「はぁ、はぁ……!」
ルイズ達は森の中を走っていた。
初めはゴーレムの出現した場所から円形に探していたのだが結局見つからず、もっと奥に居るのかも知れないと思い、小屋よりも更に奥へと進んでいく。
早くしなければギーシュがやられてしまう。
全員は表情に焦りの色を浮かべながら周囲を見渡す。
するとキュルケが「あ!」と叫び声をあげる。
ルイズとアビゲイルはそちらの方を向くと、ロングビルが開けた場所の中央に立っているのが見えた。
「ロングビル先生!」
ルイズは声を張り上げて呼び、ロングビルの方へと走る。
振り返ったロングビルは三人の姿を認識すると一瞬驚いたような顔を浮かべ、それからすぐに「どうかしたのですか?」と不思議そうに言う。
「大変なんです!あっちにフーケのゴーレムが現れて……!」
「ゴーレムが!?」
「はい! それでギーシュが囮になって、フーケを探している最中なんです! 先生はフーケの姿を見ませんでしたか!?」
「い、いえ、残念ながら私は見ていませんわ……」
今にも掴みかからんとするルイズに対して、少し気圧され気味に答えるロングビル。「そうですか……」とルイズは悔しそうに肩を落とした。
先ほどの音はロングビルの耳には届かなかったのだろうか?
アビゲイルは眉をひそめてロングビルを見る。
地面に着く両足に集中してみれば、今もなお小さな揺れが伝わってくるのがわかる。
確かにあの場所から少し離れたところではあるが、何の異変も感じていないということはあり得ないだろう。
「手分けして探すのが一番でしょう。 私は―――」
ロングビルは指を差すために手を持ち上げようとしてぴたりと止まる。
ルイズは不思議そうな表情をしたが、アビゲイルは「まさか」と内心で思った。
「あちらを探しますから、あなた達はあちらをお願いします」
「「わかりました!」」
ルイズとキュルケは頷き、フーケに背を向けようとしたその瞬間。
「デルフさん、お願い」
「おう」
アビゲイルが静かにデルフリンガーに指示を飛ばす。
するとデルフリンガーはアビゲイルの手からするりと抜け――
「……何のつもりですか?」
ぴたりと、ロングビルの首元にその刃を突きつけた。
ルイズとキュルケは一瞬何が起こっているのか理解できずにぽかんと口を開けていたが、直ぐにアビゲイルとデルフリンガーの行動を理解すると、ルイズは慌てて声を張り上げた。
「ち、ちょっとあんたなにやってんのよ?」
しかしデルフリンガーは何も返事を返さず、その代わりにアビゲイルはロングビルを睨み付けたまま口を開いた。
「その外套、外していただけるかしら」
「……どうしてですか?」
ロングビルは先ほどまでの表情から一転し、まるで突き刺すような冷たい目でアビゲイルを見た。
まるで別人になったようだとアビゲイルは思い、そして彼女の正体を確信した。
両者のにらみ合いにルイズとキュルケは顔を見合わせ、息を飲んで見守る。
「それは――」
「うるせぇやい、さっさと脱がねぇと刺すぞ」
「………、………その前に杖を捨てて」
「……ちっ」
理由を話そうとしたが、面倒くせぇと言わんばかりにデルフリンガーが口をはさむ。
少し不服そうにしながらアビゲイルは更なる命令を下す。
ロングビルは軽く舌打ちをして、手に持った杖を投げ捨てると、ゆっくりと外套を脱ぎ去った。
するとそこには、ざっくりと切れ目の入った服と、切れ目から覗く止血用の包帯があった。
ロングビルは「やっぱり着替えぐらいは用意しておくべきだったね」と愚痴り、両手を挙げる。あの落ち着きを持った淑女然とした表情の面影はもはや何処にもなく、そこにあるのは獰猛な鳥類のように鋭く目を吊り上げ、見るものに恐怖を与えるように口元を釣り上げた怪盗の顔だけだ。
「ど、どういうこと? アビーちゃん、その傷ってまさか」
「そう、デルフさんが付けた切り傷よ。 ……どうやら着替える時間は無かったみたい」
馬を飛ばしても学院からそれなりに時間のかかるこの場所に一度逃げ戻り、止血と休眠をとって、すぐに学院に馬飛ばした……といったところだろう。
「え……? じ、じゃあフーケって!」
「この女って事だな」
ルイズはようやく状況を察してフーケに杖を向ける。
既に杖も捨てている上に首元にはナイフが突きつけられている為、その行動が必要だったかと言われると微妙な線だが、ルイズにとっては気分の問題だった。
ルイズは憤慨し、フーケに杖を突きつけたまま叫ぶ。
「よくも騙してくれたわね!」
「なんの疑問も持たないあんた達が悪い。 事件が発覚してから情報を集めてくるまでの時間を考えれば馬鹿でも分かると思ったんだけどねぇ?」
「ここ、この女……!」
杖を突きつけられたまま煽るようにしていうフーケに対して、ルイズは今にもその杖先から失敗魔法が漏れ出すのでは無いかと思うほど怒り狂っていた。
先程ロングビルに駆け寄った時に一瞬みせたあの驚いたような顔は、急に声をかけたからではなく、まだ生きていたことに対する驚きと言ったところだろう。
キュルケはどうどう、とルイズを宥めて杖を下ろさせると、腑に落ちない点が一つ思い浮かんだ。
「……でもなんでわざわざ戻ってきたのかしら? お宝は手に入れてるんだし、そのまま逃げちゃえば良かったのに」
「そうね……確かに。 もしかして読めなかったから、代わりに他の人を誘い込もうとしてたとか……?」
アビゲイルは考える。
あの手紙が本に挟まっていたものだと考えれば、『混沌を払う火炎』の呪文も英語で書かれているはずだ。だとすればフーケが本を読むことができずに苦肉の策に出たと考えてもおかしくはない。
しばらく顎に手を当てて考えていたが、今はそれよりも優先する事がある。
本の回収、そしてゴーレムの停止だ。
アビゲイルは再びフーケに近づき、マントの内側にでもしまっているであろう本を回収する為に手を伸ばしたその瞬間。
「はーい残念、大外れです!」
この場に似つかわしくない、 まるでクイズの司会者のような台詞が森に響いた。
透き通ったソプラノのような声質なのに、砂糖を入れすぎたコーヒーのように甘ったるく、そして嫌に残る。
「ッ、誰?!」
アビゲイルは慌てて振り返る。
するとルイズの真後ろには紫陽花のような淡い紫色の髪を腰あたりまで伸ばし、ニコニコと楽しそうな笑みを浮かべながらルイズに杖を突きつける女性がいた。
「っいつの間に……!」
「おーっと、動いちゃダメですよ? ちょっとでも動けばこの娘のお腹がR-18G的な事になっちゃいます」
キュルケは慌てて杖をルイズの後ろに立つ女に向けようとすると、女はルイズの背中に杖をぐりぐりと押し当ててそう言った。
ルイズはひぃ、と声を上ずらせる。
この女はいつの間に現れたのか。
音もなく、気配すら隠して忍び寄るなど、並大抵の人間ではない。
フーケに仲間が居るという話を全く聞いた事がなかった為、相手が複数人いる可能性を考えなかった過去の自分を恨んだ。
「お、おい、オメェこそ下手な動きすんじゃねぇそ。 フーケの命はこの俺が握ってるんだからな」
「はあ……何ですかあなた。 武器風情が喋りかけないでくれますか?」
「なんだと――――うお!?」
女が指をパチンと鳴らすと、デルフリンガーは急に浮かぶことをやめ、地面へと墜落する。デルフリンガーはなんとか再び浮き上がろうとするものの、その場から動く事ができなかった。
縛り付けられたと言うよりは、《飛ぶ力を失った》と言ったほうが正しいかも知れない。
「先住魔法……!?」
杖なしで発動した謎の魔法を目の当たりにしてキュルケは驚く。
聞きなれない単語にアビゲイルは女から目を離さないようにしながら聞いた。
「先住魔法……?」
「精霊の力を借りて使う魔法……簡単に言えば杖なしで使える魔法よ」
「ぶっぶー!!違いますー!精霊なんて綺麗な力じゃありませーん。 もっとカオスでコズミック的な邪神パワーですー!」
けたけたと再び愉快そうに笑う声。
その鬱陶しさにアビゲイル達だけではなく、フーケでさえ顔をしかめていた。
「全く、助けてもらった事は感謝してるが、もうちょっと真面目に出来ないもんかね。空気が台無しだよ」
「えー、いいじゃないですか。 それよりもほら、約束はまだ果たされていませんよ?」
「ちっ……分かってるよ」
そういうとフーケは《アースハンド》を唱え、アビゲイル達の足を縛り付ける。 その後自分たちのいる開けた場所の中央から、端の辺りまで移動し始めた。
よく見ると、この広間の地面には巨大な五芒星の魔方陣が描かれている。
今まで気づかなかったのはその魔方陣の余りの巨大さゆえだろう。
アビゲイルは足に絡まりついた土を何とかはがそうともがきながら、女を睨み付け言った。
「約束って何……?」
「ふふふ、とぼけちゃって。 あなたを殺す事に決まっているじゃないですか」
当然でしょう?と言った様な口調で女は言った。
アビゲイルは「え?」と声を漏らす。
あなたたち、ではなく、
それは追っ手を退けるという事ではなく、明確に自分を狙っているという発言に他ならなかった。
「困るんですよね、あなたみたいな存在。 あなた自身が銀の鍵? 外なる神の巫女? そんなの認めません。 ニンゲンはニンゲンらしく、無様で楽しい狂気の
先ほどまでのふざけた声の調子はなりを潜め、吐き捨てる様にして言い放つ。
言っている意味が分からない。
だが、『銀の鍵』という単語は何度か耳にした事があった。
「『銀の鍵』って何なの……? あなたは、何か知っているの? もしかして……私の中の恐ろしい力と何か関係があるの?」
「おいよせ、相棒」
何か知っているのかもしれない。
教えてくれる事などあり得ないとは思っていだが、アビゲイルは聞かざるを得なかった。
デルフリンガーが驚いたような声を出して止めようとしたが、どうしてもこの恐ろしい力について知りたかったのだ。
震える声で聞いてみると、女は目を丸くし、口を抑える。
それは貼り付けたような作られた表情ではなく、彼女がここに来て初めて見せる、心の底から驚いている顔だ。
「あ、あなた……まさか記憶喪失にでもなったんですか?」
「……っ」
アビゲイルは静かに俯く。
銀の鍵の事やこの力の事だけじゃなく、この目の前にいる女の事も分からない。
あの手紙だって、おそらく自分の知っている誰かが自分に宛てて書いたものに違いなかった。それなのに、肝心な事は何も思い出せない。
女は次第にぷるぷると震え、次第にそれは堪えられない程の笑いへと変化した。三日月の様に口角を吊り上げ、ひいひいと言いながら笑いすぎて涙さえ流している。
「あははははは!! 何も知らない! そんな事ありますか? そんなにも巨大で邪悪な力を持っていながら!?」
「お、おいよせ!何を言うつもりかしらねぇがこれ以上相棒を苦しめるんじゃねぇよ!」
「ふふ、ふふふ。 知りたがったのはその子じゃないですか。本当ならそういうのは自分で発見して欲しいんですけど……どうせあなた達はここでデッドエンド。 冥土の土産に教えてあげましょう! 出血大サービスです」
女は心底愉快そうにしながら、ルイズに突きつけた杖を離すとくるくると踊る様にアビゲイルの目の前に移動した。
「あなたは『銀の鍵』。 窮極の門を開く事の出来る唯一の鍵たる存在―――そして、その先に眠る限りない空虚の力を宿す虚無の巫女。……もっとも、過去のあなたならともかく、今のあなたにはその真髄の一端を現すのも難しいでしょうけど」
「はあ……? 全っ然意味がわかんない! 結局はどう言うことなのよ!」
くすくすと笑いながら言う女に、ルイズは苛立ち声を荒げた。
女は一瞬不服そうに口をへの字に曲げ、やれやれと見下したような溜息を吐いて言う。
「要するにあなたは超危険人物って事ですよ。 あなたの中に眠る力が暴れ出せば、隣にいるお友達どころか、こんな世界一瞬で壊せちゃうんじゃないですか? 」
「嘘……」
漏らした声は一体誰のものだったか。
アビゲイルはふらふらと揺れ、倒れそうになる。
その顔色は今にも気絶してしまいそうなほど真っ青で、それ程までにショックだったのだろうという事が伺える。
「ア、アビー……」
「……そんな……」
―――この力はそんなに危険なものだったのか。
もちろんこの女が嘘をついている可能性もあるが、女の言葉を嘘だと言い張るのは少し楽観的すぎると言わざるを得ない。
現に自分の中に眠るこの力は謎な部分が多く、それでいて男の腕やギーシュの生み出したワルキューレを粉々にする程の破壊力を持っていたのだ。
それがまさか、世界を壊せるなどと言う冗談みたいな規模だとは思えなかったが―――きっと彼女の言う『真髄』とやらを発揮したとき、世界を滅亡させるほどの力になってしまうのだろう。
ずきん、ずきんと頭が痛む。
女の話がトリガーになったかのように、アビゲイルは何かを思い出せそうな気がした。
「……さてさて!私好みの絶望顔を見られて満足したところで、そろそろこの世界からご退場願いましょうか!」
そんな事には気付かず、女はステップを踏むようにしてフーケの方へと近づいていく。
「フーケさーん! あとは私が教えた通りの呪文でお願いしますね。
「分かってるよ」
森の奥へと消えて行く女の姿を横目で見てから、フーケは『混沌を払う火炎』―――クトゥグアの招来の呪文が書かれた魔法書を手に取る。
「あんた達には悪いけど、そういう取引なんだ。 ここで死んでもらうよ」
本を開きはしないが、表紙を艶めかしい手つきで一度なぞると、にやりと口元に笑みを浮かべた。
「不味いわよ! このままじゃあたし達殺されるわ!」
「……待って。あのメモに書いてある事が本当なら、フーケはクトゥグアを呼び出すことはできないはずよ」
「え?どういうこと?」
キュルケは疑問符を浮かべる。そういえばあの時のメモの内容を聞いたのはデルフリンガーと自分だけだったなと思い出し、説明する事にした。
「あの本に書かれている招来の呪文を完成させる為には、アビーの……銀の鍵? の力が必要みたいなの。その力で門を開いて、フォーマル……なんとかからの道を作ってあげないといけないって」
「ん、んん……?ごめんルイズ、あなたの言ってる事全然良く分からないんだけど……つまり、あの本を持ってても意味がないって事?」
「そのはずよ」
ルイズは若干不安が残っているものの、そう言い切った。
確認を取るようにして「そうなの?」とキュルケが俯いたままのアビゲイルの方を向く。
するとアビゲイルは急に目を見開いたかと思うと、狂ったように叫んだ。
「駄目! 呪文を止めなきゃ!!!」
「え? そ、それはそうだけど別に大丈夫って話……」
「そうじゃなくって……!!あの、あのあれが、あれが出てくるの!」
「あれあれってどれよ?!?」
わたわたと慌てふためくアビゲイルの言葉にルイズが困惑していると、フーケがついに呪文を唱え始めた。
「ふんぐるい むぐるうなふ くとぅぐあ ふぉまるはうと んがあ・ぐあ なふるたぐん いあ! くとぅぐあ!」
一度目。
地面に描かれた魔方陣が淡い光を放ち始める。
それは目に見えるほど濃厚な魔力の輝きだ。
あの女が満たしたのか――それともあの魔法書が満たしたのか。それは分からないが、ルイズ達の感じたことのない程の強い魔力だった。
「ふんぐるい むぐるうなふ くとぅぐあ ふぉまるはうと んがあ・ぐあ なふるたぐん いあ! くとぅぐあ!」
二度目。
空間が揺らぐ。
アビゲイルが鍵を捻った時に現れる虚空と少し似た、暗くて巨大な通り道だ。
その穴こそ、フォーマルハウトとこの地をつなぎ、クトゥグアを導くための門なのだろう。
「……ふんぐるい むぐるうなふ くとぅぐあ ふぉまるはうと んがあ・ぐあ なふるたぐん いあ! くとぅぐあ!!!」
そして―――三度目。
先ほどの空間の揺らぎは完全なものとなり、ついに異界への通路が完成した。
ルイズ達はまるであの穴に吸い込まれてしまいそうな錯覚を覚えながら、この後に現れるであろう脅威に身を強張らせる。
「ははは!さあさっさと現れて燃やし尽くしちゃいな……!」
フーケは高らかに言い放つ。 しかし――
「……? 何も……来ない……?」
ルイズはきょとんとしながらその異界の通路を眺める。
その奥先から現れると思われた炎の権化が、姿を現さない。
「どうなってるんだい! あの女、嘘をついたってのかい!?」
「……な、なんだかよくわからないけど、ほら、やっぱり何ともなかったじゃない。『混沌を払う火炎』なんてちっとも姿を現さないし!」
形成逆転、と言うべきか。 先ほどまでの態度が入れ替わったかのようにフーケは慌てだし、対してルイズは強気の態度で笑っている。
「おっぱいの姉ちゃん! 俺を魔法で引っ張ってくれ! 俺で土を削れば拘束も溶けるはずだ!」
キュルケは言われた通りに《レビテーション》で浮遊させ、土に刃を触れさせてみると魔法が解けたように土が崩れた。
どうやらデルフリンガーには魔法を打ち消す効果があるらしい。
「やった!」と喜びの声を上げ、アビゲイル、ルイズの順番で拘束を解く。
「くそっ! それらしいゲートは出来ているのに……なんで出てこないのさ!」
「フーケも案外間抜けなところがあるのね」
「全く驚かせてくれちゃって。 今度はあたしたちがフーケを捕まえる番ね」
まだ捕まえた訳ではないが先ほどの絶体絶命を乗り越えたルイズ達は既に勝ったような、余裕そうな表情を浮かべて言った。出るはずのないものを出ると信じ、未だ本を手に異界の通路を睨みつけている。
しかし余裕そうなルイズ達とは対照的に、アビゲイルは未だ必死な形相で二人の手を思い切り引っ張った。
「二人とも、逃げましょう! 今すぐ!」
「きゃあ!? ちょっとなにするのよアビー!」
「そうよ、フーケを捕まえる為にここまで来たのに」
「いいから!もう出てくるかも!」
今までに無いぐらい興奮したアビゲイルがぐいぐいと引っ張ってくる。
時折ちらちらと、異界の通路を怯えた表情で見ていた。
二人はアビゲイルが何に怯えているのか全く分からず、もう一度開かれた異界の通路を眺める。
その通路は閉じることなく、未だ開いたままだ。
ぽっかりと空間に穴を開け、今もなお通路を開き続けている。
しかしそこから
「――――」
あ。という声は、音には成らなかった。
ルイズとキュルケがそれを認識した瞬間、全身の熱が抜き取られていくような感覚に襲われたのだ。
それはまるで、松明のような小さな炎。
脅威と呼ぶには程遠い、程のちっぽけな炎だ。
しかしルイズとキュルケは即時に理解する。
ゆらゆらと揺れる炎から伝わる、明確な敵意。
見るだけで心を揺さぶられるような、冒涜的な光。
あれは『混沌を祓う火炎』などではない。
言うならば、『混沌を
炎はやがて、異界の通路を抜けるとゆらゆらと円を描く様に回転を始める。
それはまるで、元々環状の炎であったかのように輪を作ると、その中心から炎の花弁が生み出された。
一枚、二枚―――そして三枚。
今ここに、炎の花が咲いた。
コメントで随分前に「●●出てきたらやばいな」って感じの事言ってた人は大正解。有能探索者でしたね……
アビーちゃんが急にあれリーマンになったのは邪神がドヤ顔で情報を小出しにしたからです。
冥途の土産を与えられて冥途に行った人をあまり見たことが無いぞ~~??