(ひのき本編とは矛盾が生じますが、悪しからず。)
「夏凜ー、出かけるぞー。」
「藪から棒になによ昇...」
一年の3分の2が終わろうとしている8月30日、緋月昇は残暑降り注ぐ香川の地でとある人への贈り物を探すという本来の目的を隠して三好夏凜をデートに誘ったのであった。
「いいからいいから。」
「あーもうわかったわよ...で、どこ行くのよ。」
「イネス。」
「イネスね...ちょっと遠いわね...」
「気にしなさんな。それにやんないといけないこともあるしな。よっしゃ行くぞー。」
───────
「ビュオオオオゥ、のぼるんとにぼっしーがベタベタだよ!創作意欲が刺激されるよー!」
「園子様...なにもわざわざ車で追跡しなくてもよいのではないでしょうか...」
「いいんだよ春信さん。それより追いかけて!」
大赦所属の車が二人に着いていくのは、実は二人とも気づいていたりはしている。
───────
「さてはて夏凜。どうしよ。」
「目的地決めておいてノープランはさすがにないでしょ...」
「いやね、気づいてるだろ、夏凜。」
「そうね、まさかそれが今回の目的?」
「つけられてるとは思わなかったぜ...だから露骨な行動はそんなに取れないんだよね...」
「気取られたくないわけね...」
しかも春信さんも一緒にいるよね...
やっぱり園子様を制御するのは春信さんでもきついのか...やれやれ、これはもしかしたら看破したほうが楽かもしれない。
「だけどそれは向こうも同じ。とりあえず買いに行くか、園子へのプレゼント。」
「結局まっすぐ行くのね、でも何買うのよ。」
「メモ帳と万年筆かな。あの子創作意欲がわいたらすぐメモするからね。」
「...さすが昇、ちゃんと見てるのね。」
「そういう夏凜は何あげるんだ?」
「う...決まってないわ...」
「そっか。」
まぁいいやと思いながら本屋に行って紫色のカバーがある罫線付きメモ帳と装丁が綺麗な万年筆、替えインクを買う。
「私も園子への誕生日プレゼント買ったわ。」
「よっしゃ、凸ろう。」
「割と短絡的ね...で、園子はどこよ。」
「そこ。」
指さしたほうにはブロンドというか金髪というか、それこそ黄金色と言うべきか。ともあれ御託はいいにしろトンデモ美少女がいる。隠れきれてない。
「あれ、のぼるん気づいてたの〜?」
「割と最初の方からですよ。こちら誕生日プレゼントです。」
「わぁ、ありがと〜」
「あー、園子、私からも、これ...」
「にぼっしーもありがと〜、春信さ〜ん、こっちおいで〜」
「待って、なんで兄貴もいるのよ!?」
このあと4人でイネスのフードコートで食事した。春信さんと夏凜は終始妙に気まずそうにしていたけれど。でもまぁ、そんな感じなのかな、きょうだいって。
「園子様、まもなくお時間です。」
「...そっか。」
食事が終わって数分ほど経ったのち、おもむろに春信さんが口を開いた。
まだ園子様は外を自由には動けない。
楽しそうにしていても、根底にはその不自由さが巣食っている。
「園子様。いや、園子。」
だから俺は言った。
「いつでも待ってる。勇者部は。」
「...そうね、待ってるわ。」
文化祭が直前に迫る日の出来事だった。