何故なら世界観を別の二次創作からそのまま持ってきたからです。いや、その世界の話と言っても構いませんね。
ちなみにその『別の二次創作』とは、「某これ」の二次創作です。
多く物事は知らぬ間に事態が進展して、崩壊に近い形で物事が始まる。今回も大筋は外れなかったと言えよう。
本日も大変残念なことに昨日とほとんど変わりのない一日を過ごしてもらう。さあ、今日の書類をよこしてくれ。
体がそう言っていた。指揮官はいつもそういう姿をしています。でも今日はあまり書類仕事をさせません。なぜなら指揮官と共にこれに行きたいのです。
そう考えて一番上にした書類を見つめた。
「指揮官、今日の書類はこちらです」
「今日はやけに少ないね」
指揮官は書類を軽くめくり、そう言った。
「はい、私が出来る者は昨夜に終わらせましたので。今日はお願いしたいことがありません」
顔を少しそむけて口にした。
「分かったよ。太原ちゃんは花火を見たいんだね」
「はい、、、駄目でしょうか?」
太原の床を見つめる顔は赤く染まっていた。
「いや、いいよ。私だってそうすれば息抜きが出来る」
「ありがとうございます。その前に仕事を終わらせて浴衣を選ぶのを手伝ってほしいのです」
「姉たちに決めてもらうのは駄目かい?」
書類にサインを書き込みながら言った。
日本の男性が世の女性から嫌われるのはそういう所です。
「お姉ちゃんたちに頼むと大陸の衣服ばかりすすめてきます。日本にいるのだから浴衣を着てみたいです」
「仕方ないね。仕事を終わらせたら見に行こうか?他に誰か行くのかい?」
「駄目です。今日は私が指揮官を独占します」
男性は全ての女性に優しくしようとします。指揮官、私は特別な扱いを欲しているのです。指揮官は私に特別優しくしてくれますか?
2
「指揮官!見て下さい!この浴衣、すごく可愛いと思いませんか?」
太原は紫を中心とした浴衣を身に着け、くるりと一周してみせた。
「うん。合っていると思うよ。私の美的感覚を信用すべきではないが、持ってきた手提げにも合うさ」
しかし、私はひどいものだ。とりあえずあるものと引っ張り出したのは甚平だった。
浴衣のように扱われているがそいつは元は室内着だ。猫耳のフードが付いた寝間着で外に出ているのは普通じゃないだろ?
まあ、今さらどうしようもないのでこのままで行くという選択以外はすでにないのだろう。
太原は明らかにいつもと違う様子をしていた。もちろん良い意味でだ。私は太原の笑顔何て今まで見たことがないぞ。
太原は人波に飲まれて見えなくなりそうだった。
久しぶりに港の施設から出た太原はとても楽しそうに。物珍しそうに全てを見つめた。またいつか、普通の少女として暮らせる日は来るのだろうか?
「指揮官、まだ時間がありますから書店を見ていってもいいですか?」
書店と呼ぶには異質な空気を発する佇まいを見た。
「面白そうとは思いませんか?」
「確かにそうだ。のぞいてみよう」
体格の異なる二人だが、不思議と歩調を合わせて歩いていた。愛し合う二人のようだった。しかし、花火を見るに人の集まりともなればしばしば見られるものでもあった。
3
「見て下さい!魯迅の初版です!原書ですが『ロリータ』もあります!いったいどこで見つけたのでしょうか?」
せっかく気に入った浴衣をホコリで汚してしまいそうだった。人は趣味の話になると今まで大切にしていた建前などを一瞬にして投げ捨てることが出来るのだ。ある意味では自我を失う。
太原は何よりも読書と本を大切にしたのだ。
「魯迅はある作家がよく引用していたから覚えているよ。本は一部を除いて読まないから分からないなぁ、、、」
「では、今度嫌というほど教えてあげます。しかし、教科書にしては少し高価ですね」
「それは私が支払おう。指揮官への教養の授業は棒給に含まれていないからな。他にもあるのかい?」
小さな教授にたずねた。
その小さな教授は目を輝かせて「はい」と答えた。
これは今月の棒給にメンタルケアの代金も含めるべきだと考えた。
5
「それでは明日の午前にでも、、、いやぁ、申し訳ありません」
一桁から二桁へと拡大した『教科書』はとても持ち歩き、花火を見れる量ではなかった。「後日取りにくるから置いていてくれないか」と頼むと店主は「たまにそういう人もいますから」と了解してくれた。
「指揮官、ありがとうございます」
太原は体を前に倒し、そう言った。姉には無い礼儀の良さがある。
また一緒に来てみよう。
「気にしなくていいよ。それより本題を忘れてはならない。廃神社が人はいないのに対して良く見えるんだ。そこを目指そう」
「そうなのですか?指揮官は特定のことに限っては良く知っていますね」
「ほめていると受け取っていいかい?」
「もちろんほめています」
太原は笑って答えた。その笑顔には少し違う物が含まれていた。
二人はまた自然と歩調を合わせて歩き始めた。
6
廃神社の祠が見えてきた時、夜空に音が響いた。「ヒョー」という音と共に花を咲かせた。
夏の夜空を照らすのは星じゃなくて花火かもしれない。星なんてそんなに見えないぞ。
「少し遅れちゃいましたね」
「でもこれから本格的になる。直ちに問題とはならない」
「政治家みたいな言い方です」
「昔、なりたかったんだ」
二人は祠の前に立ち、次々と開く花火を眺めた。
「打ち上げ花火は横からでも、下からでもなく。斜めから見るのが一番ですね。とても綺麗です」
「たとえどんなに花火が綺麗でも」別の方向の空を見た。「月が綺麗ですね」
月は一番だと言いたかった。それともう一つ。
「指揮官はその言葉を知っていたんですか」
「読んだことはないよ」
「Ваша…死んでもいいです」
彼女の顔は今までにないほど赤く染まっていた。