「せやーーー!」
華奢な女子がエレオノーレに斬りかかった。
「ふん」
それをエレオノーレが避ける。
「くッ」
「その程度か?拍子抜けだな。聖遺物を使っていると聞いて、さぞ強いんだろうと思ったが…。私が出るまでもなかったな。ブレンナー、あとは任せた。私は帰る」
「に、逃げる気か!」
「逃げる?ハッ!貴様のような相手如きに、私が怖気付くはずもない。戦力の温存といったところだ」
少女に背を向け、立ち去るエレオノーレ。
「う、うおおおぉぉ!!」
尚も斬りかかってくる少女。
「目障りだ。パンツァー」
エレオノーレは、無数の
「foyer」
全ての擲弾発射器が一斉に少女に向かって発射されていく。
「う、ああああぁぁ!!」
「そのまま死ね。哀れな少女よ。まだ生きているとなれば、ブレンナー。貴様が殺せ」
「…了解よ」
「…つッ…」
少女はまだ生きている。聖遺物の使徒なのだ。これくらいで死ぬことはない。尤も、相手が黒円卓の
「くッ…創造!」
辺りに流れている川が波を立てる。
「ほう」
「消熱・水冷清浄!」
川から水柱が立ち、雨雲が雷鳴を轟かせる。
「序盤で心が折れて創造か。とんだ腑抜けだな。見るところがありそうな創造だが、私の心は変わらんぞ」
「こ、怖いのか…!私に負けるのが…!」
「ハッ!どうとでも言え。あとはブレンナーがやってくれるさ。私が手を出す程じゃない」
「ふふっ。それはどうかな」
エレオノーレがリザの方を見ると、リザが動きを止めていた。
「おい、ブレンナー。早くやれ。私は引くからな」
「エレオノーレ。あなた何を言っているの?自分でやればいいじゃない」
「なに?」
「なによ。権力を振るって他人にやらせるなんて怖気付いてるだけじゃない」
少し様子がおかしい。
(さっきまで命令には従う姿勢を見せていた…)
「創造、か…」
「カイン!」
トバルカインを使い、攻撃してきた。
「ブレンナー、
「上下関係なんてどうでもいいわ。私は…私のためにこの身体を使う!」
再びカインが攻撃しようとしたその時、
「あ〜あ~。こっちも大変なことになってんなあ。めんどくせぇけど、太極使うかー」
どこからか聞いたことのある声が聞こえてきた。
「この声は…」
すると、空から雨雲が消え、その空に幾何学模様が刻まれた。
「はっ…!私は…なにを…?」
「助かったよ。ゲオルギウス」
「どういたしまして」
「私の創造が…?なんで…!!」
少女は叫喚していた。
「つーか、シスターさんがおかしかったの、お前のせいじゃねえだろ」
「なにを…。私の創造よ!」
「あいつ…なんつったか。…ああ、ヴィクトルだ。あいつだろ。いんだろ!出て来やがれ!」
すると、一般ソ連兵の1人が首のあたりでゴソゴソし始めた。
「聖遺物を変装道具にしていたのか。わざわざそんなことする必要あったか?」
「またあなたなの!?私の邪魔はしないでっていつも言ってるじゃない!これは私が受け持った戦いなの!!」
「お前は…戦いに向いてない。渇望も、おそらく『他人を引きずり落として自分が強く』ってところだろう。だから『炎(情熱)を消す』なんて創造になったんだろう。だが、戦場ではそういったセコイ手は通用しない。私のもそうだ。先程、そこの彼に切り崩された。彼がいないところならばと思ったんだが…。まあいい。そういう事だ」
それでも少女の熱は収まらない。
「あなたには関係ない!大将閣下に任されたのは私!人の管轄に…手を出さないで!」
「『口を噤め!
少女――瑞騎が口を閉じた。
「お前は自分自身に創造を使えないのか!敵がいるところで弱みを見せるんじゃない!」
瑞騎がゆっくりと口を開ける。
「わかったよ。私が悪いんだろ!もう知らない!」
そのまま瑞騎は駆けていく。
「瑞騎!」
「あらら。仲間同士で…」
「…司狼。少し黙れ」
「はいはい。了解しましたよ。副首領代行殿」
嫌味ったらしく言う。
「ちっ。反吐が出る。敵を前にして、仲間割れか…」
そう言うとエレオノーレは詠唱を始めた。
「
すると、その場にいる全員が砲身状の結界に閉じ込められた。
「貴様ら敵兵に情など湧かん。軍人が、戦場にいる時に仲間同士で喧嘩をするなど空前絶後、言語道断。すなわち、論外だ。貴様らの軍の大将閣下殿も要らぬと思っているだろうよ。故に私が燃やし尽くしてやる」
「――――!」
ソ連軍の兵たちは絶句している。その場に立ち尽くす者、結界を壊せないかと試みる者。聖遺物の彼らは絶句する者だ。
「私の炎は相手が死ぬまで焼き続ける。貴様の創造は役に立たんぞ」
「そんなの――」
「俺がいりゃ創造は使えねえな」
司狼がいつの間にかあちら側にいた。
「もしかしたら、少佐殿の創造も消してしまうかも知んねえが…。まあそん時ゃそん時だ」
「分かってるじゃないか、ゲオルギウス。では、
カウントダウンを始め――
「――
――炎を敵兵に向け、撃った。
「
遠くの方で司狼の詠唱が聞こえたかと思ったら、結界の中に幾何学模様が浮かび上がった。
「さあ、帰るぞ」
エレオノーレがそう言った。
「結果を見なくていいのか?」
「見なくてもわかるさ。君の友人がヘマをやらかさない限りな」
「そうか…」