東方八百語   作:さわたり

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お待たせってレベルじゃねえよ


六面:無縁塚『悦楽魔少女と霊たちの迎撃』

「探す気なのは結構だけど・・・冥界は広いわよ?」

 

白玉楼へたどり着いた一向。幽々子に例の魔女のことを聞いて居た。

言うところによれば、冥界に入った痕跡のみがあり、出たわけではないらしい。

 

「つまりここにいる・・・」

 

「でもこれ以上あまり騒ぎを起こして欲しくはないわね」

 

「こんなに広いのにか?」

 

「ええ、あんまり派手なことをやると亡霊が面白がって見ちゃうんですよ。そのせいで成仏したくないだとか駄々をこねるんです」

 

霊夢も魔理沙も知るかそんなこと、とも思ったのだが、だからといって妖夢や幽々子に出禁などにされては困る。2人は顔を見合わせて頷くと、任せろと告げた。

 

「となると・・・」

 

「おびき出すのが良さそうじゃ。ここの出入りは無縁塚だけじゃきー、そこに来るはずじゃ」

 

梅太郎の発言に一行は頷き、結界のあやふやなエリアへと飛び立った。

 

その行く手を、二つの影が阻む。

 

「来たな」

 

赤と黄のポニーの少女。

 

「我らが主人の目的を阻むもの」

 

青と緑のロングの少女。

 

ゴシックロリータに揃えた『無感情の人造人間』ウィルとソーがそこに現れた。

 

「ここからは通さぬぞ」

 

「命名決闘にて応じてやろう」

 

そうしてスペルカードを用意。彼女達を邪魔するように空を舞った。

 

「まーた面倒そうなのが・・・」

 

「私が行くぜ。お前らは疲れてるだろ?ここいらでその夜界って魔女に備えて体を動かしときたいしな」

 

魔理沙が体を伸ばしつつ2人の前に出た。

 

「来るなら来な!」

 

「術符『ミラクルゴールド」「&トリックシルバー』」

 

2人のスペル宣言と同時に金銀の球体が出現。球体より金属質の弾幕が飛び交う。

 

「おおう、こいつは・・・危ないな」

 

不規則な動きで飛び回る金銀の弾をかわして行きつつ魔法弾を飛ばす。いくつか弾は搔き消えるが、やはり弾幕の雨が強いのに変わりはない。難儀しつつ2人へ距離を詰めた。

 

「来るか」

「ならば」

 

さらに、隙間を縫って弾幕をかわす魔理沙へ白い弾幕を飛ばす。今度は不規則な三色の弾幕をかわしつつ、2人から距離を置いた。こうした方が弾幕間の隙間が広がり避けやすいのだ。

 

「まずは避けに専念するとするか」

 

前後左右器用に動き回り、間を抜けて弾幕に耐える。

 

しばらくののち、スペル終了。続けて『ウミダサレシセイメイ』を発動する。

 

現れた巨大なフラスコが現れたかと思うと、中より胎児の姿を模した弾幕が飛び出た。

 

「なんだこれ気持ち悪いな!」

 

青ざめた顔で弾幕を避ける。しかし耐えきれなかったのかすぐ倒してしまおうと急接近。八卦炉を構える。

 

が、突如弾幕の様相が変化。魔理沙が近づいた瞬間一気に散らばるように弾幕が飛び出た。その形故に撃ち落とすのも気がひけると、弾幕から下がっていった。

 

「耐久型か・・・」

 

多少面倒そうな顔を見せ、再び距離を置いた。

じわじわと加速する弾幕を避け、少しずつ距離を離す。続けること五分ほど。胎児の進行はそこで止まった。続けてスペル宣誓をせんとする二人を邪魔するように急接近。魔力を集中し、スペル宣言。

 

「魔符『ミルキーウェイ』!」

 

白い星型弾幕がうねるように交差。ウィル、ソー、同時にあたり、地面に叩き落とされた。

 

「任務失敗」

 

「我らが主人に・・・作戦を引き継ぐ」

 

それだけ言い残し、どこかへ姿を消した。

 

「ほら、終わったならもう出るわよ。無縁塚に行くわよ」

 

魔理沙は頷いて方向転換。霊夢に続いて入ってきた時と同じように外へと出た。

 

「ぶっはあ!」

 

「ああも悪霊が多いと背筋が凍るぜ」

 

「だから私もあの入り方は好きじゃないのよ」

 

首を鳴らす霊夢の元に足音。よもや敵かと構えるが、そこにいたのはナズーリン。訝しげに三人を見ていた。横にはいつの間に来たのかエディアもいた。

 

「人様の家の前で何をしてるのさ」

 

「知らん。そこに住んでるお前の問題だ」

 

「全く・・・ん?妙に強い魔力だ。誰か居るのかい?」

 

「お前も分かるか?・・・昌鯖夜界。魔女だってさ」

 

その顔にナズーリンの顔が曇る。その顔を見た魔理沙は何か知ってるのかとナズーリンに問いただした。

 

「聖が魔界の地方、エソテリア周辺の法界区域に閉じ込められてたのは知ってるかい?」

 

「知ってるも何も行ったわよ」

 

「そこでさえ名前を聞いた悪名高い魔女さ。地獄に戦争をふっかけようと・・・」

 

「仲間をかき集めてる・・・とか?」

 

ナズーリンの言葉を引き継ぐような発言が霞の中から飛ぶ。その声は無論ナズーリンでなければ、霊夢でも魔理沙でも梅太郎でもない、艶かしい声。

 

同時にその方から魔女然とした帽子とケープのシルエットが霞に映る。

 

「来たか・・・倒してくれよ、君たち」

 

ナズーリンはゆっくり後ずさると、魔理沙の背をポンと押した。

当人の方は急なことで戸惑っていたが、シルエットがだんだんと大きくなって来たことで事実を認め、覚悟を固めた。

 

「そっちから探してくれるだなんてラッキーだわ。星色の魔女さん」

 

ついに姿をあらわす『垣根を超える女』。黒く艶かしい長髪、巨大な魔女帽とターコイズブルーの衣服が特徴的な『愉快痛快の暗黒魔女(elegant fixer)』、昌鯖夜界。

 

箒の上に立ったまま飛び、魔理沙へと近づいた。

 

「魔理沙に何の用じゃ。事と次第によっちゃただじゃおかんきー、覚悟しとくぜよ」

 

「悪いけどあなたは今回はいいの。興味深いし実力はわかってるけどね。・・・評判は聞いてたわ、霧雨魔理沙。そして博麗霊夢。しかもエディア・アンブロシウスまでいるじゃない!」

 

ミュージカルか何かのように手を広げて大げさに動く夜界。その派手な動きにもかかわらず、バランス一つ崩さず立っていた。

 

「暇だったもんだからさ、こんど魔界と地獄に戦争でもふっかけようと思うのよ。だからあのダサTとか神綺に勝てる人材を探してたってわけ。そしたらあの先見諫を倒したっていうのがいるじゃない!聞けば名高い楽園のシャーマンとかの星色の魔女。さらにさらにへカーティアに勝ったこともあるとかなんとか・・・大チャンスよね。ウフフ」

 

面白いものでも見かけたように楽しげに、されど思慮深い様子で笑う。その様は、どう見ても今から戦争をしようとする者がする表情ではなかった。

 

「どうかしてるぜ・・・」

 

「この幻想郷はまともな人の方が少ないと聞いたけどね」

 

「否定はできんぜよ」

 

「・・・しかしまあこの子達に会わせてくれたから感謝はあるけどさぁ、やっぱ自分で挑んでくる気概はないのかね、エディアは!」

 

「唐突に僕をディスらないでくれるかい」

 

「失礼な、事実じゃないの」

 

「なんでもいいが私たちに用があるって事だよな?悪いけど侵略行為に付き合うつもりはないぜ」

 

「その気があるかなんて関係ないわよ。いやでもやりたくなるから」

 

「でも物事には決め方とルールってもんがあるんだぜ?」

 

「そんなの知ってるわ。弾幕ごっこの話でしょ?」

 

魔理沙の挑発するような発言に対して軽いテンションで答える。その手には派手な色のカード。スペルカードである。戦いの準備は出来てるのよと、むしろ魔理沙を煽り返すような形で見せつけた。

 

「ほら、来なさいよ。見せてみなさいよ、あなたの弾幕!」

 

「ハハハハ!お望みとあっちゃあ見せてあげるしかないな!・・・行くぜ!」

 

「ふふふ!命名決闘開始!・・・『三匹のワルツ』!」

 

早速スペル発動。カラス、ヘビ、フクロウの三匹の使い魔を呼び出し、自身の前を飛ばせた。

魔理沙が通常弾幕を放つのに合わせ、フクロウが反撃するように弾幕を広げた。

さらにカラスの追尾弾、ヘビの低速弾が逃げ道を塞ぐように飛び交う。タイミングとテンポがずれ、非常に避けづらく、なおかつ美しい弾幕。

たった一つの隙間を見つけなければ抜けられないような小さな空間で縮まっていく粒達。なかなか危険なスペース感で魔理沙は間を抜けた。

 

「おいおい・・・しょっぱなから飛ばすなぁ!」

 

そして長さ的に耐久スペルである。厄介に思いつつもパターンは読めた。冷静に避け続けること7分ほど。使い魔達が飛び去り、スペルはついに終わった。

 

「ったく・・・長すぎるぜ!」

 

魔理沙は緊張がほぐれ、安堵のため息を漏らす。しかし戦闘はまだ続く。夜界の次なるスペルカードに構えた。

 

「この子達の弾幕を避け切るだけでも評価に値するわ。・・・『垣根の上に立つ少女』!」

 

スペル宣言。魔理沙に向けて手を広げるのと同時に白黒の光弾が空を舞った。

 

白は配置型弾幕。下手に動けば潰される。黒は移動型弾幕。止まっていれば潰される。その隙間を見つけ、さらに交差する点に近づかないよう、冷静に、されど迅速に避けていくことが強いられる弾幕だ。

 

「迷惑なスペルもあったもんだぜ!」

 

仲間達が見守る中、軽口を叩きつつも一心に集中して隙間を縫う。そこには近づく余裕もなければ逃げる余裕もない。捕らえられるように、そして追い詰めるように隙間が縮まっていく。

 

「なかなか強いな・・・!弾幕ごっこならへカーティアに勝てるんじゃねぇか?」

 

再び軽口を飛ばしつつスペースから逃げ切り、スペル終了。対抗して魔理沙はスペルを用意した。

 

「魔符『スターダストレヴァリエ』!!」

 

宣言。星型の弾幕を散らすように広げる。夜界は最初こそ丁寧にかわしていくが、面倒になったのか続けてスペル宣言。手を広げてその名を叫んだ。

 

「『ザ・ヘクセンナハト』!!」

 

現れた四つの魔法陣より、火炎、流水、土石、疾風の光線が放たれる。星達を無に帰しながら、魔理沙を追い込むように収束した。

 

「その黒は命を塗り潰す色。その白は心を染め上げる色。全ては2つ、両極に別たれ、四大の元素も混ざりて溶ける!」

 

さらに仰々しい詠唱とともに巨大な魔法陣が現れ、光線が放たれるべくエネルギーが充填される。

 

「残念だが!服を見てくれれば分かる通り私のエントロピーは常に0だぜ!モノトーンなのはお前だけじゃないってこった!・・・手の内は読めたぜ!恋符『マスタースパーク』!!」

 

対抗するようにスペル宣言。八卦炉を前方に構える。

 

両者同時に、発射。

 

極太のエネルギーの塊がお互いの質量を持ってぶつかり合う。そして中央で拮抗した末、大爆発。爆風の中、モノクロとターコイズの影が現れた。

 

夜界の帽子には、小さな小さな、それこそ正面からしっかり見なければわからないほど小さな焦げ跡があった。

 

「今、私は勝利を確信したぜ。私は星占術の専門家なんだ。もう見えるぜ。お前の負けが」

 

「マジックアイテムの専門家とか言っとったぜよ」

「魔法の専門家ともね」

 

「言ったろ?私はあらゆる物の専門家さ!弾幕ごっこだって例外じゃないんだぜっ!」

 

ビシッと帽子を被りなおすと、再び体制を整えた。対し夜界も余裕しゃくしゃくな態度でスペルカードを掲げた。

 

「何を言っても無駄。これで止めよ!・・・太極と混沌の彼方へ消え去りなさい。『生死を別かつは我が呪文(ヘヴンオアヘル)』!」

 

同時に、白の高速弾と黒の低速弾が夜界を中心に放射状に飛び交う。無駄に動けば当たると判断した魔理沙は待つような形で、夜界の正面をホバーしていた。

何を思ったか夜界を真似するように箒の上に立ち上がると、ゆっくりと八卦炉を相手に向けた。

 

「あれは何をしてるんだい?」

 

突然の行動に驚くエディア。その問いに霊夢は——

 

「勝とうとしてるのよ。あれは決める為の攻撃体制だって・・・」

 

確信を持った、全幅の信頼を見せた顔で応えた。

 

「もう分かってるぜ、お前がどうくるか!」

 

「なら避けてみせなさい!」

 

手のひらの魔法陣から透明の光線を放つ。ビームが視界を占める割合が大きくなる。

 

ビームが来る、その瞬間。

 

魔理沙は、笑っていた。

 

「「なんたって(あいつ)は、異変解決の専門家だからね!!」」

「爆恋符『エクスプロードスパーク』!」

 

高圧縮された炎魔法と同時に放たれる光線。爆風が夜界の光弾を押し返して当人に当たるまでには、瞬きほどの時間も要らなかった。

 

 

 

「私の勝ちだな!」

 

「これほどとは・・・星色の魔女、恐れ入ったわ」

 

空を見上げながら夜界は笑っていた。気づけばもう夜になり、満点の星空には道が照らされるほど明るい星が煌めいていた。

 

「経験値が違うんだよ。経験値がな!」

 

カラカラと笑う魔理沙。一息吐いたかと思うと、いきなり土に腰をかけ、夜界の隣に寝転んだ。

 

「綺麗だろ?幻想郷って。ここは神様だって惚れるんだぜ」

 

「派手やってくれたね。ほんと」

 

導きの魔女も。

 

「ここの住民は派手なのが好きなのよ」

 

楽園の巫女も。

 

「ま、わし含め騒いでばっかの連中じゃ」

 

維新の神霊も。

 

「うるさいぐらいが楽しいんだよ」

 

星色の魔女も。

 

「フフフ・・・あはははは!アーッハッハッハッハッハ!」

 

暗黒の魔女も。

 

全てを受け入れる。それが幻想郷である。

 

「喧嘩の舞台はここかぁ〜?ヒック!」

「バカね、喧嘩は終わってるわよ」

「全く、あたいの休憩場で好き勝手やっちゃってさ」

 

「はぁ・・・もっと騒がしくなりそうね」

 

酒を持った酔っ払い達がどこからとなく集まり、無縁塚にて誰が主催するでもない宴会が始まる。中には、幽々子に連れて来られたらしいジャンヌとカロンまで。

喜び混じりのため息とともに、霊夢は萃香の元へ向かった。

 

「幻想郷では異変が終わったら酒で騒ぐことになっとるんじゃ。どうじゃ、そこの黒髪さんも一杯」

 

「あんたは狸ね。・・・ほんと、なんでもいるわね、ここって」

 

いつしか負けや失敗の悔しさなど忘れて・・・いや、彼女は元からそういう感情を抱く魔女ではないが・・・とにかく戦いを忘れさせるような宴が始まった。彼岸花の咲き誇る珍しい宴会は、皆の心に一切の隔たりを生み出さない。

 

それがこの幻想郷の魔力である。

 

 

 

「・・・うーむ」

 

「どうしたんですか梅太郎さん!もっと騒ぎましょうよ!らしくないですよぉ!」

 

絡んで来るベロンベロンの早苗をよそに、彼女は物思いにふけっていた。

 

「なんかやな予感がするきー、人里ば見とくるぜよ」

 

「えぇ?まぁた立ち小便れすかぁ?はしたなぁいれすよぉ・・・だいたいあなたはぁ・・・・・・zzz」

 

「あの、この子寝てますけど大丈夫・・・なんでしょうか?」

 

梅太郎の飛び去ったあとには早苗が寝ているのみ。心配したジャンヌが抱きかかえ、幽々子と妖夢の元へ連れて行った。

 

この場に一人誰かがいなくなっていたということなど、酒の回った少女達には気づきようがなかった。




みなさんこんにちは。霊夢の髪型は鈴奈庵が一番好きなサードニクスです。もしくはMMDのBNKRG姉貴。まああれ鈴奈庵モデルやし。
てな訳で終わりました。EXとphantasmへ続く!
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