

 そうして最後の結びも遂げられた。

 やがて時間(トキ)は再び巡り始め、暖かで穏やかに過ぎていく。そうして、また―――同じように、別れの刻がやって来る。

 

 

 

 

 

 

 終わりなき旅路の果てへ ――Never Surrender――

 

 

 

 ───そして、また少し時は過ぎて。

 アミタとキリエの事情聴取や手続き、その他の話し合いがひと段落し、遂に彼女らが故郷へと帰る日がやって来た。

 

「……よしっ」

 今日まで過ごしてきた部屋()整理(そうじ)も終わり、アミタは揃えた荷物を前にしてそう呟いた。

 期間にしてみれば短かったが、あの夜から今日までの一ヶ月と少し。これまで過ごした時間は、かなりエキセントリックな冒険譚だったようにさえ思う。……それくらい、色々なことがあって、名残惜しさも残しながらも、また次へと繋がっていく。

「…………」

 改めて確かめた事柄に、なんだか感慨が湧いて来る。ふとポケットから端末を取り出して、アミタはこれまでの日々を見返してみた。

 そこに写されていたのは、此方で過ごした穏やかな時間の記録。

 八神家にお邪魔した三人とユーリがはしゃいでいる様子を送ってもらった物や、自分とキリエがなのはの病室にお邪魔した時の写真。他にも『無限書庫』を満喫しているシュテルやレヴィ、ディアーチェの姿であったり、変わり種としては猫三匹と狼二匹、そしてフェレット一匹のお昼寝の写真なども。

 

 ───本当に、色々なことがあった。

 

 けれどそれも終わり、また新しい時間が始まる。

「お姉ちゃーん? そろそろ行かないと、局の人たちに挨拶できないよー」

「はーい。今行きますからー」

 妹からの声に応じ、アミタは荷物を手に取って立ち上がる。扉まで歩いていき、外へ出て、扉を閉めようとしたところで立ち止まり、部屋の中へ視線を飛ばす。

 終わりだ、という気持ちと、始まりなのだという気持ち。複雑ではあるが、決して悪いモノでないそれを胸に抱いて、アミタは空っぽになった部屋に『ありがとうございました』と小さく短く告げて扉を閉めて歩き出した。

 

 マリーやシャーリーを始めとした、お世話になった局員たちにお礼を告げて、二人は転送ポートに乗って海鳴市へと飛び立つ。

 本局からエルトリアに飛ぶのは出来なくはないが、ユーリたちと共に帰還することを希望したこと、アミタたちの使用した転移座標が地球へのものだったこと。そして、なのはたちとも別れを告げたかったという願いから、姉妹は共に海鳴市へと向かう。

 

 転送された先は、海鳴市にある臨海公園。

 そこでユーリやディアーチェたち、なのはたちが待っている。

 やがて、二人が到着したのを皮切りにして―――それぞれが、それぞれの別れの言葉を交わしていく。

 

「ナノハ。あなたとの再戦が叶わなかったのが残念です」

 なのはと握手をしながら、シュテルは名残惜しそうにそう告げる。

 今際の際、というわけではないけれど。……ここ一ヶ月の様に一緒にいる事は、もうしばらくは出来ないだろう。

 果たして次に会えるのは何時になるのか、そんな事は分からない。―――しかし、だからこそ、この別れに交わす言葉は、暗いものであってはならない。

「また会えるよ、きっと。それまでにケガも治して、お互いに全力でまた勝負しよう?」

「はい。いつか来るその時を、楽しみにしています」

 なのはがそういうと、シュテルもまた笑顔で応えた。そして、傍らに立っているユーノの方を向き直って「師匠(ししょー)もお元気で」という。

 ユーノも微笑みながら、

「シュテルたちもね。役に立つような情報とかたくさん送るから」

 と言って、前に約束した資料提供のことを口にした。

 本来あまり外部への情報の流出は良くないのだが、エルトリア側からの技術提供に際して、向こう側の技術体系の維持という名目で資料提供を確約していたのである。

 そうした利得の関係が今の縛りではあるが、いつかそれも緩和されていく。今はまだエルトリアへの直接交流は難しいが、既に経過観察という名目での交流が検討されているという話もある。そう遠くない未来に、また会えるだろう。

「ありがとございます。エルトリアにお越しになることがあれば、その時は向こうをご案内いたします。なので、ぜひ来てくださいね?」

「うん。僕もエルトリアにはいつか行ってみたいし、きっと行くよ」

「お待ちしております」

 そういって微笑んだシュテルに、ユーノはもう一度「うん」と頷き返して、なのはと同様に握手をするために手を伸ばそうとした。だが、その手は空中で伸ばされかけた状態で止まってしまった。

「「――――えっ?」」

 空気が抜けるようにして、ユーノとなのはの口から戸惑いが漏れる。唐突に飛び込んで来た感触に視線を落とすと、そこにはシュテルの少し暗めの茶髪が。

「シュテ、ル……?」

「……本当に、約束ですよ? 師匠(ししょー)、ナノハ」

 呆けた様に訊ねると、シュテルからはそんな応えが返って来た。

 普段から思えば、らしくない行動ではある。しかし、短い中に込められた切ない響きに、ユーノとなのははゆっくりと頷き返す。上手く言葉は返せなかったが、言葉にできなかった心の代わりに、二人はシュテルの事をそっと優しく抱きしめ返した。

 穏やかに過ぎていく別れまでの刹那。

 短い中でも紡がれた絆を確かめるようにして、三人は静かに抱擁を交わした。

 

 その様子を遠巻きに見ていたレヴィとフェイトは、三人の姿を見てお互いに微笑みを交わし、そして、同じように抱きしめ合った。

「元気でね……レヴィ」

「フェイトもなー。そんでそんで、いつかエルトリアに来てよね~♪」

「もちろん」

「やった、約束だよー?」

「うん、約束」

 穏やかな声を返すフェイトと、天真爛漫に応えるレヴィ。瓜二つな見た目で対照的な反応を示す二人は、どこか姉妹然としていた。

 二人のそんな仲睦まじい姿を見て、一歩引いた立ち位置にいたディアーチェも思うところがあったらしく、海側の(フェンス)を弄りながら、はやてにここまでの礼を述べた。

「貴様にも……まぁ、なんだ。世話になったな」

 少々素っ気なさもあるが、ディアーチェの想いは伝わって来る。何よりはやて自身、彼女らがエルトリアに帰ってしまうのは寂しい。だが、暗いままではいけないのは分かっている。

 ……だから、

「ううん。ええんよ……でも、お別れになってまうのは、やっぱり寂しいなぁ」

 ほんの少しだけ、言葉にして外に出して―――残された寂しさは、いつかの再会へ捧げるように、今は空の彼方へ置いて行こう。

 空を見上げ、抱いた寂しさが抜けていくのを、はやては静かに待っていた。心がやがて、その別れを受け入れていくのを、ただ静かに。……ちょうどそれは、あの聖夜の別れと、どこか似ていた。

 そうして心が納得を得た頃、一つの連絡が届いた。それを受けて、はやてたちはキリエとユーリに声を掛ける。

 見送りがもう一人、此処に着いた―――と。

 

 告げられた二人は、早朝の公園の床を鳴らす足音の方を振り向く。聞こえて来た音の先に、あの夜以来、会えずにいた一人の友の姿が在った。

「「イリス……ッ!」」

 泣きそうな顔で名前を呼ぶ二人に、イリスは沈んだ顔で向き合った。苦しそうな、悲しそうなその顔に、歩み寄ろうとした二人の足は止まってしまう。

 喪われていた距離は、ここまで近づいてなお、まだ埋まり切っていない。……いや、むしろそれは。

 当たり前のように存在する罪悪感。

 世界に許されようと、或いは許されまいと―――己が『罪』と認めている限り、何時までも人を縛り続ける枷だ。

 しかし、

「あたしは裁判とか色々あるから、当分はこっちに残るんだけど…………いまさらかもしれないけど……それでも終わった後のこと、今の内に相談しとかなきゃ、って……」

 何もしないまま終わるのでは、何処にも行くことは出来ない。何の意味も、持ち得ないまま終わりすらしなくなる。

 だから、イリスはここへ来た。

 自分の成したことに、向き合うために。

「…………嘘を信じて踊らされて、取り返しのつかないことをたくさんして……法で裁かれるのは当たり前だけど、本当に酷い事してきたから…………キリエにもユーリにも、あたしはもう……」

 二度と会わない方が、良い―――と、イリスが言葉にするより早く。彼女の言葉を、キリエが遮って堰き止めた。

「イリス、そんなの駄目だよ……!」

「……キリエ……」

「今回のことは、あたしのお願いをイリスが聞いてくれたのが始まり―――だから、そんなに一人で背負わないで……?」

「……でも、あたしは」

「それなら、あたしもイリスに酷いことしたもの。自分のやろうとしたことを、ちゃんと考えてなかった。自分だけが辛い様な気になって迷惑かけて、優しさに甘えっぱなしだった」

 だから、とキリエは続ける。

 ―――これは、イリスだけが背負う(つみ)じゃない、と。

 確かに至らなかったことはいくらでもある。キリエもイリスも、利用されていた傀儡だった側面も少なからずある。

 『悪』かどうかでいうのならば、気づけなかったことは『悪』で、その背を押していたものは『悪意』に踊らされた心だった。しかし、それは罪を感じなくて良いということにはならない。

 法で許されようと、罪を赦さない人がいる。

 同じように法に縛られながら、見向きもされない罪がある。

 故に背負うという行為の本質は、自分がどう感じ、罪に対してどうするのかを選び取るという事だ。

「だから、一緒にやって行こう? 謝るのも、償うのも一緒に……。お姉ちゃんや王様たち、ユーリも一緒にいてくれる」

 キリエの言葉に、ユーリも「はいっ!」と頷いて、二人はイリスの手を取った。

 そうして告げられていくものは。伝えられていく心は、単なる許容許諾の類ではなく―――

「……わたしも、あの時あなたを止められなかった。ですから、此処から始めましょう。ずっとずっと、途切れたままだった……あの日の続きを」

 そう、それは───過去(いつか)の置き去りにされたままの、夢の続きそのものだった。

「っ……、……ぅ……」

 与えられたものと、背負う道を前にして、イリスの喉は潰されたように(オト)を詰まらせる。

 救われてしまっている。

 救われてしまって、良いのか。

 足踏みしたままでいるわけにもいかなかった。しかし〝赦される〟というこの優しさを受け止めるには、自分の両手は穢れ過ぎていた。……そう、思っていた。

 けれど、

「――――――」

 もう曇り始めた視界で皆を見渡すと、そこには怨嗟の欠片もない、ただ純粋なだけの始まりを見つめる瞳だけがあった。

 幸福すぎると言えばそうだろう。

 都合の良い、と言えば間違いなくそうだ。

 胸を埋めるぬくもりは、今度こそ嘘ではない。……でも、どこか〝大切な人たちに赦されない〟ことを望んでもいた。だからきっと、これはぬくもりを対価にした、イリス自身の咎だ。

 これから先にある幸せな世界。二度と帰れないと勘違いして、自分が壊そうとしていたその場所を、決して逃げず見ていくという痛みを伴う幸福が。

 最も近い場所で眺め、創っていくという、幸せを失い、手に入れたものへの、何よりの罰だった。

「…………う、ん……ッ!」

 当然、苦しみはあるだろう。

 向けられる恨み言など馬鹿らしくなるほど、逃げ出す方が楽だったと()()することもあるだろう。

 しかし、それでもイリスは、しっかりと頷いていた。

 逃げることはもう出来ない。知ってしまった、取り戻すことのできた温もりと共に生きていくことからは、決して。……だが、きっと―――その生き方は、決して寂しいだけのものではないから。

「うんっ……!」

 だからイリスは、そう応えた。

 

 ───そうして、ある少女は己の路を決めた。

 未来へ進むことを決めて、逃げ出すという選択肢を捨てて、また歩き出す覚悟を。

 

 イリスの意志を伴った声が、途切れ途切れに紡がれていく応えが止んでいくのと共に、遂に別れの時が訪れる。

 展開された、(プレート)の上に乗りったアミタとキリエ、ユーリの前にそれぞれディアーチェたち三人が立ち並ぶ。起動していく術式に伴って、陣の輝きが増していく。

「―――それでは、みなさん。本当にお世話になりました」

「こちらこそ」

「みなさん、お元気で……」

 アミタの謝辞になのはとフェイトが応えたのを皮切りに、陣の輝きがいっそう増し、その光が六人を遠き星へと導いた。

 

 さながら、それは流星。

 次元(ほしぼし)狭間(たびじ)を越えて行く、旅人の象徴の様でもあった。

 ―――そして、一条の流星となった少女たちは、エルトリアの大地へと()()()()()()()()()()()()

 

 

 

 

 

 

 ズドンッ! と音を立てて、エルトリアの大地へ飛び込んでいった流星の光が散った後。その中から立ち上る煙が晴れた場所に、六人の少女の姿が覗いた。

 しかし、

「うぅ……帰宅というのは、もう少し穏やかなものかと思ったが……」

「なかなか過激です……」

「ぁぅー、びっくりしたぁ~……」

 次元転移が初めてであるディアーチェたちは思いの外荒っぽい〝帰宅〟に参ったような声を上げる。

「あはは……」

 そんな三人の様子に、姉妹は苦笑せざるを得ない。

 アミタやキリエは一度体験してはいたが、ミッド式の次元転移に比べると『フォーミュラ』による転移は少々雑なところがある。加えて今の三人は子供の体躯なので、丈夫さは兎も角、負担は少々大きかったかも知れないな、とも思う。

 とはいっても、一先ずは無事に着いた。

 見渡せば相変わらずの枯れた空と大地が広がっていて、漂う空気は砂塵が混じり。けれどここは、紛うことなき自分たちの故郷だ。

 帰ってきたという実感に、アミタはそっと胸を撫で下ろす。―――が、一つだけ気になったことがある。

(……それにしても、初めて地球に転移したときに比べると衝撃が幾分穏やかだった気が……)

 何となく足下に目をやると、そこには藁の絨毯。何気に半端な衝撃緩和剤よりも豊かな柔軟性を備えている代物ではあるが、自然にこんなものが集まっているものだろうか。

「!」

 と、そこまで思考した辺りで、近づいてくる足音に気づく。

 誰かが近づいてきている。そう理解できた瞬間には、もう既に身体はその方向へと駆けだしていた。同じように自分の傍らを走る桃色と金色を横目(めのはし)に捉えながら、アミタは近づいてきた人物の胸に飛び込んだ。

 そうして飛び込んできた三人の少女を受け止めながら、その人物は柔らかに告げる。

 帰ってきた娘たちを出迎える、その言葉を。

「―――みんな、おかえり―――!」

 苦しいまでの嬉しさを噛み締めながら、溢れだした熱に構わず、三人は顔を上げこう応えた。

 

「「「ただいま……っ‼」」」

 

 揃った声に誘われて、後ろから歩み寄ってきた影三つ。

 ただ、少しだけ躊躇いが見える。そんな微かに覗く戸惑いを晴すように手招きをして、何時かのぬくもりを思い出した子猫たちは、時を経て母となった少女の元へと飛び込んでいった。

 七つの人影が重なり、やがて一つになった。そうして、確かな繋がりを得た〝家族〟が帰って行く。これから先、長い時を共に過ごしていくだろう家へと―――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ―――そして、あれからまた、しばらくの月日が過ぎて。

 

 欠けていた最後の欠片が星に戻り、小さな子供の手足が伸び、過ぎていく時間の中で……新しい思い出が生まれるだけの時が過ぎて、星の姿が徐々に(かわ)っていった頃。

 アミタとキリエの姉妹は、家から少し離れた場所にある丘へと足を運んでいた。

 

〝――――――〟

 

 言葉もなく、静かで柔らかな風が頬を撫でる中で、小高い丘を姉妹はゆっくりと登って行く。すると程なくして、頂上に据えられた墓石が見えてきた。

 (ナカミ)を持たない〝弔いの墓前〟に花束を添え、二人は手を合わせて目を閉じる。

 祈りを告げ終えた辺りで、二人は立ち上がり、目の前に広がる光景へと目を向けた。

 

 そこには、緑と命を取り戻した大地が広がっていた。

 

 長い長い悲しみが明けて、星の命は再び輝きを取り戻していた。……気づけばもう、あれから幾年過ぎたのか。

 まだ昨日の事のように鮮烈で、未だ冷めやらぬ夜の情景を想い浮かべながら、姉妹は同じ事を考えていたらしく、顔を見合わせながら無邪気な笑みを交わし合う。

 

 穏やかな日々は未だ果てず、そこには暖かな時が流れ続けている。

 それゆえに、思う。自分たちを助けてくれたあの魔法使いたちも今、同じように穏やかな時間の中にいるのだろうか。もしかしたらまた、嵐の中にいるかも知れないが、穏やかな時が流れていれば良いな、と二人は思った。

 しかし、こうしてみるとまるで映画の終幕(エンドロール)みたいだけれど、それは少し違う。

 

 ―――この星での物語もまた、これで終わりではない。これから先もこの星での日々(ものがたり)は続いていくのだ。

 あの暖かな家で、最高の家族と共に、残された星の傷を癒やしていく時間が。その中で何か、別の物語が始まるかも知れない。それこそ、〝あの夏の夜〟と同じように、混じり合う物語だって、あるかも知れないのだから。

 

 だからこれは、幕引き(エンドロール)というよりは幕間(エピローグ)。これから先の物語へと捧ぐ、束の間の節目であり、始まりの予兆。

 ……とはいえ、あまり張り詰めてばかりでは気が滅入る。せっかくの穏やかな時間を杞憂に減らすのは忍びない。いつかの約束を胸に、次の出会いへと旅立とう。

 でも、そろそろ、再会の切っ掛けくらいはあってもいいのかもしれない。いつもの返事(おれい)に加えて、今度は遊びの招待も送ってみようか。文面は、そう―――

 

 

 

 

 

 

〝―――皆さんは元気でいますか?

 

 こちらは、みんな元気です。

 星も緑も、わたしたち家族も、みんなが。

 

 もし宜しければ、此方へ遊びに来て頂けたら嬉しいです。元に戻った星を見て貰えたらいいねって、何時もみんなで話しています。

 

 わたしたちの故郷は、とっても綺麗な星ですから―――〟

 

 

 

 

 

 

 

Reflection IF/Original Detonation IF

 

~FIN~

 

 

 




 どうも、毎度おなじみの定期更新とは無縁の駄作者でございます。
 毎度毎度、遅くなってしまい申し訳ありません……。あそこまでスッキリと書いたならさっさと〆書けよって感じですが、ついついここまで掛かってしまいました。
 お待ち頂いた読者様方には本当に申し訳ない限りです。改めて、本当にすみませんでした(土下座)

 と、謝罪ばかりでもしつこいので、まずはこのシリーズをここまで読んでいただけたことについての感謝を。
 本当に長い間お付き合い頂きまして光栄です。
 皆様にお支えいただいたこと、本当に感謝しても仕切れません。お読みいただけたこと、感想や評価などといった励ましを頂けたことが、ここまで書く原動力でしたので、本当にありがとうございました……ッ‼

 そして、ここからは毎度のように内容について触れていこうと思います。

 冒頭でも述べた通り、今回の話は具体的な形にするのが難しかったので、どちらかというと余韻を重視したつもりなのですが、いかがだったでしょうか? 本当はWMの内容ももっと入れようかと思ったんですが、何か上手く書けなくて……結果的に簡素な感じになってしまいました。
 八神家で遊ぶマテ娘たちとかはちょっと書いてみたかったんですけど、なんかこの章に入れるのはスッキリしないなぁ、という感覚になってしまいまして。なんというか、むしろ書くならがっつり書きたいような感じで、今回はアミタのスマホのくだりで映画同様にざっくりまとめるような形にしてみました。案外この表現は使いやすかったので、映画に寄せた説明ながら、そこそこ文としても広げることはできた気がしてます。

 ただ、『余分な気が~』なんて言っておいた手前アレですが、個人的に加えておきたかった説明はところどころに散りばめておきました。……まぁ、散りばめるだけのつもりが、ちょっと主張が強くなりすぎた『師匠』関連を初めにとして、ユーリの過去についてや、エルトリアとの交流を少し強めたり、最後のアミタとキリエの〝お墓参り〟の意味合いを映画と少し変えたりなどしてみました。
 特に交流強化を前面に押し出して、そこから最後を少し変えた形にした感じですね。ゲーム版の結末を引き継いだ部分はいいのですが、せっかく『時間』なんていう一番大きな壁を越えられたのなら、もう少し匂わせが欲しかったなぁという欲求からこの形に。

 事件における〝司法取引〟じみた部分で管理局の闇を覗かせたことでStsへの布石を打ってはみましたが、正直そこはついでで……エゴからの交流だったり、監査目的であろうと、交流が少し強くなればあのを終わりではなくて済んだのではないか? という気持ちでこうしてみました。
 グランツ博士の寿命は確かに長くはなかったのでしょうが、『宣告されていたよりもずいぶん長い間元気でいてくれた』のなら、その時間が少し伸びたとしてもよかったのではないかなと。短き命でも生きていく意志、というのもまた……尊い輝きを持つ生き方だと思うので。

 そこに関連して、といっても余談なんですが……というか多分、見抜かれてる気もするんですけども……これはSNのイリヤと、HFのエピローグがめちゃくちゃイメージ基になっております。
 短い寿命でも家族と生きる時間を優先した形で迎える死は、死に瀕した家族を救い導くのと同じくらい幸せを伴う生き方のはずだ―――というのが、自分がこの結末にした大きな要因ですね。まあ、他にもいくつかイメージ基はあるんですけども、個人的にはそこかなとは思ってます。

 HFの方については、時間の経過の表現と約束が今回のケースと近かったので参考にした感じですね。
 過ぎていく時の中で、贖いの為に生きていく。
 これは今回の映画と似てますが、経緯が異なる分の補完と生きていく意味の違いを掘り下げて、今回の映画と加えた改変部分に合わせた形になっている、かと思います。……きっと、多分(自信無い)。

 ―――とまぁ、そんな感じで書き上げたのが今回の話でした。

 本当にここまでお付き合い頂きありがとうございます。
 これでいったんの節目ということになりますが……劇中でしつこいくらいに書いたように、シリーズの続きも予定してはおります。ただ、その前に前述したWMの内容を取り入れた部分を、番外編ということで書こうかなとも思っており、どうしようかなと。
 そこで最近はあまりやっておりませんでしたが、読者の皆様方にアンケートを取って決めたいと思います。

 大まかには、

・番外編から続編
・番外編をやらずに続編

 の二つで、そこで続きの書き方を決めてから、続編の内容を以下の四つから決めていきたいなと思います。

・TVシリーズどおりにSts
・Stsをすっ飛ばしてV
・SもVも飛ばしてFへ
・空白期の続きのオリジナルストーリー

 番外編の希望が多い場合は、番外編を書きながら少しずつ次の部分についても考えていくことにして。
 続編をすぐに見たい、という意見が多かった場合は、大まかな続編の構想を書き出したものを投稿して、そこでもう一度アンケートを取る、という形にしたいと思います。
 宜しければアンケートにお答えいただければ幸いです。


 アンケートは此方のURLよりどうぞ。
 https://syosetu.org/?mode=kappo_view&kid=202643&uid=140738


 まあどちらになるにせよ、まだこのシリーズの中で成長した魔法使いたちの物語はまだ終わっていません。
 なので、彼ら彼女らの物語をまた書いていけるように頑張りますので、今後もお付き合いいただければ嬉しいです。
 次回以降も会えることを祈りつつ、今回はこのあたりで筆をおかせていただきます。
 重ねて、本当にここまでお読みいただき、ありがとうございました‼
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。