虚無と銀の鍵   作:あいあむぬーぶ

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3章終わったどおおおおおおおおおおおおおおfoooooooo


38:トラウマ

「キュルケさん……!」

 

 アビゲイルは嬉しそうに顔を綻ばせ、彼女に駆け寄ろうとする。 しかしそれから直ぐにハッとしてその身体を制止させた。

 

 今直ぐにでも飛びつき、抱きしめ、その温もりを感じたかったが、自分にはその資格は無い。 あれほど心に傷を負ったキュルケが、自分のことを受け入れる事など―――

 

「……ふふ、アビーちゃんも久しぶりね」

「!!」

 

 ぎゅっと向こうから抱きしめられ、アビゲイルは目を丸くする。

 燃えるような赤毛が頰をなでて少しだけくすぐったく、強めの力で抱きしめられた事によって胸に押し付けられ、少しだけ苦しい。

 しかしそれよりも何故、という思考がアビゲイルを困惑させていた。

 

「んー……やっぱりこの抱き心地は最高ね。 抱き枕にしたらぐっすり眠れそうだわ」

 

 にこにことこちらの困惑など御構い無しにキュルケはその抱き心地を堪能する。 ふがふがとしばらく布に当たって喋らないでいたアビゲイルであったが、しばらくもがいてようやく口を開くことができた。

 

「……怖く、ないの? 」

 

 私が、という言葉を飲み込み、目を泳がせる。

 するとキュルケは優しい微笑みを浮かべて答えた。

 

「全部が怖くない訳じゃ無いけど。 ……でも、アビーちゃんの事は好きよ? それだけは変わらないわ」

「……っ!」

 

 じわりと目頭が熱くなり、鼻の奥がつんとする。

 アビゲイルは再びキュルケの胸に頭を押し付けた。

 小さなしゃくり声は授業が始まる直前まで繰り返され、その間もずっとキュルケの胸の中に顔を埋めるのだった。

 

 

 

 

 

「では授業を始める前に自己紹介をしよう。 私は『疾風』のギトーだ」

 

 長い黒髪に、夜の様なマント。 教師と呼ぶにはやや不気味なその佇まい。 そしてやや高圧的な態度のこの男は、生徒たちに人気がない。

 

「諸君らに問おう。 最も優れている系統とは一体なんなのか。 誰が答えられるものはいるかね?」

 

 最初に二つ名を自慢げに語っといて何言ってるんだこいつ。 と、多くの生徒は思ったが、ルイズの思考は全くの外。 昨晩に見た夢を思い浮かべていた。

 

(アビーの魔力が私を犯してきている……?)

 

 昨日夢の中に出てきた()()がそう言っていた様な()()()()。 所詮は夢だといえばそれまでだが、昨日見た夢はなんだかいつもよりもリアリティがあった。 どろりと混じり合い、溶け合い、ルイズとアビゲイルが一つになったならば―――二度とあの夢から覚醒しなかっただろう。

 

(ああ、もう、どうすれば良いかだけ聞けばよかった!)

 

 理由を聞く前に暴れ出したのは間違いなくルイズなのだが、ルイズはそれを棚に上げて()()に向かって憤慨した。

 

 夢に現れた人物―――再びこちらにコンタクトを取る様なことがあれば良いのだが、その人物がどの様な声で、どの様な姿をしていたか、いまいち思い出すことができないでいた。

 結局のところ、昨晩の出来事は人が眠りにつき、目覚めた時には殆ど記憶から消え去ってしまう夢の一つに過ぎないのだ。

 

 ルイズがもやもやとしながらそうしていると、アビゲイルが突然ギトーに指名され、少し驚いた様な表情を浮かべた後に緊張した面持ちで返事をする。

 

「は、はい! ええと……どの系統も強みが違うから、決められないと思います。 水は人の心と身体を癒す事においては最も優れているし、土だって生活には絶対欠かせないですから。 風や火も同じです」

「ほう……」

 

 アビゲイルは急な指名にちょっぴりドキドキしながら落ち着いて答える。

 するとギトーは少し意外そうな表情を浮かべ、それからやや不服そうな声を漏らした。

 

  わざわざ生徒ではなく使い魔であるアビゲイルを指名したというのも、大方無知な使い魔を出汁にして「それは違う。 最強の系統とは〜」と繋げる魂胆だったのだろう。 しかしアビゲイルは意外にも生徒の多くを納得させる様な答えを用意してきた。

 

「まあそれは間違いでは無いだろう。 それぞれの系統には可能な事、不可能な事が存在する」

 

 しかし……とギトーは続ける。

 

「最も『脅威となり得る』系統は何か? それならば答えられるだろう。 ミス・ツェルプストー」

 

 ギトーは目線をキュルケへと向け、再び問いかける。

 こいつ、意地でも「風が最強だ」と言わせる気だな、と誰しもが思ったが、それを火のメイジあるキュルケに振るというのも性格が悪い。

 事実、ギトーの表情には自分の持つ系統こそが最強だという傲慢さと、それ以外の系統を見下す様な嘲りが浮かんでいた。

 

「……それならば、火じゃありませんこと? ミスタ・ギトー」

「何故そう思う?」

「燃え盛る炎は全てを焼き尽くす。 燃え広がる炎は圧倒的な熱量と破壊力を持って―――その場にいる物全てに絶望を齎しますわ」

 

 そう語るキュルケの瞳は、口元に浮かべている笑みとは対照的に真剣だ。

 

 イォマグヌット。

 

 あの炎の化身(絶望)を目の当たりにしてしまったのだから、当然の事かもしれない、とアビゲイルは思った。

 しかしギトーは仕返しといわんばかりに、ふんと鼻を鳴らし、再び嫌らしく口元に嘲笑を浮かべて言った。

 

「残念ながら、それは違うな。 正解は風だ。風はすべてを薙ぎ払う。水も、土も、当然火さえも風の前では立つことすらできない。残念ながら試したことはないが、『虚無』さえ吹き飛ばすだろう。それが風なのだよ、諸君」

 

 小馬鹿にした様な声色に教室の生徒に苛立ちが募る。

 当然その様な口ぶりをされてしまえばキュルケの表情にもそれが浮かんで見えた。

 

「ふむ、不満そうだな。 ……君は火のメイジだったか。 ならば、君の炎を私に思い切りぶつけてみると良い。 それで全てが分かる」

「……っ」

「どうしたね? かの有名なツェルプストーの赤毛が飾りでは無いというのなら、君の全力をもって火の系統が風を打ち破ることを証明してみせたまえ」

 

 ギトーの煽りに対して流石に苛立ちを抑えられなくなったのか、キュルケは杖を構える。 しか一向に呪文を使う気配を見せない。 ただ杖を構え、今にも火球(ファイアボール)をあの憎たらしく傲慢な教師にぶつけようとする姿勢を取っているだけだった。

 

(どうしたのかしら……?)

 

 アビゲイルだけではなく、教室の生徒たちも皆その姿を不審に思った。

 キュルケの性格からして、この憎たらしい教師を前に――それも家の名前まで出されて怖気付くなどとは考えにくい。

 

 何を躊躇っているのか?

 アビゲイルはキュルケを見た。

 するとそこに映るキュルケの姿に、アビゲイルは目を丸くした。

 

 キュルケはギトーなど見ておらず、ただ自分の杖の先を見つめていた。

 その指先は躊躇っている、というよりは怯えている様に震え、杖の先はその震えに答える様に揺れ動いている。

 

 ――要するに、火が怖いのだ。

 それも、自分の得意とする呪文が扱えなくなってしまうほどに。

 

「……恐れをなしたか。 まあ、無理もない」

 

 やれやれ、とキュルケの様子にさえ気付かずにギトーは悦に浸った声を出す。

 

 ……なんだかむかつく。

 どの系統が最強か?という議論などアビゲイルにとってはどうでも良かったが、まるでキュルケを馬鹿にされている様な気がして、アビゲイルは胸の内にもやもやと不快な気持ちが沸き起こる。

 

 何か言ってやろう、とアビゲイルが立ち上がろうとしたその時、

 

「私がやります」

 

 隣に座っていたルイズがすっと立ち上がり、素早く杖を構えた。

 

「ルイズ……?」

「何……?」

 

 キュルケはぱちくりと驚いた様に、ギトーは眉をひそめてルイズを見た。

 しかしルイズはそれらの反応を全く気にも留めずに「行きます」というと杖を振った。

 

火球(ファイアボール)

 

 次の瞬間、発動したのはやはり当然と呼ぶべき爆発。

 慌ててギトーは風の呪文で防御しようとするがそれを貫通。 ギトーはあえなく吹き飛ばされ、背後の黒板に叩きつけられた。

 

「…………どうやら私の火の呪文の方が上だったみたいですわね」

「る、ルイズ……やりすぎじゃない……?」

「そんな事ないわよ。 ねえ?」

 

 失神したギトーを眺めながら声を震わせるアビゲイルに対してにこり、と笑顔を浮かべるルイズ。

 生徒たちは「あ、これはキレてるな」と直ぐに察し、こくこくと冷や汗をかきながら頷くのであった。

 




3章、そして沢山のゲームと資格勉強。 そしてゾンビランドサガ。
面白いのに周りが全然見てくれない、悲しい……ポロロン。


ストーリーをまったり進め、ようやくクリア。
新サーヴァントの虞美人さん、おっぱいがね、ぐふふ。
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