『逃げろ! 0ptの巨大ロボットだ!』
『あんなのに勝てるわきゃねえ!』
『危な! なに考えてるんだこれ用意したやつ!』
国立雄英高等学校の実技試験会場。そこではポイントの設定されたロボットを倒すといった内容の試験が開催されていた。
しかし、事前説明でお邪魔役と説明されていた0ptの、ビルをも越す全長の巨大ロボットの出現と同時に会場は混乱と悲鳴に包まれた。
「私も逃げなきゃ……あっ!」
そこに一つの不幸が訪れる。
逃げようとした一人の女の子が巨大ロボットにより粉砕され落ちてきたコンクリートの欠片に足がひっかかり逃げ出すことができなくなってしまったのだ。
「なんっ! このぉ個性で、ああ! ロボットがっ!」
普段であれば自分の個性を使ってコンクリートを浮かしどかすことができるのだが、今はそれができなかった。焦り、混乱、焦燥、様々な考えが頭を巡り早くしなければいけないというのに個性が上手く発動できず、相手のロボットは一歩、また一歩と迫ってくる。
「あ…………」
ついにこちらに腕を伸ばすロボットを視界に収め、頭が真っ白になり動けず思わず目をつむってしまった。すると、目の前でズザァッ! とナニカがやってきたのか地面を擦る音が聞こえた。
『HEROとはっっっっ!!』
叫ぶような声が響くと、目の前でなにか巨大な物が破壊される音が響き渡る。それに殊更目や頭を守るように前に突き出していた手に力を入れて衝撃を待つも一向に何もこず、不思議に思って目を開ける。するとそこには、
「え……?」
少し時間が遡る。巨大ロボット出現と同時に逃げ出した人の中、1人だけ流れに逆らうようにロボットのほうへ歩いていく姿があった。
『おい! あんた! 今はあぶねえから離れたほうが――』
「ヒーローとはなんだ?」
『あん?』
善意の忠告が無視され今の状況にそぐわぬ質問に思わず足を止める。
振り返り今の馬鹿を再度見ると、そこにはクラウチングスタートのように片膝がつきそうな格好で足にはちきれんばかりの力を溜め、今にも走り出しそうな男がいた。
『お、おい?』
「ヒーローという職業に就いてたらヒーロー……? NO!」
『おわっ!?』
力強く言葉を発すると共に、強烈な踏み込みで砂埃を巻き上げながら銃より放たれた弾丸のように真っ直ぐ駆け抜けていく。
「"個性"が強ければヒーロー? 絶っっ対に、NOぉっっっっ!!!」
瞬きの間に、その男は他の受験生の視覚から隠れるようにガレキの中で動けない少女と巨大ロボットの間に立っていた。
そして
「HEROとは!」
上半身を後ろに捻り、手が地面に当たるほどになるまで振りかぶり、
「HEROとはっっっっ!!」
もう目の前まで迫っていたロボットの手のひらに、最大まで振りかぶった拳がぶつかる。
どう考えても無謀、無理、無駄な行為。しかし、ロボットの腕は止まっていて、
ピシリ
どこからかヒビが入る音が聞こえる。
その音はどんどん大きくなっていき、
ピシピシピシ………………バキッ
やがて目に見えてロボットの腕全体に黒い線が走り、
ギイイィィィ!
崩壊が始まる。
「――誰かを助けるために一歩踏み出せる者のことを言う」
緑谷出久。男、身長187cm、趣味は筋トレ、ヒーロー研究、そして、
無個性である。
これは無個性が無個性のまま勘違いしながらも真っ直ぐ走り抜ける物語である。
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気づけば自分は赤ん坊になっていた。
正直意味不明だった。別に死んだわけでもないし特別ななにかに巻き込まれたこともない、ほんとに気づけば、瞼を閉じまた開いたら別世界が広がっていていたかのような唐突さで自身は転生? していた。
もしかしたら寝ている間に突然の心臓麻痺からの即死だったのかとか、そもそも今見ているのは夢で現実ではないのかとか、他も色々考えたけど数年経った時点で無意味と悟ったので素直に今生に励むことにする。そもそも前世を思い出せない――ことはなく友人知人親族自分の顔も名前もしっかり覚えてるし今の体になる前、提出期限の迫っていた課題が白紙のままなのもはっきりと思い出せるが未練があるかと言われればそこまで。と返すレベルで無意味になにも考えず生きていた。
ならば今生ではなにかをなさねばと一念発起する、なんてこともない。
確かにこの世界は個性なんていう面白超能力が存在してる上、物語でしか登場しないヒーローなんてものが職業として存在しているが、それになりたいか。と言われれば別に。と思っているほどには冷めていた。
まあ、もしかしたら生まれるはずの命を奪って憑依したのかもしれないし、親不孝者にゃなりたくないかな。その程度の考えしかなかった。
しかしそんな考えが吹っ飛ぶ出来事と遭遇する。
『オールマイトは今日も7件連続解決!!』
『オールマイトによる年間救助者は〜〜人を突破しており――』
『まじでっべーよ! オールマイトがマンションの十階の高さまでジャンプで跳んできて【安心するといい。私が来た!】って!』
それはあらゆる理不尽を自身の体一つで吹き飛ばす人間。
オールマイトとの出会いであった。
実際に会ったわけではない。だが、毎日のごとく放送されるオールマイトの活躍は、最初はぼーっと眺めるだけだった。
だけど次第に
『待たせたね。私がきた!』
その勇姿は
『例えどんな状況であっても、私が来た!』
今まで冷めたばかりであった人間の心に火をつける
『確かにこのままでは絶望だ。だが! 私がっ! 来た!!』
どこかその姿に既視感を覚えつつも、食い入るようにニュースを見る。そこで倒壊し燃え盛る家を背景に救助した人を担ぎながら笑顔で凱旋するオールマイトの姿に、思わず自分も腕を振り上げ喜んでしまう。その姿を両親が微笑ましそうに眺めてるとも知らずに。
そして考える。オールマイトや自分の姿を鏡で見る度に感じる既視感はいったいなんなんだろうと。わからないし特に気にしてもいなかったがなぜかそのことがよく頭にひっかかるようになっていた。
だがその疑問は幼稚園に入ると同時に解けることになる。
「ばくごうかつきです! よろしくおねがいします!」
……うん? …………あー、あー! あー? ……うん!たぶん僕がヒーロー……? ……なんちゃらって漫画の世界だ!
解けたのであった。ものすごいうろ覚えだが。なぜかと言うと彼はまともに"僕のヒーローアカデミア"を読んだことがなかったのだ。たまにジャ○プで目的のページまでめくってる途中に気になる戦闘シーンがあったら数秒目に留める程度の、そんな程度の興味と知識だった。
そして目に止まったページで覚えてるのは主にオールマイトが活躍してるシーン、主人公? の少年が巨大な機械を倒してるシーン、なんかめっちゃ爆発してる敵? ライバル? と戦ってるシーンだけなのだ。他にも細々と見たような気がしなくもないがはっきり覚えてるのはそれくらいで、むしろそれだけの知識でよくわかったなと褒めてもいいレベルだろう。
んで目の前で自己紹介しているのはその数少ない知識の中でも敵? ライバル? な子だったのだ。子供だがすでに顔(というか髪型)が完成されており、今までのデジャブ感と合わさり自分の頼りない知識と合致したことでようやくわかった。
にしてもこんな可愛い子がなぜあんな超怖い不良みたいに育ってしまったのか。いや別人の可能性もあるけど。でもそうだった場合謎である。だってこの子は
ちらりと服装を見る。
黄色い帽子に、青い服。そして――スカート。
そう、女の子なのに。この子が将来あんな顔しながら『死ねぇ!』と言うのを想像したら年月の経過って残酷なんだねと思うしかない。
世の不条理さにほろりと涙を流しながら、少しでも将来不良にならないように矯正できないかなと奮闘するのでした。
あ。ちなみに名前は漢字で書くと爆豪香月らしい。なんかヤンママっぽい人が教えてくれて香月のことよろしくねーと言って去っていった。なんだったんだいったい。
さてそんなこともありしばらく。この世界のことがわかったことで自分のこともわかった。そう、自分こと緑谷出久はなんと! おそらく主人公であろう表紙で見たどことなくブロッコリーみたいな緑色の頭の子だったのだ!!
どこからともなく、な、なんだってー!? と聞こえてきた気がする。実際自分も驚いた。だってそばかすがないし特徴がなさすぎて表紙絵ででかく描かれていた絵をはっきり覚えていたのに気づくまでに時間がかかってしまったのだから。だがおかげで自分について知れたしわかったこともある。
自分の知ってるシーンではこの子(主人公)は間違いなく増強系、そうでなくとも物理的な干渉ができるタイプの強力な個性であるということ。それは巨大ロボットを倒すシーンからしてはっきりとわかる。あれだけのパワーが出る個性ならばもはや憧れといっていいオールマイトと同程度の出力が出せるのかもしれない。いや。越す! オールマイトを越えるヒーローになる!
これは前世を含めて初めて自分の意思で決めた大きな目標であった。
そして目標ができたなら簡単、早めに目標に向かって動き出すのみ。
とりあえず体作りから始める。といってもまだ幼稚園児だし無理のない範囲で。ついでに反射神経も鍛える。他の子や仲良くなるため香月ちゃんと遊びながら。
「かつきちゃん、いっしょにあそぼー?」
「いいよー! えへへー」
あっやべ鼻血出る
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そんなこんなで割と充実した幼稚園を謳歌しながら4歳ころ。ついに楽しみにしていた個性診断の日がきた。この日が待ち遠しくてドキドキワクワクが止まらなく夜しか眠れず母親が苦笑しなだめてきても治まることはなかった。
そしてついに来た個性診断の日。
「無個性ですね」
「なっ............」
あまりのことに言葉を失う。
母親と医者は続けて話しているが、そんなことは俯き震える自分の耳には届いていなかった。
心配した母親の手なのか、背中をさすられているが彼が考えていることは、恐らく彼以外は誰もが思いつかないことだろう。
困惑、羞恥、自戒、そして――尊敬。圧倒的、尊敬っっっ!!
なにに対してか。それはもちろん、元の主人公君だった"彼"に対してだ。おそらくよくは知らないが、彼も無個性だったのだろう。そう、自身がオールマイト並の力はあるんじゃないかと考えていた、"彼"が。
つまりどういうことかというと、
あの漫画は、強力な個性持ちばかりの中から無個性のままヒーローNo.1を目指す物語っっっ!!
それを考えると自分はどうだ。
強力な個性が自身には宿っていると信じて疑わず、筋トレは無理のない範囲という甘えた考えで満足し、反射神経を鍛えるためと言いながら面倒見るつもりで他の子と遊び呆けていたのではないか?
怠惰。あまりにも、怠惰。
体が頑丈そうに見えないひょろっとした感じなのも相まって強力な個性持ちと勘違いしていたが、そんなことは言い訳にもならないだろう。もしかしたら見た目ああなのは力を抑えてるだけで開放したらオールマイトみたいな筋肉ムキムキのマッチョマンな見た目になるとかそんな設定だったのかもしれない。
故に羞恥、自身のあまりの愚かさに。自戒、わかったからにはもう間違えないために。そして、尊敬。無個性のままあそこまでのパワーを手に入れた"彼"の弛まぬ努力、そして"彼"にそうまでさせた鋼の心に。
そうではないのだが、それを突っ込める者はこの世界にはいなかった。
気づけば自分は家にいて、テレビの前で録画したオールマイトの勇姿を見ながら涙を流していた。この涙は昨日までの自分との決別。そして明日、いや今日から頑張るという気合を入れるために、画面の中のオールマイトに気合を入れてもらっていたのだろう。
その姿に心配したのか母親が後ろから抱きついてきて頭を撫でられる。心配はかけている自覚はあるのでそれをおとなしく受け入れつつも、ボクは質問した。
「お母さん......ボク、オールマイトみたいなヒーローに......」
――なる。いや、オールマイトを越すヒーローに、絶対になる!
それは俺が人生を奪ってしまったかもしれないボクへの償いというのもあったのかもしれない。だけど俺は謝らない。そもそも自分が意図してこうなったわけでもないし本人に責められているわけでもないのだから気にしすぎても仕方ない。だが、せめてもの手向けに。俺だけしか知らないだろう本来いたボクに。この決意を贈る。
必ず、"彼"を超えたヒーローに。そして、オールマイトも越えNo.1ヒーローに、俺はなる!
相変わらず慰めるかのように自身を抱きかかえる母に、涙を流しながらも決意を固める。
決して、決して、この決意が揺らぐことない。
たとえなにがあろうとも。
その日より有言実行と言わんばかりに行動を始めた。まず、効率的な、というより体を鍛える時にやってはいけないタブーを知るべく町の図書館に向かい本を探し、読む。
そしてメニューを組む。授業の合間にもできる目立たないものもやりながら、勉学も疎かにはしない。まあここは転生者の特権というべきか、歴史は勉強し直す必要はあるがそれ以外は軽く復習する程度で特に問題はなかった。
なにやら無個性ということでやけにつっかかってくる連中はいるが無視。あと最近香月ちゃんがガキ大将になってきててお父さん心配。
それと卒園し小学校に入学するといじめ問題にも積極的に突っ込み絡んでいく。自分にヘイトを集めることになるが、これはこれで察知能力を鍛えることができるし子どものやっかみやいじめ程度でへこたれる精神はしていない。そのせいで孤立はしているが、もともと空き時間にへんなこと(筋トレ)してるってことで子どもは寄り付いてきてなかったしなにも問題も変わりもないし気にしない。
……嘘です子どものことは普通に好きなので若干寂しい。
あと最近香月ちゃんがハマったアニメの影響で死ねって言葉を覚えて連呼してた。他の何よりも衝撃でちょっと膝が折れかけた。
高学年になる頃には周囲からはもはや畏怖の目で見られるようになってきた。なぜなら筋肉の鎧で体格が一回り大きくなっていたからだ。まあ異形系個性でもともとでかい子には負けているが、他の子にパワー勝負で負けたことは一度もない。
この頃からよく学校から少し離れたところでも喧嘩がふっかけられるようになってきたが当然こちらから攻撃することはない。子どもの喧嘩で本気出すわけにはいかないからね。全部無力化してお帰り願っている。不意打ち卑怯多人数と、割と勝負勘を鍛えるのに役立つのでありがたい。
この頃あたりから香月ちゃんも喧嘩をふっかけてくるようになってきた。汚い言葉遣いまで始めたのではしたないからやめなさい、と注意すると余計激昂して襲い掛かってくる。解せぬ。
中学生にまでなった。待ちに待ったと言ってもいいだろう。多少の無理も許され、堂々と本格的な筋トレに精を出しても疑われない頃合いだ。
相変わらず香月ちゃんは罵りながら殴りかかってくる。俺はその言葉遣いに注意しながらもちょっと冗談で『筋トレばっかでなかなか相手してあげれないからってそんな激しく求められても』と言ったら顔を真っ赤にして余計怒られた。悲しいなあ。
その後いままでにないレベルで激おこモードで個性まで使いそうになっていたがなんとか宥めることに成功し変なことを言ったお詫びに激辛麻婆を作ることになった。解せぬ。でも嫌われてるわけじゃなさそうで若干嬉しい。
そんなことをぽろりと口からこぼしたら心底気持ち悪いものを見る目で見られた。ヤメテ! 変な扉開いちゃう!
そしてついに中学を卒業し高校へ。選んだのはもちろんヒーロー科が有名で最難関と言われる国立雄英高等学校。原作で"彼"がどの高校に行ったかわからないが、おそらく同じではなかろうか。オールマイトの出身校だし、他に同じく最難関と言われるおけつ高校……? は西のほうで遠いし、規律が厳しいらしいから物語の舞台にはし辛いとこがあるだろう。
そんなこんなで挑んだ雄英高校。内容はよくある普通の学力テストに、もはや微かにしか残っていない前世の記憶が思い起こされるロボットたちをひたすらぶっ倒せ。というもの。
このロボットたちは、"彼"があの例の巨大ロボットを倒す少し前にちらっと見たやつらじゃな? ならばやはり"彼"も雄英高校に受験したのだろう。こんなイカれ、もとい狂ったような規模の試験内容が全てのヒーロー科がある学校で実施されてるとは思えないし。……いやおけつ高校とかいう雄英高校と同じレベルと言われてる学校なら同じかもしれないが、わからないことを考えても仕方ない。
そんなことを考えているうちに周りには誰もいなくなっていた。どうやら試験は既に開始しているらしい。しまった、出遅れた。
とりあえず軽く辺りを見渡すがロボットはおろか受験生の姿も見当たらず、少し離れたところから爆発音や叫び声のようなもの、歓喜の声などが響いてくるがどれも身の危険が迫っているような気配は感じないしぶらりと歩きだした。
詳しい試験内容を聞きそびれてたがとりあえず倒せばいいんだろう。そしてあの巨大なロボットはおそらく100ptとかする大物なはず……ならば俺はあれ一体に絞り、あとは戦闘系じゃない子がピンチになってたら助けに回ったりしよっかな。とりあえず目の前に現れたロケランぶっぱするタイプのを一発で片付けたけど、威力が調整されてるとは言え普通に危ないし。でも横取りとかはしたくないから本当にピンチな子だけ。そうと決まれば……
秘技、HERO☆聞き耳!
説明しよう! HERO☆聞き耳とは、ヒーローたるもの助けを求める声に敏感に反応しなければならないという考えのもと声色から相手の状況を察知する特技である! この特技の真骨頂は声だけで相手の感情、考えを大雑把にだが読み取ることを可能とするため非常に有用性が高い! 普段は人助けの他に母親からの買い物のお願いを寝た振りすることで回避したり香月ちゃんが不機嫌な時に突っかかってくる前に逃げたりすることに活用されるぞ! 前世がボッチな上兄弟から命令されてばっかだった彼が周囲の状況を読み取り逃げるために生み出した危機回避能力の一つだ!
なんか唐突にすごい悲しくなってきたがそれはともかく目をつむり聞き耳をたてる。『うおおおおお!』問題ない。『ああああああ!』問題ない。『きゃあああああ!』……驚いてるだけでしっかり対応できてるっぽいな。問題ない。『クソデク死ねええええええ!』デクって子可愛そう。『ちくわ大明神』問題な――誰だ今の?
なんかとても遠いところからでも響く声とかよくわかんない声とか聞こえたけど特に問題なさそうだ。さすがこの300倍とかいうありえない倍率に挑む猛者たちと言うべきか。とりあえず裏道に入って手頃なロボットを暇つぶしついでに壊れないように拘束する作業を繰り返しつ、危なそうな子がいたら近寄り本気でやばそうなら手助けをすることを繰り返していると、ついに運命の時が訪れた。
巨大ロボットの襲撃である。
表の道に出ると、そこには自分のいる方向に逃げ出す受験生たち、その奥には、ついに相まみえる巨大ロボット。あれが今回の目標だ。そして、これは自分がどれだけ原作の"彼"に追いつけたか確かめられる場でもある。たしか"彼"はあの絵を見る限り一発でロボットを張り倒す威力のパンチをしていたはず。ならば、おそらく"彼"より前に鍛錬を始めた自分の目指すところは――完全破壊。これだ。
よし、そろそろ他の子が手を出す前に行くか。と思いあるき出したころ、周囲の話し声、というか叫ぶように言われた声が耳に入る。
『逃げろ! 0ptの巨大ロボットだ!』
は?
それが率直な感想だった。え? 0pt……? 0ptってことは、ポイントが0ってこと? つまり、0ポイント?
頭が真っ白になる。まずい、また俺はやってしまった。強力な個性持ちだと思っていたころのように自分の中で勝手に決めつけ疑わず進み、そしてそんな考えに罰を与えるように現実に押しつぶされる。あの頃から肉体面で成長していても精神的になにも成長していないじゃないか。
思わず片膝をつきそうになる。やはり、俺はヒーローになる資格はないのか? そもそもヒーローってなんだ? ヒーローとは、ヒーローとは……
そんなことを考えていると周りの声が一段とうるさくなった。
『―― あんた! 今はあ――――ら離れ――うが――』
「ヒーローとはなんだ?」
『あん?』
思わず考えていたことが口から漏れ出す。すると近くに他の人がいたらしく怪訝そうな声で返されてしまった。
……やばい、独り言が聞かれた。めっちゃ恥ずかしい。逃げたい。しかも『ヒーローとはなんだ?』だってよwwwwwwww草も生えない。ふざけてんのか。
とりあえず逃げよう。そうしよう。でもこのまま逃げるとへんな独り言言ってるやつにしか思えないからなんかそれっぽいこと言ってから、それっぽいことそれっぽいこと……
『お、おい?』
「ヒーローという職業に就いてたらヒーロー……? NO!」
『おわっ!?』
言葉を言い終わると同時に駆け出す。それは自分に言い聞かす言葉でもあった。例えこの受験に失敗してもヒーローになれないわけではないし、万が一ヒーローという職業になれなかったとしても、人を助ける"ヒーロー"にはなれないのか?
それは絶対に違う。
「"個性"が強ければヒーロー? 絶っっ対に、NOぉっっっっ!!!」
絶対に違う。なぜならヒーローは、
「HEROとは!」
ヒーローとは、
「HEROとはっっっっ!!」
とにかくあの場から離れたくて、独り言を聞いてしまった彼とは反対側に真っ直ぐ逃げた先には当然件の0ptロボットが待っていた。
着いた時には目の前まで迫っていたロボットの手のひらに、とりあえず八つ当たり気味に対抗し最大まで振りかぶった拳をぶつける。
ピシリ
どこからかヒビが入る音が聞こえる。
その音はどんどん大きくなっていき、
ピシピシピシ………………バキッ
やがて目に見えてロボットの腕全体に黒い線が走り、
ギイイィィィ!
崩壊が始まる。
「――誰かを助けるために一歩踏み出せる者のことを言う」
腕を振り上げると同時に、自分の拳とぶつかったロボットの腕がひびの入った場所から悲鳴のような軋む音を奏で、ついには腕全体に渡りできた亀裂から崩れ落ちていく。
そう、ヒーローとは職業を指す言葉ではない。誰かを助けるために動いた者がヒーローになるのだ。そう、これこそがヒーローだ!!
決して雄英高校に入学できた者だけを指す言葉ではない!
あと学業の成績も普通によかったはずだしもしかしたら普通科に入学できてるかもしれない!
入学できてたらヒーロー科だろうが普通科だろうが誤差だよ誤差!
あまりの事態に錯乱したまま行動していた俺は気づかなかった。
「え…………?」
この独り言もすぐ後ろで聞いている女の子がいたことに。
俺の時間が止まった。
気づいた時にはすでに試験が終わっていて香月ちゃんにビンタされていた。我を取り戻すと同時に言われたのは『デクてめえええ! 無個性のくせに無謀にも巨大敵に突っ込んだらしいな! 死にてえのかああああ! むしろ殺す!!』という叫びにも悲鳴にも聞こえる声だった。
ごめん香月ちゃん、でも俺……
試験の時の記憶ない。ナニカアッタッケ。
それから驚くことに、オールマイトから記憶にないが、人助けを優先してたらしかったりロボットを壊さず無力化という破壊よりむずかしいことをやってのけたことだったり巨大ロボットを倒したこととか褒められたが俺は一切思い出せなかった。が、記憶にない間に俺は合格したらしいことはわかった。さすが俺。
入学した後はなぜかお礼をしてきてちょこちょこ一緒に行動してくれる1人の女の子を見るたびに極度な緊張状態なのかものすごいドキドキしたりしてまさかこれが恋!? とか思ったりするがそれは別の話。
そのたびに香月ちゃんからの襲撃がくるがそれもまた別の話。
そんなこんなで無個性のまま最強最高のヒーローを目指す物語が始まったのでした。
「クソデク死ねえええええええ!」
「うおっ! 香月ちゃんはしゃがないでよ! せっかくもらったお菓子落としちゃう!」
「そうだよ香月ちゃん! なんなら香月ちゃんも作ったげればいいやん!」
「香月"ちゃん"って呼ぶんじゃねえてめえらああああああ!」
ちなみにもともと考えてた構想ではデクが0ptの仮想敵の巨大ロボットを軽いパンチで完全粉砕して「こんなものか……」と呟いてました。ようするにワンパンマン化ですね。でもそれだと理想の英雄像と離れたため没。それに学校生活時代もイジメに無闇矢鱈に突っ込む上若干見下し気味なせいで主人公に対するイジメが悪化、助けた相手も"周りがイジメるから僕も"と完全に味方いない状態に。
そこで香月ちゃんが「なんでもかんでも手を出して全部自分にヘイトを集めてるのは間違えてる」と伝えるために喧嘩が起きればデクより先に駆けつけ言葉で、力で、デクを邪魔し自然解決させ、あらゆる手で邪魔をし少しは自分のことを考えろ。平気な顔して傷つきながらヒーロー面してんの腹が立つ。と言わせる予定でした。
でもそんな鬱展開いらねえよなあ!?ってことで書き直したのがこれ。上手く書けてるかはわからない。
そんな感じで香月ちゃんとW主人公なのでこんなタイトルでした。書き直したら出番少なくなったけど香月ちゃんはツンデレです。ツンデレです。
(ちなみに続きが書かれる可能性は)ないです。誰か書いて?私も書いたんだからさ
追記:なんか予想以上に読んでくださる方が多かったため香月ちゃん視点だけ追加で執筆中。期待しないで待っててね