東方八百語   作:さわたり

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むずい


五面:白玉楼『亡霊の集う獄炎少女』

「冥界への抜け道?」

 

「そ、この辺は瘴気霊気のせいでその辺あやふやなのよ。ヒガンバナも魂のせいであんなにもブワッと咲いてたわけだし」

 

「わしは来とらんきー、よくは知らんぜよ」

 

一向は再思の道をより進み、無縁塚へと向かっていた。

その一帯は冥界との境界が薄い。さらに外の世界との境界も揺らぎやすいために神隠しにあう人も多い。それほどに霊魂の持つエネルギーは大きいのだ。

地理や慣れの都合上、エディアを魔法の森にて待たせ、3人で進んでいた。

 

「そろそろ息止めなさい。取り憑かれるわよ」

 

「なんじゃそりゃ・・・」

 

少し困った様子で口を塞ぎ、霊夢を追って進む。霧はどんどん強まり、一帯真っ白に。

 

そんな中、奥に光が。ぼやっと映るそれに向かって加速。霧を抜けた先に見えたのは、白玉楼の階段前の灯篭であった。

 

「おいおいまじかよ・・・本当に入れちゃったぜ」

 

「わしも桜を見に来たことはあったが・・・こんな方法は初ぜよ」

 

2人は驚いた様子で目をパチパチさせながら見渡した。

 

「普段はあの辺の境界が緩くてね。あそこから来るんだけど・・・」

 

「今回は閉じられてたから・・・か」

 

霊夢を先頭にゆっくりと石畳に降り立つ。その様子を見て妖夢が近づいた。

 

「来てくれたのね。その魔女ってのの閉じ込めに成功してるかは分からないけど・・・」

 

「多分成功してるわよ。こっちでは見当たらなかったから。ま、居たら居たで咲夜とか早苗が駆り出されるでしょ」

 

そう言って遠くに見える白玉楼を見上げる。夏というのもあって、観光中の霊魂は少ないようだった。

 

「日本・・・っていうか幻想郷の冥界はこんな感じなんだねぇ」

 

そんな中、空を舞う黒い外套の少女。ゆっくりと霊夢達に近づき、石畳へ降り立った。

 

「途中で元同業者に当たる死神のやつを見たんだけどね、閻魔管理区でもへカーティア様管理区でも対して変わったこたぁないね」

 

「誰よあんた」

 

「カロン・ステュクス。元地獄の渡し守さ。ま、訳あって辞めた・・・っていうか仕事なくなったけどね」

 

「そいつはご苦労ね。で、何の用よ」

 

「ちょいとこっから先は通せないのさ」

 

霊夢達の前に通せんぼのような形で立ち塞がる。

 

「ならどかすまでよ」

 

「そう言うと思ったよ。通るなら私を倒して通りな」

 

再び空へ飛び上がるとスペルカードを見せて指で挑発。霊夢がそれに乗り、逃げと追いの形で攻防が始まった。

 

カロンの放つ弾幕が渦を描いて霊夢へ飛ぶ。横から混ざる悪霊どもを叩き落としながら、少しずつ距離を置きながら攻撃した。

 

・・・はずなのだが、気づけば追い始めよりも近い位置に霊夢は居た。

 

「なによそれ・・・もしかしてあの死神みたいな・・・」

 

「わたしはその死神を知らないからなんとも言えないけど・・・とにかく縮める。幻想郷っぽく宣言するなら『縮める程度の能力』だね」

 

「へー、面倒な能力もあったもんね!」

 

少し苛立った様子で接近。離れられないならむしろ近くへと言うことだ。

 

「そう来るんだね・・・それなら・・・支流『嘆きの濁流』!」

 

スペル発動。河の大氾濫とでも言うべき光弾の奔流が8を描くように流れる。

 

「ずいぶんと危ないわね・・・」

 

隙間をギリギリ縫い脱出。収斂し一本の光弾になった。遅かったら巻き込まれて叩き落とされていたはずだ。

 

「ルールのギリギリ攻めて来るわね」

 

「完全に塞がなきゃいいって話でしょ?私を倒しって言うなら頑張って抜けてよ」

 

「最初っからそのつもりよ・・・!」

 

再び放たれる水流をかわし、かわし、かわし。6回ほど繰り返したのちスペル技が終了した。

 

「それならこいつだ。特例『英雄渡し』」

 

立て続けにスペル発動。武器の形を模した弾幕が彼女を中心に広がる。

 

「これまたギリギリで・・・!」

 

回転しながら近づく鎌と剣の間を抜ける。死なないと分かっているとはいえ、物怖じがない。戦いながらもカロンは感心していた。

 

追加でさらに円を広げる。武器と武器の隙間、円と円の隙間を見事に抜け、カロンに接近。カラフルな球弾をばらまく。間を抜けるカロン。しかし霊夢の目的はそこではない。

 

「そこ・・・!!」

 

むしろ避けさせるもの。弾幕を避けた一瞬の隙に札を当てた。

 

「あいたた・・・やられちゃったなあ。ま、あの子はそう簡単に倒されてくれる子じゃないし、良いか」

 

「だったらどきなさいよ。なんなら案内もしなさい」

 

「案内は要らないよ。あっちのお屋敷に向かえばぶつかるさ」

 

「なるほど。ま、一応信じたげるわ」

 

そう言ってカロンの横を抜ける。負けた以上はその背を見ている他なく、少しもどかしげであった。

 

「しかしなんかよくわかんない化け物がいるわね」

 

「わしにゃ『あんでっど』ってのに見えるぜよ」

 

「地下のゾンビフェアリーみたいな・・・ファッションゾンビじゃ無さそうだな」

 

白玉楼へ向かう中、鎧を着た骸骨の化け物が現れていた。一体一体は弱く、弾を当てればすぐ倒せるので実害は薄い。

 

しかしながら、どこから湧いたかという疑問がある。幽霊には見えない。まして白玉楼で花見などありえなさそうな見た目であった。

 

「なんなのよこいつら・・・」

 

「私の・・・部下、ですかね?」

 

白玉楼あたりまで来た頃に、1人の少女が現れる。黒い服や美しい金の髪が目立つ『魔女』ジャンヌ・ダルクである。

 

「あの方に必要としてもらうために・・・貴女達を倒す」

 

「ずいぶんちっさい理由ね」

 

「小さい・・・?私は今まで・・・ただただ認められるためだけに走って来たのです。それが小さいものだとは思いませんね。もはや他のことは諦めた。私は自己中心的なんです」

 

「あっそう。それは勝手にしてもらっていいんだけど。でもここでアンタを倒さなきゃ私達も大変なのよ。倒されてくれるかしら?」

 

「救世主としてそれはできませんね」

 

「私達も救済しなさいよ」

 

「ええ、しますとも。私の炎でしっかりと救済してあげますから」

 

「メンヘラってやつね。菫子が言ってたわ」

 

「なんですかそれ」

 

「気を病んでる人のことだってさ」

 

「なるほど。焼かれた時にどこかネジが外れちゃったのかもしれませんね」

 

「かもしれませんねってあんた・・・」

 

「とにかく救いをご所望なのでしょう?いいですとも。私()がしっかり救って差し上げます」

 

そう言って彼女はスペル、『救済の炎』を宣言。全方位に広がる炎を展開した。

 

かなりの高速かつ狭い空間で来る炎。霊夢でさえもギリギリで避け続ける。

 

「なかなか強烈なの来るわね・・・!」

 

苦しくも全て避け切り、反撃を開始。しかし戦い慣れているからか、かなり悠々とかわされる。

 

「次です」

 

続けて『旗なんて捨てました。』を宣言。棒を振る合図に合わせ、先ほどのアンデッドが出現。霊夢に突撃した。

 

「隙間がない・・・これルール違反じゃない?」

 

迫り来るアンデッドに立ち尽くす霊夢。そんな中、文の話が脳裏に現れる。

 

「・・・切り取れる弾幕なら隙間がなくてもいい。ならこいつらは!」

 

そう言って霊夢は一気に弾幕放出。陰陽玉も呼び出して、周囲に弾幕の雨を叩きつけた。

 

「やっぱこれで良かったのね」

 

予想通り、アンデッドは全て地面に叩き落とされていた。

 

「それを思いつくとは、柔軟な発想ですね。やっぱり」

 

「こんなの誰でも分かるわよ。アンタの視界が狭いだけ。目的にしてもそうだしね。妖怪じゃないんだから誰かが認知するまでもなくアンタはアンタなのよ」

 

「何も知らないくせに・・・」

 

続けて『炎に焼かれ、私は諦めた。』

ジャンヌから巨大な炎の塊が高速で放たれる。霊夢はギリギリで回避しつつ反撃。とはいえ素直に当たるジャンヌではない。どちらも当たらないままスペルが終了した。

 

「何も知らないくせに・・・ねえ。逆に知ってなきゃ言えないことなのかしら?」

 

「どういう意味ですか」

 

「あんたのこと知ってようが知らなかろうが関係ないってことよ。純然たる事実ってやつよ」

 

「・・・なるほど?幻想郷は全てを受け入れると、ここの管理者は言ったそうですね」

 

「それは残酷なことだともね。っていうか何であんたが紫の言葉知ってるのよ」

 

「・・・今ならあれの意味がわかるかもしれません。私の知る日本以上に・・・自主的で個人的・・・と言いますか」

 

「本来なら忘れ去られたものが来る場所だからね。もうどう思われてるとかそう言うのは関係ないのよ」

 

「フフ・・・ハハハ・・・アハハハ・・・なるほど。こんなところで生きていれば確かに私の事は空回りに見えるかもしれません。いや、本当に空回りだったのかもしれませんが」

 

「だったら」

 

「とはいえ、それを認めるわけにも行かないんですよ。あの人に導かれると・・・決めたから。だから今度こそ・・・私が、私の意思で、私がそうしたいから、あなたを邪魔させてもらいます」

 

「救済してくれるのならありがたいってのに」

 

「そう簡単には行きませんよ。ひっくり返ろうと材料は同じ。芯は何があってもジャンヌダルクなんですから」

 

「急に達観したような顔して・・・まあいいわ。来なさい」

 

霊夢の挑発に乗るように先ほどのものを反転し、『旗、もう一度振ってみます。』を宣言。

ジャンヌの合図に合わせ、活気溢れる生きた兵が召喚され、突撃。先ほどよりもいきおいや魂のこもった突進だ。

 

「なるほどねっ!」

 

時に撃ち落とし、時に避け、ギリギリの状態で回避する。

 

「さっきより強いじゃないのよ・・・!」

 

続けて『炎の中で、私は諦めた。』を反転しようと用意する。

 

「させない・・・!神霊『夢想封印・断』!」

 

それを防ぐべく霊夢が先に宣言。ジャンヌの周りを札が囲う。

 

「この程度なんてことは・・・!」

 

避けようとした時、霊夢へ一瞬視線が移る。彼女らしからぬ、レーザーを撃たんと構えていた。

 

「はまってしまった・・・わけですか。抜ける余裕はなさそうですね。・・・降参です」

 

彼女のギブアップ宣言を受け、霊夢は溜めていたビームを収めて戦闘を終了した。

 

「よし、終わったな霊夢。行くぜ!」

 

「・・・てっきり食らって散ろうとすると思ってたわ。『全力で戦ってあの人に認めてもらうため』とか言ってね」

 

「素直に負けを認めた方が楽ですから。言ったでしょう?利己的だって」

 

「幻想郷ではそっちの方が生きやすいわよ」

 

そう言い残し、一向は白玉楼へ向かった。




みなさんこんにちは。まだ6話に手すら触れていないサードニクスです。
ジャンヌは結構書くのが難しいキャラでした。容姿も描写がなかったんで勝手に決めました。ごめんなさい。
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