カルデアにて、とある夜、怪物は一匹の獣に出会……う?

※うちのカルデアの場合です。

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ふと思いついたので書きました。
時系列とかは考えない感じでお願いします。

あと、うちの以蔵さんはマスターが土佐弁分からないので適当に捏造された方言を喋りますが、そもそも海外サーヴァントが日本語喋ってるので誤差の範囲。
うちではそういうことになりました。

という事でよろしくお願いします。


檻の牛魔、人斬りの犬

 ふ、と目が覚めた。

 

 何故俺はこんなところに?

 起き上がり、辺りを見回して首を傾げる。

 意識ははっきりとしているのに記憶が朦朧と――

 

(アステリオス?)

 

 ――いや、思い出した。この身をその名で呼ぶ幻聴を聞いて、全て。

 そう、全て。

 

 部屋を出て、のそりのそりと、廊下を進む。

 夜中は省エネだなんだのとかで間接照明のみの薄暗い路は、故郷に似て、しかし似ているからこそ違いが際立つ。

 

「――――、――!」

 

 四辻を渡ろうとした際に声がした。

 そちらに首を向けてみる。

 通路の途中の扉から、人工的に差し込む光と活気溢れる楽しそうな声がする。

 それだけで、瞼を閉じるまでもなく角の向こう、食堂の光景が容易に想像できてしまう。

 そんな幸せな状況があることを、そしてそれが脳裏にスッと浮かぶことを、素直に。

 「気持ち悪い」と思った。

 

 忌避する様に、食堂を避けて歩けばぐるりと回って、一回り。元いた場所、居住区へ。

 全員寝ていると言うわけではないだろうが、別室で職員に混じって働いているものもいるだろうが、通路には誰もいない。

 しんと静まり返っている。

 暗く延々と等間隔な扉の並びはまるで監獄だ。

 とても自ら進んで入ろうなどとは思えない。

 

 ならばどうするか。

 

 生き恥晒すくらいなら、いっそこのまま消えてしまおうか。

 いやいや、それともここを懐かしき我が地獄へ作り替えてしまおうか。

 ……そうだ。

 先ほどの幻聴を思い出して、思いつく。

 マスターと呼ばれる男にでも会いに行こうか。

 会って、行き掛けの駄賃代わりにその首を――

 

「おーう!照夫じゃねーきゃ!」

 

 自覚できるほどの笑みと共に浮かんだ答えは、聞くからに馬鹿の、馬鹿みたいな大声でかき消された。

 

「こんな夜遅くにどしたどした。ガキはもう寝てる時間じゃぞぉ」

 

 頭上に振り上げた腕を犬畜生の尾みたいに振り回し、馬鹿が笑顔で寄ってくる。

 記憶にある顔だ。

 この身を、異国の名は覚えにくいからと、雷とも牛とも異なる粗悪な渾名で呼ぶ男。

 クラスアサシンの英霊。東洋の島国独特の風貌をした、最強無敵と喧しい剣使い。

 英霊とはいうものの、かつての赤い麻糸持つ彼の者とは程遠い。言葉を交わす価値もない。

 視線を交わすことすらせずに横を通り過ぎようとする俺の前を、通せんぼとでも言いたげに妨げて、

 

「おいおい無視とは冷てぇのぅ。寝ぼけてんのか?あ、分かった、おまん酔っぱろうとるな?」

 

 ってそら、わしかぁ! と、呵呵大笑。

 ……苛々する。

 

「……邪魔だ、どけ」

 

 威圧とともに、腕を一閃。羽虫を払うように無遠慮に。

 それをすんでの所で躱した男は、一瞬驚きに目を見開いて。

 再び、馬鹿みたいに笑った。

 

「……なにが可笑しい」

 

 苛々する。

 

「いやの、前々からおまんは図体でかいくせに性根がやさいちゅうか弱っちぃ思とったんじゃ」

 

 ……何を言ってるんだ、こいつ。

 こうも明確に、敵意殺意を表しているというのに。

 

「さっきん照夫はよかったがや! やっぱ男はそんくらいでないとのぅ!」

「もういい、黙れ」

 

 へらへらへらへらと、まるで世間話をするように。

 

「んぁ? なんぞ言うたか照夫? 聞いとらんかったわ」

「黙れと言っている、この、囚われ風情が!」

 

 あぁ、苛々する!

 俺は、ずっと抑えていた怒りを露にする。

 この酔っ払いだけじゃない。この場所にいる者全て、どいつもこいつも。

 契約だなんだに縛られて、人間なんかに良いように使われて。

 なのに、業も願いも鎖も枷も、忘れてしまったように楽しそうにへらへらと。

 それを気持ち悪いと言わずになんと言おう。

 おぞましいと吐き捨てずに呑み込めというのか。

 滑稽と嘲らずに愛でろというのか。

 

「……やはり殺すか」

 

 この感情のまま、マスターと呼ばれるあの男を。

 それで英霊の座から降りられるわけではないけれど、いくらかの慰めにはなるだろう。

 そう決めて、歩を進めようとしたその前に、

 

「どけ、もしくは死ね。英霊の座にいるだけの人間風情が、怪物に敵うなど夢にも思うな」

 

 払っても払っても死ぬまで寄ってくる愚かな獣のように三度立ちはだかった、この酔っぱらいは、

 

「分こうた分こうた、ほいだら、この人斬り以蔵が分かりやすうしたるさかいな」

 

 聞き分けの悪い子をあやす大人のような事を言いながら、スラリと腰に挿した刀を抜いた。

 

「ん? どうった? 鈍いやっちゃの、はよかかってきぃ」

 

 ……なんだこいつ。 意味が分からない。 調子が狂う。

 こちらが敵意を見せても気づかず絡んできた癖に、今度は襲ってくれという。

 バーサーカーでもないのに気でも狂っているのか? かの国の英霊は皆こうか?

 

「なんぞよう分からんけど……」

 

 苛立ちも気持ち悪さも一時忘れて、本気で気味悪いものを感じていると、その元凶は言う。

 

「わしを殺せりゃおまんは怪物じゃ。じゃが人斬りに斬り殺されるんならそりゃただの人じゃ」

 

 ちょっと言ってる意味がわからないですね。

 

 ……だが、色々から目を逸らしてみれば、この苛立ちをぶつけても良いという。

 どうやら自ら慰みものとなりたいらしい。

 それは、遠い過去、この身に捧げられた生贄たちを思い出す。

 

「イイだろう、精々足掻いて楽しませろ」

 

 なら、望み通り、遠慮なく全てをぶつけて殺してやろう。

 実体化させた双斧を振り上げて、俺は嗤った。




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