時の鐘   作:生崎

251 / 251
a hot day ⑦

 

 

 

 御坂美琴のラボが吹っ飛び、舞い上がる黒煙に誰より慌てたのは常盤台生。一人一人が能力者で小さなエレメントなら問題ない力を有しているが、率先して脅威をまるで意に介さず狩っていたのは御坂美琴。

 

 異常な事態に対抗していた象徴的な場が木っ端微塵に吹っ飛んで冷静でいられる者は少ない。なにより吹っ飛び方から銃撃だと看破できる者は多くなく、新手の能力者が水を求めて攻めてきたと考える者の方がこの瞬間は多いだろう。

 

 ただ、誰より早くこの事態が誰によって引き起こされているのか分かっている食蜂操祈は、しゃがんだまま立ち上がった法水孫市にリモコンを向けるが、ボタンを押す前に落とされた口風琴(ハーモニカ)の先端にリモコンを砕かれた。

 

「あなたッ」

「重ねて悪いな食蜂さん、この距離なら俺のが速い。できれば校舎から飛び出そうとする常盤台生達を食蜂さんには抑えといて欲しいのだがな。ここでの最低限の仕事は果たしたが、まだやるべきことがある。俺の狙いは常盤台ではないが、分かるだろう?」

 

 言いながら孫市が口風琴(ハーモニカ)を振り上げ、飛んで来た銃弾達を受け止め弾く。一瞬で戦場へと塗り変わった場において、誰が逸早く反応するのかは最早説明の必要はない。

 

 学舎の園という閉鎖的な空間内において、本来ならば男が立っているだけで狙撃されて然るべしではあるのだが、こんな状況に加え、緊急事態だから上条当麻(おとこ)でも女の花園内に置いていたという前例があり、完全武装していようが、孫市の仕事内容と目的が分からなかったが故に先手を打たれた。

 

 だがそれも終わり。

 

 一手でラボを破壊されてしまったが、それ以上はないと二体の悪魔が白銀の槍を手に動き出す。

 

 オーバード=シェリーは孫市へと銃口を向け、ロイ=G =マクリシアンは木原円周へ。

 

 この段階で、シェリーは制圧のために頭を動かし、垣根帝督の参戦はないだろうと最悪のケースを切り捨てる。

 

 理由としては単純で、シェリーとロイの思考パターンを写せる円周だからこそ隙を突くことができたが、完全に時の鐘学園都市支部(インダイヤル)が場の制圧のために動いていた場合、同時にシェリー達に対して垣根が動いていなければ状況としておかしい。

 

 故に空への警戒度を一段階下げ、残る面子へとシェリーは集中する。

 

 そこから少し離れたところで、強くロイは目を細めた。対峙する円周がゲルニカM-003から見慣れぬ銃へと獲物を持ち替えていたからということもある。が、それ以上に続けて放たれた弾丸を目視したから。

 

 覗くスコープの先から飛んで来るのはゴム弾。その選ばれた弾丸にこそ不機嫌に口端を歪める。

 

 時の鐘同士が仕事上でやり合う際には殺し合いは御法度、であるとしても、殺す気概がなさ過ぎる。先輩に対しての遠慮なのか、万が一がないようにの配慮なのか、兎に角それが気に入らない。

 

 円周のことをロイがよくは知らないということもあるが、向けられる殺意のなさに失望し、面白くないと素手でゴム弾を弾いたところで目の色が変わる。

 

 膝から急に力が抜ける。

 

 ()()()()()()

 

 面倒な状況ではあるが、そんな事を考えている場合でもないのに、なぜか身の内に突如として食い込んでくる『怠惰』な感情。二発三発と身に受けることでより増していく怠惰な思いに口端を大きく持ち上げて、ロイは物見(やぐら)の上から跳び退いた。

 

「アッハッハ! オモシロ‼︎ バドゥ! 円周ちゃんがやばいんだけど♪」

「楽しそうにしちゃって、円周ったら大分時の鐘らしくなったじゃない」

 

 ロイの反応にシェリーも口端を持ち上げる。

 

 『木原』として、『時の鐘(ツィッドグロッゲ)』として、掴み手にした木原円周だけの感情の弾丸(技術)。感情を撃ち込む魔弾を受ければ、拒む手立てはほとんどないと言っていい。

 

 加えて、『木原』の名を冠してる以上、円周の持つそもそものポテンシャルが、性能が平凡とは絶対的に違う。時の鐘に参入し、数ヶ月で超遠距離狙撃を形にしている異常性。

 

 分かりやすく天才。ただでさえ伸び代しかなかったところに、己が技術さえも手にした円周が伸びていないはずがない。

 

 木原円周への脅威度を引き上げながら、ロイ以上にシェリーは笑みを深めた。

 

 他でもない、別の存在が故に。

 

 孫市がいて円周がいる。ではあと他に誰がいるのか?

 

 時の鐘学園都市支部(インダイヤル)の中で、あとこの場にいそうな者は、前線に出ない事務員を除いて釣鐘茶寮と浜面仕上。

 

 浜面は逃げる為の足担当で離れているのか、本当にいないのか定かでないが、姿が見えないこと自体に意味がある釣鐘の存在がシェリーの頭に引っかかる。

 

 忍者。アサシン。隠密を旨とする釣鐘がどのタイミングで出てくるのか、いないものとして考えてしまった瞬間にこそ、出て来る可能性が非常に高い。

 

 だからこそ、どんな状況でも釣鐘を知っていれば釣鐘に対して意識を割かねばならず、ただ姿が見えないのでどこまで警戒すればいいか不明瞭。物理的な脅威度よりも精神的な脅威度が高い。

 

 狙撃とて視認できなければ狙撃もできない。その不自由なままならさにシェリーは微笑み、ロイ同様、物見(やぐら)から跳び降りると孫市に向けて足を寄せる。

 

 この場で、シェリーとロイが気にしなければならないことはある種明確だ。

 

 一つ、円周からの狙撃は受けてしまえば強制的に隙ができるので当たってはいけない。

 

 二つ、釣鐘の存在を意識から外してはいけない。

 

 三つ、孫市を自由にしていると、他に対処しようとした瞬間に狙撃されるので放っておくのは悪手。

 

 たったの三人でなかなかに嫌らしい戦場を構築している。

 

「ロイジー、私は孫市の相手をするから貴女は引き続き円周の相手をなさい」

「え〜⁉︎ あたしもそっちがいいぜ! 狙撃苦手なのに!」

「貴女も時の鐘でしょう、文句言わない」

 

 普段の流れなら、狙撃において世界最強のシェリーがさっさと円周を落とし孫市を孤立させるのが定石ではあるのだが、不確定要素があるが故にシェリーは手順を入れ替える。

 

 孫市が纏う白銀色の軟体生物のような服。

 

 海月(クラゲ)のように触手を垂らした衣が、ただの仮装用の衣装なはずもなく、その機能がなんであるのかシェリー達には全く分からないからこそ。

 

 目に見える距離に姿を現したシェリーを前に、孫市も目を丸くする。時の鐘の総隊長が直々に相手してくれるからというわけでもなく。

 

「姉さん水着じゃんッ‼︎ マジかぁッ‼︎」

 

 白いビキニ姿のオーバード=シェリーに、つい孫市はぐっと拳を握る。白井黒子の水着姿を泣く泣く我慢し、それ以外に見たい誰ぞの水着姿などほとんどない中でお目に掛かれた唯一の幸運。嬉しくないはずがない。

 

 暑さも吹っ飛ぶ衝撃に孫市は目を輝かせ、弟分の愚行にシェリーは冷ややかに目を引き絞る。

 

「それが今生最後の言葉でいいのかしら孫市? ちなみに黒子は常盤台の」

「うわああああやめてくれる⁉︎ 楽しみが減るッ⁉︎」

 

 ズドンッ。

 

 身を(よじ)る孫市に銃弾を一発。山塊(レヴィアタン)の肩口に銃弾を受けて孫市は吹っ飛────ばず、衝撃に波打つ外装に合わせて蜷局を巻き、口風琴(ハーモニカ)の先端で一度地面を叩いた。

 

「……できれば引いて欲しいんですがねボス。時の鐘とやり合う必要性をあまり感じないもので」

「私達は今常盤台の教師よ? 無理を言うものじゃないわね。ここを攻めることを選んだ己を恨みなさい」

「……まあこれは想定内だししょうがないか」

 

 最低限の仕事は果たしたが、次のステップに移行するまでの間の最大の障壁。常盤台で暴れるにあたって、絶対に対峙をしなければならない相手。土御門に上条と孫市が送られた時とは状況も事情も違うが故に手加減など期待できない。

 

「その海月(クラゲ)、材質は不在金属(シャドウメタル)のようね、どんな製法で作られたのか大変興味深いけれど、私の狩猟相手になれるかしら?」

「漁に来たのは俺達の方さ」

 

 始まりの合図は必要ない。銃を構えてから引き金を引くまで、呼吸のようにスムーズに移行するシェリーの動きの波に合わせて、孫市は自分の体を中心に巻き込みように渦を巻く。

 

 その姿に楽しげにシェリーは舌を打った。

 

 渦を巻く孫市に追随して宙を踊る、山塊(レヴィアタン)から雨垂れのように伸びる無数の触手。痩身のそれも材質は本体と変わらず不在金属(シャドウメタル)。銃弾で貫くことは叶わず、不定型の鋼鉄の柵に弾かれる。

 

 無数の足を踊らせて、そのまま孫市の姿がシェリーの視界の横へとすっ飛んだ。

 

「……なるほど」

 

 重さは速さへ。形は保てど流体である山塊(レヴィアタン)の重心は、一歩孫市が歩くだけで大きく変わると言っていい。

 

 つまり、山塊(レヴィアタン)を背負うだけで背負った者は内包した銃弾の重量も含めて四〇キロを超える常に方向の変わる重量に(さいな)まれる。

 

 なんでもない一般人であったなら、まともに真っ直ぐ歩くことなどできず、最悪少し歩くだけで毎回転ぶ羽目になるだろう。

 

 そんな不自由製造機である山塊(レヴィアタン)であるが、孫市が背負えば不自由は消え去り、寧ろ自由の幅が増えるだけ。自力で生み出せる以上の大波を背負う海月(クラゲ)が常に生み出してくれるから。

 

 一歩を踏み生まれる大波を用いれば、身体能力以上の動きが生まれる。そこに走り回るといったスマートさは微塵もないが、時の鐘の軍隊格闘技で習得した地を転がる技術を合わせ、白銀の海月(クラゲ)が想像以上の高速で地表を走る。

 

「…………なんなのあれ」

 

 それを誰より呆然と見つめるのは、中心地にいるオーバード=シェリーや食蜂操祈ではなく、離れた校舎から見つめるお嬢様達。

 

 不可視の波に乗って浮いたり沈んだりを繰り返し地を走る孫市。それを追い宙を舞う触手。ただでさえ不気味だった風貌が、今や空に浮く海月(クラゲ)にしか見えない。

 

 そして、そんな海月(見た目)の通り、ただ見惚れさせるはずもないと当然のように毒を吐く。動きに合わせて口風琴(ハーモニカ)を捻り奏でられる魔の風切り音。その音色に多くの能力者が顔を歪めた。

 

 念動使い(サイコキネシスト)に、水流操作(ハイドロハンド)に、発火能力(パイロキネシス)に、電撃使い(エレクトロマスター)に、空力使い(エアロハンド)に、念話能力(テレパス)に。

 

 数の多い能力者に向けて、共通する嫌な音を音色を変えながら奏で続ける。動き音を垂れ流し続ける騒音被害による能力封じ。常盤台生の動きを牽制しつつ、流転する視界の中で孫市は口端を引き結ぶ。

 

 孫市は目を開けているようで何も見ていない。正確には第三の瞳で波の世界だけを見つめている。その目的は。

 

「あら孫市、私相手に時間稼ぎ? 偉くなったわね?」

 

 自分に手を出さず転がり続ける孫市の動きに当たりをつけ、シェリーは突っ込むと手にする狙撃銃で泳ぐ触手を巻き上げる。

 

 そのままつんのめる体を孫市は止めることなく踏ん張れば、しなった触手がシェリーを釣り上げた。宙へと浮いた狙撃手を弾くように口風琴(ハーモニカ)を振り回し、離れたと同時に向けられる銃口から孫市は身を(よじ)る。

 

 肩口を滑り地に落ちる銃弾。校庭の地面を抉るように、落とされ埋まった銃弾を孫市はシェリーへと向ける。追撃はせずに口風琴(ハーモニカ)を振り上げ生まれた山塊(レヴィアタン)の波に乗り、再び高速移動を開始。

 

 近づかれれば弾いて引き剥がし、その場に留まるなら転がり続け視界に止まらない。完全な時間稼ぎの動きにシェリーは微笑む。

 

((いら)つくわね、私が相手でも時間稼ぎできるようになったわけ。確かにこれは……)

 

 シェリーでさえ足を止めさせるのは骨が折れる。

 

 そもそも、孫市の全身をほぼ(おお)っている山塊(レヴィアタン)のおかげで、銃弾が当たったところでほぼ有効打になりえない。

 

 身を弾くように当てただけではただ移動に力を使われるだけ。

 

 弾数に限りさえないのなら、銃弾を楔のように撃ち続け止めることもできようが、弾切れのない決戦用狙撃銃である鹿の角(マッターホルン)が今は手元にない。時の鐘本隊が休止中ということもあり、総隊長であるシェリーが国外に持ち出すことが立場故にできなかったから。

 

 力で止めようにも単純な膂力なら孫市の方が上であり、波の世界を最大限活用する孫市に近接で挑むのは自殺志願者もかくやだ。方法としては共倒れ覚悟で転がる孫市に突っ込み、流転に巻き込まれながら銃口を隙間に捩じ込むことだが。

 

(勝算としては五分より低いわね)

 

 仮にそれで孫市を倒せたとして、シェリー側にも大きな隙が生まれるのは必須。その生まれた隙にこそ、未だ姿を見せない釣鐘が突っ込んで来る好機となり得る。

 

 釣鐘はいないと期待して相打ち覚悟で突っ込むか。

 

 それとも、相打ち覚悟で突っ込むと見せ掛けて釣鐘を誘い出し先に討つか。ただこの場合、波の動きで察せられ孫市から一撃貰う可能性が濃厚。

 

 円周を倒してやって来るロイを待つ。ただ、近接戦でもなく狙撃合戦でロイが円周に早々に勝てるかは微妙。

 

 戦闘経験薄い常盤台のお嬢様達に期待するのはなかなかに酷。しかも孫市に能力を妨害されている中で。

 

 結局どれもあまり現実的ではない。無数にある選択肢の中で、どうせ選ぶなら一か八か刺し違えの方が美味しい。そう決めてシェリーが笑みを深め────。

 

 

「食蜂‼︎」

 

 

 常盤台ではとんと聞くことのない孫市達もよく知る男の声が外側から飛び込んだ。その声を聞いて孫市は目の色を変える。

 

「この瞬間を待っていたッ!」

 

 『水晶の塔』を御坂美琴達が破壊しに出て行って、そこまで時間掛からずに目標を達成できるように木原唯一に調整してもらった。

 

 教師として学園都市の、それもセキュリティの高い常盤台に赴任して来たオーバード=シェリーとロイ=G =マクリシアンの装備が整っていないことは分かっていた。

 

 そんな中で時間を稼ぎ、孫市達が狙っていたのは、御坂美琴が帰って来たまさにこの瞬間。状況に頭が追いつかず、足を止めてしまうこの瞬間。

 

 思考パターンを拾える円周のエミュレート能力を用いて昼から夜まで嫌というほどシュミレーションした。

 

「さぁ、星の胎動を骨で聞けッ」

 

 口風琴(ハーモニカ)の二番と四番の筒を捻り、地に触れた触手が地球最大の波に同調し形を変える。水風船の内側から音叉のような物が孫市の背骨に沿って外に伸び、右の袖が大口を開けて口風琴(ハーモニカ)を掴み伸ばす孫市の右の腕を丸呑みにする。

 

 海月(クラゲ)から深海魚への変貌。瞳孔の開き切った鮫の瞳が見つめる先は学園都市第三位。その背中に広げる『対魔術式駆動鎧(A.A.A.)』。

 

 恐怖心を煽るその姿の危うさにシェリーは孫市へ銃口を向け、この瞬間のためにこそ隠密に徹していた釣鐘がシェリーに向けて突っ込んだ。シェリーは倒せずとも構わない、ただ、一発の銃弾を吐き出すための時間が欲しい。

 

 大地を揺さぶる振動が一発の銃弾へと姿を変える。特殊振動弾を超えた振動の結晶。超電磁砲(最速の弾丸)と撃ち合うために用意された超振動弾(最強の弾丸)

 

 指先に伸びる引き金を孫市が押し込んだその瞬間。

 

「……ここで来るかっ」

 

 外側で大きく膨れ上がった波が、津波のように学舎の園を取り囲んでいる壁を押し流し、孫市と美琴の間に伸びる空間を横断する。数多の瓦礫に着弾点をズラされて、斜め上へと走り抜けた振動の結晶が立ち並ぶビルの壁を粉微塵にしながら彼方へ消えた。

 

 孫市達とも美琴達とも違う第三陣営。ここに来るまでの間に、数多のエレメントや武器を噛み砕き力を蓄えただろう去鳴(サロメ)の一撃。

 

 崩れ去った壁の根元に立ち並ぶ人影を見つめながら、射撃の反動を殺すために天へと掲げた口風琴(ハーモニカ)を捻り、再び孫市は引き金を引く。頭上へとただの弾丸を吐き捨て、口風琴(ハーモニカ)により奏でられる歪な音色。

 

 それだけを済ませて孫市は釣鐘を踏み付け縫い付けているシェリーへと突っ込んだ。高速で転がりながらシェリーを触手で軽く弾き、転がったまま釣鐘を引っ掴み回収。そのまま誰もいない空間へとひた走る。背中に狙撃を受けながら。

 

「悪目立ちすれば上里側も出張って来るだろうとは思っていたが、随分と良い、いや、悪いタイミングで来てくれた。当初の予定通り次のステップに移行する。御坂さんの背負う『対魔術式駆動鎧(A.A.A.)』を破壊できなかったのは残念だが、最低限の仕事は果たした。行けるな釣鐘」

「いやっ、あのっ、ちょっ、止まっ、気分があッ⁉︎」

「よし、大丈夫そうだ」

「嘘っスよね⁉︎」

 

 シェリーにお腹を踏んづけられ、すぐに流転する世界への旅。いくら忍者として普段街中跳び回っていると言っても、慣れない視界の中で状況を整えろは無理がある。が、それもすぐに止まった。

 

 回転する孫市と地面の間に噛ませるように放たれた銃弾に体を滑らされ、遂に孫市の動きが止まる。もう動きに慣れたと冷徹に目をひん曲げるシェリーの眼光に孫市がゾッと背筋を凍らせ笑みを浮かべれば、なだれ込んで来る多くの影。

 

 上条達が、上里達が、常盤台の中心へと殺到するその外側から更に、これまでほとんど無軌道に動いていたエレメントが群れを成して突っ込んで来る。

 

 頭上へと孫市が銃弾を放ち音を奏でたのは合図のため。他でもない木原唯一への。エレメントを動かすための。エレメントの一体の背に乗って手を振りやって来ると同時に飛び込んで来た円周を孫市は受け止め離脱する。

 

 混沌に堕ちた状況の中で、やるべきことはただ一つ。

 

「万事は上手くいかなかったが、第一目標を優先する。この混乱に乗じて一度場を離れ、居場所の割れた上里側の追跡を開始する。行けるよな釣鐘?」

「うぷっ、りょ、了解っす」

「円周もご苦労だったな。さて、とんずらするとしよう」

 

 無数の破壊音を背に聞きながら孫市達はひた走る。全く色々と割に合わないと孫市は顔を歪めながら。エレメントに蹂躙され、崩れてゆく学舎の園のヨーロッパ風の街並みがスイスとダブる。

 

「……せいぜい俺を、恨んでくれよ」

 

 

 

 

 

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。

評価する
※参考:評価数の上限
評価する前に 評価する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。


  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

読者層が似ている作品 総合 二次 オリ

【完結】とある再起の悪役令嬢(ヴィレイネス)(作者:家葉 テイク)(原作:とある魔術の禁書目録)

闘病生活の末に死んだと思ったら、極悪お嬢様系女子中学生に憑依していた。▼どうも少女はその悪徳の数々によって『破滅』し、未来に絶望して川に身を投げたらしい。それを知った元青年・現破滅済み悪役令嬢の主人公は、少女の人格がもう一度生きる希望を取り戻せるよう、破滅からの『再起』を始めるのだった……!▼(サムネイラストはおてん様(@if959u)より)


総合評価:26785/評価:8.77/完結:190話/更新日時:2022年11月20日(日) 19:02 小説情報

とある科学の極限生存(サバイバル)(作者:冬野暖房器具)(原作:とある魔術の禁書目録)

 苗字は2文字で名前も2文字。普通の高校生だった主人公は、気がつけばとあるシリーズの住人になっていた。原作にはない名前を与えられた主人公は、とある学生寮の一室で目を覚ます。そこから一歩踏み出すと、待っていたのは一人の魔術師だった……▼ 原作知識をもった主人公が、とある魔術の禁書目録の世界にいないはずのキャラとして迷い込むお話です。科学と銘打ってますが、基本原…


総合評価:30718/評価:8.86/連載:79話/更新日時:2024年03月03日(日) 12:00 小説情報

とある科学の流動源力-ギアホイール-(作者:まるげりーたぴざ)(原作:とある魔術の禁書目録)

学園都市には消えた八人目の超能力者(レベル5)がいるらしい。▼あらゆるエネルギーを生成する能力者、流動源力(ギアホイール)▼黒猫のように優美であり、それでいて不吉。遭遇すると『不幸』になる。▼学園都市によくある都市伝説。▼しかし、それは都市伝説ではなくて──?▼もし、垣根帝督が心の底から本当に守りたいと思えるものを見つけられたら。▼彼は一体どんな道を辿るのだ…


総合評価:2841/評価:8.2/完結:352話/更新日時:2024年05月16日(木) 07:30 小説情報

とある科学の存在証明(作者:かさねtyann)(原作:とある魔術の禁書目録)

これは虚無と空白の物語だ。▼総人口二三〇万人を数える学園都市。その六割を占める無能力者の一人、木寺一桁は腐っていた。▼上条当麻と同じクラス、同じ寮、同じ補習仲間。▼だが決定的に違うのは、右手に幻想を殺す力もなければ、巨悪に立ち向かう度胸もないこと。▼あるのは、高位能力者への卑屈なコンプレックスと、鬱屈した事なかれ主義だけだった。▼そんな彼の日常は、空から降っ…


総合評価:6268/評価:9.11/連載:52話/更新日時:2026年04月01日(水) 12:39 小説情報

官能小説の世界に転生したらお隣さんが陵辱される直前の母娘だった件(作者:青ヤギ)(オリジナル現代/コメディ)

転生先の作品名▼「銀髪美人母娘監禁・鬼畜息子に飼われる北欧系義母と連れ子の三姉妹」▼ヒロイン全員、乳がデカく愛が重いものとする。▼カクヨム様とのマルチ投稿です。


総合評価:45379/評価:8.67/完結:15話/更新日時:2022年01月07日(金) 00:00 小説情報


小説検索で他の候補を表示>>