英雄の条件って知ってる?

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マジ天職

『英雄ってのはさ、英雄になろうとした瞬間に失格なのよ。お前、いきなりアウトってわけ』

 

 

 あの言葉が僕の一つの分岐点になった。

 僕は昔から英雄(ヒーロー)になりたかった。香川先生ならそれを教えてくれると思っていた。

 僕には勇気がある。僕は大切な者を犠牲にした。

 だから、それで英雄になれると信じていたのに、英雄の条件はそうでは無かったらしい。

 

 何でだろう、未だに良く解らない。

 どうして、車に轢かれそうな親子を助けるために飛び出したのか。

 どうして、それによって今死のうとしているのか。

 ああ、わからない。わからないわからないわからない。

 英雄になるための条件って、けっきょくなんだったのかなぁ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

―――――――――――――――――――――――

 

「またしても、またしてもタイガがやってくれました」

 

 テレビではアナウンサーが今朝の出来事について放送していた。

 

 『変身』の個性を持った英雄(ヒーロー)タイガ。

 それが僕の今の身分だ。

 

 気が付けばこの世界にいた。

 車に轢かれたというのに血の染み一つ存在しない身体には驚きはした。

 だが、それ以上に驚いたのは此処では英雄(ヒーロー)になることは割と難しくは無いということだ。

 

 誰も大切な者を犠牲にせず、ただ勇気があるだけで英雄(ヒーロー)になれる。

 英雄はただ一人でいいとも思うけど。

 

 それでも英雄(ヒーロー)になれるのならそれで良かった。

 僕は手続きを踏んで英雄(ヒーロー)へとなった。

 

 

 英雄(ヒーロー)ってのは素晴らしいね。

 何故素晴らしいかといえば英雄(ヒーロー)だからだ。

 英雄(ヒーロー)になるために英雄(ヒーロー)になった。

 それが(タイガ)という英雄(ヒーロー)だ。

 

 

 因みに今僕は、人質に取られている。

 テレビに映っているみんなが知っているタイガの姿では無く、東條悟としての姿でだ。

 生身の僕が英雄(ヒーロー)として有名になれないのは不満はあったけれど、それ以上に利便性がある。

 第一、正体不明の仮面の英雄(ヒーロー)ってカッコいいだろう?

 

 銀行に口座を作りに行っていた僕を人質にとった犯人は、前世では見ない…いや、一部の人間しか見ないような異形の姿をしていた。

 一部といったのは、モンスターやライダーを知る人間のことだ。

 その例外である僕らからすれば、それ程変わったものでは無い。

 更に言えば、倒すべきヴィラン()として見栄えが良い。

 

「もしかして、あんまり頭良くないんだ」

 

 僕の顔の前にナイフを突きつける犯人にそう告げた。

 僕の顔が僕の顔が映るくらい(・・・・・・・・・)キラキラと輝くナイフをもって、

アドバンテージを持っていたつもりの犯人はキレてしまったみたいだ。

 

「頭が悪いのはお前だ。直ぐに死にたいらしいな」

 

 

 少し挑発したら直ぐにこれだ。

 まったく、最近の若者はサイコパス気味じゃないか?

 まっすぐに英雄(ヒーロー)を目指す僕を見習うべきだ。

 だから不幸にも引き立て役(ヴィラン)なんてものになる。

 いったい彼の不幸の原因は何だろう?

 

「香川先生がいれば教えてくれたかもね――――変身」

 

 

 

 僕の個性(・・)は光を反射する物を媒介としてタイガに変身すること。

 以前の世界とその点においては大きく変わりは無い。

 変わったことといえば、ミラーワールドに入らずに戦うようになった事だろうか。

 

「お前は、タイガッ!?」

 

 悪党(ヴィラン)が何か言っている。

 今から英雄(ヒーロー)であるために悪の手先(ヴィラン)である彼をを倒してしまうわけだけど。

 

「そう、僕がタイガ。残念だ。君とはもっと早く知り合えたら良かったのに。

そうすれば親友になれたかも知れない」

 

 そして、その大切な者(親友)を倒せば、僕はもっと英雄(ヒーロー)に近づけるかもしれない。

 

「みんな友達でハッピーというわけか?

新進気鋭のヒーローは随分とおめでたいな」

 

 君も仲村くんと同じで、わからない人なんだね。

 僕がどれだけ真剣に英雄(ヒーロー)をやっているのか全く理解してくれていない。

 この世界に香川先生がいれば良かったんだけど、いないから僕がその役をしなくてはいけない。

 

「いいですか、多くを助けるために、ひとつを犠牲に出来る勇気を持つ者が真の英雄なんです」

 

 先生の言葉をしっかりと覚えておいて欲しい。

 例え、その意味が無くなるのだとしても。

 

「まるでヴィラン(こちら側)みたいな言い方だ」

 

 僕がヴィラン(やられ役)

 

「まさか。僕は仮面ライダー(英雄)だ」

 

 

 

 

 

 完全に僕の方に気を取られている犯人(ヴィラン)の後ろからこの世界に着いてきたデストワイルダーが姿を現し、

引き倒しては僕の方へ引き摺ってくる。

 

 英雄(ヒーロー)はカッコよく決めなくてはいけない。

 巨大な爪であるデストクローを装備し、腰だめに構える。

 デストクローの周囲には極寒の冷気が渦巻いている。

 

 

 デストワイルダーに背中が焦げるほど引き摺られたヴィラン(獲物)をデストワイルダーが僕に放り投げる勢いに向かい合うように、

僕は爪を突き出すように振り抜いた。

「ファイナルベント――――」

 熱さに苦しんでいるなら、冷やしてあげなければいけない。

「――――クリスタルブレイク」

 

 

 冷気を一気に放出すると、悪役(ヴィラン)の身体は木っ端微塵になった。

 

 

 

「さっすがタイガだ。カッコいいぜ」

「あんなこわいのとたたかうなんてヒーローってすごーい」

 

 銀行強盗(ヴィラン)が倒されて、そして倒したのが仮面ライダー()であると気が付いた子供達が走ってやってきた。

 ヒーローインタビューじゃ無いけど、彼らにも英雄として道を示すべきだろう。

 僕は座り込んで彼らに目線を合わせて答える。

 

 

「戦うことは英雄(ヒーロー)になるために必要なことだから。仮面ライダーは英雄(ヒーロー)でないと」


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