ようこそTSギャルが暴走する教室へ   作:饅頭屋ちゃん

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開き直った。すっきりしないかもしれませんが当初の予定通り。
※今更ですが須藤が若干キャラ崩壊しています。あらすじに注意書き&タグを追加しました。


第8話

 兄との一件以降、堀北には少しだけ成長が見られた。

 勉強会で揉めてしまった須藤に対して謝罪ともとれるような言葉を口にして、須藤たちとのわだかまりは解消されたのだ。

 これで心置きなく勉強会に励むことが出来るようになった。

 

 そう考えていたのだが、予想外の問題が発生したためにそうはいかなかった。

 須藤の妙な性癖のせいである。

 

 須藤は一日一回佐藤に蹴られている。

 これはもはや一年Dクラスにおいては日常の一部と化した光景であり、もはや誰もが気にも留めない。佐藤と長谷部のみが毎回嫌そうな顔をしているのが少々気の毒だったが、さしたる問題ではないだろうとオレもあまり気にしていなかった。

 

「もっとたくさん蹴ってくれ。一日に三回か四回、多くて五回くらい必要かもしれねえ」

 

 須藤が佐藤に要求を出した。

 試験が終わるまでの間だけでいいからそうしてほしいと、彼は至極真面目な顔でそう言ったのだ。

 

 これには佐藤も難色を示した。

 本当に嫌そうな、少し泣きそうな顔をしていた。

 だが須藤には言い分があるらしく、蹴られてからしばらくの間は集中力が増し、勉強に身が入るという。

 

 一度だけということで佐藤が実験に協力してくれることになり、昼休みの時間に試すことになったのだが、その効果は堀北が認めるほどであり、オレの目から見ても確かなものだった。

 正確には蹴られた後トイレに行く必要があるのだが、小便に要する時間と大差が無く、実用的と言わざるを得ない。そう結論づけた堀北は珍しいことに佐藤に頭を下げて頼んだのだが、佐藤は首を縦には振らなかった。

 

 ……話は変わるが堀北が授業中などに佐藤の方を見ていることがやたらと多くなった。それとなく尋ねて見たのだが、堀北は何もないと言う。堀北が佐藤のことを気にするなどこれまでにはあり得ないことだった。

 恐らく二人の間で何かがあったのだろうが、堀北が何も話す気がない以上オレにそれを知る術はない。

 

 ともかく、佐藤が堀北を嫌っていることは一目瞭然だが、それとは関係なく須藤を蹴るのは本当に嫌らしい。

 だが佐藤は代案を口にした。

 

「てかさ、わたしじゃなくてもいいと思うんだよね」

 

 しかしその言葉にはオレを含め、その場にいる全員が首を傾げた。

 以前に篠原が須藤を蹴ったところ、須藤は本気で怒りを露わにしていたのだ。

 

「多分、その……篠原さん以外なら、多分誰でもいけると思う。このクラス、みんなレベル高いし」

 

 言いづらそうに言う佐藤だったが、オレには何を言っているのか分からなかった。

 話を聞いてみるとどうやら顔のことを言っているらしい。つまり篠原の顔のみが須藤が満足するレベルに達していないということらしいが、やはりオレには分からない。篠原だって十分に可愛い女の子だ。しかし池や山内も以前に佐藤と同じような事を言っていたのを思い出した。佐藤もあの二人と同じ意見だったということか。ともかく佐藤がやらない以上はそれを試すしかないようだ。

 

 そこで急遽、ほぼ女子のみによるクラス会議が開かれることになった。

 篠原は勿論不参加。櫛田が連れ出して時間を稼ぐことになった。

 男子から参加するのは、勉強会の主要メンバーであるオレ、そしてクラスのリーダーである平田の二名のみ。参加と言ってもオレは見ているだけだが。

 

『須藤係を決める会議』

 

 黒板にデカデカと書かれた文字。

 試験が始まるまでの期間限定で、須藤が蹴って欲しいときに蹴る係、つまりは生贄を決めるような会議。

 

 そんなものをやりたい人間がいるわけがなく、このままでは大人しい女子に押しつけられてしまうだけだ。そう考えていた平田はどうやら前もって対策を考えていたらしく、それは『蹴り一発毎に須藤から100ポイント支払われる』というもので、須藤とも話はついているらしい。但し須藤の手持ちポイントがないため、クラスポイントが入手できたら、という条件はつく。

 だがこれだけでは弱いと思ったのか、平田は試験が始まるまでの間、須藤係に毎日カフェで奢ると言い出した。この提案には魅力を感じる女子も少なくないだろう。

 

 平田の提案が功を奏したのか、ある人物が真っ先に名乗りを上げた。

 松下千秋。軽井沢や篠原と一緒にいることの多い女子だ。

 そもそもこの須藤係、現時点では佐藤以外の女子でも本当に大丈夫なのかどうか定かではないのだが、可愛い女子なら誰でも大丈夫という条件を聞いた時点で松下の表情からは自信の程を覗かせており、怯えている様子もなかった。

 

 平田に連れてこられた須藤に向けて、松下は一切の躊躇いのない、勢いのある高めの蹴りを放った。

 恐らく全力で蹴ったようにも見えたが、その蹴りを食らった須藤はちょっとした奇声を上げた。

 怒りではない。喜びの奇声である。

 これで佐藤以外でも可能だということが証明されたのだが、しかし須藤が奇声を上げてしまったのがマズかった。松下は須藤係を辞退し、続く女子が現れなかったのだ。

 

 そこで次に須藤係の候補として選ばれたのは、井の頭心。櫛田と仲良くしている大人しいタイプの女子だ。

 軽井沢周辺の女子達から半ば無理矢理押しつけられていた彼女は半泣きだったが、こういうときに庇ってくれそうな櫛田は篠原を連れ出しているため、彼女に逃れる術は無かった。

 

 井の頭の蹴りは攻撃といえるようなものではなく、そっと触れるようなものだった。この蹴りに対し、須藤は怒らなかったが満足したようにも見えなかった。

 須藤は井の頭にひとつの要求を突きつける。

 

「もう少し足を上げてくれ」

 

 ここで井の頭が泣いてしまったため、彼女は須藤係を免れることができた。

 

 次の須藤係の候補は王美雨(ワンメイユイ)に決まった。

 彼女もまた櫛田の友達であり、櫛田からはみーちゃんと呼ばれている。

 気の毒なことに彼女も井の頭と同様、軽井沢周辺の女子から無理矢理押しつけられていた。

 王美雨に対し、須藤は蹴る前から一つの要求を出す。

 

「顔を蹴ってくれるなら何でもいい」

 

 王美雨も泣いてしまった。

 次の候補は……いや、もういいだろう。

 

 結論から言うと、須藤係として選ばれたのは沖谷京介だった。

 名前から分かるとおり、彼は男である。

 沖谷は女性的な顔立ちをしているため苦肉の策として選ばれたのだが、女子の制服を着せられた彼に対して須藤の体が反応してしまったためにそういう結果となってしまった。

 須藤は納得していないようだったが、そもそもの目的は果たせるため、堀北が文句を言わせなかった。ちなみに沖谷に須藤から報酬が支払われることはないのだが、平田はちゃんと奢るようだ。

 

 くだらない。あまりにもくだらない。

 あの白い壁に覆われた場所を出て手に入れたかったモノがこれなのか?

 こういったくだらないモノをオレは求めてきたんじゃないのか?

 

 自問自答しながらもオレは茶柱先生の後を追いかけている。

 前置きが長くなってしまったが、これまでの話は全てどうでもいい。

 

 ここまでしても須藤の英語の点数が足りなかったのだ。

 英語に不安のある須藤に対して堀北のとった策は、自身の点数を抑えるというものだった。しかしこの数日の間、偶然にも英語の勉強ばかりをしていた佐藤が高得点を取ってしまい、僅か一点が届かなかった。

 

 廊下の先にはオレを待ち構えていたかのような茶柱先生の横顔が目に映った。

 

 

 

  ◇

 

 

 

「10万ポイントだ」

 

 須藤の一点を売ってくれと要求するオレに対し、茶柱先生が突きつけてきた額はオレ一人が支払えるものではない。

 これまでポイントを全く使ってなければ支払うことができるが、そんな生徒がいるとは思えない。意地の悪い先生だ。

 

「――、」

 

 何か言おうとして言葉に詰まったかのような、微かな音がオレの耳に届く。

 茶柱先生はオレの背後を見てニヤリと笑みを浮かべた。

 振り返ると、そこには堀北が立っていた。

 だが、堀北は何も言わずに俯いている。

 

「堀北……?」

 

 堀北はオレの呼びかけにも反応がなく、ただ下を向いている。

 どうやらオレを追いかけてきたようだが、お前、何しに来たんだ?

 茶柱先生も浮かべていた笑みを怪訝なものへと変える。

 

「堀北、10万だ。須藤の一点を10万ポイントで売ることになった。だが綾小路一人では支払えないらしいぞ」

「……安く、なりませんか?」

 

 堀北の口から出たのは値下げの交渉だった。

 ……なんだ、この違和感は。

 

「フン、お前にはガッカリしたぞ堀北。クラスメイトを救いたいと思い行動しながらも自分のポイントを吐き出す真似は出来ないか。話にならんな、却下だ。お前にどのような事情があり、何を考えてその言葉を口にしたとしても、値下げには応じない」

「……っ」

 

 拳を握りしめ、唇を噛みしめる堀北。

 この先生が値下げの要求に応じるとは考えづらい。そのくらい堀北にだって分かっているはずだ。

 

 堀北は多くのポイントを残している。

 それは茶柱先生も確認しているからこその言葉なのだろう。

 だが堀北は本当に自分のポイントを吐き出したくないからというだけの理由でその提案を口にしたのか?

 この奇妙な違和感は何だ?

 

 三人ともが言葉を発することなく、居心地の悪い時間が流れる中、ふと足音が聞こえてきた。

 後ろから誰かが近づいてくる。

 

「チッ、邪魔だな」

 

 オレと堀北の背後を見て舌打ちする茶柱先生。

 背後に目を向けると、笑みを浮かべている一人の女子生徒が歩いてくる姿が見えた。

 

 佐藤麻耶。

 なぜか水筒を持っている彼女はほんの少し頬を朱に染め、楽しそうな顔で堀北を真っ直ぐに見ている。

 オレとは一瞬たりとも目が合わない。

 オレ達の目の前で足を止めた佐藤に対し、茶柱先生はもう一度舌打ちした。

 茶柱先生にとっての佐藤は取るに足らない有象無象の生徒の内の一人。

 今この場所に立っていいような人間ではない。

 そう思っているのだろう。だが、思い違いをしているぞ、茶柱先生。

 

「佐藤、今は大事な話をしている。悪いが」

「堀北さん、何か困ってるの? わたしでよければ力を貸そうか?」

 

 佐藤は茶柱先生を無視して堀北に問いかけた。

 その佇まいが茶柱先生の考えていたものと違ったのか、彼女は佐藤への言葉を止め、その表情は困惑へと変わる。

 堀北だけを真っ直ぐに見つめる佐藤。

 何故かその姿は、オレがバスの中で初めて彼女を見たときの記憶と重なった。

 

「……佐藤さん、あなた、まさか」

 

 今この場でどのような話し合いが行われているのか気づいているのか?

 堀北もオレと同じ疑問が浮かんだのだろう。目を見開いて彼女を見ている。

 

「何の話をしてるのか知らないけど、この学校で交渉みたいなことをするなら必要になるのはプライベートポイントでしょ? 何にでも使えるっていうし。助けになれないかなーって思って」

 

 やはり気づいている。

 知らないといいつつ、状況をほぼ理解しているとしか思えない言葉だ。

 茶柱先生は目を丸くしている。

 堀北は胸に手を当てて一度ゆっくりと深呼吸すると、改めて佐藤に向き直る。

 ……堀北の様子が普通じゃない。佐藤に対する緊張が隠せていない。

 

「佐藤さん。いま須藤くんの点数が10万ポイントで売ってもらえることになったのだけど、綾小路とわた……ポイントが足りてないの。あなたも出してくれると助かるわ」

 

 理解した。

 堀北はプライベートポイントが足りないのだ。

 しかも恐らくだが、堀北の所有するプライベートポイントはかなり少ない。

 そして堀北のプライベートポイントが足りないことを佐藤は知っており、その原因にも佐藤が関与している、のか?

 オレと同じ結論に至ったのだろう茶柱先生が佐藤に鋭い目を向ける。

 

「お前達の間で何があった?」

「先生、私と佐藤さんは情報の売り買いを行ったに過ぎません。この取引に不正な行為は一切ありません」

 

 情報、か。

 その内容はオレが知る由もないが、堀北は納得しているようだ。

 堀北がこの態度である以上、茶柱先生も追及の手を止めざるを得ない。

 

 佐藤は未だにオレとは目を合わせることなく、真っ直ぐに堀北を見て笑顔で告げる。

 

「なるほどね。じゃあ堀北さんにお金を貸してあげようか? 10万ポイントを二人でってことは、半分の五万でいいんだよね?」

「待て」

 

 佐藤の提案を茶柱先生が遮った。

 

「そういうことなら佐藤、貸すのではなくお前が五万を払えばいい。これはDクラスの問題だ。堀北でなければならない理由はない」

「あのさー、先生は黙っててくんない? わたしは堀北さんに提案してるだけなんだよね。わたしにとって須藤が退学になろうがどうなろうが知ったこっちゃないし」

 

 悪意。

 佐藤が堀北に対して向けているモノの正体。

 佐藤は堀北を助けに来たわけではない。堀北を攻撃しにきたのだ。

 茶柱先生は佐藤を睨みながらも口を閉じる。堀北は佐藤に対し、ただただ警戒の表情を向けている。

 

「……借金を作らせて、利息でも取るつもりなの?」

「利息なんていらないよ? 返済期限もなし。ただ、ちょっとした条件を呑んでくれたらね」

「条件とはなんだ?」

 

 ここで初めてオレが口を挟むと、佐藤の顔に一気に赤みが増した。

 だがオレとは頑なに目を合わせず、真っ赤な顔のままひたすら堀北を見つめている。

 

「じょ、条件っていうのはね、えと、」

 

 佐藤は指を一本立てる。

 

「条件その一。今後プライベートポイントを入手次第、即時全てのポイントをわたしに送ること。借金返済が終わるまでね」

 

 なるほど。もし今後Dクラスが多少のクラスポイントを手に入れることが出来たとしても、堀北個人がプライベートポイントを保有することはしばらく叶わないわけか。地味な嫌がらせだ。

 条件はそれだけで終わらないらしく、佐藤は立てている指を二つに増やした。

 

「条件その二。綾小路くんとのポイントのやりとりの禁止。綾小路くんからポイントを借りたり、綾小路くんとの取引でポイントを受け取るのはダメ。綾小路くんをパイプとして他の人と取引することも禁止。綾小路くんが関与する取引は全て禁止」

 

 徹底しているな。どうしても堀北にプライベートポイントを持たせたくないらしい。ただの嫌がらせ以上の意味があるようには思えないが。

 佐藤の立てる指が三本になった。

 

「条件その三。今からCクラスに行ってわたしの言うとおりのことをしてきて。そしたらポイント貸したげる」

 

 その内容を聞いたオレには、やはり堀北に対するただの嫌がらせにしか思えなかった。

 

 ポイントを借りる相手は別に佐藤でなくても構わない。

 例えば平田などに言えば貸してくれる可能性もある。しかし平田の他にはクラスメイトであっても貸してくれそうな人間に心当たりはない。

 確実とは言えないが平田を頼るか、そこまで難しい条件ではない佐藤の条件を呑んで借りるか、といったところか。

 

「あ、そだ。やっぱり返すポイントは半分でいいよ。わたしが二万五千ポイント出してあげる」

 

 その言葉が決定打となったのか、堀北は佐藤から借りることにした。

 

 

 

 佐藤が持っていた空の水筒を右手にはめ込んだ堀北がCクラスに突入する。

 Cクラスのリーダーらしい長髪の男、龍園の元に真っ直ぐに歩いて行く堀北に集中する視線。

 Cクラスは妙な静寂に包まれた。

 

「あん? なんだテメェ」

 

 自分の席の前に立ち見下ろしてくる堀北に怪訝な顔を見せる龍園。

 堀北は龍園に水筒を突きつけ、

 

「あなたが龍園くんね? 私はDクラスのリーダー、堀北鈴音よ。今日は宣戦布告をしにきたの。私達Dクラスはあなた達Cクラスを蹴落としてCクラスに上がってみせる。せいぜい震えて待っていることね。…………バキュン」

 

 堀北は銃を撃つような動作で水筒に包まれている右手を振り上げた。

 龍園の返事を待つこともなく、足早にCクラスの教室を去る堀北。

 堀北が教室を出た直後、Cクラスの教室からは一斉に大きな笑い声が上がった。

 廊下から一部始終を見ていた佐藤もオレの隣で腹を抱えて笑っている。

 ちなみに茶柱先生は興味がないらしく、ここにはいない。

 

「……これで文句はないのよね?」

「う、うん。お疲れ様」

 

 堀北の表情には羞恥よりも疲労の色が濃く見える。

 右手から水筒を外そうと四苦八苦しながら戻っていく堀北の足取りは重い。

 

「さて、わたしも戻ろ」

「ちょっと来い、佐藤」

「ふぇっ!?」

 

 堀北の後を追おうとする佐藤の手を掴み、人気のない方へと連れて行く。

 階段の踊り場まで連れてきたオレは佐藤を壁際に追い詰める。

 逃げようとする佐藤。オレは壁に手をついて退路を塞ぐ。

 

「あ、ああ……」

 

 佐藤は目に涙を浮かべながらオレから目を逸らし、俯く。

 先ほどまでの悪意に満ちていた彼女からは想像できないような弱々しい態度。

 以前から考えていたオレの推測は恐らく正しい。

 

「佐藤、なぜ堀北を狙う?」

「……だ、だって」

 

 オレと軽く目を合わせた佐藤はまたしても俯いた。

 何も言わずにじっと待っていると、佐藤は下を見たままその理由をゆっくりと口にする。

 

「……だって、堀北がムカつくんだもん」

 

 あまりにも単純で子供じみた答えだった。

 堀北の佐藤に対する態度は確かに若干辛辣なものがあったが、しかし堀北の態度は他のクラスメイトに対しても似たようなものだ。ここまでの仕返しをされるとは誰も思わないだろう。

 

「堀北のプライベートポイントが無いみたいだが、何をしたんだ?」

「……綾小路くんには関係ないじゃん。別に悪いことしてないもん」

 

 ここでようやくオレの目を真っ直ぐにみつめる佐藤。

 弱々しい目つきで睨んでくる。

 

 どうやらオレのいうことは何でも聞くというわけではないらしい。

 オレの駒にはなり得ないか。

 

「なら言えるんじゃないのか?」

「……そんなに堀北のことが大事なの?」

 

 オレの質問には答えず、別の質問で返された。

 別に堀北のことは大事ではない。

 堀北はオレの隠れ蓑としてちょうど良いから使っているに過ぎず、ただの隣人以上の感想をオレは持ち合わせていない。

 

「別に大事だとは思ってない。同じクラスメイトとして当たり前の心配をしているだけだ。お前はこれからも堀北を狙い続けるのか?」

「……別に。堀北に退学とかされたらわたしだって困るし。もう何もしないよ。もういいじゃん。どいて、どいてよ」

 

 俺の腕を力尽くでどけようとする佐藤。

 その力は弱く、俺の腕はビクともしない。

 

「……力、強いんだ」

「別に。男なら普通だと思うが」

 

 オレを上目遣いで見てくる佐藤の目はオレの言葉なんて信じてはいなかった。

 佐藤は少しアレな性格をしているが、頭はキレるし観察力も高い。

 だが、顔を真っ赤にしながらオレの手を恐る恐る触っている佐藤がオレの敵になるようにはどうしても思えなかった。

 

 結局、佐藤が五万というポイントの半分を肩代わりしたのは事実だ。

 悪意が前に出すぎているため分かりづらいが、堀北に退学されたら困るという言葉も嘘ではないのかもしれない。

 或いは、佐藤も退学者を出すことについてのデメリットを警戒しているのか。

 オレは佐藤の退路を塞いでいた腕を退ける。

 

「あ……」

 

 オレの手を名残惜しそうに見つめる佐藤。

 オレの視線に気づいた佐藤はオレを両手で突き飛ばし、走り去っていった。

 




なんとなくありそうな感じのやつ
Q.借金背負わせないんじゃなかったの?
A.堂々とお金を貸すだけだし特に介入はされないと佐藤は考えた。
Q.綾小路くんにバレても大丈夫なの?
A.大丈夫だと佐藤は考えた。原作では櫛田のこともしばらく排除は考えなかったくらいなので。
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