ダンジョンマスター ~俺はダンジョン経営者~   作:ぼいどれげぬん

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久しぶりの投稿で申し訳ありません。
やっと精神的に落ち着いてきましたが、どうも時間がとれず……。

書き溜めがないため設定に無理が出る可能性があるかもしれません。
妙だと感じたら気軽にご報告いただけると幸いです。


第6話 『俺ら人里さ行ぐだ』

 

 朝日を迎えた俺たちは解決策が思いつかないまま前日と同様の作業に移る事にした。

 俺は食料となる果実を探し、ウェアリーフは俺用の衣服をもう一着作る。衣服を作らせるのは何かあった時の予備として。そして何より、ウェアリーフに見張り番だけをさせてくのはあいつの主人としてどうかと思ったからだ。

 

(仕事も与えずにただ待ってろと言うのも主人としての威厳が疑われるしな。それに酷使させたいわけじゃないが暇と言う物がどれほど辛いかは知ってる。いや、あいつの場合は日向でじっとしてても苦ではないか?)

 

 どちらにせよただでさえ人手が足りてないのだ。少しでもこの生活を楽にするためにも協力しあう必要があるのは間違いあるまい。

 

「それじゃあ行ってくるわ。そっちも頼んだぜ」

『おお、リカウス様お待ちください。よろしければこちらを使ってみてはいかがでしょう』

「あん? なんだそれ?」

 

 ウェアリーフから木の葉で作られた容器を手渡される。中には若干泡立ちを見せる白い液体が入っている。植物の繊維質が浮いており、何かの果実をすりつぶして作られたものだとわかる。

 

『これは日焼け止めでございます。リカウス様は日差しに弱いとのことでしたので、そちらの衣服に合わせて作ってみました』

「それはありがたい! 原材料はいったい?」

『そちらは私が実らせる、リカウス様も食されている赤い果実です。誠に勝手ながら、今朝一つ生った実をすり潰し作ってみたのです』

 

 あの実から日焼け止めがつくれるだと! 確かによく見るとあの赤い果実の中身と同様白い色をしている。それに匂いとこの泡立ちはなるほどそっくりだ。

 

『本来はもっとすり潰し天日干しさせ粉末状とさせたものが良いのですが、時間がたりず不完全となってしまいました。ですがそれでも一定の効果はもたらすはずです。……余計な真似でしたら深く謝らせていただきます』

「何言ってるんだ、すごく助かるぜ! さっそく使わせてもらうとするよ」

 

 俺は日焼け止めを片手にすくい反対側の腕に擦り付けてみる。粘性の液体は塗った場所を白く染め上げていく。だが水分が多すぎるのか引き伸ばしてもやや垂れてきてしまった。

 

『やはり不完全ですね……。本来の想定としては塗った場所が液体同様真っ白になるのです。繊維が肌と日光を遮る膜を形成し光の影響を阻害します。しかし水によってこの粉末は簡単に剥がれ落ちてしまうため、今のままでは実用に耐えないようです』

 

 ウェアリーフは残念そうに俯いた。しかし俺はこの日焼け止めを見てある素晴らしい作戦を思いついた。

 

「……なぁウェアリーフ。この日焼け止めを作るにはどれくらいお前の果実がいる?」

『え? そうですね、一つの果実からであれば一回分程度でしょう。リカウス様が衣服から露出する肌を守る程度であれば、二回分くらいにはなりましょう』

「…………良い! 良いぞ、ウェアリーフ!!」

『は、はぁ……』

 

 俺が突然気分を高揚させたことにとまどうウェアリーフ。俺は状況を把握していないこいつに説明をする。

 

「お前のこの日焼け止めは塗られた箇所を白くする。本来の使い道とは異なるが、これを使えば俺のこの黒い肌を隠すことができるのだ!」

『確かにその通りでございます。しかし、それがどのような意味を持つのですか?』

「お前はエルフを知っているな? しかしその姿を見たことは無いかもしれない。実はエルフとは俺のようなダーキスの姿に似ているのだ。そしてその容姿の違いはごくわずか、肌の色が白いか黒いかだ」

『それはつまり……その日焼け止めを使うことでエルフになりすますことが出来るということですね』

 

 ウェアリーフは冷静に分析する。やはりこいつはとても頭の回転が速い。しかし俺の考えには至っていないようだ。

 

「そうだ。そして、それが何を意味するか。エルフとは人間と積極的に交流を持つことは無い。しかし人間に対しては友好的な種族だ。俺がエルフになりすますことで、安全に町で買い物ができるかも知れないということだ」

『お、おお! なんと……!』

 

 俺の説明の意味を理解できたらしい。そう、これは俺が昨晩悩んでいた金の使い道を見出すことができたということだ。

 町ならば森では手に入らない有用な物資、食料を手に入れることが出来る。金を使えるようになれば今の生活が格段に楽になりダンジョン造りも大いに進歩するだろう!

 

「ウェアリーフよ、予定変更だ! お前は残りの果実全てを使って日焼け止めを作れるだけ作ってくれ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

―――― 第6話 『俺ら人里さ行ぐだ』 ――――

 

 

 

 

 

 

 

 

 予定変更の翌日、ウェアリーフは出来上がった日焼け止めを俺の前に差し出した。触らせてもらった感触としては確かに粉っぽい。しかしまだ水気が抜き切れていないのかやや湿気ている。

 

「ふむ。これが完成品か?」

『いえ、本当ならば少なくとも丸一日は干す必要があるでしょう。しかし先日の未完成品と比べれば使用するには問題ないかと』

「よし、上出来だ。それじゃあいざ使ってみるとしよう」

 

 粉末を手にし肌の露出部分へとすり込んでいく。ダマが出来てしまっているのは仕方ないが塗り心地は悪くない。液体の時と比べるとしっかりと肌に馴染んでいるし、垂れてしまわない分白さが一層際立っている。

 腕、足首、首筋と塗っていき最後に顔全体をまんべんなく染めていく。あらかた塗り終えた所でウェアリーフが感嘆の声を上げた。

 

『おお、まるで別人でございます』

「そうか! 塗り忘れているところはないか?」

『ええ、問題なさそうです。フードを被ってしまえば完全にエルフと見紛うのではないでしょうか』

 

 表に出て水桶に顔を映してみる。水鏡に移った自分の姿は想像以上にエルフのようであった。

 髪色がくすんだ白色なのが気になるところだがフードを被れば目立つまい。エルフの多くは美しい金髪がかった髪色ではあるが全てがそうではないし。

 

「良し、良し! 良い感じじゃないか!? これならばきっと町でも平然と振る舞えば怪しまれることはあるまい!」

『早速町へと出向かれますか?』

「ああ。金も幾らか持っていこう。この場所がどの程度町と離れているかもわからないが、少しは役に立つものを買って帰れるよう努力しよう」

『かしこまりました。それで、その間私はどうしたら良いでしょう? 日焼け止めを作り続ければいいですか?』

「あっ」

 

 やっべぇ~……そうだよこいつを放ったらかしにするのは可愛そうだよな。

 人里までどれくらい距離があるのか知れないんだ、ひょっとしたら数日は帰ってこれないかも知れない。

 町から戻ってきたらロングイヤーウルフ共に襲われて殺されてた、なんて事もありうるだろう。どうしたものか……。

 

「困った、何も考えてなかった。お前を連れていくわけにもいかないし、しかし一人にさせるのは危険だろうし……」

『おっしゃる通り私一人では敵に襲われたら何もできません。それでしたら、もし私が殺されたとしてもリカウス様が困らぬよう、少しばかり種を残しておきましょう?』

「は? 種?」

『はい。我々ウェアリーフは雌雄同体であり自家受粉が可能です。要は分列に近いですね。個としての能力は一切変わらないため成長性はありませんが、私の複製ですから問題はないでしょう』

「……」

 

 あ、あれ。魔物ってオスとメスを用意して子供を産ませないと増えないんじゃないのか? 植物でもそれは間違いないはずだし、違う個体の花粉を受粉しなければ種が作られることは無い。

 だがこいつは今自家受粉ができると言ったか? それはつまり、複製ではあるがたった一体の魔物からいくらでも数を増やせるということではないか……!

 

「お前ぇ!! そんな事できるならはやく教えてくれよ!!」

『へ!? あ、いやしかし、私などの複製が増えた所であまり役に立つものでもありませんでしょうし……。それに、お伝えするまでもない事かと思っていました』

「馬鹿野郎、お前みたいな有能なやつがいればいるほど大助かりだ! くっそー、お前ってやつはよ!」

『も、申し訳ありません……』

 

 ウェアリーフは縮こまって頭を下げ続ける。しかしふと顔を見上げ俺の表情に不思議そうな顔をする。

 俺は喜びを隠すことなく浮かれた調子で言った。

 

「本当に、お前は最高なやつだぜ!!」

 

 

 

 水筒と金袋を携え俺は森の中を歩いた。目指すのは当然人里。以前冒険者たちが通ったと思われる道は草木が起き上がりつつあったが、いまだその軌跡ははっきりと確認できた。

 

(ふふん。俺の観察力も捨てたものじゃないな。慧眼と言っても差し支えなかろう)

 

 道は人間大の高さの枝を鋭い刃物で切り落とした跡がいくつも見られ、ここに来るまでに人間がナタなどで道を切り開こうとしていたのだと推測できた。

 

 俺は今とても気分が良かった。自分で自分を褒めてやりたいほどに上手く事が運んでいる。もちろん俺一人の力ではないが、それでも自分の運の強さは相当なものだ。

 町で買い物ができるようになればある程度食料問題は解決だ。道中で他の魔物に襲われないかが心配ではあるが、俺に限ればそこまで気にすることもあるまい。どんな魔物ともコミュニケーションが取れるというのは非常に強みだ。

 

 そして何より、ダンジョン内での魔物の繁殖、これが解消されたのは大きい。たとえ戦闘能力が低いウェアリーフと言えど当初予定していた通り数さえ揃えてしまえば良い話だ。

 数が増えれば食費が懸念されるがウェアリーフに限っては問題なかろう。彼らは日中に太陽を浴びながらじっとしていればその日生命活動に必要なエネルギーを自分で作ることが出来る。果実を実らせるときや繁殖を行う場合に限り多大な養分を必要とするそうなので、食料供給が追い付かないと感じたら待機するよう命じればよいだけの事。

 

「ふっくくく……! 我ながら恐ろしい強運だ。ダンジョン経営も案外楽なものだぜ」

 

 おっと、喜ぶのはまだ早いか。まだ町にすら到着していない。もしも人里がダンジョンからとても離れていたとなれば新たな問題が生まれるだろう。

 ……だが、どうやらその心配も杞憂に終わったようだ。

 

「あ、あれは、村か!」

 

 俺が旅立ってから早数刻、森を歩き続けてると開けた丘に到着した。小高い丘の上から辺り一面に広がる森林と広大な草原、そして整備された道の先に縮小された村が映った。

 どうやらあの巣穴は山林の中にあったらしい。しかし道さえ覚えてしまえば往復で半日程度だろう。そう考えると、あの巣穴はまさに絶好の立地条件ではなかろうか!

 

 山を降りるなり先ほどの道がすぐに現れた。村までは距離がありそうに思われたが、平坦な道ゆえか予想よりも早くにたどり着くことが出来た。

 遠くから見たときは気づかなかったが思いのほか大きい村のようだ。もちろん町と呼べるほどではないし都会に比べてしまえば随分と侘しく感じる。

 

(しっかし、これまた大掛かりなものを)

 

 村全体を囲むように張り巡らされた巨大な木の杭は襲撃に備えたものだろうか。

 遠くから見た時は人里を見つけた喜びで気に留めることもなかったのだが、間近で見ると物々しい雰囲気に圧倒されそうになった。

 凹凸を削られ垂直に立ち並ぶそれらは樹皮がまだ白みを帯びている。ここに来るまでに少々森を切り開いた跡があったが、あれは村の者がこのバリケードを作るための物だったのだろう。

 

 しかし、何故このようなものを?

 確かに魔物の襲撃に備えてこのような柵を設けるのは決しておかしなことではない。だがそれにしてはあまりにも洗練されてはいないだろうか?

 まるで防衛戦に長けた歴戦の戦士が指導したかのような、村の規模に釣り合わない堅牢さだ。

 それとも、この村の付近にはそれほどまでに警戒しなければならない何かがいるとでも言うのか。

 

「おい、そこのあんた」

 

 んお!? 誰だ! 今話しかけられたのは俺か!?

 驚き声の主を探そうと頭を動かす。するといつの間にか村の入口となる門の付近に体格の良い男がいた。

 全く気付かなかったが、ひょっとしてずっと俺を見ていたのだろうか。俺が村の周囲を見回していたのを怪しまれたか……? 

 

「あんた変わった格好してるなぁ。旅人……なのかい?」

「あーっと、その……」

 

 不味い、突然のこと過ぎて何を話したらいいのかわからない。出会ったばかりの人間にご丁寧に自己紹介をするのも不自然だろうし……。

 それに何より……こいつ随分と強そうだ。ま、まさか、こいつが噂の冒険者ってやつだったりしないだろうな!?

 

「え、ええそうです! つい先日この近くに到着したんですよ。今日は買い物にと思いましてな」

「そうかい! 通りで見かけない格好だと思ったよ。ハハ悪いな、辺鄙な村なもんで知らない顔を見るとつい詮索しちまう」

「いえいえ、気にしてませんから」

「とにかく、ようこそウールグーへ。旅人さん!」

 

 男はにこやかに挨拶をし入口から村の中へと入っていった。結局あいつはなんだったんだ……? 妙に馴れ馴れしいしやつだったな。この村の人間はみんなそうなのだろうか。

 

 とにかくようやく村にたどり着いたわけだ。ここでうまく立ち回る事が今後に深く影響する。

 忘れてはいけない、俺は魔物なのだ。村の中で正体がばれでもすれば命はないだろう。油断はできないな……。

 

 

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